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ミステリの祭典

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Tetchyさんの登録情報
平均点:6.73点 書評数:1614件

プロフィール| 書評

No.834 7点 砂漠で溺れるわけにはいかない
ドン・ウィンズロウ
(2010/08/27 23:02登録)
毎回このシリーズには印象的なキャラクターが登場するが今回は何といってもニールが家へ連れ戻す老人、元コメディアン、ナッティ・シルヴァーことネイサン・シルヴァースタインのキャラが秀逸。
今までの作品でのウィンズロウのウィットに富んだ文体で彼のユーモアのセンスは解っていたつもりだが、コメディアンをメインに据えた本書ではそれが全開。今まで我慢していたギャグを大放出しているかのようだ。そしてそれがほとんど面白い。それがまたナッティのキャラクターの造形を色濃くしている。そしてその飄々とした好々爺の風格が古き良き時代のアメリカン・コメディアンそのものであり、眼前にナッティがしたり顔でジョークを連発するのが目に浮かぶくらいの存在感を放っている。


No.833 3点 大富豪殺人事件
エラリイ・クイーン
(2010/08/20 22:11登録)
※ネタバレあり
表題作は大富豪の被害妄想が現実になって殺人事件に発展するという趣向を取ったのだろうが、非常にオーソドックスな内容になっている。明かされる犯人は実は怪しいと思っていた人物だが、その動機―遺言執行人報酬として得られる1000万ドルのうち1%の10万ドルを狙ったもの―は確かに今までにないものだろうが、犯人の背景にお金に困っているという叙述が全くないだけに唐突な感じを受ける。辛辣になるが単純に法律の知識を活かした作者の自己満足に終わっていると云えない訳もない。

もう1編の「ペントハウスの謎」は創元推理文庫の『エラリー・クイーンの事件簿Ⅰ』で既読。

元々この作品は買う予定ではなかった。表題作は創元推理文庫の『エラリー・クイーンの事件簿Ⅱ』に収録されているが長らく絶版状態だったので手に入れた次第。
内容的には薄味だったので本書がクイーンファンにとってマスト・バイであるとは正直お勧めできない。とはいえ、ここはこの作品を絶版にせずに今なお目録にその名を留め、書店の棚に収めている早川書房の志を敢えて褒めるべきだろう。


No.832 6点 創元推理12
雑誌、年間ベスト、定期刊行物
(2010/08/19 20:59登録)
「1万円で選ぶベストミステリ」の企画は面白い!
これは今やってもいいくらい。本書が発行された96年に比べ、本の値段は高騰しているから挙げられる冊数も減ってくるだろう。それがゆえに呻吟して選びそうな気がする。
あと戦前・戦後の本格推理小説の紹介には疑問を覚える。埋もれさせてはいけないという小説史的に価値はあるかもしれないが、現在読む価値があるかというとはなはだ疑問。
まさにマニアの為の雑誌だな、こりゃ。


No.831 5点 創元推理11
雑誌、年間ベスト、定期刊行物
(2010/08/18 21:24登録)
当時本格ミステリを極めんと定期購読していたのがこの雑誌。初めて買ったのがこの号だった。
とにかく高度というか、次元の違う話が展開されててビックリした記憶がある。各書評家の言葉を理解することからまず始まった。
今読んでどう感じるかはあるが、まあ若気の至りということで。


No.830 9点 ミステリ・ベスト201
事典・ガイド
(2010/08/17 21:29登録)
1ページにぎっしり書かれた内容の濃い書評にまだ見ぬ傑作に思いを馳せたのがこの1冊。瀬戸川氏、池上氏を筆頭に現在斯界を代表する書評家が存分に愛情を持って語るその内容は今なお色褪せない。
さすがに今では手に入らない本も多くなったが、これも未だに読み返している1冊。


No.829 10点 ミステリ・ハンドブック
事典・ガイド
(2010/08/16 17:52登録)
これが刊行された当時、世には今のようにミステリガイドブックがほとんど出ていなかった。したがってこの本は世のミステリファンの眼を開く一冊となった。
時の書評家たちを中心にアンケートを取り、オールタイムベストミステリを選出し、さらに各ジャンルに分かれて各書評家がエッセイを書くという、まさに現在の定型を作ったのではないか。手探り状態でミステリを読んでいた私にとってまさにバイブルのようなガイドブック。未だに手元に置いてある。


