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ミステリの祭典

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本格篇「眼中の悪魔」
山田風太郎ミステリー傑作選

作家 山田風太郎
出版日2001年03月
平均点7.75点
書評数8人

No.8 6点 いいちこ
(2017/09/22 19:41登録)
本格編と銘打っているものの、ロジックの堅牢性やトリックの妙よりも、登場人物の内面に迫る心理描写に重点が置かれている作風。
真相は比較的予想しやすい作品が多く、サプライズには物足りなさが残るものの、手記を利用したメタフィクショナルなアプローチを多用するなど、新本格にも繋がる先駆的なプロットで古さを感じさせなかった。
大きな外れがなく水準以上の作品が揃っている点も評価

No.7 7点 蟷螂の斧
(2016/01/27 10:21登録)
表紙がいい!!!。これは「快楽の園」(ボス・1450?~1516))の一部分ですが、非常に本作の内容とマッチしていると思いました。一つは、「司祭館の殺人」(本作のマイベスト)の青年と娘のような感じを受けたこと。もう一つはこの絵はレオナルド・ダ・ヴィンチと同時代に描かれていますが、当時では、かなり先駆的なシュールレアリスムの作品でした。風太郎氏のこれら諸作品も、”先駆的”なミステリー要素を多分に含んでいましたね。数作品に登場する、あるモチーフが、この後の「太陽黒点」(1963)に繋がってゆくのも良くわかりました。

余談ですが、「誰にも出来る殺人」が折原一氏に影響を与えた作品であることの紹介です。氏のブログより~『18歳の頃、このへんてこりんな小説を読んで、「ミステリ作家になれるものなら、こういう作品を書きたいな」と思った。私にとってバイブル的な作品なのだ。ある意味、私の原点なんですね。』~ということで早速オマージュ作品である「天井裏の散歩者」を読まなければ・・・。

No.6 10点 斎藤警部
(2016/01/09 03:01登録)
眼中の悪魔/虚像淫楽/厨子家の悪霊/笛を吹く犯罪/死者の呼び声/墓掘人/恋罪/黄色い下宿人/司祭館の殺人/誰にも出来る殺人
(光文社文庫)

「はじめての風太郎ミステリ」として広く読まれて欲しい本。(そういや評者がむかし某アンソロジーで初めて読んだ風太郎が表題作「眼中の悪魔」でありました)味が深く癖は強いが読みにくい代物では決してない、と言いたい所だが現代の本格作家一般に較べれば格段と文章が練れて凝っており語彙選択の宇宙も広大、この絢爛たる流儀に馴れずして到底サクサクとは行けないのかも知れない、それもまた良しと呑み込んでいただく他ございません。

たとえば清張で言う’社会派’の’社会’の部分を’医学’に置き換えた様なドラマ性も豊かにディープな医学派本格ミステリ「眼中の悪魔」から、最早新本格と呼ぶしかない最後の「誰にも出来る殺人」(長篇)まで、途中決して素通り出来ない魅力的な各駅を経て一気に駆け抜ける(なんか言葉が矛盾してますが)風圧も快い破壊力抜群の一冊です。「風太郎ミステリと言えば」の代表作も数多く収録され、氏の胆力気力充実ぶりを概観するにもってこいと言えましょう。「厨子家の悪霊」の分厚いおぞましさと反転の速度感、「虚像淫楽」に沁み込んだ切れ味眩しい耽美も素敵ですが、個人的には何より「司祭館の殺人」にて放射される苦しくも堅牢な人間悲劇 in whodunitのぎらぎらした暗黒図が忘れえぬ味だ。「死者の呼び声」、「墓掘人」等、比較的無名な作もどれもこれも皆凄い。

君は、読まなければいけない! 

No.5 8点 ボナンザ
(2014/04/08 15:32登録)
かなり高水準な短編集。特に黄色い下宿人と虚像淫楽が好きだ。
誰にもできる殺人もオチは読めるが、本格とホラーが混じった野心作だと思う。

No.4 8点 こう
(2012/02/05 00:04登録)
 10年ほど前にこの全集を手に取るまで山田風太郎がミステリ作家だということすら知りませんでした。60~70年前にこんな作品を書く作家がいたんだなあという驚きがありました。 この作品集ではやはり「誰にでも出来る殺人」と「厨子家の悪霊」が印象に残っています。折原一の「天井裏の散歩者」なんかまんま「誰にでも出来る殺人」のパロディですが本家には敵いません。全部が本格というわけではないですし一部読みにくい文体の作品もありましたが楽しめた記憶があります。

No.3 6点 江守森江
(2010/07/25 10:40登録)
書評1000件カウントダウン「5」
先日、テレ東で表題作のドラマが再放送されたので図書館でおさらいしてきた。
表題作だけさらって終わる予定だったが、このサイトの書評を図書館に出向く前に読んだので一冊丸ごと読んで来た。
探偵作家クラブ賞の受賞作なので表題作になったのだろうが作品集の目玉は別の作品だった。
技巧的作品は嗜好の中心にはないが読み落としは厳禁レベルな作品だった。
※御礼
本来のファジーな読書なら間違いなく読み落とす状況だったので、このサイトで先に書評された方々に感謝致します「有難う御座いました」m(_ _)m

No.2 8点 kanamori
(2010/07/07 21:32登録)
ミステリ傑作選1(光文社文庫)。
タイトルの”本格篇”は、必ずしも内容に沿っているとは思いませんが、次の”名探偵篇”とのかね合いでしょうか。とにかくファンには贅沢なラインナップです。
「誰でも出来る殺人」は、短編の連鎖式による長編ミステリで、現在の新本格もしくは折原一が書いたと言ってもいいほど先駆的なプロットで、最終話でのサプライズもお約束の構成。
夏目漱石とホームズが競演する「黄色い下宿人」はいまやパスティーシュの古典名作でしょう。
「厨子家の悪霊」のドンデン返しの連続技もすごいですね。

No.1 9点 teddhiri
(2009/03/04 18:37登録)
 目玉となるのは連作「誰にでもできる殺人」だろう。連作の仕掛け、操り、手記、女性というものへの問いかけなど作者が好んで扱うテーマが盛りだくさんでまたそのいずれもが巧みに処理されている。そして真相は割とわかりやすいもののラストのシーンはホラーめいた怖さを感じさせる。
 他にも「厨子家の悪霊」、「死者の呼び声」、「眼中の悪魔」など傑作ぞろいの作品集。

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