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ミステリの祭典

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八二一さんの登録情報
平均点:5.76点 書評数:397件

プロフィール| 書評

No.277 6点 われらのゲーム
ジョン・ル・カレ
(2022/12/09 20:18登録)
スマイリーを彷彿とさせる退役スパイが、彼がリクルートし手塩にかけて育て上げたジョー、すなわちエージェントの危機を察知して、その痕跡を追うというもの。ラリーという存在が、クランマーの分身のようで、極めて内省的な印象を与える。
一語の無駄もない尋問シーン、濃密なプロットと、どれをとってもル・カレ・ワールド健在。


No.276 7点 ハイペリオン
ダン・シモンズ
(2022/11/19 20:27登録)
質、量ともに圧倒的な小説。司祭、軍人、詩人、学者、僧侶、私立探偵、外交官からなる巡礼団が、道中それぞれの物語を語るという、カンタベリー風物語の設定が魅力的。
語り手の個性に合わせ、秘境もの、冒険活劇調、ハードボイルド調、喜劇風などスタイルを使い分け、物語に変化を与えている。


No.275 5点 哄う北斎
望月諒子
(2022/11/19 20:19登録)
美術商、新進実業家、美術史学者、社会学者からCIAに至るまで、腹に一物も二物もある連中が欲にまみれた頭脳戦を繰り広げる。登場人物が多い上に各自の目論見が入り乱れるかなり複雑な物語だが、老境にたった一年だけ天下を取った絵師として北斎を解釈するくだりがユニーク。


No.274 6点 湖は餓えて煙る
ブライアン・グルーリー
(2022/11/19 20:13登録)
題材はアイスホッケー。忌々しい犯罪を描いているが、瑞々しさを堪えた青春小説であるとともに、挫折を味わった主人公の再生の物語でもある。
重層的な物語の読み応えと、間奏曲のように挟まれる主人公の少年時代の回想が感動的。


No.273 6点 千尋の闇
ロバート・ゴダード
(2022/11/07 20:46登録)
回顧録をたどって過去の事件や謎を追求するというのは、珍しくもない設定であるし、特にミステリ的要素が強いわけではないのだが、登場人物の造形の確かさや語り口がうまいので、一気に上下二冊読めてしまう。


No.272 4点 ストーン・ダンサー
マレー・スミス
(2022/11/07 20:44登録)
各国の諜報機関に加えて、マフィアまで巻き込むスケールの雄大な話ではあるのだが、冗長な描写がサスペンスに歯止めをかけてしまっているのが残念。


No.271 7点 偽りの契り
スティーヴン・グリーンリーフ
(2022/11/07 20:41登録)
人工授精という現代的な問題をテーマに、その裏にうごめく、金銭欲や体面に目にくらんだ人々の生きざまを巧みに描き分けられている。


No.270 5点 賛美せよ、と成功は言った
石持浅海
(2022/10/25 20:10登録)
優佳たちが集まった祝賀会で撲殺事件が起きた。事件は皆の目の前で発生し、撲殺犯も明確に特定されている。
つまりは、ミステリとしてフーダニット興味もハウダニット興味もない状況なのだが、そこから緊迫した推理劇を紡ぎだす手腕は大したもの。


No.269 4点 オーパーツ 死を招く至宝
蒼井碧
(2022/10/25 20:07登録)
トンチが効いた作品集で、当時は制御不能だったはずの古代の工芸品がモチーフ。第一話での密室の十三髑髏の処理は最高。しかしそれ以外は...


