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ミステリの祭典

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斎藤警部さんの登録情報
平均点:6.69点 書評数:1305件

プロフィール| 書評

No.365 9点 心理試験
江戸川乱歩
(2015/10/27 13:16登録)
裏をかけ 裏かく奴の 裏をかけ 
裏×裏は 裏か表か  別物か

心理で攻める。論理で抑える。鮮やかです。

しかし一番の美点はサスペンス。
と言うより、スリルでしょうか。


No.364 9点 ポンド氏の逆説
G・K・チェスタトン
(2015/10/27 12:59登録)
ひょっとして「童心」より先だったかも知れない。非常に若い時節でしたが、語り口が意外とそう渋黒いわけでもなく、滋味横溢の堂々たる美文(美し過ぎない)を喜々と玩読させていただきました。論理遊戯の果てには日常生活や人生に早速活かしたくなる素敵な気付きの種がいっぱい。逆説と銘打つことが逆説ではないかと思えるまっとうな実践思考訓練のバイブルとして、折に触れ少しずつ再読したいものであります。素晴らしくイカシた短篇集。


No.363 7点 新トリック・ゲーム
アンソロジー(国内編集者)
(2015/10/25 00:24登録)
推理クイズ本の中では際立って質のいいブツですよね。山村正夫編で執筆陣も流石の面々。京太郎や森村誠一もいるぞ。
加納一朗による第一話「浮気の現場」だけはすぐ正解分かった。後は中学生には難しすぎたね。。南武線鹿島田駅近くの、消えた電話ボックスの話はピンと来たかな。
それでも最初の<第1章>手がかりのトリック篇は比較的シンプルで理解しやすい。<第2章>偽証トリック篇、<第3章>偽装トリック篇、<第4章>殺人トリック篇ではちょいと複雑な謎と解決になり、最後の二つ<第5章>アリバイ・トリック篇と<第6章>密室トリック篇は正解文をよくよく読まないとそう呑み込めないハードな作品が並ぶ。
ところで誰の書いた話だったか「ヤラセル・マコ」って芸名どないやねん、ってw 
まあ兎に角、読んで考えて答見て、スリルがあって面白い本ですよ。


No.362 6点 螺旋状の垂訓
森村誠一
(2015/10/24 23:59登録)
確かに意外な犯人像。 犯人とは何か? なんて考えちゃう人は考えちゃうかも?? いやそれは見当違いかな? だけど意外な犯人の割に犯人が分かった所でちょっと「ああ、そうでしたか」ってな具合におとなしく納得しちゃうかも?? どちらかと言うと結末以前が読んでて面白いね。しかし題名が濃い。


No.361 8点 恐怖の骨格
森村誠一
(2015/10/24 23:53登録)
死期が近い財閥首領の相続者は若い二人の娘。ところが父に呼び寄せられた彼女らを乗せた飛行機は山中の難所に墜落!救助に駆けつけた男達が見つけたのは、妹と操縦士の遺体。姉とその付き添い人は無事だ。。

こりゃガッツリ来る。山と男女と日本社会に深い爪痕残す、森村誠一の王道。
俺は好きだ。 題名もいい。


No.360 6点 誤報殺人
島田一男
(2015/10/24 23:35登録)
記憶違いでなければこれも何気に本格色の強い短篇集、だったはず。
もしそうでないとしても面白いのは間違いない。大丈夫だ。

妖かしの薔薇 /砂浜の秘密 /黒い掟 /二つの女画像 /死人に口なし /誤報殺人
(天山文庫)


No.359 7点 赤い密室
島田一男
(2015/10/24 23:30登録)
赤い密室 /彼女は魔女 /女は夜消える /素焼きの裸婦 /孤独な死に神 /天一坊の指紋 /コールガール
(春陽文庫)

鮎川哲也の人気作と同名の短篇が表題作になっている事から伺える様に本格推理色の強い短篇集(変わった犯罪小説も入っている)。
テレビドラマ撮影現場での凶悪傷害事件を題材にしたその「赤い密室」はギラギラしたムードが魅力の質感ある一品。
どうですか、たまには昭和。


No.358 8点 パノラマ島奇談
江戸川乱歩
(2015/10/24 23:18登録)
極めて非現実的な光景がいともやすやすと
目の前にありありと浮かび上がるのは何故だろう。
素敵だ。。。。。。。。  