No.828 3点 LIMIT
フランク・シェッツィング
(2010/08/15 19:07登録)
合計約2280ページの四分冊。長い。長すぎる。
情報小説というジャンルがあるが、これは情報過多小説だ。
物語に関係する全ての分野について事細かな情報を盛り込んでいるがためにこれだけの分量にまで膨らんでしまっている。
ストーリーの本筋である3つの事件に焦点を当ててこれらの情報をほんの彩り程度に語れば、もっとスピード感も増したことだろう。
恐らく実際取材に当たり、執筆に5年費やした作者にしてみれば、これでも泣く泣く削らざるを得なかったエピソードがあったのだとのたまうことだろうが、それは己が調べて得た知識を披露したいという自己顕示欲に過ぎない。つまりこの1巻平均570ページの4分冊という大作になった時点でこれは読者の目を無視したほとんど自己満足の領域に入ってしまっている。もし作者がさらに語りたいことがあればそれらはまた別に本書で書けなかった情報を集め、本書を補完する形のガイドブックのような物を出版すればいいのだ。

このくらいの長さになると大きく1つの話という括りにしLIMIT4部作としてシリーズ物として出版し、1冊ごとに小さな事件の結末を描いて最終巻で全体を貫く大きな事件の結末を描くという構成にした方が読者にも優しいだろう。

これほど徒労感が残る小説も珍しい。誰かシェッツィングにもっと刈り込むようにアドバイスしてくれ!


No.827 5点 海外ミステリ探偵ベスト100
事典・ガイド
(2010/08/09 21:27登録)
仁賀克雄氏の海外ミステリガイドブックシリーズ3弾で、これが最終巻かな。
探偵でくくるというのは正直ガイドブックとしては有用性がない。実際これを参考にして本を買ったことがない。
また取り上げられている探偵も100人だけだから結構省かれているのも多く、帯に短し襷に流しといったところか。


No.826 8点 戦場の夜想曲
田中芳樹
(2010/08/08 20:03登録)
作者がまだ若かりし頃のSF短編集。しかしこれはSFの意匠をまとったミステリ・エンタテインメント小説集と断言したい。
この頃本当に才気迸っていたんだなぁというのが判るクオリティの高さ。特にハードボイルドやスパイ小説をこの作家に書いて欲しかったと読んでて思う。
アイデアも秀逸で、いやあ冒険家だったなあ、この頃の田中氏は。


No.825 8点 現代海外ミステリ・ベスト100
事典・ガイド
(2010/08/05 21:27登録)
まだミステリ初心者だった頃に読んだ本書は非常に参考になった。
今読むと文庫の版型で上下二段組に見開き2ページで1作を紹介している内容は実に消化不足で食指をそそられないところがあるが、当時はこれだけで読書欲の渇望感が満たされたものだ。
刊行当時に最新刊として刊行された海外ミステリが俎上に載っており、今では絶版のものの多いが、今でも貴重な資料の1つとして座右に置いている。


No.824 1点 世界の名探偵50人
事典・ガイド
(2010/08/03 21:07登録)
こうさん、江森さんに激しく同意!
全ミステリファンにとって後々トラウマとなって残るであろう反則本です。
こうさんのおっしゃるとおり、古本屋でこの藤原宰太郎の名を冠したガイドブックを目にしたら、その興味を誘うような題名に騙されて決して手にとってはいけない!
ミステリ初心者にとって読書の足がかりとなるガイドブックだがこれを読むことで歴史に残る名作のほとんどがネタバレされているという凶器本。
実際A辻氏は子どもの頃この人の本を読んだことが最大の災厄だったといったようなコメントを残している。
私もこれで記憶に残ったトリック・犯人は数知れず、クリスティのアレとかカーの『爬虫類館の殺人』とか大人になった今でも覚えてしまっている。
とにかく最低の本だ。絶版していることを寿ぎたい。