No.268 5点 金木犀と彼女の時間
彩坂美月
(2022/10/25 20:03登録)
同じ時間を繰り返して生きてしまう女子高生の物語。特定の一時間が五回繰り返されるという彼女の特殊状況を巧みに操り、男子生徒の死を防ごうとするヒロインの奮闘を、その世代の生々しい毒の部分も含めて、瑞々しくかつ意外性に富んだサスペンスに仕上げている。


No.267 8点 葬式組曲
天祢涼
(2022/10/09 20:48登録)
葬式が廃れた未来の日本を舞台に、鋭い論理のアクロバットが炸裂。
最終話の推理合戦は圧巻。


No.266 6点 ビースト
ピーター・ベンチリー
(2022/10/09 20:47登録)
凶暴な深海の巨大生物と人間の接近遭遇を、怪物側の視点も交えて描くことで、侵略SFホラー風の味わいを出している。
UMAしょうせつとしても、よく書き込まれている部類だろう。


No.265 5点 バーニング・ワイヤー
ジェフリー・ディーヴァー
(2022/10/09 20:44登録)
電力網を巡るディテールが今の日本の電力事情を連想させる。
目的のためなら手段を選ばないというのが作者らしいが、手段の規模が動機に合っていない。


No.264 4点 チャイナ・レイク再び
アンソニー・ハイド
(2022/09/24 20:14登録)
語り口が悠揚として重く、サスペンス・ストーリーに重要なリズム感に欠けるのが大きな難点。
もつれ合った人間関係が少しずつ解明されて、結末に到達するのだが、人間相互の葛藤や解き明かされる謎の意外性など描き尽くされているとは言い難い。


No.263 7点 粘膜蜥蜴
飴村行
(2022/09/24 20:09登録)
露悪趣味に辟易しつつも、軍国ワールドと密林の冒険譚に仕掛けられた伏線が昇華する愛の衝撃に呆然。
広義のミステリの境界線上の一歩外側を歩みながら、愛をテーマとし、その対象が明かされる瞬間がミステリとして素晴らしい。


No.262 4点 暗号名シルク・ストーム
レイモンド・タイラー
(2022/09/24 20:06登録)
東京を舞台にしたCIA、公安、暴力団の三つ巴の争いを中心に、日本の暗部を描いた小説。
作者は、アメリカ情報部員の一人として活躍した人物らしいが、こうした小説に共通しているように、人物の描き方が不十分であり、本書でも努力の跡が見えるのだが、かえって不器用さを目立たせる結果に終わっている。


No.261 6点 密偵ファルコ/白銀の誓い
リンゼイ・デイヴィス
(2022/09/06 20:42登録)
ブリタニア(現在のイギリス)の銀鉱山に鉱山奴隷として潜り込んで、銀のインゴット横領事件を暴こうとする。犯人捜しや謎解き、クライマックスの活劇シーン、身分違いのロマンスなどさまざまな要素が盛り込まれている。
古代ローマ時代を舞台にする歴史ものという枠の中で、それらの要素が絶妙に絡まりユニークな効果を上げている。


No.260 8点 第四の扉
ポール・アルテ
(2022/09/06 20:38登録)
会話主体で物語が進行するので、人物造形に深みはないが、軽いタッチで非常に読みやすい。分量も軽量級だが、短い中に不可能趣味と怪奇趣味がぎっしり詰まっていて、贅沢な印象を受ける。
終盤における転調は、少々やりすぎの感もあるが、どうせなら「最後の一撃」も盛り込んでやろうという作者のサービス精神のなせる業であり、そういった部分での現代的センスが、日本の新本格とも共通している。


No.259 5点 霧と雪
マイケル・イネス
(2022/09/06 20:34登録)
のんびりした序盤、何が焦点なのかわからない中盤を経て、怒涛の多重解決が待ち受ける終盤に圧倒された。真相の意外性のひねくれ方に唖然。


No.258 8点 都市と都市
チャイナ・ミエヴィル
(2022/08/22 20:27登録)
殺人事件は、社会体制の異なる二つの都市国家にまたがる形で発生する。市民らは互いに相手が存在しないものとしてふるまうことが義務付けられていて、それを「ブリーチ」という謎の組織が監視している。この二重都市という特殊な舞台設定に、SFとミステリの双方向から挑んでいる。

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