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ミステリの祭典

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斎藤警部さんの登録情報
平均点:6.69点 書評数:1305件

プロフィール| 書評

No.405 6点 半落ち
横山秀夫
(2015/11/20 18:36登録)
私は刑事コロンボ「高層の死角」ラストシーンの鍵となる「何故第一の殺人だけ自白したか」という応用篇ホヮィダニットが心の琴線に触れて大好きなのですが、本作の場合は「何故ずっと自白を拒んでいた容疑者が、ある時を境に急に自白を始めたか」なる更に複雑でトリッキィな一種のホヮィダニット、それを大きな人間ドラマが覆い包むという構造で、大変チャレンジングな作品と思います。良い文芸小説で、愉しく読ませていただきました。結末の「ホヮィ」は確かに予想を超えたものでした。しかし。。。。唐突感は否定出来ません。

【これよりネタバレの風向きへ】
おいおいそんな伏線どこにあったよ!?って思いましたよ。バランスってもんがあるでしょう。あれほど夫婦愛の細やかな事情(そこに何事か秘密が潜んでいるに違いない。。。。)を前面に立て、謳い上げておきながら。。でも6点。


No.404 7点 虹を操る少年
東野圭吾
(2015/11/20 17:22登録)
夜を統率・・ マスクド バンダリズム・・ 魅力的キーワード群が夜空に眩しい。そして、その向こう側にいた人物は?
同氏「天空の蜂」を社会派現実科学小説とすれば、こちらは社会派空想/現実科学小説(空想寄りだが空想みたいな現実が混入)の様な味わい。但し空想/現実の線引きは日本プロレスに於けるガチ/やらせの如く微妙で味わい深い。

これだけ派手で具体的なストーリー展開ながら妙に一歩一歩着実な筆運びだね、特に半分過ぎたあたりから。。と思ったがいや違う、これは怖い怖いクライマックスへ続く分厚い階(きざはし)の一枚一枚だ、想定外の生活社会派リフレクションを噛み砕きながら。。そしてスクランブル展開を見せ始める物語の根幹に寄り添う枝葉たちは、見守られるのか、棄てられるのか?
主人公が二人となる構図だが、光瑠君のほう、東野作品の中でもスペシャルに好きな人物だ。底知れずな懐の深さでもってとびっきり頭の冴えた奴、間違い無くいい。 あとチョイ役だけど麻雀の話で盛り上げ上手の高校教師ってのも最高だなあ。


【以下、ネタバレの機微有り】

裏切りと対立の構図はとうとう最終ラウンドへ持ち越し。しかし主人公(光瑠君のほう)の台詞が暗示した様に、通常のミステリ的な割り切り解決は無い。黒幕のトップやら怪しい組織の正体さえ最後まで明かされず。だが、主人公の口が語る通り「具体的に誰が仕切ってるかってのは意味が無い、たまたま今はそいつがやってるってだけ」という洞察の延長で最後は押し切られるという趣向なのでしょう。 でもある人物とある人物が実はイコール、というベタな推理小説的タネ明かしはちょっとあったね。読者サービスってやつかも知れん。

【ネタバレの機微、ここまで】


光楽、嗜む程度に体験してみたいねえ。 そういや、そこに「穴が開いている」様にしか見えないと言う「本当の黒の印刷」ってどこかの会社で開発されたねえ。
ところで文庫巻末解説の井上夢人氏が本人から聞いたという話に拠れば、東野氏はまるでパルプフィクション作家の如く、後先考えず書き飛ばす方式でいつもやってるそうなんだが、本当かしら??

p.s.
いい言葉だ「我が同胞へ」。 これには泣けた。


No.403 8点 針の誘い
土屋隆夫
(2015/11/20 01:12登録)
子供の誘拐事件が起き、身代金を持参した母親がその場で殺されるという残酷な構図は、一方で義憤を煽りつつ事件の見えない奥行きをも匂わせる。これぞ黄金の土屋隆夫と感じ入ってしまう、質実剛健の一冊でした。


No.402 8点 天国は遠すぎる
土屋隆夫
(2015/11/20 01:01登録)
謎の中心に暗い流行歌の歌詞。時代の薫りにやられる。遺書と共に逝った十代の娘は果たして自殺だったのか?アリバイ崩しに密室トリックが絡んだ、濃密な空気感の文芸本格。社会派要素も割と有り。評者好みのど真ん中に剛速球です。

ところで詰まらない事が気になるのですが「アルプス建設工業」というのはあの鬼瓦権造さんがお勤めの会社(アルプス工業)と関係があるのでしょうか?だとしたら、たとえ文中には登場しなくとも、彼も警察の取調べを受けて、最後に「冗談じゃないよ?」の捨て台詞を吐いて帰って来たりしなかったのでしょうか?あるいはその取調べ以来「冗談じゃないよ?」が口癖になったとか?


