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[ 本格/新本格 ]
営繕かるかや怪異譚
小野不由美 出版月: 2014年12月 平均: 7.00点 書評数: 1件

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KADOKAWA/角川書店
2014年12月

KADOKAWA
2018年06月

No.1 7点 小原庄助 2021/12/28 07:33
この連作短編集の主役は「家」である。全六編、いずれの物語でも、それぞれの住まいの中で、或いはそのすぐそばで、ふと妙な出来事が起こり始める。そこを住まいとする者たちは、最初は気にしないようにするのだが、出来事は次第にエスカレートしてゆき、ある時を境に、紛れもない怪異としての姿を露にする。祟りではなく障り。何かが、誰かが障っているのだ。そこに営繕屋が登場する。尾端というまだ若い男で、名刺には「営繕かるかや」とある。つまり彼は家を修繕・改築するのが仕事だ。だが尾端には不思議な評判がある。彼は住まいに手を入れることで、障りを直すことが出来る。かといって彼は霊媒師ではない。障っている誰かの想いを推し量り、そこに宿る無念や悲哀を慮って、営繕によって解放してあげるのだ。
冒頭の「奥底より」では、亡くなった叔母から相続した町屋に独り住まいの女性が、奥庭に面した狭い廊下の向こう、開かずの間と化した奥座敷の襖が、閉めた筈なのに開いていることに気付く。何度閉めてもいつの間にか開いている。そして或る日、そこから女が出てくる。怪異がぬうと顔を出す瞬間の切れ味は、この作家ならではである。だが、かるかやの処置は、あくまでも家に、住まいに対するものであり、従ってこの種のお話にありがちな理屈抜きの神秘性とは一線を画している。尾端は文字通り、住まいを直すだけなのだ。それぞれの主役である家の構造や設計は、緻密かつ明晰に書かれている。かるかやが施す営繕も極めて具体的だ。この趣向が本書に凡百の怪談、心霊、ホラー小説とは全く異なる新しさを与えている。いわばこれは一種の建築小説である。しかしそこでは同時に、人の心も建築として、住まいとして扱われている。


小野不由美
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