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ミステリの祭典

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了然和尚さんの登録情報
平均点:5.53点 書評数:116件

プロフィール| 書評

No.16 6点 震えない男
ジョン・ディクスン・カー
(2015/04/06 14:11登録)
本作の評価は2段返しの2段目の結論の評価によると思うのですが、十分本格として手がかりが示されており、私は好きです。(この採点ではネタバレありですが、さすがにこの結末は自重しておきます)なんか、シンプルな見取り図がついてるなとは思いましたが、重要な手掛かりでした。
大仕掛けの機械的トリックについてですが、トリックそのものよりフェル博士によって放火されて隠滅してしまうというのが、また私好みです。最近の小説やドラマは遵法精神が旺盛すぎて、このような暴挙は認められないとか言われそうですが。
難点を言えば、ポケミスは読みにくい! 2段で活字が小さくぼやけていて、苦戦しました。他の大御所に比べてカーの未文庫作品は多すぎるようです。本作も新訳、文庫版でもう一度読んでみたい。


No.15 6点 時間の習俗
松本清張
(2015/04/01 00:43登録)
松本清張の作品って、捜査側の人間が神がかり的な発想でトリックを見破っていくのが多いですね。本作も動機も背景もわからぬまま、ただアリバイが完全であるだけで容疑者にされます。犯人側が可哀想すぎます。女性同伴の男が殺害されますが、アリバイに協力したと思われる男性が死体で発見されます。実は同伴女性が女装男性で殺されていたという構図には震えるほど感動しました。どうせなら動機が男ー男ー男の三角関係なら、プラス2点でした。(昭和37年では斬新すぎか) 他の清張作品よりは手がかりが多く本格色が強いのですが、定期券の謎は、当時のカラープリント事情を知らないので無理ですよね、このように、清張作品は昭和時代の歴史小説的趣もあるので、読んでいて楽しいです。


No.14 7点 読者よ欺かるるなかれ
カーター・ディクスン
(2015/03/28 11:20登録)
本作品の骨格部分を検討すると、Aが過失によりBを殺してしまう。Xは犯人がAであることに気がつくが、Cを同じ方法で殺害することを目論む。Xは先に口封じでAを殺害し、Cを殺害(未遂)する。連続殺人であり口封じの殺人というありふれたモチーフが見事にアレンジされています。この骨格に怪奇趣味や不可能犯罪を組み入れて完全な作品になってます。手がかりはよく示されており、別解を消去すべく、おせっかいなまでな注意書きもついていて丁寧です。


No.13 5点 十日間の不思議
エラリイ・クイーン
(2015/03/25 13:54登録)
初読でしたが後期クイーン的問題とは、この作品を典型とする話なんですよね。クイーン探偵はあまりに無能で、本格推理としてはがっかりさせられますね、ミスディレクション談義をすれば、ミスディレクションは大きく2つに分けることができ、1つは作者が読者に仕掛けるもので、もう一つは作者が探偵をミスディレクションするというものです。後者は本格推理としては本作のようにふやけた内容になりがちかと思います。「ノックスの十戒」「ヴァン・ダインの二十則」に 探偵は間違った推理をして犯人に利用されてはいけない というのを追加してほしいものですね。また、本作ような曖昧な2段返しの結末は、実際の犯人は弟さんで(最後に実利を得ている)兄さんはうまく踊らされた とも言えてしまう(あるいはその弟を母か家政婦が躍らしたかも)となんでもありになってますね。


No.12 6点 フォックス家の殺人
エラリイ・クイーン
(2015/03/23 13:25登録)
空さんも書かれていますが、クリスティーの五匹の子豚と同一テーマで、読み比べるとクイーンの作風が出ていて勉強になります。水差しの手がかりが後出しに示され、本格推理としてどうかと思うのですが、同じタイミングで真相の手がかりも示されているので、本格を投げ出しているわけではないようです。結末にはいろいろ意見があるようですが、結局身内に真相を打ち明けるのは、その後の苦悶を考えると非情かと思います。
金田一耕助の礒川警部やDrフェルのハドリー警視のように、真相を聞いても「あっそう」で終わらしてくれる相棒がいれば、話が軽く収まってよかったのですが。


No.11 5点 ゼロ時間へ
アガサ・クリスティー
(2015/03/18 15:44登録)
犯罪の手がかりについては十分示されており、よく構成された本格ではあると思います。殺人未遂事件で凶器が殺人事件というかんじでしょうか。クリスティーは中期の作品以降、屍体が出てくるのは比較的遅いと思いますし、あとがきに書かれているほど特殊な構成ではないと思います。本作がポアロでないのは、女学校に行くような娘がいないからではないですか? しかし、そこまでして作った冤罪娘や、自殺未遂者の前振りは、思ったほど結末では効果が出ていないですね。


No.10 6点 テニスコートの謎
ジョン・ディクスン・カー
(2015/03/15 18:16登録)
不可思議な状況のトリックとしては、まあイマイチかなという感想があるのですが、なぜそのような状況に至ってしかるべきかという構成は、細かく構築されていて本格推理として、素晴らしい。(とでも言わなければ、殺されるものがわざわざ自分の首にロープをまかない)フェル博士にあれだけヒントを頂いても、私には犯人の見当はついても詳細は?でちょっと情けなかった。それにしても、70年前の作品で自動テニス練習ロボットとは、なんか怪奇屋敷並みに怖いぞ。


