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ミステリの祭典

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ウィッチフォード毒殺事件
ロジャー・シェリンガム

作家 アントニイ・バークリー
出版日2002年09月
平均点6.00点
書評数7人

No.7 6点 みりん
(2024/04/17 21:04登録)
突然ですが問題を出しましょう。
クリスティ(17) クロフツ(12) ヴァン・ダイン(4) クイーン(5) カー(0)とするとバークリー(?)←このカッコの中に入る数字は何でしょう。(国書刊行会『レイトン・コートの謎』の巻末解説より引用・改題)






「77」と正解できた方、バケモノです。尊敬します。()の中の数字は長編第一作が邦訳されるまでに要した年数とのことです(カーはや!)。 なんでこんな問題を出したかというと、このシリーズのレビュー数がこんなに少ないのが不思議だったからですが、ようやく分かりました。このシリーズを日本語で追えるようになったのはつい最近のことだったんですね。その幸せを噛みしめながら、これからも続きを拝読いたします。

ロジャー・シェリンガムは私にとって大変魅力的な探偵です。読者に隠し事をしないのもそうですが、ロジックや物的証拠より人間の心理を重視する探偵ってのも珍しいです。決め手は結局証言なんかいってツッコミは置いておきます。2転3転した先の真相は脱力系ではありましたが、言われてみるとたしかに盲点でした。あと、他の方も触れておられますが、本筋以外の最大の注目点はシェリンガムの尖りすぎた女性観でしょう。エクスキューズも用意して保険バッチリです笑

珍しく誤植っぽいを見つけたので指摘(初版なので、版によっては治ってるかも)
晶文社(ハードカバー) p293の最後の行 
× アレンは暖炉のそばで〜
○ アレックは暖炉のそばで〜

No.6 6点 E-BANKER
(2023/03/26 13:11登録)
ロジャー・シェリンガムの探偵譚では二作目に当たる。
最近多読しているバークリー作品なのだが、結構当たりはずれがある印象、なのだが・・・
1926年の発表。

~ロンドン近郊の町・ウィッチフォードで発生した毒殺事件に興味を持ったシェリンガムは、早速現地へと乗り込んだ。事件はフランス出身のベントリー夫人が、実業家の夫を砒素で毒殺した容疑で告発されたもので、状況証拠は圧倒的、有罪は間違いないとのことだったが、これに疑問を感じたシェリンガムは、友人のアレック、お転婆娘のシーラとともにアマチュア探偵団を結成して捜査に着手する。物的証拠よりも心理的なものに重きを置いた「心理的探偵小説」を目指すことを宣言した、巨匠バークリーの記念すべき第二作~

まずは、実にバークリーらしい作品だった。というのが率直な感想。
前回読んだのが、かなり毛色の異なる作品(「パニック・パーティ」)だったので、尚更そういう感想に落ち着いた。
特に中盤は、シェリンガムが行ったり来たりの推理と捜査を繰り返すいつもの展開。容疑者をひとりひとり俎上にあげて、仮説を立てては勝手に壊していく・・・

本作のカギは恐らく「砒素」。もちろん毒殺の原因となった毒物なのだが、シェリンガムは終始コイツに苦しめられることになる。
で、最後に判明する真相。パリまで長期滞在するなど、散々もったいぶった結果がコレか?
いやいや、2023年の現在目線でこれを見てはいけない。この時代なら十分に衝撃的だし、バークリーらしい皮肉めいた真相ともいえる。
あと、本作で気になったのはシェリンガムの女性観。かなり「歪んでいる」。どおりで独身主義のはずだ。そんなシェリンガムは今回シーラというハイティーンの女性とコンビ(トリオ?)を組むことに・・・
ということで本筋以外にもなかなか読みどころは多い作品と言えるかも。
(確かに「心理的」といえば「心理的」だな)

No.5 6点 人並由真
(2022/06/07 15:11登録)
(ネタバレなし)
 ロンドン近郊の町ウィッチフォード。中年の二代目実業家ジョン・ベントリーが若いフランス人の妻ジャクリーヌに毒殺されたとして、容疑者の夫人は逮捕される。「レイトン・コート事件」から二年、作家でアマチュア探偵のロジャー・シェリンガムは新聞で見知ったさる情報に疑念を抱き、友人のアレクサンダー(アレック)・グリアソンとともに、またも事件に介入する。アレックの親戚で、ウィッチフォードに居を構えるジム・ピュアフォイ医師一家の自宅をホームベースにした二人は、医師の19歳の娘シーラも仲間にして、関係者からの情報集めをはじめるが。
 
