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ミステリの祭典

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江守森江さんの登録情報
平均点:5.00点 書評数:1256件

プロフィール| 書評

No.476 6点 本格ミステリー館
評論・エッセイ
(2009/09/27 17:21登録)
1992年に「本格ミステリー館にて」で出版された対談集を文庫化した物。
図によるミステリー分類(代表的作品のポジション・代表的作家のテリトリー)は、ミステリ嗜好と立ち位置の自覚に最適。
私的に、高木彬光と鮎川哲也の交わるゾーンが嗜好のド真ん中だと再確認した。
途中で論じられるアイデア(トリック)の転用問題だが、作家の立場から論じられ、読者がどう受け取るのか?に触れていないのが残念。
叙述トリック論も同様で、読者が構えて(察して)しまう点への言及が甘く、出版社の(帯や内容紹介で煽る)姿勢の功罪や、読者の「察し」レベルと作者の「隠蔽技術」レベルの噛み合わせも論じて欲しかった。
私的には、結末まで違和感を感じさせず最大限の驚きを齎す、察しても再読(する気が起きる事は最低条件)で手口を満喫できる作品は賞賛している。
※配慮はしてるが、結構ネタバレになる有名作品も多いので、ある程度ミステリーに馴染んでから読むべき。


No.475 6点 山魔の如き嗤うもの
三津田信三
(2009/09/27 04:22登録)
刀城言耶シリーズ第四弾。
紛らわし過ぎ読者に混乱を齎す懸念があるので主要登場人物表は付されるのに、地図を添付せず相変わらず不親切な設計。
しかも、今回は地図添付でトリックを察せそうなだけに作者(編集者)のあざとさが垣間見える。
賛否両論あるが、残り少ないページ数で何度も推理を捻る所がシリーズのお約束で読み所(短編では、これが無く物足りなさを感じる)
全編にさり気なく潜ませた伏線の回収は毎度お見事と賞賛したい。
見立て殺人の理由は、本格ミステリから逸れるが、考察を逆手に取りホラー色を出している。
終わり方もホラーとして上手い。
※ここから激しくネタバレ注意!!
よもや、このシリーズで「アクロイド」の技法が使用されるとは(手記で始まった時点で、横溝「蝶々」が即浮び構えた)・・・残念でならない。
しかも、結末のチープなアリバイトリックまで「アクロイド」だった。
更に‘はじめに’の記述で倉知「星降り~」を彷彿させ再度構えた。
最後の捻りは「禁忌」だった。
上記の理由でシリーズで初めて採点を6点に抑えた。


No.474 5点 CSI:科学捜査班〜シン・シティ
マックス・アラン・コリンズ
(2009/09/25 23:46登録)
海外人気ドラマ「CSI:科学捜査班」のノベライズ第二弾。
犯罪捜査のリアリティを追求し、科学捜査で得られる証拠から犯行場面を構築し事件を解決するシリーズで、本格ミステリが今後も生き残る為の一方の指針と言える(但し、残念ながらこの手の作品は小説より映像の方が格段に進歩している)
上手くノベライズされ二つの事件を同時に扱い、結末の捻りもドラマに同じだった。
ドラマを観る感覚で楽しめば良い作品。


No.473 9点 首無の如き祟るもの
三津田信三
(2009/09/25 03:46登録)
「首切り死体物」の金字塔としてミステリ史に燦然と輝く傑作だろう。
シリーズ前二作も佳作と云えるが、この作品を'より楽しむ'為に存在していると思えてしまう。
前半部は、前二作同様に地図が添付されず不親切設計で、状況を把握しながら伏線を拾う読書でナカナカ読み進まない。
しかし、今作は状況把握がし易く中盤からテンポアップする。
解決編前に列記された謎が"一つの鍵"から綺麗に氷解し、伏線を回収しつつ紐解かれる過程は素晴らく満点(8点)を献上する。
※ここからネタバレ注意!!
"入れ替わり"に拘り抜き、残り少ないページ数で何度も捻るシリーズのお約束も健在。
ボカシテいるが、シリーズ探偵・刀城言耶を途中少し登場しただけの捨て駒にした結末(解決編)にニヤリとした。
(今回の解決編の推理は刀城言耶らしからぬ'鮮やかさ'だったので上記の解釈で良いと思う)
シリーズ順に読み進めた自己満足で+1点!


