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ミステリの祭典

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八二一さんの登録情報
平均点:5.75点 書評数:411件

プロフィール| 書評

No.291 6点 死にゆく者への祈り
ジャック・ヒギンズ
(2023/02/20 19:18登録)
アイルランド独立闘争に加わる主人公が誤って子供たちを乗せたバスを爆破する。その罪の意識からテロ活動を離脱する。
北国の暗い空の下で展開する知識人の悲劇が巧みなサスペンスで描かれる。
行動小説に近いが、ミステリとしての味わいも深い。


No.290 5点 沙高樓綺譚
浅田次郎
(2023/02/20 19:15登録)
高級マンションの最上階、女装の主人のサロンに集まった各界名士が、秘話を語る。刀剣鑑定を巡る「小鍛冶」はじめ、会衆がとっておきの怪談を披露する「百物語」形式で進む連作短編集。
撮影所時代の映画界やガーデニング、任侠道と舞台は多彩で楽しめる。


No.289 5点 マザーズ・デイ
パトリシア・マクドナルド
(2023/02/20 19:12登録)
前半は、TVのホームドラマのようであり、実母と養母の葛藤もあまり新味がない。だが、中盤になって連続して殺人事件が起こり、単純な家庭悲劇めいた状況が、にわかにミステリアスな雰囲気に変わっていくあたりから、やっと面白くなってくる。
いったんは心の離れたカレンとジェニーの親子関係が、家庭崩壊の寸前で再び絆を取り戻し、ともに逆境に立ち向かっていく様子は、女性の作者ならではのきめ細やかさと温かさで描かれている。意外な犯人だが、ラストまでいかず明らかにしてしまうのは惜しい気がする。


No.288 5点 ゴースト≠ノイズ(リダクション)
十市社
(2023/02/01 20:13登録)
平凡な高校生活の周辺で起こる残忍な事件。主人公を取り巻く異様な状況。それらを描く端正な文章から生じる、不協和音。
読者は確かな手応えとともに「読み間違えているかもしれない」という爽快な不安を耳元に感じ続けるでしょう。


No.287 4点 ベルリン強攻突破
ダン・フランク&ジャン・ヴォートラン
(2023/02/01 20:10登録)
前半はユーモラスな人物紹介に費やし、後半で冒険活劇を交えたサスペンスタッチに移行していくのだが、全体の気分は良質のコメディに近い。ミステリ的興味はかなり異質ではあるが、楽しみは味わえる。


No.286 5点 白骨の処女
森下雨村
(2023/02/01 20:04登録)
凶悪な犯行、怪しい人影、連続する恐怖。時間との勝負であるはずが、読者の微笑を誘う大人の余裕が全編に漂う。何より二人の探偵役が、所々で推理談議に花を咲かす姿が、まるでデートのようで楽しそう。


No.285 7点 オックスフォード連続殺人
ギジェルモ・マルティネス
(2023/01/16 20:25登録)
事件そのものは、こじんまりとしているが、トリッキーな真相が語られるほどに世界の異様さが際立ってくる。
幻想的で長広舌の魅力もあり、独特な切れ味も楽しめる。


No.284 6点 アルファベット・ハウス
ユッシ・エーズラ・オールスン
(2023/01/16 20:23登録)
英国軍の兵士がナチの将校に成りすますことなど不可能に思われるが、作者の手つきは用意周到で、サスペンスを強く醸し出す。
戦争と友情と愛憎を主題にし、冷徹な現実認識に裏打ちされた興奮と感動の物語となっている。


No.283 4点 黒い賛美歌
デヴィッド・ウィルツ
(2023/01/16 20:19登録)
ベッカーシリーズ第四作。受刑者たちの奇妙な日常生活、権力にすり寄るFBI高官、選挙民に対する下院議員の欺瞞、インチキ宗教団体の実態、洞窟探検など、様々なテーマを盛り込んでサービスしてくれるが、主人公が犯人を追い込んでいくプロセスに説得力を欠く。