No.401 5点 迷路の花嫁
横溝正史
(2015/11/19 10:39登録)
通俗横溝、最後は涙で〆。
巷で噂の「赤い右手」じゃないが、後先決めずに書き飛ばしたパルプフィクションの香りがするね。犯人誰にするかは筆の勢い向くまま任せたろう、的な。時に徐々に時に急速に怪しさを増す浩三の行動。集結間際、妙にこれ見よがしに「あの魔王以外皆ハッピーエンド」臭いからこそ膨らむ嗜虐的カタストロフィへの期待。。 終わってみれば正体不明のままの謎人物もいるけど、それもまた良しとする所ですかね。

しかし金田一さんの影の薄さにゃ驚いた。むしろ等々力警部の方がまだ出てる。そもそも探偵役ったって、本作の場合は殺人事件よりも「如何にして魔王を排除するか」という更に大きな人生解決こそ主題なわけで。鬼貫警部や赤影探偵がチラッと登場、謎を解いてさようなら、の類とは全く異質のチョィ役振りは妥当な線ですね。

【ネタバレ】
冒頭に叙述欺瞞の影あり? かと思われたが。。まさか本当にそう来た!


No.400 5点 野球が殺した
佐野洋
(2015/11/18 10:51登録)
右翼手が目を隠した/打者が左足を引いた/捕手が声をかけた/走者が塁を回った/塁審が胸を叩いた/観客が手を伸ばした/投手が球を落とした
(角川文庫)

洋さん野球が好きなんだろうけどその割妙に試合描写のリアリティが上滑りなのも味のうちと言った所で.. 笑。ともかく、架空の日本プロ野球リーグ(人気の強豪は天馬ペガサスと明星プレヤデス!)を舞台にスタジアム内外で巻き起こる奇妙な事件の数々は、現実のプロ野球が嫌いにならない程度にゆんわり愉しませてくれます。佐野洋ファンを自認する人、または、佐野洋がまあまあ以上好きで日本のプロ野球もまあまあ以上好きな人、どちらかに該当する人にだけお薦め。両方の人は必読。但し熱狂的プロ野球ファンは読むなw


No.399 5点 夢の破局
佐野洋
(2015/11/17 22:25登録)
悲劇的な男女のストーリーを軸とした短篇集。
表題作の真相は現実物語と思えばかな~~りトンデモ無い。。 が佐野洋ストーリー的には普通のことかも。

不幸な女/甘い血/白すぎる球/夢の破局/青白い旅/狂う炎/青いレンズ/蘇える/守ること
(集英社文庫)


No.398 7点 最大の殺人
アンソロジー(国内編集者)
(2015/11/17 15:37登録)
反戦文学集、乃至戦争文学集の色彩も濃いが、基本的に探偵/推理小説のアンソロジー。但し全作とも「戦争」と必ずどこかで接点を持つ。小説としてよく書かれている作品ばかりで、読後の重みは心地よい。評者の好みでは冒頭の風太郎作品がなんと言っても暗黒心理トリックの極みでピカ一。アキミツ先生の突出したトボケっぷりには嬉苦笑(題材は笑い事じゃない)。中にはミステリ味の極薄いブツもあるが、どれもこれも読み物として悪くない。

山田風太郎「黒衣の聖母」 土屋隆夫「絆」 高木彬光「原子病患者」 日影丈吉「月あかり」 樹下太郎「泪ぐむ埴輪」 菊村到「ヒロシマで会った少女」 佐野洋「灰色の絆」 仁木悦子「山のふところに」 西東登「壺の中」 五木寛之「冥府への使者」 森村誠一「紺碧からの音信」 結城昌治「長かった夏」 山村美沙「骨の証言」

