| Tetchyさんの登録情報 | |
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| 平均点:6.73点 | 書評数:1636件 |
| No.576 | 7点 | ラム・パンチ エルモア・レナード |
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(2009/07/19 19:06登録) レナードにしては主人公の「貌(かお)」が見えなかった。悪役のオーディルの方が存在感があった。いや主人公はマックスでも良かったのだが、パートナーであるウィンストンが魅力的な設定にも拘らず、ストーリーの原動力に何ら寄与していなかったのが余りにも惜しい。 映画も観たが(タランティーノ監督の『ジャッキー・ブラウン』)、やっぱり同じように主人公の男が全然魅力的でなかったなぁ。 |
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| No.575 | 4点 | タッチ エルモア・レナード |
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(2009/07/19 01:15登録) レナードの最たる特徴は一癖も二癖も、また更に三癖もある連中が錯綜し合い、共鳴し合い、またまた反転し合い、全くどういう風に収束していくのか皆目見当がつかない点にあるのだが、今回は宗教というテーマ1本に絞ったためか、宗教についての衒学小説になってしまったきらいがあり、エンターテインメント性に欠けた。 |
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| No.574 | 2点 | バーネット探偵社 モーリス・ルブラン |
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(2009/07/17 22:15登録) モーリス・ルブランの息抜きのために書かれた短編集という印象が濃い。 元来、話のスケールを大きくする作家なので短編と云えども過去の因縁を絡ませ、物語に膨らみを持たせようとしているがこれが見事に失敗している。元々長編向きのアイデアを短編に無理矢理纏めたような、飛躍的な展開が実に白けさせるのだ。 昔ながらの超人的思考力探偵というのは今更ながら辟易だ。 |
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| No.573 | 7点 | トリプル・クロス ブライアン・フリーマントル |
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(2009/07/16 19:27登録) フリーマントルが自身のノンフィクションルポルタージュ作品『ユーロマフィア』で述べていた、複数の国に君臨するそれぞれのマフィアによる犯罪ネットワークの構築、これが本書の主題である。 これにダニーロフの愛人ラリサの敵討ちが加わり、更にベルリンでのFBI捜査官の大量虐殺なども起こり、事件は派手さを増す。 米独露三国の共同捜査を敷きながら、常に相手の上を行くロシアマフィアの頭オルロフ。これが最後の最後で決定的な証拠が発覚し、捕まる。 しかしここで私は疑問に思ってしまった。 今までFBI、ロシア民警を嘲笑うかのように悉く出し抜いてきた慎重なマフィアが尻尾を掴まれるにしてはなんともお粗末な証拠である。 物語運び、世界情勢を正確に把握した堅牢たるプロット作り、そして最後にサプライズを決して忘れないフリーマントル。 上手い。確かに上手いが、今回はちょっと脇が甘かったかなぁ。 |
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| No.572 | 5点 | 三十棺桶島 モーリス・ルブラン |
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(2009/07/16 00:57登録) 「モーリス・ルブランの手による江戸川乱歩風味」といった趣の物語。 忌まわしい伝説が伝わる島に監禁された愛息を救うべく、島に渡った母親、悪の首領が支配するその島には壮大な地下迷宮(!?)が存在し、万能の力を持つ「神の石」が眠る…。ほら、乱歩以外何物でもない! しかも、珍しく主役のルパンは何と、物語の3/4を過ぎた辺りから登場という異例の展開。 なのに安っぽいんだなぁ、これが…。 |
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| No.571 | 7点 | 八点鐘 モーリス・ルブラン |
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(2009/07/14 21:42登録) 内容は、確かにヴァラエティに富んでいる。 物的・心理的トリックを駆使した本格物から、サイコ・スリラー物まで、アイデアもいい。 まあ、でも大人になった現在、かなり苦しいものがあるなと痛感した。大人になって読んで実感できるものと云えば、この八つの物語、全てリュパンがオルタンスを口説くためだけの前工作に過ぎないという点だ。 いやはや、ここまで投資する恋があるとはねぇ…。 |
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| No.570 | 3点 | 続813 モーリス・ルブラン |
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(2009/07/13 22:07登録) 前作『813』で棚上げされていた数々の謎が、この続編では次々と明らかにされていってるんだけど、間を置いてしまったので既にその謎自体忘れてた(爆) 本当は評価すべき立場ではないんだけど、もう多分読まないと思うから、オイラのこの作品の評価はもうこれでいいや。 |
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| No.569 | 3点 | 赤い数珠 モーリス・ルブラン |
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(2009/07/12 19:26登録) 本作の導入部は秀逸。今まで欲求不満ばかり感じていたので、「おおっ、今度こそは!」と期待したが、やっぱり最後は尻すぼみ・・・。 色々こねくり回して、退屈しちゃうんだよなぁ。 サービス精神旺盛なのは解るけど。 |
