大富豪殺人事件 エラリイ・クイーン |
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作家 | エラリイ・クイーン |
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出版日 | 1979年09月 |
平均点 | 3.33点 |
書評数 | 3人 |
No.3 | 4点 | 虫暮部 | |
(2021/04/01 10:42登録) 表題作。犯人は、忘れ物を回収しようとして、却ってソレが手掛かりだと教えてしまった。 「ペントハウスの謎」。中国人が登場するのは、ノックスの十戒に対する諧謔? 文庫版解説は面白かった。 |
No.2 | 3点 | クリスティ再読 | |
(2020/11/25 09:20登録) 中編2作を収録なんだけど、最初の「大富豪殺人事件(殺された百万長者の冒険)」は、クイーンの名前をミステリファン以外にも有名にしたラジオドラマ・シリーズ「エラリー・クイーンの冒険」の初回放送に当たる台本を、ノベライゼーションしたものである。ラジオ台本はダネイ&リーで書かれたものだけど、ノベライゼーションは別人の手になるもののようだ。「推理の芸術」によると「匿名のライターによって、読むのがつらくなるような子供向きの散文小説に書き換えられ」と文章が酷評されている。まあ訳文だとらしくなく薄口の印象。この60分のラジオドラマでは「視聴者への挑戦」があって、ドラマを止めて当初は有名人(リリアン・ヘルマンとか写真家のバーク・ホワイトとか)をスタジオに読んで推理させていたそうだ...けど、このノベライゼーションでは「読者への挑戦」は入っていない。エラリーの推理(正解)も大したものじゃないしね....ラジオドラマでも駄作の方だろうけども、第1作、というのがあってのノベライゼーションなんだろうか。 で「ペントハウスの謎」はこのラジオシリーズが成功したことで、映画にクイーンが再進出したコロンビア映画のシリーズの第2作を、やはりノベライゼーションしたもの。第1作が「ニッポン樫鳥」が一応原作だったが、これはとくに原作なし。オリジナルのスパイ小説風スリラーのシナリオに、最後にラジオドラマの「三つの掻き傷」(ノベライゼーション・録音ともにないそうだ)をエラリイの推理として加えたものだそうだ。まあ確かに、小粒だけど推理自体はクイーンらしさはないわけでもないか。でも、日中戦争での国民政府を応援するアメリカの立場を背景にしたスリラーの筋立てには、クイーンはまったく関係していないようだし、ノベライゼーションにも無関係のようだ。 ヒロインのニッキー・ポーターが不愉快なバカ娘。エラリイの足を引っ張ってばかりのような印象。ダネイが回想して「どの一作をとっても、残りのどの作よりもおぞましい」と評した映画シリーズだったようだ。 まあだから、一応ダネイとリーが両方とも関与はしているけども「クイーンの基準」を満たしているとも言い難いようにも思う。「恐怖の研究」レベルと見た方がいいだろうね。 興味本位だがこのシリーズの映画題名を列挙しておこう。「名探偵EQ」「EQのペントハウスの謎」「EQと完全犯罪」「EQと殺人の輪」「EQ危機一髪」「EQ絶体絶命」「EQ対スパイ組織」の7作作られた。 |
No.1 | 3点 | Tetchy | |
(2010/08/20 22:11登録) ※ネタバレあり 表題作は大富豪の被害妄想が現実になって殺人事件に発展するという趣向を取ったのだろうが、非常にオーソドックスな内容になっている。明かされる犯人は実は怪しいと思っていた人物だが、その動機―遺言執行人報酬として得られる1000万ドルのうち1%の10万ドルを狙ったもの―は確かに今までにないものだろうが、犯人の背景にお金に困っているという叙述が全くないだけに唐突な感じを受ける。辛辣になるが単純に法律の知識を活かした作者の自己満足に終わっていると云えない訳もない。 もう1編の「ペントハウスの謎」は創元推理文庫の『エラリー・クイーンの事件簿Ⅰ』で既読。 元々この作品は買う予定ではなかった。表題作は創元推理文庫の『エラリー・クイーンの事件簿Ⅱ』に収録されているが長らく絶版状態だったので手に入れた次第。 内容的には薄味だったので本書がクイーンファンにとってマスト・バイであるとは正直お勧めできない。とはいえ、ここはこの作品を絶版にせずに今なお目録にその名を留め、書店の棚に収めている早川書房の志を敢えて褒めるべきだろう。 |