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ミステリの祭典

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看守眼

作家 横山秀夫
出版日2004年01月
平均点6.33点
書評数9人

No.9 5点 パメル
(2023/02/10 07:40登録)
「小説新潮」に掲載された短編を一冊にしたもの。タイトルから刑務所を舞台にした連作を想像させるが、実はノンシリーズのバラエティ豊かな六編からなる短編集。
「看守眼」図らずも警察署内にある留置場一筋で勤め上げてきた男が、執念を燃やす事件の真相とは。人生色々、警察官の悲哀が際立つ。鬱屈した心理が描かれている。
「自伝」ある企業の創業者の自伝を書くことになったライターが陥った罠とは。人の欲が痛々しく迫ってくる。皮肉な結末が待っており切ない。
「口癖」裁判所の調停員として勤めていた女性の目の前に現れた女性は。因果応報が巡り巡って帰ってくる。苦さを伴った余韻を残す。
「午前五時の侵入者」県警ホームページをクラッキングした男の正体は。警察内部の管理部門の内幕を描いている。中間管理職の悲哀。
「静かな家」地方新聞の整理記者が自らの犯したミスを隠蔽しようとした結果、殺人事件に巻き込まれる。元新聞記者ならではの真骨頂。「クライマーズ・ハイ」を想起させる。
「秘書課の男」知事に仕える秘書課長が、新入りに立場を脅かされるのではと疑心暗鬼になる。己の行いを回想するくだりから、一転真相がわかるところが巧い。結末は清々しい。

No.8 6点 simo10
(2013/08/11 22:10登録)
--ネタばれ含みます--

以下の6話で構成された短編集です。それぞれの関連性はまったくありません。

①「看守眼」:刑事眼ならぬ、看守として培われた看守眼が迷宮入りした事件の真相を見破る。事件関係者らの人物像のドンデンが巧い。ただこの元看守の身勝手さは大嫌いな部類に入る。
②「自伝」:誠実であれば報われることもあるが、実際に欲望を突きつけられるとそうそう誠実ではいられないというお話。
③「口癖」:妬みに優越感、非常に下らない感情だと思いつつ、この主人公の感情が理解できてしまう自分に苦笑してしまう。
④「午前五時の男」:ホームページの不正アクセス事件を通じて、警察側の隠蔽、責任回避、クラッカーの異常思考を描かれます。
⑤「静かな家」:校了までの切迫感と校了ミス時の絶望感の描き方は元記者の氏ならでは。
⑥「秘書課の男」:ライバル秘書とのポジション争いやクレームの防波堤となったり等、議員秘書の苦労が描かれている。

本作品では警察官(元看守、ウェブ管理)の他、記者、裁判員、議員秘書とまたも様々な職種からの話があります。
さすがどれもよくできていると思います。

No.7 6点 itokin
(2011/07/03 14:24登録)
犯罪小説というものはいろんな観点から書けるものなんだなと感心した作品。内容は、それぞれ特異ではあるが、一時の切れはないと思った。

No.6 6点
(2011/06/13 09:59登録)
表題作を含め全6編。
「口癖」が面白かった。逆転したかと思えばラストでまた逆転を喰らう。でもこんな話はないだろう。「秘書課の男」はもっとも現実感があり、主人公の男の切実な思いが伝わってきた。この作品以外は、いかにも作り物という感じがしたが、結果的にはどの作品にも時間を忘れるほど夢中になれた。
主人公がみな、ちょっとしたことに慌てたり、些細なことに喜んだりと、どこにでもいそうなタイプなので、はっきりいってあまりカッコよくない。そんな主人公たちを身近に感じられてうれしい気分にもなるが、人の失敗を見てニンマリしているようで、複雑な心境にもなる。まあ、それだけ巧く表現できているということはたしかだ。

No.5 6点 haruka
(2011/05/29 12:24登録)
警察ものを離れても切れ味の鋭さは変わらず。

No.4 9点 HORNET
(2011/01/09 19:55登録)
 表題作は,刑事を夢見て看守として職を終えた男が,看守ならではの眼である殺人事件の真相を暴く話。新聞社,秘書などさまざまな舞台で繰り広げられるその他の話もGoodです。さすがとしか言いようがない。

No.3 7点 E-BANKER
(2010/10/14 21:03登録)
さまざまな職業に従事する人間の矜持を描いた短編集。
相変わらず高レベルの作品が並びます。
①「看守眼」=刑事になりたかった男(退職した看守)の執念? 1つの物事を継続することの大切さを教えられます。
②「自伝」=展開がやや安易な気がする。
③「口癖」=他人より優位に立ちたいという主人公の心理・・・何となく分かる気がします。(悲しき小市民ですね)
④「午前五時の侵入者」=分かるなぁ・・・保身的な上司ってこういう反応をするんですよねぇ・・・
⑤「静かな家」=作者得意のマスコミネタ。自分のミスを隠したい気持ち・・・よく分かります。
⑥「秘書課の男」=女よりも男の”妬み”の方が嫌らしく感じてしまいますが、気持ちはよく分かる!
以上6編。
組織に生きる人間を描いた作品が多くて、どうしても自分の姿と重ねて読んでしまいます。
ただ、作品の質的には他の佳作よりは落ちる印象。

No.2 6点 まさむね
(2010/02/11 15:23登録)
様々な職業者を主人公にすえ,その心の葛藤を描ききる技量はさすが。謎の配置加減も見事。
6つの短編のうち,私は「秘書課の男」が何気に好きですね。一番渋い作品かもしれませんが,「分かるな~」って妙に納得する作品でした。

No.1 6点 おしょわ
(2008/12/07 15:53登録)
やぱっり事件性のある話の方がうまいと思うので、警察かせめて記者の話が良いですね。

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