入れ子細工の夜 |
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作家 | 阿津川辰海 |
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出版日 | 2022年05月 |
平均点 | 6.50点 |
書評数 | 6人 |
No.6 | 7点 | zuso | |
(2023/09/01 22:39登録) 一冊の古書に着目しつつ、殺人の被害者の足取りを追う私立探偵というハードボイルド風の構図の第一話や、犯人当てミステリを大学入試に用いる試みを描く第二話、学生プロレスの面々が覆面で集う第四話など、スタイルは異なるが、いずれも意外性に満ちた短編が並ぶ。中でも注目したいのは、第三話である表題作。読者の目撃する光景が二転三転していく様は華麗の極み。 |
No.5 | 7点 | パメル | |
(2022/11/02 08:27登録) コロナ禍を背景に、いずれも趣向を活かした四編からなる短編集。 「危険な賭け~私立探偵・若槻晴海~」殺されたフリー記者の持ち物を探偵の「おれ」が捜し歩く。被害者は立ち寄ったバーでカバンを取り違えたらしい。取り違えたカバンには購入した古本が詰まっていたことから、最寄りの古書店に聞き込みに回る。ハードボイルドのオマージュに、意外な真相が待ち受けている捜索の行方もさることながら、何より古書ミステリ趣向が味わい深い。 「二〇二一年度入試という題の推理小説」ある大学が入試に推理小説の謎解きを採用したことから起きる騒動劇で、問題の犯人当てミステリや様々な関係文書から再構成されている。手記とSNSのみで構成された見事な作話とブラックユーモアが冴えている。 「入れ子細工の夜」アンソニー・シェーファーの舞台劇を映画化した「探偵スルース」にオマージュを捧げた一編で、秘密の暴露合戦の果てに明かされるのは。舞台風の密室劇と知能戦で、凝りに凝ったつくりで読ませる。 「六人の激高するマスクマン」六つの大学のプロレスサークルの代表者会議が、久々に執り行われるが、やがてスター格のマスクマンが殺されたという知らせが入る。設定はマニアックでドタバタ劇だが、謎解きはロジカル。 |
No.4 | 7点 | HORNET | |
(2022/10/09 13:07登録) ある本を探して古本屋をめぐる私立探偵、「犯人当て」を入試問題にすると言い出した大学、現実と思ったら劇、というのも全部劇…とマトリョーシカのように延々と続く物語、大学のプロレス同好会で起きた奇妙な殺人劇…さまざまな仕掛けで一味違ったミステリを提供する短編集。 「透明人間は密室に潜む」に続く、作者の第2短編集。個人的にはこっちのほうが面白かった。 特に、入試問題を「犯人当て」にするというイカれた大学をめぐる物語「二〇二一年度入試という題の推理小説」は、設定としてもそれなりのミステリとしても面白かった。あとはやっぱり表題作「入れ尾細工の夜」。何層にも渡る入れ子構造はややくどい感じもあるが、ここまで貫かれると笑ってしまう。 粒ぞろいの作品集。 |
No.3 | 6点 | まさむね | |
(2022/10/04 19:46登録) ノンシリーズの短編集。バラエティに富んでいて、読み得ではあるのですが、こねくり回し過ぎでは?と感じる短編もあって、好き嫌いは分かれるかもしれません。 1 危険な賭け ハードボイルド調。転換も含めて好きなタイプの作品ではある。ちなみに、副題は「私立探偵・若槻晴海」。作者は若竹七海ファンか。 2 二〇二一年度入試という題の推理小説 作中作である「煙の殺人」は、大学入試問題として書かれた犯人当て小説という設定。その扱いが秀逸で面白い。 3 入れ子細工の夜 うーむ。考えられているのだろうけど、だから面白くなっているのかといえば、そうでもないような気が。 4 六人の激昻するマスクマン 学生プロレスを題材にした作品。コミカルで嫌いではないけれども、飛距離は短め。 |
No.2 | 5点 | 虫暮部 | |
(2022/08/02 11:50登録) この人は、あまりギミックを弄さずに、純度の高いロジカルな犯人当てを狙った方がいいんじゃないだろうか。「煙の殺人」をそのまま一作品として出してもいいくらいだ。 |
No.1 | 7点 | 人並由真 | |
(2022/07/29 21:56登録) (ネタバレなし) 作者の第二短編(中編)集。 ちなみに現状の評者は、好評の前短編集『透明人間は密室に潜む』はまだ未読である。 ミステリ専門誌「ジャーロ」に掲載された四本の中編作品(ほとんどノンシリーズもの)を収録。いずれもパズラーとしての要素に相応の高い比重を置いている。 あまり多くは言えない(言いたくない)が、最初の作品が秀作すぎて、良い意味で絶句。残りの3本にも期待が高まる。 続く二本目も「大学の入試試験にオリジナルのフーダニットパズラーが出題されたら?」という設定で、全国的な狂騒を描きながら同時にユカイな謎解き作品を提供。 三本目は、う~ん……たぶん作者的にはこれが一番自信作で力作なのだろうし、やりたいこともわかるのだが、評者はくどくて起伏感を減じ、昼食後に読んだらうっすら眠くなった。すみません(汗)。 四本目は、プロレス愛好家の複数の大学サークル関係者の中で起きた殺人事件で、ネタはともかくミステリとしては一番マトモ。終盤のオチも面白いが、この一冊の中で読むと、思う所もあり。 長編(葛城シリーズ)などとはまた違った持ち味で楽しかった。特に1~3本目は、本人が筋金入りのミステリマニアである作者自身ならではの素養が盛り込まれて、その辺も実に楽しい。 本サイトではまだ前短編集に比べてあまり読まれていないようだが、たぶん楽しめる人もそれなりにいると思う。 |