廃遊園地の殺人 |
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作家 | 斜線堂有紀 |
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出版日 | 2021年09月 |
平均点 | 6.60点 |
書評数 | 5人 |
No.5 | 7点 | まさむね | |
(2023/01/22 19:49登録) プレオープンの際の銃乱射事件により廃園に追い込まれた遊園地「イリュジオンランド」を舞台にした、ド直球の本格作品。廃園後20年を経て招待されたメンバーの顔触れからして、堪らない王道の薫り(?)が漂ってきます。終盤になって、自分の中で何やらごちゃごちゃしてしまった面はあるのですが(まぁ私のせいなのでしょうが)、よく考えられた作品だと思います。廃遊園地という舞台設定も好印象で、優等生な本格パズラー。 ちなみに、冒頭シーンの表記についてはsophiaさんと全く同じ意見です。その件に関する真相判明後、即「あれ?」と読み返し、「うーむ」と首を捻った次第であります。 |
No.4 | 5点 | sophia | |
(2022/04/09 03:54登録) ネタバレあり 過去の銃乱射事件の謎の方が魅力的で、現在の殺人事件が埋もれてしまいました。読み終わって間もないのに「犯人誰でしたっけ」という状態ですし、トリックもそんな労力をかけてまでやることなのかと感じました。いつの間にか「ハルくんは誰」というのが話の軸になっているのにも違和感がありました。そこに付随して最も気になるのが冒頭のワンシーンの「籤付晴乃は」という表記ですねえ。ここを「ハルくんは」と書いていればなあと切に思います。 それから本作品はどうも読みにくかったです。主人公を含め主要人物に過去を隠している(あるいは記憶が曖昧な)人物が多いせいか、物語に感情移入しにくかったです。取って付けたような主人公の出自もあまり響かず。先に書かれている方もいますが、伏線が多すぎるのも読みにくさの一因でしょうか。しかもそのほとんどが解決編まで回収されないので整理するのが大変で、快適な読書とは言い難かったです(終わってみると特に意味のなかったダミーの伏線もちらほらありましたし)。ある程度は回収しつつ話を進めてほしいと思いました。「楽園とは探偵の不在なり」ではもっと「小説」が上手かった気がするので失望が大きいです。 |
No.3 | 7点 | HORNET | |
(2022/01/23 22:39登録) 廃墟マニアの眞上永太郎は、廃遊園地「イリュジオンランド」の特別開放に招待された。イリュジオンランドは20年前、プレオープンの日に園内で銃乱射事件が起き、4人の死亡者を出してオープンすることなく廃園になった幻の遊園地だった。呼ばれた面々は園の所有者から、園内での「宝探し」を指示される。ところがその中で、次々と参加者が殺されていく… 絵に描いたような設定のクローズドサークルもの。廃遊園地という設定といい、申し分ない。20年前の遊園地設立の裏にある、地元住民と開発企業との確執を下敷きにして、参加者の裏事情が次第に明らかになっていく展開もベタではあるが目が離せない。 非常に良く仕組まれた展開ではあるのだが、それゆえに思わせぶりな記述で投げかけられる伏線がちょっと多くて、全体像がだんだん分からなくなりがちだった。廃遊園地という舞台設定とそれを生かした道具立てで、文句なく王道の本格ミステリとしてかなり楽しむことはできた。 |
No.2 | 7点 | 人並由真 | |
(2021/12/01 15:32登録) (ネタバレなし) 2020年代の初め。27歳のコンビニ店員で、廃墟マニアとしてブログ「つれづれ廃墟日記」の管理人でもある眞上永太郎は、面識もない富豪・十嶋庵(としま いおり)の招待を受けて、廃墟となった遊園地「イリュジオンランド」を訪れた。そこは20年前のとある惨劇を機に、開園後すぐに閉園した施設で、今回は眞上、そして数名の男女が集められていた。十嶋の部下を称する美女、佐義雨緋彩(さぎめ ひいろ)は一同に、とあるクエストととんでもない賞品を提示するが、やがて施設の中で不可解な殺人事件が。 話題の作者だが、著作はこれが初読み。 チェーホフの銃理論のごとく、ほとんどの叙述にムダのないガチガチのパズラーで、終盤まで堪能した(少し胃にもたれる思いだが~汗~)。 かと言って地味にもならず、割とはっちゃけたサプライズなども用意してあるのは。まるでクリスティアナ・ブランドの良く出来た長編のごとし。 特に感心したのは、物語の後半、かなり意外な事実が明かされると同時に、今度はそこでじゃあ……とホワイダニット的な謎の興味が湧くが、そこから更に(中略)な事件の深淵に向かっていく流れ。 良く練られた力作で優秀作であり、本年の収穫のひとつだと思う。 が、一方で、なんというか、こういう優等生的でウェルメイドなパズラーならベスト5に入ってアタリマエという妙に醒めた感触を抱かせないでもない(我ながら、何という贅沢を言っているのだ、とも思うが)。 謎解きミステリとしての解法は完了した上での、ラストの思わせぶりなクロージングがなかなか気になる。これって……。 本書(元版のハードカバー)の巻頭に、作中の遊園地「イリュジオンランド」の冊子パンフレットそのものを添付してある趣向はイイね。 |
No.1 | 7点 | 虫暮部 | |
(2021/10/24 17:11登録) クローズド・サークルだけどあまりサスペンスは感じられない。それこそ台詞にあるように“遊園地は広過ぎる”からだろうか。明らかになる裏事情には目を瞠ったし、そこに至る諸々も上手く示されていたと思う。 ただ、これは単なるイチャモンになるが、ちょっと上手過ぎて“今時の優れた本格ミステリ作品はこうだ!”と言う枠に綺麗に嵌まり過ぎな感はある。悪役も含めてみんな“いい子”でスッキリ読み終えてしまった。 |