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ミステリの祭典

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モザイク事件帳
改題『大きな森の小さな密室』

作家 小林泰三
出版日2008年02月
平均点5.57点
書評数7人

No.7 7点 モグラの対義語はモゲラ
(2021/09/07 06:40登録)
読んだのは「大きな森の小さな密室」と改題された文庫版。
個々の短編の質にはかなり差があり、多分何が良くて何が悪いかも人に寄りけりだろうなと思わせる、要するにかなりごった煮な短編集だったのだが、その一冊で様々な味が楽しめる点が気に入った。強いて共通項を挙げるなら、どの作品も起こっている事象の割にあまりにもノリが軽すぎる点か。まあそもそもどの話もリアリティに欠け、何なら「バカミス」章以降は全部バカミスにしてもいいくらいな短編集である。そのノリや文は内容に合っていて、個人的にはマイナス点に映らなかった。
特に面白かったのは「犯人当て」と「メタ」の話だ。前者は犯人の検討こそ簡単なものの、作中でも書かれていた私のような初級者が囚われがちな「密室は好んで計画にしない」という思考の裏をかいている。そのテーマをちゃんと説明してくれる点も含めて良かった。後者も論理学を用いた裏テーマを感じ、メタネタによって強引かつ上手に落とし込んでいるのが好きだ。単なるメタネタからの犯人当てで終わっていたら全く楽しめなかっただろう。寧ろこの犯人当てしたいがためのメタネタなんだろうなあ。
やや爪の甘い話があったり冗長な会話にうんざりしたこともあったが、それは作品全体のテンションでちょっと許しちゃうかな。別に大真面目な小説の看板を掲げていたわけじゃないし。

No.6 3点 青い車
(2019/07/31 07:45登録)
 個々の短編の出来はともかく、こういうバラバラな味が楽しめる、悪く言えばごった煮感のある短編集は好みではありません。そして肝心の個々の内容に注目して見ても、密室殺人には既視感があり、倒叙は決め手がぬるく、バカミスは滑っているなど、美味しくないお菓子の詰め合わせのような物足りなさを感じました。

No.5 5点 まさむね
(2013/12/04 21:53登録)
 「大きな森の小さな密室」と改題された文庫版で読了。
 元のタイトルが「モザイク事件帳」だっただけに,様々な探偵役が登場し,様々なネタを見せてくれます。
 その点は確かに楽しめたのですが,一方で,均一感が中途半端すぎてイマイチ入り込みにくい…という印象も。
 個人的なベストは「更新世の殺人」。登場人物たちのバカすぎる理論構成が笑えます。日本の考古学を揺るがした例の事件を思い出しながら読みましょう。(ちなみに,東野氏の裏作風に似てますね)

No.4 5点 E-BANKER
(2013/11/01 22:14登録)
旧題「モザイク事件帳」から改題された「大きな森の小さな密室」名にて読了。
探偵役やその他の人物たちがモザイク調に登場してくる変形の連作短編集。

①「大きな森の小さな密室」=『犯人当て』がメインの一篇。一応ロジカルな密室ものなのだが、どこか変な設定と妙な登場人物。そして探偵役は徳さん・・・
②「氷橋」=『倒叙ミステリ』と銘打たれた一篇。ホテルの浴槽で感電死した死者とアリバイトリックがメイン。こう書くと正調なミステリーっぽいが、やっぱりどこか変な感じ。探偵役は西条弁護士。
③「自らの伝言」=『安楽椅子探偵』が主題。探偵役は新藤礼都。彼女の鋭い推理が炸裂するのだが・・・やっぱりどこか歪んでいるような気がする。
④「更新世の殺人」=ずばり『バカミス』として書かれた一篇。数百万年前の地層から今死んだばかりのような新鮮な死体が発見される、というのがメインの謎。怪しい考古学者も登場してくるし・・・。
⑤「正直者の逆説」=『??ミステリー』と銘打たれた作品。丸鋸先生が探偵役なのだが、正直よく分からん!
⑥「遺体の代弁者」=こちらは『SFミステリ』として書かれた一篇。普通の作品でさえブッ飛び気味なのに、さらにSFときたら「こんなのありか?」というような作品になっている。これも十分『バカミス』ではないか?
⑦「路上に放置されたパン屑の研究」=最後は『日常の謎』がテーマ。なぜか2、3日おきに決まった路上に置かれているパン屑が本作の謎となる。これも普通の「日常の謎」ではなく、狙いのよく分からない仕掛けが施されている。探偵役は田村二吉。

以上7編。
う~ん。何ていうか、どれも一筋縄ではいかないような短編が並んでいる不思議な作品。
ロジカルなようでいて、そうではなく、作者の遊び心がどの作品にも投影されているという印象を受けた。

ただ、正直クオリティとしてはあまり高いとは感じなかったし、個人的にはストライクとは言えない作品だった。
たまには毛色の変わったものを読みたいという方ならどうぞ。
(個人的ベストは②かな。⑦もまずまず良かった。)

No.3 6点 メルカトル
(2011/12/30 23:49登録)
7つのテーマ別にまとめられた短編集。
最も気に入ったのは、最終話の日常の謎を扱った『路上に放置されたパン屑の研究』かな。
普通の日常の謎解き物かと思わせておいて、一捻りしてあるところが心憎い。
それぞれの作品のクオリティが標準をクリアしており、本格物とユーモアの両面が楽しめるのが、優れた点ではないだろうか。
『正直者の逆説』の前半の道行きシーンも私好みで、楽しめた。ユーモアを交えながらも緊迫した道行がなんとも言えない、いい味を出している。

No.2 8点 虫暮部
(2011/12/07 17:05登録)
 『大きな森の小さな密室』と改題のうえ文庫化されたものを、同一内容だと気付かず図書館で予約してしまい、せっかくなので再読したところ話を全て忘れており、全編しっかり楽しめた私である。田村ニ吉か。
 随所で暴走する論理(屁理屈?)が面白い。

No.1 5点 江守森江
(2009/07/21 14:52登録)
変形の連作短編集。
各編のテーマと登場人物がモザイクをなしている。
バカバカしさと本気度がモザイクして意外に楽しく読める。
日常の謎編は、推理過程よりオチが楽しい。
再読したいと思わないが、暇つぶしにお勧め。

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