ブロンズの使者 三番館シリーズ |
---|
作家 | 鮎川哲也 |
---|---|
出版日 | 1984年01月 |
平均点 | 5.75点 |
書評数 | 4人 |
No.4 | 5点 | ことは | |
(2025/08/17 21:43登録) 三番館シリーズをつづけて読んでみた。読んだ味わいは「サムソンの犯罪」と変わっていない。 最初の2作「ブロンズの使者」、「夜の冒険」では、小説の盗作問題を中心に据えたり、尾行から意外な展開が起きたりと、ワンパターンの展開を避けようと工夫している。つづけて読んで飽きさせないのだが、ミステリ的アイディアはかなり小粒。 つづく「百足」、「相似の部屋」は、かなり凝った構成でシリーズでも上位にくると思う。本書のベストは「相似の部屋」かな。 後半の2作「マーキュリーの靴」、「塔の女」は、構成が問題編、解答編ときれいに別れている印象で、潔いほど。ただ解答が、整合性のある仮説の域をでないように感じる。 シリーズを通してみると、初期作と比べて、かなりシンプルになってきている。初期の作では、バーテンダーの推理を元に、探偵が裏取りするパートがある作が多かったが、本書では、バーテンダーの推理をきいて終了となっている。 昔に読んだ記憶では、この後の作では、さらにその傾向が強まり、推理クイズ的になっていったイメージなので、もう読み直さないかなぁ。1作目だけ、いつか読み直そう。 あと、今回読んだのは、徳間文庫版だが、解説が中町信で、「マーキュリーの靴」を三番館シリーズのベストに推していて、「やっぱり、中町信はこういうのが好きなんだな」と微笑ましかった。追記すると、徳間文庫版の中町信の解説の各作品の説明部分は、内容に踏み込み過ぎでネタバレになっているところがあるので、先に読まない方が良い。 |
No.3 | 5点 | 斎藤警部 | |
(2016/05/11 16:05登録) 「百足」は少しばかり印象強いですかね。「相似の部屋」「マーキュリーの靴」もまぁまぁぁ。。 後は(てか全体的に)やっぱり謎解かれが緩いというか脆いというか。。物語としても、氏ならではのサムシングってやつが薄いんだな、これが。 自分にとって特別な存在の鮎川さんですが、三番館シリーズは微妙にのめり込めません。 ノン・シリーズで他にもユルユルの短篇が結構あるんだけどねえ。。本シリーズはやっぱり、レギュラー登場人物の相関図からしてユーモアの流れ出る道筋がだいたい決まっちゃってるのが不用意な弛緩を招くのだろうか。それでも「4点」までは下がりません。 |
No.2 | 7点 | ボナンザ | |
(2014/04/07 15:42登録) 密室もの二つが特にうまい。もちろんそれ以外の作品も水準以上であることは間違いない。 |
No.1 | 6点 | E-BANKER | |
(2011/05/15 21:21登録) 創元推理文庫版の三番館シリーズ第3弾。 作者らしい軽妙かつ洒脱な味わいを感じる作品集です。 ①「ブロンズの使者」=事件の舞台、熊本県人吉市へ探偵が出張。事件を解く鍵がかなり後半になってから出てくるというのは如何なものか? ②「夜の冒険」=よく目にするプロットのような気がするが、見せ方が熟練の技。 ③「百足」=要は、「木は森へ隠せ」的趣向でしょう。 ④「相似の部屋」=プロットはなかなか面白いが、トリックはかなり危なっかしい気がしてならない・・・裏の裏をかくというのはいいね。 ⑤「マーキュリーの靴」=いわゆる「雪密室」を扱った作品。アリバイトリックを含め、なかなか練られている作品。④と⑤は意外な犯人を狙ってる? ⑥「塔の女」=単純な算数(1-1=0)の問題(?!) 以上6編。 作品のレベルとしては「たいしたことない」というのが素直な感想になるのですが・・・ なぜか楽しく読めちゃうんですよねぇー、この「三番館シリーズ」は・・・やっぱり、その辺が鮎川先生のスゴさというべきかもしれません。 偉大なるマンネリズムを味わってみるのも一興かと思います。 (面白いのは④と⑤、後もそれほど悪くない・・・) |