No.472 6点 私が彼を殺した
東野圭吾
(2009/09/23 18:43登録)
作者が解決編を放棄した形式の読者挑戦物の第二弾。
前作みたく犯人特定に“難”がある訳ではないが、フーダニットとしては、潜ませた伏線に気付けるか?の閃き推理クイズと云った趣。
捜査視点では、指紋採取結果が出た時点で犯人の目星が付く(その事に犯人が気付かず実行したマヌケさはスルーしましょう)ので、フーダニットとして成立させる為に容疑者三人の一人称を章毎に切り替える形式にした作者の苦心が察せる。
私的に、全カプセルの行方をロジカルに突き詰める部分は嗜好のド真ん中なのに全体として好みから微妙にズレる辺りが東野圭吾作品らしい。


No.471 3点 蘇える金狼
大藪春彦
(2009/09/22 17:51登録)
作者は、日本のハードボイルドの先駆者だが、特にバイオレンス色が強く好き嫌いがハッキリ分かれる。
暴力に対する世間の視線が厳しい現在では有害図書扱いされかねない作品。
スピーディーで読みやすいが、バイオレンスは映画で観る方が絶対に良いし、メディアミックスの典型的成功例としても評価できる。
しかし、私的嗜好からは外れているので採点は低く抑えた。


No.470 1点 天帝のはしたなき果実
古野まほろ
(2009/09/21 18:28登録)
ルビの嵐と装飾過剰で読みにくい文体に本気で取り組めば気が狂うかもしれない。
約半分まではキャラ紹介で読み飛ばし可能。
本格スピリット溢れる中盤は嗜好のど真ん中だが、結末の展開は賛否両論(そこまで到達し得ない脱落者多数)
まさにレンガ(本の造り)の如き厚い壁で"本格ミステリの桃源郷"への道を閉ざす。
それを耐え抜き読み切らなければ"桃源郷"への道は拓けない!
※思い入れのみで採点すれば、読み切った自分へのご褒美と作者の本格スピリットに9点としたかったが、冷静に客観的評価をした。
それでも、作者(次作以降の作品)への思い入れは強く、2〜7点の一般的作品と差別化を図り、本来なら採点しない逆満点(1点)を献上する。


No.469 5点 どちらかが彼女を殺した
東野圭吾
(2009/09/21 07:39登録)
発表当時は新たな試みだった、解決編を放棄する形式での読者挑戦物。
ノベルスが余りに不親切な為に文庫には推理の手引きが付された(その分、重要な記述を削除し難易度アップした)
書かれていない解決編についての推理だが、自殺でない事までは納得するが、現実問題として犯人特定には"難"があり結論は出ないと考える(諸々のネタバレサイトでも何点か難点が記載されている)
一方ストーリーは、二人の容疑者を追い詰め復讐しようとする兄と、それを阻止しようとする加賀刑事との攻防はサスペンスとして非常にスリリングで読ませる。
以上を相殺したら水準レベルな評価になった。


No.468 5点 夜歩く
横溝正史
(2009/09/21 00:47登録)
※大多数の方々には完全ネタバレです。
諸処でクリスティー「アクロイド」の技法を用いた作品だと語られているので伏せません。
この作品が書かれた時には翻訳され日本人にも「アクロイド」が読めた事。
更に前に同じ日本文学の巨匠・谷崎潤一郎が使用していた事を踏まえると、当時の日本探偵小説界はアイデアの転用(パクリ)に非常に寛容で、大横溝をして何度も“この技法”を使用した事が残念でならない。
その為に基本採点が低くなるのは仕方がない。
根深い憎悪を描いた人間描写、首切り&すり替えトリック、二番煎じである事を感じさせない書き出し等々を評価し同系統な高木「能面〜」より1点高く採点した。
※この技法を使用した後続作品の評価については「アクロイド」の書評で触れたので御参照下さい。


No.467 7点 アクロイド殺し
アガサ・クリスティー
(2009/09/20 13:00登録)
この作品の発表より数年早く谷崎潤一郎が「この犯人隠蔽技法」を使用(世界的には更に旧作があるらしい)していた事を知り再読&書評をしたくなった。
それでも、一般的にクリスティーが原点の認識で良いと思うし、その発想と実行は賞賛に値する。
細かな気付きから嘘を見破り、ロジカルに組み立てるポアロの推理は読み応え充分で客観的に満点(8点)でも良いが、大技以外のアリバイトリックがチープなため減点(-1点)した。
※この技法を用いた後続作品について。
現在では余りに有名で、書き出しから犯人直結で、構え(察し)ながら読む為に驚きが薄い。
この作品が原点にして完成度が高い為に二番煎じにしかなり得ない。
以上2点から自ずと辛い評価にする意向。


No.466 7点 悪霊館の殺人
篠田秀幸
(2009/09/19 08:27登録)
名探偵・弥生原公彦シリーズ第一弾。
シリーズ全作が好物の"読者挑戦物"である事を知り順次読破する事にした。
乱歩、横溝、彬光、安吾、クイーン、ダイン他諸々の古典的傑作群から(トリック〜犯人指摘の論理まで)良いとこ取りし、現代風にアレンジした作品。
嗜好のド真ん中である懐かしの「探偵小説」現代版復活を目論んだ作者を賞賛し本来なら、客観的評価の満点(8点)を献上したいが、解決編を含め所々で既読感(特に安吾「不連続〜」)を感じる不満があり減点(-1点)した。
決して読みにくい訳ではないが、詰め込み気味でボリュームがあり、随所に細かな伏線が張られ、挑戦を受けて立つと読み飛ばし出来ない為、読書体力を要する。
私には、それも心地よい疲労感ではあった。