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| No.568 | 2点 | 特捜班ヴィクトール モーリス・ルブラン |
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(2009/07/12 00:38登録) またこの趣向かと呆れた。 押並べてルブランの諸作はどんなヒーローを出しても、最後は全てルパンだったという真相に結実する。 そして本書もその例外ではない。 こういう真相はもはや驚きをもたらさず、ルパン1人に詰め込みすぎだろう…という諦観めいた感慨を受けた。 |
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| No.567 | 7点 | 緑の目の令嬢 モーリス・ルブラン |
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(2009/07/10 22:25登録) 評価は少しサーヴィスした。 その理由はラストの湖から遺跡が登場するシーンが胸を打った。これは恐らく宮崎駿があの名作『カリオストロの城』のラストシーンで採用したのではないかと推測される。 そう、このシーンを読んだ時、映画のあの場面が目に浮かんだのだ。 ストーリーはいつものルブラン調で特記するものはないが、もうこのエンディングだけで十分だ。 |
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| No.566 | 8点 | 姑獲鳥の夏 京極夏彦 |
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(2009/07/09 23:01登録) 一読、実に真っ当な本格ミステリというのが率直な感想だ。元々ミステリとは始祖ポーが、明らかに怪物の仕業である、または説明のつかない怪奇現象の類いであると思われた事象を実に明解な論理で解き明かすことを主眼にした文学形態である。 つまり人々が恐れていた謎という闇の部分に論理という光を当て、人智の物とする行為。 この京極堂こと中禅寺秋彦の「憑物落とし」は正にこの行為そのものである。 だからこの妖怪シリーズは妖怪というモチーフと物珍しさ、憑物落としという興趣くすぐる演出で新たな本格という風な捉えられ方をしたが、実は黄金期ミステリ時代への原点回帰的作品なのだ。 そして全編に繰り広げられる薀蓄、これまた薀蓄の波。 しかもこれらの薀蓄が実に最後に有機的に働く。 そして親が娘に成す因果の業の恐ろしさ。この辺りのロジックのおぞましさは耽美な美しささえ感じさせる。 が、それでもメインの二十ヶ月間も妊娠している妊婦、密室から失踪した夫の行方という謎の真相はいささか、いやかなり乱暴すぎる。 私も心が五感に及ぼす作用の事は重々承知しており、この真相を全くの暴論と唾棄しようとは毛頭思わないが、やはり本格ミステリという様式に則った作品でこれをやってはならんだろうと思う。 なぜならこの実際にある物が見えないという心理的フィルターを利用すれば、何も苦労せずに不可能犯罪が書けてしまうからだ。 やはり死体が隠されているのならば、巧妙に隠匿されなければならない。 そしてそれを万人の読者が納得できる形で作者は謎を解き明かしてくれなければならない。 これがホラーならばまだ十分許容できたが、本作は本格ミステリであるから、この真相は受け入れがたい。 でもこの独特の世界観とキャラクターの魅力は抗し難い。今後もシリーズを読み続けるつもりだ。 蛇足だが、蛙のような赤ん坊は、某有名マンガ家のこれまた某有名医療マンガに前例あり。私はそれを読んでいたのですぐに解ってしまった。 |
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| No.565 | 6点 | 謎の家 モーリス・ルブラン |
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(2009/07/08 19:27登録) 女優とモデルが誘拐されて連れられた謎の家、それは2つの誘拐事件を結ぶ接点だったという、ルパン物とは思えないミステリ風味溢れる作品。 更にルパンと敵との手に汗握る攻防戦とルブランのサービス精神はここでも旺盛。 ただなんとも読みにくい文章で、理解に苦しむ事しばしば。 しかし作品ごとに身分を偽る探偵役というのも考えてみれば面白いな。 |
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| No.564 | 5点 | カリオストロ伯爵夫人 モーリス・ルブラン |
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(2009/07/07 22:58登録) ルパン若かりし頃の事件。 最初にルパンが心奪われたのは稀代の女盗賊だったという、いかにもおフランスな物語ではありませんか! これに触発されて乱歩は『黒蜥蜴』を書いたとか書かなかったとか。 でもなんかやっぱり大味な感じ。 云わずもがなだが、宮崎駿監督の『カリオストロの城』のモチーフとなった作品だが、宮崎監督はうま~くいいところを採ってますな。 |
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| No.563 | 4点 | 813 モーリス・ルブラン |
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(2009/07/03 23:35登録) この一冊で話が完結するものだと思っていただけに、この結末は肩透かしを食らった感がある。 結局、最初に提示された謎は何一つ解明される事なく、欲求不満が残ってしまった。 しかし、ルノルマン=ルパンの設定は食傷気味。読者の興味を繋ぎ留めておく為か、はたまた下世話なサービス精神の産物か。 ともかく『続813』に期待しよう。 |
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| No.562 | 5点 | オルヌカン城の謎 モーリス・ルブラン |