No.823 6点 私は別人
シドニー・シェルダン
(2010/08/02 21:14登録)
作者自身も脚本家として関わった銀幕の世界、世界のショービズ界の頂点ともいえるハリウッドを舞台にスーパースターを夢見る青年トビーが波乱万丈の物語が繰り広げられる。ハリウッドの内幕を描いた作品だと記憶があり、確かこのトビーという青年はコメディアンを目指していたと思う。そしてエンタテインメント界に付き物の人を狂わせる魔力という物に取り付かれ、手当たり次第に女性に手を付けるんではなかったかな?なかったかな?というのは、実はこの作品についてはもうほとんど忘却の彼方にある。

結局、ここまで読んで振り返るとシェルダン作品は『真夜中は別の顔』をピークとしてそこから下っていったように思う。だが外国作家の作品を読むこと自体が初めてだった(ホームズ物の児童用リライト版は除いて)私にとってシドニー・シェルダンの作品は私に海外作品への門戸を開いてくれた。今の私の海外ミステリ好きの礎は間違いなくシェルダンによって築かれたと云えるだろう。
すでにこの世を去り、ほとんどの人が過去の作家と思っているだろうし、それは私も同じだ。今更彼の未読作品を読む気にはなれない。
しかし忘れ去られるには勿体無い作家だ。なぜなら彼の作品は面白いからだ。ドイルやルブラン、クイーンやカーが没後の今でも読まれるように彼の作品も後世に残してほしいものだ。
ありがとうシェルダン。合掌。


No.822 5点 シャーロック・ホームズの事件簿
アーサー・コナン・ドイル
(2010/08/01 21:56登録)
晩年のホームズの活躍が多く散りばめられてシリーズの締め括りを暗示した内容であった。
しかもあまり云いたくはないのだが、明らかにドイルはネタ切れの感があり、前に発表された短編群とアイデアが似たようなものが多い。代表的な例を挙げれば「三人ガリデブ」がそうだろう。これはほとんどまんま「赤毛連盟」である。
しかし、カーを髣髴させる機械的なトリックが印象深い「ソア橋」が入っているのも本書であるから、苦心していたとはいえ、ヴァラエティに富んだ短編集であることは間違いない。特に最後に「覆面の下宿人」のような話を持ってくる辺り、心憎い演出ではないか。


No.821 10点 明け方の夢
シドニー・シェルダン
(2010/07/30 23:37登録)
個人的ベスト作である『真夜中は別の顔』の続編で、これが出た時には「待ってました!」と快哉を挙げたものだ。
さて本作では前作では影の存在として、さほど表立って描かれなかった大富豪コンスタンティン・デミリスが前面に出てストーリーが展開する。なんと前作でショックのあまり記憶喪失となったキャサリンを、自分に対する裏切りの復讐として殺そうと画策しているのだ。とにかくこのデミリスの黒さが全編に渡って描かれている。そしてこいつは本当に悪い!そして金が豊富にあるだけに恐ろしい。しかし悪は栄えず。その権力と財力とで封じ込めてきた復讐劇が、綻んでいき、デミリスの周囲を真綿で首を絞めるようにデミリスもまた窮地に陥っていく。それをたくみに交わすデミリスの奸智もまた見ものだ。

しかしあの結末から上下巻もの物語を紡ぎだし、しかも冗長さを感じさせないというのが素晴らしい(詳しく覚えていないけど)。ただ後から振り返ればこの頃、既にシドニー・シェルダンも一時の狂的な売り上げから比べると下り坂であり、人気の高い『真夜中は~』の続編の本書はその右下がり曲線を押し上げるための起爆剤として期待されていたように思う。そして私個人的にもシェルダン作品はここまでという思いがある。


No.820 8点 血族
シドニー・シェルダン
(2010/07/29 21:21登録)
シドニー・シェルダン原作の作品をドラマ化することで数字が取れることが解ったのか、テレビ朝日は本作もドラマ化したらしい。しかしそれは土曜ワイド劇場という2時間枠でのドラマ化であった。しかし本作は実は昔にオードリー・ヘップバーン主演で映画化されたらしいが、全く知らなかった。
プロットとしては比較的単純。大企業の社長が事故で亡くなり、莫大な遺産を相続した娘が他の親族から命を狙われるという物で、ミステリの定型としても非常に古典的であるといえるだろう。