No.465 3点 七つ星の首斬人
藤岡真
(2009/09/18 02:30登録)
「騙しの職人が放つ直球な犯人当て」の謳い文句に煽られ、より楽しむ為「ゲッベルス〜」「六色金神〜」を先に読み備えた。
前記2作の騙しは、脱力感を伴うが楽しめる。
今作だが、肝心の密室トリックや気付きの一部が有栖川「スイス時計の謎」収録短編からの転用に呆れた。
犯人隠蔽も数多の作品で使われた手口で、全体的に寄せ集め感が漂う。
解決編が告白形式でロジカルではなく残念。
伏線の回収や広げた話を纏める技量からも"騙し"に特化した作品の方が持ち味が活きる。


No.464 4点 林真紅郎と五つの謎
乾くるみ
(2009/09/16 23:55登録)
まず最初に、読むべき本の選択と順番について考えさせられる。
この作品で最初に'乾くるみ'に接したなら他の作品(特に同系統の「六つの手掛かり」)には手が伸びにくいだろうと考えると残念。
さて本作だが、一見本格ミステリ風な短編集。
しかし、シンクロ推理で脱力する結末に到達する日常の謎作品。
オーソドックスで作者らしい仕掛けも無く平凡。


No.463 5点 三つ首塔
横溝正史
(2009/09/16 06:29登録)
金田一シリーズへの接し方がまず古谷版ドラマからのパターンが多い。
当時、ドラマ(一種の風俗作品)でヒロインを演じた真野響子にそそられ、そのイメージを引きずりながら原作を読んだせいなのかミステリーではなく官能小説的な印象しか残っていない。
もっとも、横溝もミステリーに名を借りたエロ作品が結構あるのだから私の印象もあながち間違いではあるまい。


No.462 5点 まだらの紐 ドイル傑作集1
アーサー・コナン・ドイル
(2009/09/16 05:15登録)
ホームズ物で最初に読んだ作品。
中学生の頃に少年向けを読んだが、その頃は鮎川の時刻表物を読破中だったのでホームズを好きにはならなかった。
数年前に纏めてホームズ物ドラマ(吹き替え)を観て原作もオサライした。
クリスティーと違いドイルは原作での技巧は少ない印象でドラマで手軽に楽しむ方が良いと思った。
それ位ドラマのデキも良い。


No.461 5点 牧師館の殺人
アガサ・クリスティー
(2009/09/16 04:56登録)
翻訳アレルギーな私に、ホームズ、ポアロ、マープルの有名作品は、先に吹き替え版のドラマか映画を見てから小説をオサライすれば抵抗感なく手軽に楽しめると教えてくれた記念すべき作品(私と同様な方は、この方法で翻訳アレルギー克服を試みては如何だろう)
マープルの吹き替えをした山岡久乃に日本版を演じてもらいたかった(原作のイメージを壊さないと思う)


No.460 4点 上海魚人伝説殺人事件
天樹征丸
(2009/09/16 01:06登録)
新聞勧誘員からタダ券を貰い場違いにも映画まで見てしまった作品。
映画を先にした為に前の方が書かれた理由で小説は全く楽しめなかった。
メディアミックスの弊害はこの時分から存在した。


No.459 5点 電脳山荘殺人事件
天樹征丸
(2009/09/16 00:59登録)
パクリの‘キバヤシ’の本領を発揮した作品といえるかも?
どこからか寄せ集めた設定やトリックを少年(初心者)向けに上手くアレンジしている。
今では時代に埋もれた感はあるが当時は十分通用していた。


No.458 4点 幽霊客船殺人事件
天樹征丸
(2009/09/16 00:48登録)
読者挑戦物好きな為、漫画も含め(当時は)必ず読者挑戦していた‘このシリーズ’は(パクリに目をつぶり)推理クイズ小説としてお気に入りだった。
この作品に関してはアッサリ正解に到達した印象しか残っていない。


No.457 5点 オペラ座館・新たなる殺人
天樹征丸
(2009/09/16 00:40登録)
ミステリ界にパクリと普及の功罪両方をもたらした漫画・金田一少年シリーズのノベライズ。
推理する楽しみに飢えていた当時の私はパクリに言及するより読者挑戦物としての貴重さを優先評価していた。
シリーズ一貫して、先々ネタバレに興醒めする可能性に目をつぶり、推理クイズ小説と割り切って楽しめる方以外は読んではいけない。

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