No.357 9点 陰獣
江戸川乱歩
(2015/10/24 23:16登録)
これは強力に吸い込まれましたよ。かなり若い時節に読みましたが、未知の気持ち悪さが継続的に脳内を侵食して来るのには参りました。今だったら、むしろ当時以上に真っ向勝負で味読出来るのじゃないかとも思います。 ○●○●トリックの遣い口は今考えるとあざといっちゃ見え透いたものかも知れませんが、バレるバレないよりむしろ、それを物語の主題に据えた事に意義があると思えてなりません。 どうしてだろう。 それはやはり、○●○●トリックを更に覆い包む例の「前代未聞トリック」が物語全体を睥睨しているからか? 


No.356 7点 破戒裁判
高木彬光
(2015/10/24 16:53登録)
幼き時節、親からだったか親戚からだったか、古茶けた文庫本カバー無しをヒョィともらったのだが見るからに子供に受けそうもない渋みが芬々ゆえ全く食指が伸びず後回し後回しの歳月が流れ、かなりいい大人になってやっと重い腰を上げ手に取って読んでみると。。これがアナタ、高木さんならではの天然ボケ炸裂で笑いを噛み殺すのにも一苦労、極めてシリアスな主題の重厚な法廷物語の筈なのに、いちいち何だかヘンなんだもん、この違和感は叙述トリックか!?って疑っちゃいそうになるくらい。いゃ疑いはしませんがね、既に高木氏の本はいくつか読んで、素敵な悪い癖は知ってたから。 とは言え、被疑者の過去に関わる謎解きはスリリングで社会派法廷サスペンスの貫禄は充分。
ややネタバレを言うと、最後は爽やかに希望の光が放たれたね。この結末は良かったね。


No.355 7点 姻族関係終了届
佐野洋
(2015/10/24 07:04登録)
役所に提出する各種届を俎上に置いて料理した企画短篇集。これも洋ちゃんの得意満面が目に見える様です。本当にこういうの上手だよねえ好きだよねえ向いてるねえ。
ところで短篇集タイトルにもなっている「姻族関係終了届」って何のことか分かりますか? 離婚届とは違うんですよ。この表題作が何とも、心理の機微ってやつを突いていてね。。

死亡届 /被害届 /欠勤届 /弁護士選任届 /認知届 /姻族関係終了届 /養子離縁届


No.354 7点 殺人書簡集
佐野洋
(2015/10/24 06:41登録)
収められた短篇の題名だけ見れば普通のミステリ集のようだが。。短篇集全体のタイトルが示す様に、もっぱら手紙のやりとりだけで構成された企画色強い一冊。佐野氏の得意な顔が見えて来る様です。「俺にこういうの書かせたら、ちょっとヤバいよ!」って。

御用の節は /完全離婚 /失踪計画 /愛すればこそ /割れたガラス /一等車の女 /推理小説を読みましょう /EPマシン /迷惑なプレゼント /あなたも犯罪者 /お試し下さい


No.353 6点 親しめぬ肌
佐野洋
(2015/10/24 06:32登録)
ばらばらバラエティな感じの短篇選集。軽くエロいのはいつのもの通り。SFもちょい入ってる。そっちも軽くエロい(笑)

かたつむり計画 /無罪判決 /傷 /火と煙 /哀れな夢 /親しめぬ肌 /不毛の設計 /烏鳴き /牽制死球 /ふたりの妻 /異臭の時代
(講談社文庫)


No.352 8点 第二の銃声
アントニイ・バークリー
(2015/10/23 17:59登録)
新本格ですね。 
殺人劇が生んだ現実の殺人に、自白合戦x推理合戦の複雑怪奇な噛み合わせがね、多重解決の退屈な空回りに陥らず本当にこの人は上手いなあと思わせますね。色んな違和感や齟齬にいちいち意味があってね。
冒頭ピンキーとヒルヤードの間で取り交わされる探偵小説論には泣けるくらいの旨みがありましたね。
ジョンが負けたと思ったとシリルが思い込んだ地の文のあたりからゾクゾクする違和感が醸造し始めたね。。殺人劇ごっこの言い出しに乗っかって、えも言われぬ燻し銀の鋭い指摘を会話文で言わせまくり。。アハハ。(← そんなシーン本当にあったっけ??)

