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[ 警察小説 ]
蜃気楼の犬
呉勝浩 出版月: 2016年05月 平均: 7.00点 書評数: 1件

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講談社
2016年05月

講談社
2018年05月

No.1 7点 人並由真 2016/09/09 15:54
(ネタバレなし)
 県警本部捜査一課の初老刑事・番場は「現場の番場」との異名をとる、ベテラン刑事。下戸ながら法の正義を信じる真っ直ぐな気性の青年刑事・船越を半ば後継者としながら捜査にあたる。そんな番場の妻は、二回りも年の離れたコヨリ。多少わがままだが愛らしく、現在はマタニティブルーの彼女を愛し、新生児の出産を楽しみにする番場だが、彼ら夫婦にはどこか世間の目を気にする雰囲気があった。そんな番場と船越の前に、続々と不可思議な謎に満ちた事件が…。

 昨年の乱歩賞作品『道徳の時間』でデビューした新鋭作家の三冊目の著作で、初の連作短編集。『道徳』は個人的には「ああ、狙いはわかります、うんうん」という感じの愛すべき大ファール作品という読後感だった(二冊目の著作『ロスト』は未読)。短期間に精力的に活動するその創作ぶりは頼もしいが、本書には全五編の中編連作を所収。主人公・番場とその相棒・船越を軸にした警察小説として歯応えのある大枠を描きながら、毎回の事件では、不可能犯罪のハウダニットや、状況の謎にからむホワイダニットなど、パズラーファンにも十分に楽しめる趣向の怪事件が語られる(高層住宅や山などのない市街地の真ん中で、高所から墜落死した死体の謎、など、どこかで見たような設定の謎もあるが)。
 もう一方で読者への求心力となるのが、一風変わった番場とその若妻コヨミの関係で、連作としての興味を加速度的に高めるのがこの部分になっている。
 
 内容はなかなか読み応えのある警察小説(組織ものにして、番場と船越たちの人間ドラマ)であり、連作謎解きパズラーとして十分に楽しめた。ただしネタバレを警戒しながら少しだけ書くと、この物語世界はまだまだ続刊を必要とする結構なので、その意味も込めてシリーズ化を希望したい。今後が楽しみなシリーズものになると思う。


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呉勝浩
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Q
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