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(2009/06/30 23:44登録) 本書をルパンシリーズと冠するのはかなり無理があるだろう。 単なるカメオ出演でしかないし、本書の主人公ポールを手助けするわけでもなし。 また題名も本書のメインではなく、なんともちぐはぐな印象を受ける作品だ。 とはいえ、冒頭の結婚した妻の母親がかつて自分の父親を殺した女スパイではないかという疑惑から、謎の男の登場、妙な暗号などなど、話を引っ張る設定はなかなか。 |
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| No.561 | 4点 | ルパンの告白 モーリス・ルブラン |
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(2009/06/29 22:42登録) 収録作品中、「麦藁の軸」や「リュパンの指輪」はほんの少しだけ楽しく読めたが、やはり総体的に見ると残念な出来。 無論、この作品が書かれた時期などを考慮するとルブランの先駆性も理解は出来るが、やはり現代なお残るのは、読むに絶えられる書物だからだと理由なので、そこまで考慮する必要もないかと感じる。 やっぱ、小学校の時に読みたかったかな~。 |
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| No.560 | 4点 | 奇岩城 モーリス・ルブラン |
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(2009/06/28 20:40登録) 小学校時代、学校の図書館で読んだ時、ハラハラしながら読んだものだった。 大人になって改めて再読してみると、意外なことに全くといっていいほど楽しめなかった。 本作のみで探偵役を務めるイジドール少年が、小学生の私には身近なヒーローに映ったのかもしれない。 しかし本作の冒頭のシーンも、宮崎駿監督の名作“カリオストロの城”にエピソードとして盛り込まれており、逆に宮崎監督がパスティーシュともいえるルパン三世シリーズをきちんと原典を踏まえて創作したのだというのがわかっただけでも収穫か。 |
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| No.559 | 6点 | 水晶の栓 モーリス・ルブラン |
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(2009/06/26 23:13登録) 本作ではそれまでの快刀乱麻の華麗な怪盗振りを見せ、読者を魅了したルパンの姿ではなく、泥棒なのに逆に泥棒され、常に敵に出し抜かれるルパンの姿が描かれ、世に蔓延るルパンのイメージを抱いたまま読むと、かなりイメージダウンは免れない。 でも敵に何度もやられながら立ち向かう姿は泥臭いながらも、ルパンも万能な天才ではなかった事を知らされ、人間くさい面が出てて興味深い。 個人的には最後の水晶栓の隠し場所のトリックがよかったので、かろうじて6点とした。 あと宮崎駿監督の名作『カリオストロの城』で登場するヒロインのクラリスはこの作品から採られている事が解ったのも、ちょっとした収穫だった。 |
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| No.558 | 7点 | 日本庭園の秘密 エラリイ・クイーン |
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(2009/06/25 23:08登録) 空さんもおっしゃってますが、日本では邦題が示すように国名シリーズに数えられているが、原題は“The Door Between”と全く別。私見を云わせていただければ、やはりこれは国名シリーズではなく、『中途の家』同様、第2期クイーンへの橋渡し的作品だと考える。 その根拠は『中途の家』と本作では事件の容疑者は既に1人に絞られ、その人物の冤罪を晴らすという構成に変わっていること。これは『スペイン岬の秘密』で最後にエラリーが吐露した、自身が興味本位で行った犯人捜しが果たして傲慢さの現われではなかったか、知られない方がいい真実というのもあるのではないかという疑問に対する当時作者クイーンが考えた1つの解答であるのではないか。即ち部外者が犯行現場に乗り込んで事件の真実を探ること、犯人を捜し出すことの正当性を、無実の罪に問われている人物への救済へ、この時期、クイーンは見出したのではないだろうか。それは最後、真犯人に対してエラリーが行った行為に象徴されているように思う。 また犯罪のプロセスを証拠によって辿るというよりも、犯行に携わった人々の心理を重ね合わせて、状況証拠、物的証拠を繋ぎ合わせ、犯罪を再構築する、プロファイリングのような推理方法になっているのが興味深い。 しかし私は本書を存分には楽しめなかった。なぜならある作品を読んで真相を知っていたからだ。未読の方のために老婆心ながら本書を読む前に、麻耶雄嵩氏の『翼ある闇』を読まないでおく事を勧めておこう。 |
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| No.557 | 5点 | ルパン対ホームズ モーリス・ルブラン |
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(2009/06/24 19:29登録) 識者の話によれば、当時ルブランはドイルに何の断りもなくホームズを自作に出演させ、この作品を発表したとのことで、当然のことながらドイルは抗議を申し出たが、したたかなルブランはSherlock HolmesのスペルをHerlock Sholmes(ヘルロック・ショルムズ)と変え、するりと交わしたそうだ。 そんなルブランが書いたこの作品だから、自身のキャラクターに思いが偏り、ホームズがホームズらしくない。 「金髪の婦人」など、作品としての面白さはあるものの、やはり有名なキャラクターを借りただけに、色眼鏡的読み方をするのは否めない。 しかしルブランも後々日本の大乱歩が同じようにルパンを拝借して長編を書かれているのだから、ドイルもルブランもやはりこれは有名税というべき業だろう。 まあ、ルブラン本人も極東の地でよもや自分のキャラクターが敵役に使われ、なおかつ勝手に子孫を創作されて、日本のアニメ界に幅を利かせているなんて思いも知らなかったんだろうけど。 |
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