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ミステリの祭典

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弓弦城殺人事件

作家 カーター・ディクスン
出版日1976年04月
平均点4.00点
書評数8人

No.8 5点 虫暮部
(2023/11/04 13:52登録)
 心理戦は面白かった。ピストルを外套のポケットに隠すくだりなど、“偽の手掛かり” だと考えれば後期クイーン問題みたいである。1933年と言えばEQは国名シリーズの頃。
 “どうせ使えない無記名式債券” についても、単純ながら盲点を突かれた思い。ところがこっちは、使えるのは一人だけ → その人に疑いをかける為に、使えない債権をわざと盗んだ = 偽の手掛かり、かと思いきや本物だ。二重基準(笑)?

 もしやこの作者については “不可能犯罪の巨匠” 的なイメージを捨てた方が楽しめるのだろうか。

No.7 6点 レッドキング
(2021/04/03 18:43登録)
ゴシックな旧館どころか、おどろおどろしき古城舞台の連続殺人もの。「密室」状態の部屋で見つかった奇怪な姿態の絞殺死体。被害者以外ただ一人室内にいた人物には実行不可能な犯行手口だった・・フーハウ? 
「カーター・ディクスン」名義第一弾。まだヘンリー・メリヴェール卿は登場せず、ゴーントていう一発屋探偵・・いまいち魅力ない・・が事件を仕切り、解明ロジック実に鮮やかで、密室トリックもなかなか。城内見取図ほしかった。

No.6 4点 弾十六
(2020/02/04 01:09登録)
1933年出版。ハヤカワ文庫で読了。
探偵役のジョン・ゴーントってJohn of Gaunt(1340-1399)と関係あり? JDC/CDの背の高い痩せ型の探偵役は長続きしませんね。建物の図面がないので何が起こってるんだかさっぱりわからない物語。p117で探偵自身が「この家の略図を書いてくれ」と言ってます。ということはオリジナル版には図面があったのか。全体的に中途半端な印象。謎に魅力が無いし、サスペンスも無い。頭のオカシイ城の主人の造型も作りものめいています。解決篇の途中で寝ちゃいました。
以下トリビア。原文は入手出来ませんでした。
作中時間は1931年9月10日(p9)と明記。
現在価値は英国消費者物価指数基準1931/2020で68.57倍、1ポンド=9667円で換算。
銃は「ブラウニングの.22口径… ぴかぴかする玩具… 山羊の足型の引き金のついた小さなピストル」と「.三二口径のスミス・ウェスン」と「.四五口径の標準型のウェブリイ・スコット社製軍用自動拳銃… 挿弾子をみると3発なくなっていた」が登場。.22口径でBrowningの名を冠するポケットピストルは見当たらず。ブローニング・デザインのポケットピストルなら最も成功したFN モデル1906 Vest Pocketの.25口径。(人気銃だったのでColt M1908をはじめ沢山の亜流あるが全て.25口径です。) 「山羊の足型の引き金」は不明。.32口径は詳細が書かれてないので特定不可。.45口径ウェブリイ・スコット社製で自動拳銃(automatic)なら私の大好きなWebley Self-Loading Pistol mk1(1910)、弾丸は.455 Webley Auto弾。「挿弾子」はmagazine clip(7発収納)のことかな?「元ごめのピストル」(p194)は原文breech-loadingだろうけど、普通ピストルには使わない言い方。文脈からリボルバーの事だと思います。(英国の当時の軍用リボルバーは.455 Webley Mk II弾のWebley & Scott社製Webley Mk. VIでトップブレイク式なので「元ごめ」のイメージにふさわしい。)
p7 図書室にあるいわくつきのドイツ製の時計… 弾の痕が残っている: 冒頭のネタ振りはp255で回収されます。(わかりにくい文章なので読み返してやっと気づきました。)
p10 冒険ってどんなことだ?… 小声で… ダイヤモンド6個… オルロフに用心して…: JDC/CDのイメージはいつもこんなの。
p12 スリッパ探し: 輪になる遊戯hunt-the-slipperとは違うようだ。後半(p225)で出てくるが、ここのはスリッパを家のどこかに隠して他の人が探すゲーム。
p15 映画でベン・ハーの役: Lew Wallaceの小説Ben-Hur: A Tale of the Christ(1880)をもとに、戦車レースを中心とした短篇映画Ben Hur(1907 サイレント15分)、長篇映画Ben-Hur: A Tale of the Christ(1925 サイレント143分)が製作されている。
p15 エルストリ: ElstreeはElstree Film Studiosで有名。さまざまな会社の撮影所がHertfordshireのBorehamwoodとElstreeあたりに点在している。Neptune Film Companyが1914年にBorehamwoodに撮影所を開設したのが最初。(英wiki)
p15 外人部隊の士官に扮装: French Foreign Legion(Légion étrangère)が出てくる当時の有名映画はBeau Geste(1926 サイレント、原作P. C. Wren 1924)、Morocco(1930 トーキー、原作Benno VignyのAmy Jolly, die Frau aus Marrakesch 1927)。
p16 サマセットあたり… 西部の人間だもんで、恐ろしく迷信深い: 後ろの方(p167)には「ナイフを十字に置く… 手鏡を落として割る」などの例が出てきます。WebサイトHISTORIC UKにBritish Superstitionsを簡潔にまとめたページあり。
p17 五百年もかかって幽霊ひとつ出せないなんて、この城もまったく能なし: 英国人は幽霊好き。
p38 スティルトン: Stilton cheeseにはPenicillium roquefortiを加えたBlueと普通のWhiteがあるが、ここはBlueの方か。
p40 あの頃は、食後は男ばかりで席を移して、女たちをさんざん心配させたもんだが…: 女性たちの方がDrawing Roomに引っ込む習慣だと思っていましたが…
p40 朝食に… 牛肉とビール… 立派な英国の習慣: 胃もたれしそう。Henry Fielding作の英国の愛国歌The Roast Beef of Old England(1731)を連想しました。
p65『モルグ街の殺人』: 本作にはポオが他にも『盗まれた手紙』(p225),『大鴉』(p239)
p82 電蓄: 12枚のレコードを次々と自動的にかける(p84)機能あり。レコード16枚表裏対応のCapehart Amperion Record Changer(1930)が動いてメカニズムが分かる某Tubeの映像あり。
p82 進め、キリストの兵士たちよ: 賛美歌Onward, Christian Soldiers、作詞Sabine Baring-Gould 1865、作曲Arthur Sullivan 1871。
p91 千ポンドの無記名債権: 967万円。
p91 口述録音器(ディクタフォン): 録音メディアは蝋管。再生しても自然な声には聞こえないようだ。(p103) 「くだらん噂」云々は有名作を批判してる?
p104 一万五千ポンド: 1億4500万円。知人への遺贈額。
p112 ちん: 夫人の犬。名前は呼ばれない。
p125 軍隊ではスエーデン体操と言っていた: Swedish Gymnastics (別名the Swedish Movement Cure)は1800年代初期に詩人でゲーテ、シラー、エッダを研究していたPehr Henrik Ling(1776-1839)により創始された。1880年代に英国陸軍のW. B. G. Cleather大佐が興味を持って導入を計画し、後任のGeorge Malcolm Fox大佐の尽力もあって1900年代に採用された。
p140 ロシヤ小説: Constance Garnett訳The Brothers Karamazov(1912)が英国でのロシア文学流行の嚆矢だという。
p141 グーズベリーののった安皿: ハメットがBlack Mask誌のショーを嵌めたgoose-berry lay(The Maltese Falcon 1929)を連想したのですが、テニスンを作曲家だと思ってるような若者の適当な戯言なので関係ないか。
p142 かくて消えにけり(シク・トランジト): Thomas à Kempis作De Imitatione Christi(1418-1427)に"O quam cito transit gloria mundi"とあるのが早い例らしい。(wiki)
p145 いわしの入った箱: Canned Sardine(イワシの缶詰)のことか?
p163『導け、やさしき光よ』: 賛美歌Lead, Kindly Light、作詞Saint John Henry Newman(1833)、作曲John Bacchus Dykes(1865) 他の作曲家も曲をつけているようだ。
p177 捕手はミットの一枚革の下に厚い牛肉(ビフテキ)を入れ… : 昔の野球のキャッチャーの工夫。豪速球で手が痛くなるのを防ぐには一番良い詰め物らしい。(何かで読んだ記憶があるが、誰のエピソードだったかな… ) ここら辺はJDCの子供時分の思い出か。
p180 イングルズビイの怪談: Richard Harris Barham作、Ingoldsby Legends(1837)、可笑しみある創作伝説集らしい。セイヤーズ にも結構言及あり。
p211 ユンクの『言葉の連想試験』… 嘘発見器: どちらも誤魔化せるし、くだらん、というJDCの結論。
p218 スログ・タブズ: 訳注 呪い言葉の一種。調べつかず。
p224 ウッドハウスの物語: 盗品を自室で発見して、また別の人の部屋に押し込むシチュエーション。どの作品のことか。

