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Tetchyさん
平均点: 6.74点 書評数: 1617件

プロフィール高評価と近い人書評おすすめ

No.657 9点 邪教集団トワイライトの追撃- ディーン・クーンツ 2009/10/28 00:10
※大いにネタバレ

本書のポイントとなっているのが「黄昏教団」というカルト集団が通常のクーンツ作品に登場する常軌を逸した狂乱の集団に配されているのが最後に裏返りそうになるところ。
つまり正しいのは主人公達なのか「黄昏集団」だったのか、一体どっちなの!?ってところだ。
だから題名の「邪教集団」ってのも実は誤りかもしれなく、しかも最後までそれを明かさなかったところが演出として心憎いのだ。
それがまた何故「黄昏教団」が再三再四に渡って行方を完全にくらましていたかに思えた主人公達を正確無比に追撃できたのかが終盤になって明かされるにおいて実はジョーイが・・・なんていう疑惑が沸々と巻き起こる辺り、演出効果は抜群である。

そして物語はクーンツ特有のハッピー・エンドの情景を呈して終幕となるのだが、果たしてそれは本当にハッピー・エンドなのかという疑問が残るのも従来から逸脱してて○。
結構無視できない作品だぞ、これは。クーンツ、やるなぁ!!

No.656 7点 夜の終りに- ディーン・クーンツ 2009/10/27 00:27
ベトナム戦争帰りで社会人的な普通の生活が出来ない―女も抱けない!!―チェイスが脅迫者を辿る事で魅力的な女性と出会い、自己を再生していくという男の復活劇の要素を含んでおり、正に小説のツボを押さえた構成になっている。
が、故に定型を脱せず、凡百のミステリとなっているのも確か。犯人の正体が判明してからの展開がいかにも呆気ない。

No.655 8点 戦慄のシャドウファイア- ディーン・クーンツ 2009/10/25 20:24
ジェットコースターのような疾走感で今回も物語は駆け抜ける。しかも相手は正真正銘の怪物で自分が想像していたモダン・ホラーかくありきという形と合致しており、非常に小気味よい。

物語はクーンツ特有のなかなか本質を明かさない焦らした駆け引き(本当にじれったい!!)をしながら進み、まず主人公二人は追う立場で始まる。そこでご対面とならずに今度は一路ラスベガスに向かい、主客一転して今度は追われる身になる。この辺りの構成の妙が実に巧い。
また脇役で出てくるフェルゼン・《石》・キール氏の造詣もまた印象的だ。これが結末において、ある人物の行動に必然性を与えている。

ただ、やはり良くも悪くもこのエンターテインメント色の濃さがハリウッド的でいささか軽めに感じるのも事実で、もうちょっとそれぞれの人物・エピソード・文体等、文学的深みがあってもいいのではないかと思われる。

No.654 6点 エラリー・クイーンの事件簿1- エラリイ・クイーン 2009/10/25 01:31
映画オリジナル脚本を小説にリライトした「消えた死体」、「ペントハウスの謎」の2編を収録した中編集。
「消えた死体」は長編『ニッポン樫鳥の謎』の原形だろう。同一のアイデアで別の話を作っただけで、物語の構成は全く一緒だ。もう少しアレンジが欲しいところだ。ただなぜ犯人が死体を隠すのかという理由はさすがに秀逸。物語のスピード感といい、適度な長さといい、『ニッポン樫鳥の謎』が無ければ、クイーンの作品としても上位の部類に入っただろう。

「ペントハウスの謎」はクイーンの作品にしては異色とも云える派手な事件である。腹話術師と同じ船に乗り合わせた身元詐称の人物たち、消えた宝石の謎など色々エッセンスを放り込んでいるが、逆に謎の焦点が曖昧になり、最後の切れ味に欠ける。特に犯人を限定する決め手となったあるしるしの正体は全く解らないだろう。
容疑者一同を集めて謎解きという、古典的な手法に則った解決シーンだが、カタルシスは得られなかった。

