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ミステリの祭典

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ストーンサークルの殺人
ワシントン・ポーシリーズ

作家 M・W・クレイヴン
出版日2020年09月
平均点5.67点
書評数3人

No.3 6点 HORNET
(2021/08/15 21:22登録)
 イギリス・カンブリア州にあるいくつものストーンサークルで、老人が次々焼き殺される残虐な事件が発生。さらに3番目の被害者にはなぜか停職中の警官・ワシントン・ポーの名前が刻み付けられていた...。全く身に覚えのないポーは処分を解かれ、捜査に加わることに―英国推理作家協会賞最優秀長篇賞ゴールドダガー受賞作。

 猟奇的な連続殺人に、組織では浮いている(嫌われている)敏腕警官が立ち向かい、縦組織の頭の固い連中を出し抜いて真相を暴き出す―読んでいて楽しいしまぁ安心感はある。ただ、ちょっと最近の海外ものでパターン化しているのは否めないかな。

 捜査本部がパーコンテンション・ポイントを「5」と読み違えていることを、手紙によって指摘してくる時点で警察内部犯であることに気づかなきゃいけないのでは?本編では主人公・ポーをはじめ、まったくそのことに触れていない。そのこともあったから、真犯人は意外なようで「意外さを狙えばまぁこの人だろうなぁ」という予感はあった。
 だから犯人が誰かというよりも、過去に何があったのか?という真相の方が興味深く面白かった。偶然にすぎる糸の手繰り方はついていけない感もややあったが、ポーとティリーの親交を深める様が好ましく、読み進める面白さをかなり担っていた。
 結論として、シリーズ続編が続いているそうなので読みたい。

No.2 6点 猫サーカス
(2020/12/20 12:14登録)
イングランド北西部に位置するカンプリア州は湖水など豊かな自然に恵まれ、ストーンサークルが多く点在する。そのストーンサークルを舞台に同年齢層の男性を標的とした残虐な焼殺事件が次々に発生し、犯人は「イモレーション・マン」と呼ばれる。3番目の被害者の損壊した遺体に、不祥事で停職中の国家犯罪対策庁重大犯罪分析課の警官ワシントン・ポーの名前と「5」と思しき字が刻まれていることが判明した結果、ポーは処分を解かれ捜査に加わることになる。被害者の共通事項は一体何なのか、犯人の動機は何か、謎は簡単に解明されない。が、事件の背後に潜む果てしない闇は、地道な捜査により徐々に明らかになっていく。世間一般の常識を超えて、正義を求める欲求が強いポーは、上層部との摩擦が絶えない。そのため、時として窮地に陥るが、機転を利かせて状況を打開する。警察内部では敬遠される存在だが、物語の主人公としては魅力的。物語はほぼ一貫してポーの三人称現在進行形で書かれていることから、視点が固定し捜査の進行も頭に入りやすい。捜査手法は理に適っており、推論の過程にも無理がない。

No.1 5点 nukkam
(2020/12/10 21:39登録)
(ネタバレなしです) フルーク刑事シリーズを書いていた英国のM・W・クレイヴンが2018年に新シリーズとして発表したのがワシントン・ポーを主人公にした警察小説の本書です。カンブリア州に点在するストーンサークルで「イモレーション・マン」による猟奇的な殺人が相次ぎます。3人目の被害者の身体にはポーの名前が刻まれていますがポーには全く心当たりがありません。なおグロテスク描写は抑え気味です。ハヤカワ文庫版で550ページを超す厚みがあり、しかも前半はひたすら地味な捜査に終始します。小出しに出される手掛かりもストレートなものばかりで読者が推理に参加する要素もなさそう、と思っていたら50章の終わりで「ポーはイモレーション・マンの正体を突きとめた」と本格派推理小説を期待させるではありませんか(勝手に興奮する私)。もっとも登場人物の1人からも指摘されているようにポーの推理説明は飛躍し過ぎの感がありますし、犯人が判明した後も物語は68章まで続きます。丁寧に説明される動機にはハードボイルド小説にありそうな非情な背景が浮かび上がるし、新たな可能性が示唆される最終章も印象的です。私の好みとは少し乖離している作品ですが、英国推理作家協会のゴールド・ダガー賞を獲得したのは納得です。

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