全篇読後、あらためてこの選集の題名を振り返れば、そこに不気味なほど頑健無比な戦車、いや選者・佐野氏の左翼魂が感じられてなりません。


No.397 7点 初秋
ロバート・B・パーカー
(2015/11/14 23:27登録)
いいかげんお終い近くに至りやっと組織犯罪らしきものが露呈。しかしそれが主題ではない。まるで「日常のハードボイルド」の味わい。果たしてこれがミステリなのかは疑問だが、胸を熱くして読める(長篇の面を被った)短篇小説である事は確か。主人公と少年の関係が最初はまるでドラえもんとのび太の様だ。徐々に松岡修造とその教え子の様に変わって行き。。最後は泣ける。主人公の敵でもないがチャラい成人男子を「ディスコ」呼ばわりするのは笑った。スポーツ観戦や男の料理etc.の描写が適度にマニアライク且つ引き際も鮮やか。内容も文章も素敵だ。シリーズ異色作だろうがこれはいい本だ。読んだ方がいい。


No.396 5点 漱石と倫敦ミイラ殺人事件
島田荘司
(2015/11/13 20:36登録)
表題にホームズのホの字も出て来ないでやんの。おまけにミイラって。でも漱石の時代のロンドンで島田荘司と来たらそこにホームズが浮かび上がらないわけがありませんね、いいタイトル付けです。
(つくづく、アガサ・クリスティ晩年とロンドンパンクムーヴメント勃興が絶妙なくらいあと一歩の所で重なっていない事実が悔やまれてなりません。)

さ~て題名は良いとして中身のほうは。。漱石とワトソン、二人の叙述が交互に登場という形式は新鮮でなかなか面白いですが、最後まで読むとちょっとぬるかったですね~、謎解きが。ロンドンを舞台とした物語興味もさほど濃いものでなく、結果あまり心に残ってません。
もっと、ビシッと決めて欲しかった。


No.395 6点 ら抜き言葉殺人事件
島田荘司
(2015/11/13 13:00登録)
傍流作を思いっきり書き飛ばしてみたよな気配充満!とは言え赤川次郎風ユーモア・ミステリを想像するとちょい裏切られます。軽社会派?みたいな展開で風呂敷軽く拡げて、最後まさかのシリアス真相に唖然。。(ひょっとして後付けのハウダニウット?) しかしま、ミステリの形を借りて持論を世に問いたかったのではと見えるよな、ふとした言葉の欠片もちらほらですね。まいつもの事っちゃそうなんだけど。本作は特に。
いちおう言っときますけど「ら抜き言葉」ってのは「アイラブユー」が「愛撫ユー」になるとかの類じゃないんですよ。当たり前か。


No.394 6点 有栖川有栖の密室大図鑑
事典・ガイド
(2015/11/13 00:58登録)
こんだけの絵解き本を一切のネタバレ無しで遂行し切る、厳しさ満点のその遊び心に惚れるしか無いでしょう!


No.393 2点 林の中の家
仁木悦子
(2015/11/12 23:17登録)
好きな筈の仁木さん代表作なんですけどね、これはダメでした。 薄い本なのに、やたら詰まった登場人物一覧表。ところがその人物の一人も我が感性に訴えて来なくてね。物語のピースらしきものは一杯詰め込まれてるんだけど、面白味というか、甘みが無い。組み合わせの妙を感じない。 ま彼女の作品は他にも一杯あるからドンマイ上等っすよ。


No.392 7点 隻眼の少女
麻耶雄嵩
(2015/11/12 16:40登録)
オールドソウルファンの間には「歌える名前」という迷信がありまして、カタログ見て無名ソウルシンガーの名前を眺めながら、「ブレンダン・G・ジョーンズ」おおこいつは声が太くて歌えそうな名前だとか(笑)、「エリアナ・フォックス」こいつはフェミニンな歌声だが芯が強そうだとか、「ディーター・ジョン・ビアーソン」とか「ジョーンディス・マクローリン」だとか「スペンサー・ダーリントン」だとか、皆架空の名前ですけど、とにかくそういう名前は歌えそうだ、と(一体どういう名前なんだ)当たりを付けて中古シングル盤注文しちゃったりする。
逆に歌えなさそうな名前となると、そうですね失礼な話ですが「ポール・オクス」とか「ジーン・リューベン」とか「ピーター ・サンチェス」とか「マーヴィン・ゲイ」とか「マリリン・マンソン」とか「ロバート・キヨサキ」とかですかね。
さてその流儀で行くと「麻耶雄嵩」という名前は私にとって如何にも「書ける名前」に見えて仕方が無かったわけです。初めて読みました。