No.653 10点 ウィスパーズ- ディーン・クーンツ 2009/10/24 00:01
はっきり云って最後にやられた。打ちのめされました。

最後に現れるブルーノ・フライを脅かす「ささやき」の正体のおぞましさ!背筋に文字通り虫唾が走りました。

あれだけの存在感で迫るブルーノ・フライがいやに打たれ弱かったり、最期が呆気なかったり、幾分か瑕疵はあるが、トニーとヒラリーのラヴ・シーンに共感し、思わず胸が熱いなるシーンがあったり(クーンツはこういう人と人との感情の交わらせ方が非常に巧い!!)、フランクの殉職シーン、また各登場人物の愛する人を失った哀しみなどドラマティックな演出が散りばめられており、非常に美味しい作品だった。

No.652 9点 ファントム- ディーン・クーンツ 2009/10/23 00:21
非常にエンターテインメント性の高い内容でその場面展開はハリウッド映画を観ている様。
内容は未知なる生物が次々に人間に襲い掛かり殺していくという80年代に流行った一連のスプラッタ・ムーヴィーのようなもの。

今回は珍しくプロットに破綻がなく、とてつもないアイデアをこれでもかこれでもかと云わんばかりに注ぎ込み、読者をぐいぐいと引き込んでくる。世評高い本作を体験してようやくクーンツの本領を垣間見た。特に長い作品なのに緊張感が持続していたのが賞賛に値しよう。
今までストーリーは非常に面白いのだがなぜ主人公が最後に残るのかという必然性に対する根拠が曖昧で非常に失望することが多く、また物語が盛り上がっていく途中で突然投げ出したような唐突な終わり方をする話もあり、いまいちカタルシスを感じなかったのだが、今回は「太古からの敵」の設定といい、その絶望感といい、また「太古からの敵」の弱点といい、淀みがなかった

No.651 8点 仮面山荘殺人事件- 東野圭吾 2009/10/21 20:55
嵐の山荘物東野風変奏曲。
まず表向きの事件についてはなんとか犯人は解った。東野氏の文章はあまりに自然すぎてなかなか手掛かりが掴めにくいのだが、これはどうにか真相解明前に解った。
が、しかし本作の肝はそのあとですな。
いやあ、見事騙された!
ひょっとして・・・というのはあったけど、プロローグ読み直していやそれはないだろうと確信したんだけどね。
しかし朋美は可哀想だな~。

※以下大いにネタバレ

よくよく考えるとこの真相にはちょっと無理も感じずに入られない。
24時間、2日間も一つの館で役者といえども芝居を続けられるのかという素朴な疑問だ。しかもその中には素人が4人。どこかで必ずボロが出そうな気がする。その辺をちらりと匂わせるような描写がまたあれば更にこの作品はより現実味を増しただろう。
まあ、この手の趣向の作品は「夢オチ」とほとんど同義なので、読んだ後に裏切られ感が強いのだが、全然そんなことはなかった。お見事!

No.650 6点 悪魔は夜はばたく- ディーン・クーンツ 2009/10/21 00:37
今回もサイキック物で、主人公はこれから起きる殺人事件が予見できる能力をもった女性。これが同時に事件を解決出来るような知力と腕っぷしを持ち合わせていないのがミソ。
だが今回はあまりに売れる小説を書くことに専念したクーンツのあざとさがいやに目立った。特に犯人が早々と判っているのにも拘らず、じれったく引っ張っていく嫌らしさ。マックスを犯人にも仕向けるあからさまなミスリードの数々。
それに冒頭の犯人が主人公を名指しするエピソード、あれは一体何だったの!?

No.649 7点 12月の扉- ディーン・クーンツ 2009/10/19 23:45
正にハリウッド映画のようなケレン味たっぷりの一作だったが、前半うまくのれなかった。これはほとんど好みの問題だと思うのだが、「あれ」が具体的にどのような方法で被害者を抹殺するのかをもっと早い段階で見せてもらえば印象は強まったように思う。人が死んだという結果のみを何度も書かれるとやきもきしてしまうのだ、私は。
しかし、主人公のダンをもう少し書込めば引立ったように思えるのだが。トラウマがある点や一匹狼という設定はステレオタイプ過ぎると思う。

