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ミステリの祭典

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八二一さんの登録情報
平均点:5.76点 書評数:397件

プロフィール| 書評

No.397 7点 喜劇悲奇劇
泡坂妻夫
(2024/11/14 20:00登録)
全章題が回文、それ以外にも回文が大量投入され、殺人自体も回文との関連が強いという、言葉遊びに凝った作品である。しかもミステリとしても伏線などの見所がたっぷり。


No.396 6点 レイチェル
ダフネ・デュ・モーリア
(2024/11/14 19:57登録)
一人の人間の死後、二人の男女が故人の呪縛から逃れられず、愛と憎しみの葛藤に苛まれる心理サスペンス。
皮肉な幕切れで読者を突き放す一方、切々たる余韻が残る。


No.395 5点 文字禍の館
倉阪鬼一郎
(2024/10/27 20:02登録)
ある謎めいた私設ミュージアムに招待されたオカルト雑誌の編集者ら三人を襲う恐怖体験を描いているが、うねるようなタイポグラフィは、「文字そのものが孕む恐怖」を読者に体感させるに十分である。
作者のバカミス路線の作品群に通じるような趣向が用意されているのも興味深い。


No.394 5点 犬笛
西村寿行
(2024/10/27 19:57登録)
巨大組織に誘拐された七歳の娘を追って、日本中を駆け巡る父親と愛犬の物語。
あらすじ的にはかなり無理があるが、娘と愛犬に向けた想いの強さと彼らを取り巻き援助する人々の人情に、固いことを言うのは野暮な気になる。


No.393 5点 裂けた明日
佐々木譲
(2024/10/05 20:29登録)
内乱が起きたため国土が分断され移動が困難になった日本で、一人の男が見知らぬ母子を助けるために長い旅をする物語。
現在進行形の戦争と重なる部分もあり、脱出行はスリリングだが内戦の経緯をもう少し詳しく語って欲しかった。


No.392 2点 走馬灯交差点
西澤保彦
(2024/10/05 20:26登録)
人格転移に関わる特殊な体質を持つ一族をめぐるややこしい殺人事件の連鎖を描くが、同種の設定を用いた「人格転移の殺人」に比べると、緊密なロジックによる解決というよりドタバタ感が強い。


No.391 8点 サン・フォリアン寺院の首吊人
ジョルジュ・シムノン
(2024/09/15 20:15登録)
駅の待合室で見かけた不審な男を追跡したメグレは、男の拳銃自殺を図る場面を目撃する。男が大事そうに抱えていた鞄に入っていたのは古着のみだった。
登場人物の心理を鋭く捉える筆致に酔いつつ、深い余韻を残す幕切れにため息が漏れる。


No.390 7点 暗殺者グレイマン
マーク・グリーニー
(2024/09/15 20:12登録)
囚われた依頼主と双子の孫たちを救うべく、仕事先のシリアからフランスに急行する暗殺者グレイマンに次々と刺客が。
連続する闘いの熱と知恵と凄味に魅了され、さらに空中水中雪中など戦場の多様性に目を奪われ、五百ページ超を一気読みすること必至。


No.389 8点 サマー・アポカリプス
笠井潔
(2024/08/25 20:45登録)
矢吹駆シリーズの第二作。
複数のトリックが惜しげもなく使われ、推理していくプロセス、手掛かりの与え方、登場人物の行動を想像したりするところなどは、見事としか言いようがない。思わず発想の虚を衝かれるような巧いトリックもある。


No.388 5点 WALL
周木律
(2024/08/25 20:42登録)
人の肉体だけを消失させる謎の壁が北海道から徐々に日本を南下してくる。
筋立ては王道だが、壁が迫るスピード設定が絶妙なのをはじめ、壁のメカニズムや回避方法など、随所にSF的な説明があり、懐かしいパニックSFとして楽しめる。


No.387 10点 日本沈没
小松左京
(2024/08/02 21:01登録)
日本列島が文字通り海中に没するという、そのセンセーショナルな題材と、それを支えるリアリティあふれる筆致に圧倒される。
当時としては最先端の科学知識に、豊かな想像力で生み出されたSF的な設定、そして大破壊を描きつつ、なおも綴られる日本を愛し自然を慈しむ叙情性。今もって力を失わない傑作。


No.386 6点 妖盗S79号
泡坂妻夫
(2024/08/02 20:53登録)
妖盗S79号が関与した事件を描いた連作短編で、基本的にはユーモア路線を取りつつ、次第にシリアスに傾き、遂には妖盗S79号の正体が明かされて驚くという、連作通しての仕掛けがお見事。


No.385 7点 白昼堂々
結城昌治
(2024/08/02 20:48登録)
全国をまたにかけた集団窃盗団と刑事たちとの駆け引きを実にユーモラスに、時にはハラハラさせながら描き、ラストで思わず爆笑してしまう。軽ハードボイルドの傑作。


No.384 6点 竜血の山
岩井圭也
(2024/07/12 20:34登録)
水銀鉱山で働く一族の物語だが、殺人、家族の秘密、策謀、隠蔽、露頭などを捻りをきかせて劇的に物語る。
鮮やかな人物描写、堅牢なプロット、時代を捉える鋭い観察力、そして象徴にむかう力強い作風など長所が多々ある。


No.383 5点 食べると死ぬ花
芦花公園
(2024/07/12 20:30登録)
家庭に問題を抱えた人々の前に美しい男が現れ、贈り物を与えるという作者らしい邪悪な救済の物語。
次第にある一家・一族をめぐる物語へと拡大していく展開や男の正体など、宗教伝奇趣向も作者らしい。


No.382 6点 AX
伊坂幸太郎
(2024/06/21 20:42登録)
家族のために足を洗いたいと考えている殺し屋が主人公の連作短編集。
人間味あふれる登場人物、心をくすぐられる会話、予想外の展開とエンターテインメント性は高い。


No.381 8点 地雷グリコ
青崎有吾
(2024/06/21 20:40登録)
高校生同士の頭脳バトルが楽しめる連作短編集。だが、長編としても成立しており、ひとつの大きな物語としての魅力がある。
ゲームはどれも独創性があり、ロジカルに練り上げられている。また、高校生たちが生き生きと描かれており、青春小説としても上質である。


No.380 5点 砂男
ラーシュ・ケプレル
(2024/06/21 20:37登録)
閉鎖病棟に収容された史上最恐のシリアルキラーと誘拐事件をめぐるサスペンス。
大胆な趣向、意外な仕掛けに外連味のあるアクションと娯楽性を凝らしたつくりに圧倒された。


No.379 5点 書架の探偵
ジーン・ウルフ
(2024/06/02 20:30登録)
図書館同士の取り決めで海辺の小さな図書館に送られた主人公のミステリ作家スミスが、病に臥す女性の依頼で行方不明の夫を探す。
案件がほぼ片付いた後に、奇妙な展開をしていくが、それは唐突に途切れる。謎に満ちていて、ユーモラスでエロチックな一冊。


No.378 7点 秘密
ケイト・モートン
(2024/06/02 20:27登録)
ローレルが、死期が近づきつつある母親の過去の秘密を探る。現代パートを穏やかに描く一方、過去の戦中のパートを闊達に描いてコントラストをつけている。
物語は愛情、友情、誤解が交錯する。次第に明らかになる衝撃的な秘密。伏線の張り方も素晴らしい。

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