No.5 5点 nukkam
(2016/09/17 00:59登録)
(ネタバレなしです) ジョン・ディクスン・カーにはカーター・ディクスンという別のペンネームがあり、1933年に発表した本書がその名義での第1作です(正確には初版はカー・ディクスン名義だったそうですが)。作者得意の密室殺人事件を扱っていますが本書のトリックはかなり無茶です。あんなトリックを実行したら痕跡が残ってすぐにばれるはずだと思います。そして実際に残っているのですが、にもかかわらず探偵役のジョン・ゴーントが最後に説明するまでずっと謎のまま引っ張っているところに無理筋を感じます。怪奇小説的な暗い雰囲気づくりに成功しており、甲冑の不気味さなんかはなかなかいい味出しています。カー名義の「絞首台の謎」(1931年)が好きな読者なら本書も受け容れやすいかもしれません。

No.4 2点 斎藤警部
(2015/05/21 14:20登録)
昔好きだった作家の未読の初期作って事で割と期待したんだけど、見事に詰まんなかったなぁ~ 何も心動くものが無い。わざわざ作ったおどろおどろしい舞台装置が無駄になっちゃいましたねぇ~ 

No.3 3点 toyotama
(2010/10/08 10:47登録)
事件のストーリーと動機を並べると、それなりの物語なのですが、なんかわざと理解しにくくしている印象。
舞台設定もここでなくてもいいんじゃないか、と。

No.2 5点 kanamori
(2010/06/27 22:24登録)
怪奇性とか古城での密室殺人という点で初期作らしい雰囲気が漂っているのはいいんですが、密室トリックは「夜歩く」と同様のちょっとアンフェアな証言内容が関わっているのがすっきりしません。
本作限りの探偵役・犯罪学者ジョン・ゴーントも個性がなさすぎですね。

No.1 2点 Tetchy
(2008/08/25 19:49登録)
カーの、無駄に長いという悪いくせが出た作品。
屋敷の見取り図はせめて欲しい。
登場人物の配置が全く解らん。

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