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ミステリの祭典

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八二一さんの登録情報
平均点:5.76点 書評数:425件

プロフィール| 書評

No.425 6点 悪魔が目をとじるまで
デイヴィッド・リンジー
(2025/08/14 16:03登録)
父親譲りの刑事根性に燃える殺人課の女性刑事パーマの造形から、ユング心理学を縦横に駆使した犯人像の描き方、さらには事件の舞台となるヒューストンの上流社会の捉え方が優れた倒錯心理もの。


No.424 5点 教祖の作りかた
真梨幸子
(2025/08/14 15:57登録)
世の中は矛盾だらけ。この矛盾がまた新たな恐怖を生む。
過剰な愛と歪んだ正義ほど恐ろしいものはない。イヤミスの女王が禁断の領域に踏み込んだエンタメ性が高い作品。


No.423 7点 ゴメスの名はゴメス
結城昌治
(2025/07/27 19:25登録)
六〇年代初めの南ベトナムの不安定の政治情勢の中で失踪した商社の社員を追う物語。
人間に対する鋭い洞察力を持つ者が錯綜する政治結社同士の熾烈なスパイ戦争に巻き込まれる。複雑な政治のメカニズムを捉えるばかりでなく、理想と現実に引き裂かれる人間の混沌とした欲望を象徴的にすくい上げている。


No.422 7点 スカイジャック
トニー・ケンリック
(2025/07/27 19:22登録)
元夫婦の弁護士のベレッカーと秘書のアニーが活躍するドタバタスリラー。
ジャンボジェット機が乗客とともに消えてしまった事件を依頼され、捜査に乗り出すことになる。秘書のアニーは、おかしなへまばかりやるのが笑わせる。飛行機と乗客消失のトリックもなかなか巧みなものがあるユーモアミステリ。


No.421 5点 丸太町ルヴォワール
円居挽
(2025/07/10 20:06登録)
論理や証拠だけではなく、空気をコントロールしたり根回しすることも、「判決」に影響する。
現代社会における「世論」が判決に影響するような状況の隠喩であると解釈できる。


No.420 5点 作者の死
ギルバート・アデア
(2025/07/10 20:04登録)
意表をついた知的ミステリとして興趣をそそる。
ディコンストラクショニズムを地でいく展開なので、特に文学論が好きな人におすすめしたい。


No.419 5点 マイ・リトル・ヒーロー
冲方丁
(2025/06/26 20:15登録)
事故で意識不明となりオンラインゲームの世界に閉じ込められた息子を救うため、父親を始め周囲の人が奮闘する。
外には根っからの悪人をあえて描かない優しい世界、ゲーム内では派手なアクション、どちらも気持ちよく読める。


No.418 5点 七人の使者
ディーノ・ブッツアーティ
(2025/06/26 20:10登録)
ゼノンのパラドックスを思わせる表題作をはじめとし、健康であるのに死者にされてしまった男の不条理な苦悩を語った「七階」、状況の迷宮性を描いた「道路開通式」など全十六編。オチのきいたストーリー好きにおすすめ。


No.417 7点 絡新婦の理
京極夏彦
(2025/06/09 20:12登録)
一つの女系家族を中心に捉え、複数のサブプロットがさながら蜘蛛の網のような幾何学的美しさで編まれている。
メインプロットはクイーンを彷彿とさせ、ラストは幻想的で美しい。


No.416 5点 ミステリークラブ
霞流一
(2025/06/09 20:09登録)
空飛ぶ巨大な蟹の爪、蟹に切断された死体と、蟹づくしの連続殺人に紅門は挑む。
作者が愛好するあるトリックが視覚的美しさを漂わせて冴える。


No.415 7点 人間の手がまだ触れない
ロバート・シェクリイ
(2025/05/22 20:05登録)
現実というものが、実はそこに生きる人間の環境や心理構造が織り成す相対的なものにすぎぬことを、奇抜なアイデアと形而上学ウィットを交えて語った短編集。


No.414 6点 ドクター・アダー
K・W・ジーター
(2025/05/22 20:01登録)
客の好みに合わせてフリークスの売春婦を外科手術で創造する男が物語の主要人物のひとり。
未来のロサンゼルス、電脳空間への侵入、ヴァイオレンスとエロティシズムなどパンクな世界を描いて、サイバーパンクを先取りした危険なカルトSF。


No.413 7点 奇術師
クリストファー・プリースト
(2025/04/30 20:19登録)
瞬間移動イリュージョンを持ちネタにする高名なマジシャン二人の確執と虚々実々の駆け引きがメインとなり、主な舞台はヴィクトリア朝英国。
二コラ・テスラも登場する一種の歴史ミステリだが、瞬間移動ネタの仕掛けではアッと驚く奇想が炸裂、ラストの種明かしには、思わず茫然とすること請け合い。


No.412 7点 ディスコ探偵水曜日
舞城王太郎
(2025/04/30 20:16登録)
名探偵たちによる謎解き合戦が世にも奇妙な時間、空間、宇宙論を超えて、壮絶なクライマックスに至る。
「名探偵」なる存在を意識することが作品をSFに向かわせる。ひどく奇妙に感じられるが、実は必然なのかもしれない。


No.411 5点 口に出せない習慣、奇妙な行為
ドナルド・バーセルミ
(2025/04/08 21:30登録)
ポストモダンな状況にあって、都市生活を営む人々の個人的幻想はいかなる形をとるか。その答えの端緒を従来の幻想の解体と再構築を通して示してくれる短編集。


No.410 5点
スワヴォーミル・ムロージェック
(2025/04/08 21:26登録)
出世主義者の動物園長が、ゴム風船で偽物の象を作ったことから起こるスラップスティックを語った表題作ほか、いずれも奇抜なアイデアをグロテスクな幻想的手法を用いて描いたシュールなマッド小説。


No.409 7点 女囮捜査官 2 視姦
山田正紀
(2025/03/20 20:30登録)
首都高の各所で発見されるバラバラ死体。ハイテンションな導入から不可能状況の提示まで間然するところのない緊密なプロットが見事。意外な犯人ものとしても秀逸。


No.408 6点 死のオブジェ
キャロル・オコンネル
(2025/03/20 20:28登録)
画廊で起きたアーティスト殺しは、12年前にマーゴヴィッツが追っていた猟奇殺人と繋がっているのか。
ニューヨークのアート界という伏魔殿が産んだ歪んだ愛憎と意外な動機が光る作品。


No.407 6点 ばくうどの悪夢
澤村伊智
(2025/02/26 20:17登録)
創作において取り扱いが難しいとされる「夢オチ」を巧みに織り交ぜる展開は、読者がまさに「ばくうど」の術中にいるかのような没入感を生み出す。まんまと騙された。


No.406 5点 踏切の幽霊
高野和明
(2025/02/26 20:15登録)
夜中の一時三分に鳴る電話。ただでさえ、なんでこんな時間にと怖いのに、幽霊からだったら。
ぞくぞくする心霊話と、社会派ミステリが融合したようなストーリーに震える。下北沢の踏切で亡くなった「彼女」は一体何者で、なぜ殺されたのか。ラストがひたすら切ない。

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