特にシドニー・シェルダンの人物配置が常に一緒なのが気になる。主人公はいつもヒロインで、それをサポートする魅力的な男性がいる、そして2人で降りかかる災難や危難を乗り越えていく。絶体絶命のピンチになった時にこの男性が颯爽と現れ、カタルシスをもたらすというのが、共通しており、それは藤子不二雄の一連のマンガのキャラクター構成がほとんどの作品で共通しているのに似ている。いじめられっ子の主人公にそれを助ける特殊能力を持ったキャラクター(ドラえもん、怪物くん、オバQ、etc)、いじめっ子とその子分、そして憧れのヒロインとほとんどこの構成である。これは両者が自分の作品が売れる黄金の方程式を見つけたということなのだ。で、私はこういうマンネリに関しては全く否定しない。なぜならマンネリは偉大だからだ。この基本構成を守りながらもヒットを出すというのは作者のヴァリエーションに富んだアイデアが必要だからである。そしてこの両者はそれを持っているのだ。これはまさに才能と云えるだろう。

さて本作では他の作品と比べて、意外と先が読める。さらには最後に明かされるエリザベスの命を狙う犯人も案外解りやすい。巷間ではそれが他の作品よりも評価がちょっと低い原因となっている。

しかし当時高校生だった私はこの作品に登場するリーズ・ウィリアムズなる人物に非常な憧れを持った覚えがある。そんな意味でこの作品は私の中でちょっと特別な存在になっている。


No.819 10点 真夜中は別の顔
シドニー・シェルダン
(2010/07/27 22:10登録)
さて私がシドニー・シェルダンの作品の中で何が一番面白かったかと問われれば、本作を躊躇なく挙げる。
まず開巻してすぐに本作のクライマックスから始まる。それは世界中が注目する大裁判が開かれようとしているというシーン。つまりここで物語の収束する先を読者はあらかじめ知らされるわけだ。しかもこの裁判というのが実に大規模。なんせその裁判を傍聴せんがために自家用ヘリや自家用ジェットまで動員して世界中のセレブが我先にとその地を訪れるという派手さ。この時点でもう読者である私は物語に釘付けだった。

本作の面白さは並行して語られる主人公の2人の女性の対照的な人生に尽きるだろう。キャサリンとノエルの生き様はまさに太陽と月のような趣で繰り広げられる。

特に衝撃的なノエルの方。というよりももはや読んだのが20年くらい前でもあることで強烈な印象を残すノエルの方しか覚えていないというのが正直なところだ。

本作で忘れてはならないのはコンスタンティン・デミリスという大富豪の存在。彼は本作では影の主人公というべき存在になっている。で、最後に立ち上るのはデミリスという男の恐ろしさ。彼はやはり復讐を忘れなかったというのを最後に読者の眼前に叩きつける。詳細を書くとネタバレになるので云わないが、この結末で本作は傑作と呼ばれるようになったように思う。


No.818 8点 時間の砂
シドニー・シェルダン
(2010/07/25 21:52登録)
シドニー・シェルダンはアメリカの作家でありながら、作中の舞台をアメリカに固定せず、南アフリカやスペイン、ヨーロッパ諸国と実に多彩だったように思う。当時はアメリカでさえ小説の舞台として馴染みの薄い国だったので気にならなかったが、数多の海外作品を読んだ今振り返ってみると再認識させられる。

前にも述べたがシドニー・シェルダンの描く世界は当時高校生の私には全てが未知であり、全てが新鮮に映った。冒頭の牛追い祭の荒々しい始まりから、静謐な修道院での生活へと動から静へ移る物語の運び方は話の抑揚のつけ方としては抜群であるし、今読んでも引っ張り込まれるだろう。
本作でスペインの複雑な民族事情を知ったのはまさに幸運だったと云える。その後の人生で折に触れ、このバスク地方とスペイン政府との抗争に触れる機会があり、この本を読んだことが予備知識となり、理解が早かったからだ。知的好奇心に満ちていた高校生の頃に読んだというのもまた最良の時期だったと思う。