 1926年の英国作品。シェリンガムシリーズ第二弾。

 流れるような、弾むような翻訳が素晴らしいと思ったが、ベイリーの『死者の靴』なども訳してる藤村女史か。納得である。

 シェリンガムたちが訪ねて回る事件関係者のキャラクター、そして探偵役の当人たちの言動が非常にさじ加減の良いユーモラスさで語られ、とても面白い。俯瞰して見れば地味な筋立てなのにちっとも退屈しないのは、人物造形の良さと、さらには前述の翻訳の上手さゆえだろう。
(とはいえシェリンガムたちが、当の容疑者のジャクリーヌと面会したりしないし、そうしようかと考えもしないのは、ちょっと引っかかった。本来、アマチュア探偵という人種には拘禁されている容疑者にホイホイ会う権限なんかありはしないのだとうそぶく、当時の作者なりのサタイアか?)

 しかし19歳のスカート姿の娘を相手に、その親が笑って? 見ている前でレスリングを仕掛け、女子の服をボロボロにしてしまう20代後半~30代前半の英国青年ってスゴイな、オイ。ん-、当時の英国はいい国であった……。
 
 本作の面白さというか魅力の2~3割はシーラのおかげという気もするし、36歳の独身男シェリンガムもほのかな年の差の感情を抱きかけたようだけど、結局シリーズのレギュラーキャラにはなってないんだよね? 特に解説で触れてもいないし。その辺をわざとハズすのが、評者の抱くバークリーらしいイメージでもある。

 ラストの真相は作者が仕掛けた、当時なりの読者うっちゃり型のサプライズだったんだろうけど、さすがにもう見飽きたオチだし、この作者ならこれくらいは、という感じであんまりトキめかない。ただしそこに持っていくまでの事件の調査の流れの揺り動かしはさすがで、ホメていいのでは、と思う。
 評点はこんなところで。 

No.4 7点 弾十六
(2018/10/30 22:04登録)
1926年出版
実際の有名事件(1889年フローレンス メイブリック事件)をかなり忠実になぞっていて当時の読者はピンときた、ということを読了後、解説で知り、そういうことなら訳者前書きというような形で知らしめた方が効果的かなぁ、と思いました。(ベンスン殺人事件が同年の出版)
探偵トリオの掛け合いはちょっとうるさいくらいで、若気(作者33歳)の至りですね。小ネタの出し方が上手、大ネタは意見が分かれるところかな。(私はアリです) ところで若い娘への折檻が衝撃的だったんですが…
この小説でも「最上階の殺人」でも、どうやら原文に日付の誤りがあり、翻訳では訂正されてるとのこと。英国紳士は細かいことを気にしない、ということなのか…

No.3 6点 青い車
(2016/09/25 18:27登録)
 シェリンガムをはじめとした登場人物たちの軽妙なやりとりでテンポよく読むことができました。しかし、不満点も大きくあります。あれこれとそれらしい推理を並べた末に待っているのは脱力ものの真相で、これをスタンダードな本格推理だと思って初めて手に取ったらがっかりするかもしれません。厳しい意見ですが、シェリンガムは前作『レイトン・コートの秘密』や後の『第二の銃声』などを読んでもわかるとおり、人格的にも能力的にも名探偵の風上にも置けないと言えます。しかし、いろいろ読み込んだ読者からしたらこの皮肉な後味はたまらないものがあるでしょう。

No.2 5点 nukkam
(2015/07/05 21:49登録)
(ネタバレなしです) 1926年発表のロジャー・シェリンガムシリーズ第2作はユーモア豊かな本格派推理小説で、サスペンスには乏しくとも主役3人のやり取りがなかなか楽しくて退屈しませんでした。実際に起きた殺人事件からヒントを得ているそうですが、晶文社版の巻末解説を読むと実に多くのネタを作品に取り入れているかに驚かされます(借り物ネタが多いことに個人的に感心できないところもありますが)。最終章の「究極の答え」もビギナー読者をミステリー嫌いにしてしまう危険性のある結末だと思います(実験精神は誉めてあげたいところですが)。明らかにミステリー通向けの作品です。

No.1 6点 kanamori
(2011/01/09 12:49登録)
迷探偵・ロジャー・シェリンガム、シリーズの2作目。
ベントリー夫人の夫毒殺疑惑を巡って、前作からのワトソン役・アレックと姪の娘・シーラの3人組で調査に乗り出します。調査過程はやや平板な展開ですが、3人のやり取りが面白くて楽しめる。
バークリーといえば”多重解決”ですが、本書がそのとっかかりの作品ではないでしょうか。ただ、シェリンガムの結論が二転三転した末の真相は脱力ぎみ。

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