No.648 9点 逃切- ディーン・クーンツ 2009/10/18 20:42
題名と表紙と内容紹介文を読めば正にディック・フランシスの競馬ミステリを想起させるが、作者はクーンツである。
内容はそれぞれ個性を持つ主人公率いる犯罪グループの中に裏切者がいたり、かつての栄華の復活を願う一見完璧な破滅型経営者がいたり、筋金入りのベテランガードマンがいたり、そして二重三重に起こる事件の数々を配したりとこれでもかこれでもかと読者を愉しませようとする旺盛ぶり。しかも競馬の事を詳細に描くのだから抜け目がない。
つくづく器用な作家だ、クーンツは。

No.647 8点 ストーカー- ディーン・クーンツ 2009/10/18 01:17
スピルバーグの「激突」を思い起こさせるような設定でストーカーの恐怖を描いた本作において特筆されるべきことは本作が’73年に書かれた物であることだ。
日本に「ストーカー」という言葉が上陸したのは恐らく’90年代初頭であろうからその先駆性は素晴らしい。

ただやはりクーンツ特有の瑕というのは本作にもある。
まずはホウヴァルなる刑事をただの狂言回しとしてしか機能させなかった事。多分クーンツはこのキャラクターを持て余したのだろう。
もう1点はソランドの精神病が何に起因するかが明白でない事。これは小説の設定において必要不可欠ではないだろうか?とは云え、スリルとサスペンスを十分に織込んだ本書はやはり愉しめたというのが本音。

No.646 7点 闇の殺戮- ディーン・クーンツ 2009/10/14 20:28
良くも悪くもサーヴィス精神旺盛である。畳み掛けるようにこれでもか、これでもかとばかりに山場を積み重ねていく。
主人公に他の皆とは違う特異性を持たせるのがクーンツの特色だが、『殺人プログラミング』同様、その根拠というか蓋然性はいまいち説得力に欠ける。そこが瑕と云えば瑕だが、これだけエンタテインメントしてれば良しとしよう。

No.645 6点 闇の囁き- ディーン・クーンツ 2009/10/13 23:26
内容はよくあるダメな男(この場合は少年だが)が自分の身に降りかかった災難を打破するために一念発起し、新たな自分に生まれ変わるといった常道を踏襲しており目新しさは特にない。
強いて云うならば今までのクーンツ作品感じてきた「何故こういう事になったのか」という理由が曖昧だったのに対し、今回は明瞭だった事(ロイの性格の事ね)。また、ロイからのコリンの逃亡劇も迫真物だった。

No.644 5点 闇の眼- ディーン・クーンツ 2009/10/12 23:23
これはダニーを超能力者に設定した事である意味全てが決まってしまったと云っていい。
状況を盛り立てる為のホラー性は無論だが、ほとんど無力なティナとエリオットがさほど危機一髪な目に遭わないでトントン拍子にダニーと出逢えてしまうという御都合のいいストーリー展開もそうである。更には最後の宿敵になる筈だったアレクサンダーなど戦わずして惨めな結末を迎えるといった、まるで作者が途中で物語を放棄してしまった感すら窺える。

ただこの作品、続編がありそうな気配もあるが、どうだろうか?

No.643 10点 エニグマ奇襲指令- マイケル・バー=ゾウハー 2009/10/11 20:19
これは傑作!正に掘り出し物だ。
予想以上に面白かった!ドキドキハラハラの連続活劇だ。

エニグマ強奪の任を受けてドイツ支配下のパリ潜入行を行うベルヴォアールが、盗賊時代の仲間達の協力を得ながらドイツの包囲網を常に相手の想定の斜め上を走りながら潜り抜けていく。一歩遅れれば囚われの身となり、拷問に晒される状況下、時には鮮やかに、時にはギリギリの所で、はたまた敵の目前で包囲網をかいくぐるスリリングな展開が目白押しだ。

主人公の稀代の大泥棒ベルヴォアールの造形が素晴らしい。
もうルパンそのものである。これはバー=ゾウハーの手による怪盗ルパン譚、パスティーシュでもあるのだ。

いやあ、スパイ小説でありながら、ピカレスク小説でもあり、さらにルパンのパスティーシュでもあるという、非常に贅沢な作品だ。
そしてそれを難なく作品として纏めているバー=ゾウハーの手腕に改めて感服。