ところがね、まずこの語り手くんのどこが自殺志願やねん、と。このあまりの書けてなさは既視感込みでがっくりしょんぼり涙雨ですよ、と。
サクサク行けない物語をなんとか掻き進みしばらく行ったあたりから、このあからさまなダサ文章感こそ叙述トリックの一部ではないかと(この語り手青年こそまさかの犯人ではないかと)疑いもしましたが、さて。。

女系相続と実権掌握の機微について少女探偵が解析し始めるあたりから俄然興味津々の領域へ。 と思えばいきなり犯人糾弾演説の始まり。こりゃたまらん、半分峠から急速に物語テンション加速ァ? 犯人より不倫相手が最後の謎ってかァ? 相変わらず自殺志願とはとても思えない主人公だか語り手だかワトソンだかは何なんだ一体。そうか第二部があることを忘れてた! しかし第一部の終わるページはまだまだ先だ❗️ 確かに読者目線で怪しい人物群はたわわの実り。殺された少女達の母親(スガル様)も外せない。

いつまでたっても死にそうにない主人公ないし語り手がやっと自殺を決意したかと思ったら十八年の歳月を隔てて記憶喪失状態で復活! ところが少女探偵が成長して名探偵になってたり、なのにあっさり殺されちゃったり、第二部始まりのスピード感にはいきなり目を瞠る往復ビンタ。 そろそろ題名の機微にも目を光らせたくなる所。

さて残りページも少ない終盤に至ってなお膨らみ続ける新しい謎の一群に一体どうやって収拾をつけるのかと。途轍もない破壊的終結への期待を膨らませても良いのですかと。と思うと本当に最終コースでまた殺人!何なんですかこの、いつまでたっても話が収まらないズルズル感覚!!

しかし題名の深みを最後まで伏せる秘密保持力はなかなかのものだ。

【ここよりしばらく大いにネタバレ】




探偵イコール犯人をフェアな大枠で完遂する試みは見事に成功(細部は色々ありますが)。
それも「探偵最後の事件」イコール「探偵最初の事件」でありながら何故か「探偵唯一の事件」に閉じ籠もらない、まだまだシリーズ続編の余地大いに有りというあまりにトリッキィな不可能状況をまんまと現出させてしまった作者の創造力は大したものです!!

真犯人が娘の父親に種田を選んだ理由はちょっとした盲点でミステリ的感動有り(洒落はちょっと。。 ところで「種田、とうさんか?」みたいな別の洒落も考慮の内なのかな?)。
最後の最後の最後のまさかの第一の(本命)殺人動機告白には愕然!
最後の最後の最後の最後のまさかの幸せな結末に、ちょっとした嬉しさ。




【ネタバレここまで、として良いでしょう】

とある韓国の人気古典映画を髣髴とさせるエピソードがあったり、オイディプス及びエレクトラ悲劇のモチーフをきれいにサーッと横滑りさせたような機軸があったり、色々と語りたくなる側面が何気にいっぱいありましたね。

でもやっぱり文章が歯がゆい、あまりに。もし本作が小説としてもイカしていたらとてつもなく重厚な剛腕ミステリ奇書の名を轟かせまくってたんじゃないのか?? (既に轟かせてますか。。)

もしかしたら、少なくとも第一部がしっかりタフな文芸小説体で書かれていたら、余程巧くミスディレクションを施さない限り第二部での大反転の核心に早い時点で勘付かれてしまうのかも(??)しかしながら、最後の最後に訪れる大反転は、それまでの(特に第一部の)物語の語り口のダメさ故にか大感銘まで辿り着かず!! 本当に「残念な」という形容がぴったりはまってしまう作品ではないですか、腹立たしい!!

真犯人は、第一部後半の前半あたりでピンと来ちまいました。
まさかの犯人設定企画にはブランデーで乾杯と行きたい所ですが、いや待て、ひょっとしておいらが気付いたあたりで作者もやっと真犯人をその人に決め打ちしてたりしないか!?
第一部書いてる途中で全体像(第二部継ぎ足しを含む)に思い当たったってことはないか?

まとにかく、小説家としてはともかく、ミステリ創作者として相当大きな存在になりそうな(既になっていましょうが)ポテンシャルを感じずにはいられない作者であり、その人が産み落とした看過出来ない作品でございました。 本当に残念。 悔しいです!!


