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[ クライム/倒叙 ] Blue 女性刑事・奥貫綾乃 |
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葉真中顕 | 出版月: 2019年04月 | 平均: 7.25点 | 書評数: 4件 |
![]() 光文社 2019年04月 |
![]() 光文社 2022年02月 |
No.4 | 6点 | E-BANKER | 2025/03/15 13:52 |
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「絶叫」(2014年)に続く、「女性刑事・奥貫綾乃」シリーズの二作目。
本作は、まさに「平成」という時代を総括するかのごとく、平成が始まった年から、終わった年までが舞台となる作品。 単行本は2019年の発表、 ~平成15年に発生した一家殺人事件。最有力容疑者である次女は、薬物の過剰摂取のため浴室で死亡。事件は迷宮入りとなった。時は流れ、平成31年4月、桜ヶ丘署の奥貫綾乃は、「多摩ニュータウン男女二人殺害事件」の捜査に加わることに。ふたつの事件にはつながりがあるのか・・・? 平成という時代を描きながら、さまざまな社会問題にも切り込んだ社会派ミステリの傑作~ もはや言うまでもなく「力作」である。いつもながら、作者の物語を紡ぐエネルギー、思いには頭が下がる。 今回も単行本で450頁を超える長尺の物語。目くるめく作品世界に翻弄されながらの読書となった。 特に本作は、他の方も書かれているとおり、「平成」という時代のさまざまな政治、文化の流行や社会の変遷、エポックメイクな事件を織り交ぜ、自分自身の過去にも思いを馳せることになった。 確かに、「平成」とはよく言ったもので、世界情勢はさておき、日本はとにかく「平和」な時代だったのは間違いない。ただし、「平和」という仮の姿のそこかしこで、さまざまな「ひずみ」が露見してきた時代でもあったんだろうなーと再認識した。 話を本筋に戻して。 前作では事件に真摯に立ち向かう、クールで切れ者キャラという印象だった刑事・奥貫綾乃。本作では殺人事件の真犯人を追いながら、自分の子供を愛せなかったという拭い難い後悔と、自身への絶望と闘うこととなる。 そして、もうひとりの主人公が「青」こと「Blue」。無戸籍児として生まれ、劣悪な家庭環境で育てられた少年。彼の半生についても、二人称という形式で語られていく。 「親子の愛」。それは普遍的で当たり前のものだと思ってきた。しかし、平成の時代のうねりのなか、その普遍的な「価値観」を持てない親がいた。悲しいのは、子供を愛せない親に育てられた子供は、親になったとき、自身もまた子供をうまく愛せない親となってしまうことなのだろう。生きていくなかで、血縁のない「家族のようなもの」を得たBlueだったのだが、まるで昔の自分のような子供に接したとき、新たな展開が・・・。 ふたりをはじめ、さまざまな関係者があるひとつの場所に集結を始めた終章、悲しく切ないラストを迎えることとなる。ただ、綾乃の心は、今回相棒となった若き女性刑事・藤崎司の言葉で、救われることとなる・・・(良かった) ただ、いつもなら重厚な物語のなかに、ミステリ作家たる矜持を示すように、ミステリらしいギミックが仕掛けられてきたのだが、本作はそれがかなり薄味だったのがちょっと残念。 悪くいうなら、「想定の範囲内」のまま進んでいったという面はあった。 ということで評価としては、前作(「絶叫」)の方が上になるなあ。 まあ、次作では前向きになった奥貫綾乃に会えることを期待したいところ。 |
No.3 | 7点 | take5 | 2023/08/02 17:31 |
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倒叙で登録されていますが、
社会派、警察物の方かピンとくる作品。 平成史と2つの事件を追いながら 自分でも30年余りを生き直した気分です。 600ページ一気にいけます。 カットバック形式もおさらいから入って 読みやすいです。 自身が子として親として 恵まれていた(いる)から、 逆に登場人物の凄惨な人生を読み物として 受け止められるだけかもしれない、 そうでなければ文中の刑事さんみたいに--- そう感じました。 因みに平成の始まりは小さい頃、 官房長官が額を立てる所を テレビで見たのを覚えています。 平成の終わりは仕事の多少の変化で 緊張感があった、そんな思い出が。 皆さんの平成史は如何ですか。 |
No.2 | 7点 | パメル | 2023/01/24 08:05 |
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平成という時代が始まった日に生まれ、終わった日に死んだ一人の男がいた。男の名は「青」。プロローグで物語の外郭をなす情報が提示され、その男は何かしらの犯罪に手を染めたという予感が漂う。続く第一部で語られるのは、平成十五年十二月二十五日の深夜、青梅市で起きた教員一家惨殺事件だ。その家で死んでいた次女が被害者であるとされ幕を閉じたが、現場にはもう一人は存在していた痕跡があった。インタールードを挟んだ第二部で描かるのは、平成が終わる直前に起きた男女殺人事件。
二つの事件を発生直後からリアルタイムで描きながら、第一部では平成前半の、第二部では平成後半のカルチャーや社会問題をとことんピックアップしていく構成がユニーク。平成前半はバブル崩壊に象徴される昭和の負の遺産に振り回され、平成後半は前半十五年で種を播かれていた問題が一気に花開いたという事実を確信させられる。情報の濃密さそれ自体を楽しむ、いわゆる「情報小説」と理解したところで、認識の盲点を突くサプライズが第一部ラストで発動するから気が抜けない。 青をど真ん中に据えながらも、多視点群像形式を採用し、複数の個を束ねることによって時代や社会を表現しようとしている。エピローグの情景は「終わらせない平成」のメタファーとして読んだ。社会を新しくデザインしていくためにまず必要なことは、声にならない小さな声を聞き届けること。そう記し続けてきた作者の代表作といえる。 |
No.1 | 9点 | HORNET | 2020/03/29 11:53 |
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平成という時代が始まった日に生まれ、終わった日に死んだ一人の男がいた。彼の名は「青」、母親は彼を「ブルー」と呼んだ。
平成15年のクリスマスに起きた、教員一家惨殺事件。事件は一家の次女・夏希の犯行として幕を引いたが、事件以来夏希の息子「ブルー」は行方が分からなくなっていた。それから15年の時を経た東京、ある殺害事件の捜査で再び「ブルー」の存在が浮かび上がる―。 チーマー、アムラー、ゲームボーイ、ヒット歌謡曲などの平成の風俗文化をふんだんに散りばめながら、格差、貧困、外国人労働者といった時代の暗部も巧みに織り込み、「平成」を絶妙に描いている。 平成最後の年に刊行された、時代を総括するかのような傑作。 |