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ミステリの祭典

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ぼんくら
「ぼんくら」シリーズ 1

作家 宮部みゆき
出版日2000年04月
平均点8.22点
書評数9人

No.9 9点 ALFA
(2022/03/29 16:16登録)
ミステリーの読書歴は長いが自分の好みを認識したのはわりあい最近のこと。
それまであまり手を付けなかった「本格、新本格」の有名作を読んでほとんど楽しめなかったことに我ながら驚いた。ロジックやトリックは精緻でも文章は平板、キャラ造形は浅くてげんなりさせられるものが多かった。
逆に言うと起伏のあるストーリーを練達の文体と深い人物造形で読めれば、別に犯罪なんか起こらなくてもいいなーと思ってしまうのだ。

ネタバレします。



この作品はまさにそれ。周辺部分で殺人は起きるが、大仕掛けの謎そのものは結果的に犯罪には結びつかない。
短編と見せかけて、次第にそれらが関連し謎が深まっていく構成は見事。
よくこなれた文体も楽しい。ときに興が乗って書きすぎるのはこの作家の癖だが。
人物の造形もいい。大人たちは心の綾がしみじみとするし、子供たちはかわいい。弓之助とおでこの異能ぶりは結構シュールなのだが妙になじんでしまう。

そうはいってもせっかくこれだけの謎を仕掛けたんだから、その根底にダークな犯罪が存在してほしかったとは思う。湊屋総右衛門はもっと心に深い闇を抱えた人物でもいい。

他の作品でも見かけたが、作者は夕暮れを「彼誰時(かわたれどき)」としているが今は明け方に限るのでは? 江戸の話だからいいか・・・

No.8 7点 猫サーカス
(2021/08/03 18:54登録)
巻頭の「殺し屋」から「拝む男」までの五短編は、長屋に住むさまざまな人間を列伝的に描いた人情話で大いに読ませる。そして謎解きに平四郎が動き出す優に一冊分の分量がある。「長い影」まで読み進むと、ホワイダニットをメインに据えた、連作時代ミステリという構成と、先の短編が全体のプロローグを兼ねていたことが明らかになってくる。この長丁場を持たせるには肝心の謎がやや弱いのが残念。だが細部に目をやれば、適度にいい加減な平四郎や現実を見据えて精いっぱい生きるお徳など、庶民の姿が手を伸ばせば届くように生き生きと活写されている。人間が持つ業を温かい視点で肯定的に描く、作者の真骨頂が色濃くにじみ出ているといえるでしょう。

No.7 9点 ボンボン
(2012/11/25 11:24登録)
江戸の人たちが本当にそこに居るようだ。実際に饅頭を食べようと開いた口や、ゴロンと寝っころがった畳が擦れているのや、向こうの角を急いで駆けていく人が上げた砂煙なんかを目の前に見ているようなリアルさは相変わらず。
大勢の人の人生が大きく動くわりには、その核になる原因が、ちょっと小さいような、アンバランスな感じを受けるが、続編を読み進めれば、それは解消されていく。
大作、傑作、ではあるけれど、多彩な登場人物の軽妙な掛け合いで、ぽんぽん進んでいき、宮部みゆきらしく、無理なく、楽しく読める。

No.6 5点 白い風
(2011/11/07 13:03登録)
はじめは江戸時代の事件を一つ一つ紐解いていく短編集かと思ったけど、全部が連なる大長編だった…。
主人公は題名の”ぼんくら”同心だけど、周りのキャラが個性的で面白いと思った。
その中でも異才の少年・弓之助・おでこが好きかも(笑)
ただ、事件の中心の長屋の人間が徐々に消えていく・・・その背景と云うか理由がイマイチ納得が出来なかった・・・。
内容は面白いけど、ミステリとして採点すると、ちょっと辛口になっちゃうね。

No.5 7点 E
(2010/07/17 21:31登録)
文庫で上下巻あり嬉しいな作品(爆)。
個々の登場人物が魅力的でスラスラ読めました。最後に繋がり、纏まっていく様も凄い。
時代背景もしっかりしていて、非常に楽しめました!

No.4 7点 itokin
(2008/09/10 11:19登録)
江戸時代の下町の暮らしの状況が絵を見る様に表現されているのは流石、巧みな構成とそれぞれのキャラクターで十分楽しめたが、中盤で少しだれるのと後半の盛り上がりに欠ける又少し長すぎる様に思う。

No.3 10点 ぐぅ
(2005/08/28 15:52登録)
茂吉親分が長生きしていて嬉しかったですww
平井さんの人柄は憎めないし、おでこと弓之介はかわいいし、話の内容もおもしろくて最高でしたwww

No.2 10点 美来
(2001/08/07 14:07登録)
いつもの、宮部さんお得意人情時代劇(それも大好きですが)だと思っていたら、あれよあれよの展開に一気読みいたしました。
おもしろいです。巧いです。
# ほかの作品の登場人物が、名前だけでてくるのも
# ファン心理をくすぐるし。

No.1 10点
(2001/06/04 04:05登録)
鉄瓶長屋の中で次々に起こる事件を描きつつ、
やがて長屋そのものの成り立ちの謎に迫ってゆくという
構成は実にうまいです。
ミステリとしての骨格もしっかりしているし、
何より登場人物が面白い。
やっぱり宮部みゆき良いなぁ〜(^^)。

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