No.391 6点 妻に捧げる犯罪
土屋隆夫
(2015/11/11 13:47登録)
ふだん生真面目な先生がトチ狂った様な面白さ。 間違い電話や混線で犯罪絡みの話を耳にし。。というサスペンスの定石をエロスと怨念でおかしな方向にこじらせた様な(氏にしては)怪作。

趣味の悪戯電話(笑)で偶々なんらかの犯罪を遂行直後らしき女にぶちあたり、共犯者と勘違いされるに乗じて犯罪経緯のさわりをシラっと聞いてしまった大学教授は。。 女との会話内容や電話で聞こえた音声から事件の全貌を推理し、女を脅し、行動に出、なかなか忙しい男やもめ(妻は不倫相手と旅館で焼死)のイカれた探偵記にして犯罪録。

それにしても光文社文庫の表紙、ネタバレとは違うけど物語のとある核心部分をズバリ表してみせたこの「地図」!


No.390 7点 判事よ自らを裁け
土屋隆夫
(2015/11/11 12:10登録)
フィルポッツ「医者よ自分を癒せ」の様なタイトルの表題作に始まり、法曹界(と人間界)のダークサイドに根を下ろした、サスペンス一杯、展開と結末のツイストに目を瞠る物語五篇。背筋が伸びていいですよ。

判事よ自らを裁け/地図にない道/孤独な殺人者/ねじれた部屋/奇妙な再会
(角川文庫)


No.389 6点 マーチン・ヒューイットの事件簿
アーサー・モリスン
(2015/11/10 17:52登録)
ホームズ(の良作期)に較べると流石に閃きに欠けるが、よく出来ているし決して詰まらない代物ではない。時代を感じるのも心地よい。ビートルズのライヴァルだったデイヴ・クラーク・ファイヴあたりの音盤を聴いているかの様な感覚。

サミー・クロケットの失踪/フォガット氏の事件/ディクソン魚雷事件/クイントン宝石事件/スタンウェイ・カメオの謎/亀の事件/アイヴィ・コテージの謎/〈ニコウバー〉号の金塊事件/ホールファド遺言状事件/レイカー失踪事件
(創元推理文庫)  

探偵役がホームズ等と違って常識人という設定もあり、全体通してほんわかしたムードに包まれている。が決して緩くなり過ぎないバランスが見事。


No.388 7点 煙の殺意
泡坂妻夫
(2015/11/10 17:35登録)
社会派・奇妙な味とでも呼びたい「紳士の園」の、結末で一気に恐怖の深みに嵌る、そして急速に動き出す感覚。 ちょっと連城三紀彦を思わす美しい「椛山訪雪図」の、完成度も堂々たる清冽な騙し絵っぷり。 バリンジャーの「歯と爪」ならぬ「歯と胴」のナニもなかなかのアレですよ。。
スタイルや内容はバラエティに富んでおり、トリッキーな遊びだけで済まない、深く心に残ってしまう短篇集です。
緩すぎる「亜さん」にはどうにも眠くなって萌えない私ですが、このノン・シリーズ集はどこかしらヒリヒリする感触を宿しており、読んでいて頭が冴えますね。

赤の追想/椛山訪雪図/紳士の園/閏の花嫁/煙の殺意/狐の面/歯と胴/開橋式次第
(創元推理文庫)


No.387 5点 螺旋館の殺人
折原一
(2015/11/10 11:27登録)
この題名使うなら、相応の覚悟を形にして欲しかった! .. 今は改題済みだそうですが。
途中まで結構面白かったっすよ。ただね、いくら待っても螺旋館の螺旋を巧妙に用いた驚天動地の事件に至る仄めかしさえ登場せず。。 最後のどんどんでんでんは、すべったな!
そいった経緯もあって、しばらく頭の中で「倒錯のロンド」とごっちゃになってたんですけどね。

この本むかし飛行機の中で読んでたら隣のジンガイに声掛けられてつい「これは典型的な現代日本の推理小説です」と教えちゃったとですよ。今思えば(結末を知らなかったとは言え、いや、だからこそ)余計な事を言いました。


No.386 6点 フリークス
綾辻行人
(2015/11/09 12:20登録)
「フリーセックス」たぁこれまた綾パンらしからぬ著書を、と思ったら空目でした。老眼はいけんですのう。
最終作のフリークス大集合はちょっと大味でしたが、全体通して興味深く読めました。 ホラーテイスト有りサスペンス有り、しかしやはり本格でしょう。
【以下、ネタバレ的表現有り】

通しテーマがテーマだけに保身の目配りも大事でしょうが、もう少し安全網を低めに張っても行けたんじゃないかと思えた節も有り。(何もそこまで○○落ちにしなくても)

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