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ミステリの祭典

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三十棺桶島
怪盗ルパン/『棺桶島』

作家 モーリス・ルブラン
出版日1958年01月
平均点6.00点
書評数2人

No.2 7点 クリスティ再読
(2022/05/13 22:37登録)
そういえばルブランやるの評者は初だった。少しやってもいいか。本作がトップなのは、実は「日本ミステリに関して、重要な作品」だから。意外、かなあ? もちろん保篠龍緒が戦前に紹介しているわけだから、大昔から親しまれてきた作品である。乱歩の「孤島の鬼」だって本作にヒントを得たのかもしれないが、それよりモロの影響が横溝正史である。
「八つ墓村」の前史になる大量殺人も、地下道をさまようエピソードも、宝探しも本作にある。さらに直接なのが「獄門島」で、こっちは島だし、「見立て殺人」が呼んだ「偶然」に狂わされる犯人やら、さらには戦争の影もきっちり再現していてほぼ元ネタ....重要、でしょう?「ルパンだから...」とか言って敬遠しなくていい。

でこの作品自体、ではやはり怪奇的雰囲気が濃厚な作品で、おどろおどろしい。怪物的な悪党なんだけども、「ババリアのルイ2世」とか言うからには、狂王ルードヴィッヒⅡ世のご落胤設定である。まあここらへん、傲慢で狂気のドイツ人、という戦時中らしい色付けでもあるが、そういった「帝王妄想」みたいなものがこの悪党にあるわけで、演劇的な犯罪のスケールが大きい。しかも事件の背景となるケルト人が隠した秘密は歴史ネタでこれも壮大なロマンの良さもあり、さらに「神の石」の謎解きも...

いやだけど、そういったロマンに介入するルパン(というか、愛国的な冒険者のドン・ルイス・ペレンナ)が、ファンキーなドルイド僧に扮して「棺桶島のタンゴ」を踊って見せたりする(苦笑)。ここでヴァーグナーから一気に「ロッキー・ホラー・ショー」に転調してあっけにとられる(笑) でもこれが悪党の毒消しみたいなもので素敵。

本作いわゆる「カリオストロ4つの謎」の一角になるシリーズ中でも重要なポイントの作品でもある。4つの謎プラス有名作くらいはやることにしようか。

(でもポプラ社児童向け、悪人因果応報な結末が違ってた記憶がある...南洋一郎、オリジナル要素多いからねえ)

No.1 5点 Tetchy
(2009/07/16 00:57登録)
「モーリス・ルブランの手による江戸川乱歩風味」といった趣の物語。
忌まわしい伝説が伝わる島に監禁された愛息を救うべく、島に渡った母親、悪の首領が支配するその島には壮大な地下迷宮(!?)が存在し、万能の力を持つ「神の石」が眠る…。ほら、乱歩以外何物でもない!
しかも、珍しく主役のルパンは何と、物語の3/4を過ぎた辺りから登場という異例の展開。

なのに安っぽいんだなぁ、これが…。

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