No.9 6点 靴に棲む老婆
エラリイ・クイーン
(2015/03/12 15:33登録)
探偵、警察の目の前で堂々と殺人が行われて、しかも犯人が不明というのは、なかなか良かったです。本作も犯人や裏事情は簡単に推測ができましたが、今のミステリにつながる王道といったとこなんでしょう。3人のきちがいと3人の正常な人なので、一人一殺のほうが良かったかも。


No.8 8点 五匹の子豚
アガサ・クリスティー
(2015/03/10 17:14登録)
最高の本格推理小説。16年前の事件について読者とポアロは同じ立場で同じものを見聞きする。5人の証言と手記の中から推理可能なパズルになっている。ただ、燻製ニシンの匂いが強すぎて、これは違うとわかっていながらも他の思考が止まってしまうのは我ながら情けない。このような見事な本格小説にもかかわらず、手がかりを探そうと読んでいると苦痛なまでに退屈である。(実際の警察官さんはこんな感じなのかなとか思ってしまう。)でも、ミステリーの1代表作として必読。


No.7 5点 夜光の階段
松本清張
(2015/03/05 20:39登録)
作者のいつものパターンの平均作といったところでしょうか。探偵役の人物が、ほとんど直感的にすべてを(過去を含めて)見通すのも、他の作品同様ですね。最後の50ページぐらいで、検察(公務員)が雑誌にネタを流して、あいまいに殺人を告発し、犯人側の名誉毀損の訴えを誘発しようとするのは、ちょっとワクワクしました。(ペリーメイソンっぽい) ま、結果は。。。 他の清張作品よりは、結末はしっかりしていると思いますが、冤罪者のその後も含めて、やっぱりすっきりしない。(これで、本当に無罪になれるの?)


No.6 3点 11文字の殺人
東野圭吾
(2015/03/01 11:12登録)
ミステリーのパターンとして、主人公推理作家のパートナーは臭いと、冒頭からマークしていたのですが。手がかりも示されておらず、推理としてはノーチャンスでした。
まあまあの、平凡作だと思うのですが、全事件の動機にあたる事件は不可解すぎて、がっかりです。この時期の作者は動機を捻ることに凝りすぎている気がします。単純な横恋慕で十分だったと思います。


No.5 7点 ベローナ・クラブの不愉快な事件
ドロシー・L・セイヤーズ
(2015/02/24 12:25登録)
デビュー作から順番に読んできましたが、これが一番面白かった。前半は手掛かりがよく示されていて本格度が高いが、簡単に推察できる内容だが、途中でトリック的なものが明かされる。その後別の真犯人を追求するという二層仕立で、楽しめた。後半が、手掛かり少なく安直に解決に向かうのはこの形式ではしょうがないのかな? 


No.4 6点 災厄の町
エラリイ・クイーン
(2015/02/18 14:17登録)
まあだいたい犯人とか妹の正体とか想像できてしまうし、最近の国産ミステリや2時間ドラマと同じ流れで、陳腐。かと思ったら、こっちが70年前の作品なので、皆さんこの辺りを読んで勉強されたんですね。本格好きには物足りませんが、3通の手紙を中心にうまく全体を組み立ててますよね。


No.3 6点 白昼の悪魔
アガサ・クリスティー
(2015/02/16 09:58登録)
クリスティーを再読していると、推理小説論的なことを断片的に論じているのが興味深いですね。本編では推理小説(犯罪)をジグソーパズルにたとえて、わざわざ各ピースを示してくれています。出来のいい推理小説は、組み立てた後の絵も素晴らしいですね。本作は、出来上がった絵は、まあまあといったとこでした。
 登場人物の本棚にカーの火刑法廷が置いてあったので、プラス1点。カー、クロフツ、クリスティーあたりは相互に良く探偵や、書籍がこそっと登場して嬉しくなります。


No.2 8点 緑のカプセルの謎
ジョン・ディクスン・カー
(2015/02/12 18:47登録)
 ちょっと出だしがクリスティーっぽいですが、手がかりがよく示されている、出来の良い本格でした。
 75年ぐらい前の作品ですが、犯行の様子がフィルムで撮影され、しかもその中に偽装が含まれるという内容は、さすがカーです。見たものは録画されたものでも信用できないとは。
 


No.1 8点 五つの箱の死
カーター・ディクスン
(2015/02/11 00:39登録)
一年に一回ぐらいはテレビの犯罪もので目にする、あの毒殺トリックはこのカーの作品が最初のようです。乱歩の類別トリック集成にも選ばれていました。
 偶発的な出来事が多いとはいえ、すべての手がかりが示され、意外な犯人を推理可能な本格物でした。
 毒を仕込む機会を考えると、別の人物が必然的に怪しくなるのですが、その線を丁寧に消しているのは、カーらしいと思いました。

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