あと、本作の思い切りの良いユーモアは私かなり好きですね。アイルズ名義の「殺意」に漂ってた中途半端ブラックユーモアよりずっといい。ブランドにさえ通じるかも。しかし、被害者も困った奴だが語り手も相当に嫌な奴でないか?ヒルヤードには好感が持てるぞ。

それにしてもこの作者は本当に企画で仕掛けて来るのが好きなんですね。クリスティが上向きにぶち上げる派手な企画好きだとしたら、バークリーは前向きに深堀りし続ける滋味の強いそれという感触。「手記」を扱うマナーからして両者の違いははっきりしています。

ところでこの小説、題名に『第二の銃弾(THE SECOND SHOT)』って、何故そこまでこだわるんだろう「その事」に殊更に、って読んでる間ずっと思ってたんだけど、読了してみて嗚呼成る程ね、と。 そぃや「弁護側の証人」も似たような経緯で納得したものだったなあ、題名付けの機微に。

(ここからちょっとネタバレか)
ゲストに呼ばれた三人の推理作家が結局全員チョイ役で終わったってのが何とも、地味ながらなかなかの皮肉を感じましたよ。


No.351 8点 死者はよみがえる
ジョン・ディクスン・カー
(2015/10/23 12:49登録)
これは相当に好きだ。出だしも中盤も驚きの結末も文句なし。 あまりに意外な犯人は、、本気(マジ)で分からなかったから、真実(マジ)驚いたな!! でも結末だけの作品じゃないからね、最初にも書いた通りのっけから乗せられてずーっと面白いお話なの。それでいて最後にアレでしょ、こりゃひっくり返りますよ。。 「火刑法廷」なんかよりずーーっといいね。


No.350 5点 曲った蝶番
ジョン・ディクスン・カー
(2015/10/23 12:40登録)
本屋の背表紙の題名と著者名だけ見て、密室物かとしばらく思っていたものです。固く鍵の掛かった書斎のドアを探偵警察家の者総がかりの力づくでぶち破ったら、はずみで蝶番がひん曲がってしまいました。しかし、よく見ると、ありえない方向への曲がり方をしており。。 みたいなね。
いっそ本当にそういう物語だったら良かった(?)。不可能事象の解明はなかなかに拍子抜け。とは言えどこか土埃の匂う古風な因縁物語の雰囲気は悪くなく、読ませてはくれる。


No.349 4点 火刑法廷
ジョン・ディクスン・カー
(2015/10/23 12:28登録)
好みに合わない古典名作の一つ。 最後のどんでん返しは、物語を引っくり返すというより、物語のおしりにくっついたオマケにしか見えません。「なんちゃって!」的な。
お話自体、さほど惹かれるものは無い。 カーは好きだがこれはときめかん。


No.348 6点 密閉教室
法月綸太郎
(2015/10/23 03:19登録)
「雪密室」に較べて文章や物語自体の青臭さが鼻についてしまうのはミステリ興味の牽引力が少し弱かったのか、否か。。 されど本格好きなら読んで損は有るわきゃなかろう。それなりの高得点付けちゃうよ。 


No.347 7点 雪密室
法月綸太郎
(2015/10/23 03:12登録)
先達の「企み足跡」各作(特にやっぱり白い僧院)に較べると、謎と解決の複雑化は流石にきちんとキメてくれてるが、驚きや納得や感動と言ったよりホット部分ではむしろ少し弱まってるかな。日本人にありがちな事。
でも面白く読めたので問題無し。足跡トリックの発展に寄与したと思います。おなじみの青臭い文章もさして気にならず。
最後にネタバレを言うと、偶然を上手に使いましたね。


No.346 7点 天使の傷痕
西村京太郎
(2015/10/23 02:09登録)
長篇第一作「四つの終止符」に続き若き京太郎が世に問うたハード社会派サスペンス、いや社会派本格推理と呼ぶべきか。
「終止符」ほどの唯一無二な雰囲気は無く、普通の推理小説然として進むが、事件そのものと社会背景、その両方の謎解き興味が読み進むほど強烈に襲い掛かる名編だ。社会派サイドのテーマはやはり重い。京太郎の名を未来から消さない為にも、君は読め。

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