No.642 9点 殺人プログラミング- ディーン・クーンツ 2009/10/11 00:57
まさに私をして、これがクーンツなのかと驚嘆させられた一作。
初の「クーンツ体験」としてこの作品を読んだ事を実に幸運に思う。

内容は正にこれぞエンタテインメントとばかりに畳み掛ける活劇のオンパレードである。男やもめの獣医の再婚話と村人に起きたごく小さな災い事という静かな立上り方からソーンズベリの狂気の度合いと呼応するように徐々に加速度を増していく筋運びは職人技の一言に尽きる。

特にサブリミナル効果を77年に主題として扱っているあたりにクーンツの先見性をまざまざと見せ付けられた。
いやはや流石はクーンツである。

No.641 7点 すべてがFになる- 森博嗣 2009/10/10 00:27
※ちょっとネタバレ。

一応、前知識なしで読んだが、犯行方法は解った。
が、365日24時間記録し続ける監視カメラが見張っている上に、コンピューター制御されたセキュリティシステムで管理された室内で起きた密室殺人、しかもカメラには誰も部屋を出入りした人物が映っていないという堅牢なる密室殺人の謎解きは完璧と思いがちなコンピューターの盲点を突く真相は解らず、この手際は実に鮮やかだった。

また犯人も最初に明かされる人物ではなかった事はある意味救われた。なぜなら天才の子は必ずしも天才ではないからだ。その逆もまた然り。14歳を節目に昆虫が親の肉を喰らって成長するが如く、天才が天才を殺して成長するなど、荒唐無稽なマンガ的設定に過ぎない。それを敢えて踏みとどまったところがこの作品の良識といえよう。

あまりに有名すぎる故、他の作品を読んでからこの作品に入ると犯人は解ってしまうという欠点がある。やっぱりシリーズ物は順番に読むに限るわ。

No.640 5点 郵便配達は二度ベルを鳴らす- ジェームス・ケイン 2009/10/09 01:23
※ネタバレ含む※

意外にも“顔”の見えない小説だった。ニックとコーラ、そして主人公のフランクの3人で暮らし始める冒頭からニック殺害までは、実に際立っていたのだが、その後の裁判において弁護士や検事が出てくる辺りから、全体像がぼやけて非常に散漫な印象を受けた。
主題が見えないのだ。

結局フランクは捕まり、死刑執行までにも至る。だが、捕まる時の彼は冒頭に現れた時の彼ではなく、女を愛し、共に暮らす事を望む1人の男にしか過ぎない。

そうか、幸福とは掴もうとするとするりと抜けていく皮肉なもの、そう作者は云いたいのか。
もしくは悪行は必ず報いを受けるものだと?
もう一度、数年後に読み返す必要があるのかもしれない。

No.639 7点 氷海の嵐- デイヴィッド・ポイヤー 2009/10/07 23:41
ポイヤーの作風というのは全体的に陰鬱で、ウィットに富んだ会話、スカッとするようなアクションというのは皆無だ。
みな何か心に秘めて、様子を窺っている、そんな表に感情を表さない人物たちばかりだ。
本書は更に舞台が極寒の海で、しかも船の中という閉鎖空間だから、更に拍車が掛かっているようだ。
それでもけっこう読ませるのだよ、これが。
でも疲れた時に読むと、更に疲れるんだよなぁ。

No.638 7点 湾岸の敵- デイヴィッド・ポイヤー 2009/10/06 23:46
ポイヤーの作品ではこれが一番かも。

上下巻それぞれ400ページくらいの厚さだったけれど、見開き2ページが文字で真っ黒になるほどに書き込まれていたし、しかも事細かに軍用艦の設備やら装備やら操船用語などの専門用語が頻出するわで、かなり読むのに時間が掛かったが、登場人物が格段に増え、彼らに関する叙述も細かくなり、逆に単に熱いだけでなく、物語にも厚みが出たように感じた。
冒険小説好きでも、P.D.ジェイムズなみの書き込みはちょっと躊躇うだろうから、かなり読者を選ぶ作家だな。

ま、この作品に関しては私はけっこう好きだけど。

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