No.817 8点 明日があるなら
シドニー・シェルダン
(2010/07/24 13:44登録)
本書を読んでもう20年近く経つのに未だにこの主人公の名前は覚えている。トレイシー・ホイットニーというのがその名前なのだが、読んだ当初は何かの冗談かと思った。
というのも中学生の頃から邦楽よりも洋楽に傾倒していた私は『ベスト・ヒットUSA』や地方番組『ナイト・ジャック・フクオカ』、そしてFMラジオを貪り聴き、洋楽に没頭していた。そして当時2大黒人女性歌手が有名で、片方は今でも知名度が高いホイットニー・ヒューストン。そしてもう1人はトレーシー・チャップマンというアコースティック系のアーティストがいたのだ。作者はこの2人の名前を組み合わせたのかしらと読中そればかりが頭を駆け巡っていた。

でも本作に挙げられていた詐欺には首肯しがたいものがあった。
確か豪華客船で行われる世界一のチェスの名人2人とトレイシーが対決するシーンがあったと思うが、あのトリックにはどう考えても無理があるだろう。ネタバレになるので詳細は省くが、同じ船上にいる客が移動しないとでも思っているのだろうかとだけ苦言を呈しておこう。
また確か本書であったと思うが、最新鋭の計算機の売り込みで大金をせしめるという詐欺があったが、あれも少し考えれば気づくはずである。実際私はそのトリックに途中で気づいた。ネットがない時代とはいえ、少し調べれば解るはずである。
その点が私をして満点を与えることができない理由になっているのだが、それでもやはりトータル的には面白く、もうこの作家、一生ついていくぞ!とまで決意した。

そして数年後テレビでアメリカドラマ版が放映された。作中で絶世の美女のように描かれていたトレイシーをどんな女優が演じるのかと期待パンパンに膨らまして観た思春期の私はその普通っぷりにかなり失望した。いや、美人ではあるのだが、ごく普通の美人だったのだ。シドニー・シェルダンの描く美人の容貌の描写は思春期の私には想像を絶する美女の競演のように想像が膨らんだ。これも彼の功罪の1つといえる。


No.816 10点 ゲームの達人
シドニー・シェルダン
(2010/07/23 22:24登録)
本作について、現在30歳以上の方々をおいて知らぬ人はいないだろう。『ゲームの達人』という煽情的なタイトルは当時ゲームっ子だった私を刺激したが、表紙を見るに、どうも自分が想定しているような、ハドソンの高橋名人のような1秒間に16連射できるシューティングゲームの達人といった内容でないことは子供心でも解った。したがって毎週この本売れているようだけど、どんな本なんだろう?と思っていたにすぎなかった。
本書を手に取るきっかけは高校の同級生の勧めだった。

とにかくすごく面白かった。小説とはこういう物を指すのかと初めて意識した作品だったように思う。
親子4代に渡る大会社経営者の波乱万丈人生の顛末は普通の人生を生きてきた自分にとって想像を超えた世界だったし、ジェイミーがなんども窮地に陥りながらも、とうとうダイヤモンドの原石を見つけ出し、その後手ひどい裏切りを受けながらも、会社を設立するまでの苦難の数々にアメリカン・ドリームを見、またそれが単に「棚ぼた」でなしえる物でなく、九死に一生を得るほどの苦難を乗り越えないと成功は手に入れられないことを知った。
またその娘ケイトが物語の中心となるが、その気性の激しさに女性の恐ろしさを、さらには彼女の孫娘達をシェルダンがまばゆいばかりの美貌で描写するがために、どれほどの美人なのかと想像も掻き立てられた。そして私にとっては少々、いやかなりハードな濡れ場の描写に思春期特有の興奮を覚えたものだ。
またケイトの会社が社会的成功を収め、着実に帝国を築いていきながらも、家族の関係は常に泥沼であり、志半ばで斃れる者も数多あり、本当の幸せとは一体なんなのだろうかと考えさせられもした。

このようにこの小説は私にとって小説を読むことを多面的に教えてくれた作品だった。この本はその後、うちの家族の中でも回し読みされ、普段本を読まない弟さえも手に取り、2人で色々内容について話し合った記憶がある。こんな小説は本当に珍しい。


No.815 8点 海外ミステリ・ジャンルベスト100
事典・ガイド
(2010/07/21 22:51登録)
私がミステリの門戸を開いたばかりに読んだガイドブックの1つ。
今読むと非常にオーソドックスな内容で可もなく不可もなくといった内容だが、当時はどれもこれもが魅力的でまだ見ぬミステリの世界に狂喜したものだ。

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