No.282 6点 疑り屋のトマス
ロバート・リーヴズ
(2022/12/29 20:40登録)
酒好き、競馬好き、女好きの大学教授トマス・セロン。競馬会の腐敗をめぐる本筋よりも、むしろトマス氏自身の人生模様の方に、興味を掻き立てられた。皮肉なかる軽口ばかり叩きながら事件に巻き込まれてあたふたする姿につい笑ってしまう。


No.281 9点 赤い収穫
ダシール・ハメット
(2022/12/29 20:36登録)
総勢十七名もの人が殺されるこの作品は、極力心理描写を排し、ひたすら行動だけを描こうとする。そのハードボイルドぶりと、世界を不条理と見る観点が徹底している。まさにスリラーの極北。


No.280 6点 脅迫された管制システム
リー・グルーエンフェルド
(2022/12/29 20:32登録)
濃密な管制システムをめぐる攻防の描写といい、ヴェトナム空戦史を交えた航空情報の微細にわたる叙述から個性的な人物造形に至るまで、極めて丹念に練り上げらられた作品に仕上がっている。


No.279 6点 幸運を招く男
レジナルド・ヒル
(2022/12/09 20:24登録)
事件を幸運で解決するユニークな探偵の設定、人種問題をさりげなく扱う現代性、そして計算し尽くしたプロットの展開、どれをとっても名人芸。


No.278 4点 メアリー、メアリー
エド・マクベイン
(2022/12/09 20:22登録)
法廷ミステリのジャンルに属し、弁護士側と検事側の論争テクニックが本書の中心になっている。題材はいささか新鮮さに欠け、結末も早い段階で予想がつくが、ストーリー展開は軽快で楽しく読み進められる。


No.277 6点 われらのゲーム
ジョン・ル・カレ
(2022/12/09 20:18登録)
スマイリーを彷彿とさせる退役スパイが、彼がリクルートし手塩にかけて育て上げたジョー、すなわちエージェントの危機を察知して、その痕跡を追うというもの。ラリーという存在が、クランマーの分身のようで、極めて内省的な印象を与える。
一語の無駄もない尋問シーン、濃密なプロットと、どれをとってもル・カレ・ワールド健在。


No.276 7点 ハイペリオン
ダン・シモンズ
(2022/11/19 20:27登録)
質、量ともに圧倒的な小説。司祭、軍人、詩人、学者、僧侶、私立探偵、外交官からなる巡礼団が、道中それぞれの物語を語るという、カンタベリー風物語の設定が魅力的。
語り手の個性に合わせ、秘境もの、冒険活劇調、ハードボイルド調、喜劇風などスタイルを使い分け、物語に変化を与えている。


No.275 5点 哄う北斎
望月諒子
(2022/11/19 20:19登録)
美術商、新進実業家、美術史学者、社会学者からCIAに至るまで、腹に一物も二物もある連中が欲にまみれた頭脳戦を繰り広げる。登場人物が多い上に各自の目論見が入り乱れるかなり複雑な物語だが、老境にたった一年だけ天下を取った絵師として北斎を解釈するくだりがユニーク。


No.274 6点 湖は餓えて煙る
ブライアン・グルーリー
(2022/11/19 20:13登録)
題材はアイスホッケー。忌々しい犯罪を描いているが、瑞々しさを堪えた青春小説であるとともに、挫折を味わった主人公の再生の物語でもある。
重層的な物語の読み応えと、間奏曲のように挟まれる主人公の少年時代の回想が感動的。


No.273 6点 千尋の闇
ロバート・ゴダード
(2022/11/07 20:46登録)
回顧録をたどって過去の事件や謎を追求するというのは、珍しくもない設定であるし、特にミステリ的要素が強いわけではないのだが、登場人物の造形の確かさや語り口がうまいので、一気に上下二冊読めてしまう。


No.272 4点 ストーン・ダンサー
マレー・スミス
(2022/11/07 20:44登録)
各国の諜報機関に加えて、マフィアまで巻き込むスケールの雄大な話ではあるのだが、冗長な描写がサスペンスに歯止めをかけてしまっているのが残念。

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