皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
していません。ご注意を!
Tetchyさん |
|
---|---|
平均点: 6.73点 | 書評数: 1631件 |
No.671 | 7点 | マンハッタン魔の北壁- ディーン・クーンツ | 2009/12/20 00:13 |
---|---|---|---|
プロットは及第点だろう。登山中の事故で瀕死の重傷を負って自信を喪失した登山家がある事件を切っ掛けに困難に立ち向かいその自信を取り戻していくというストーリーに加え、連続殺人鬼、事故の際に身につけた千里眼の能力など、クーンツの味付けが溢れているし、殺人鬼が1人ではなく、2人が同一の犯行を行うというアイデアも秀逸だろう。さらにマンハッタンのビルを山に見立て、垂直降下するアイデアも主人公の設定と見事に呼応し、素晴らしい。
しかし、どこか響かない。 有りか無しかといえば有りだが、文庫で十分だというのも事実だ。 |
No.670 | 7点 | 球形の季節- 恩田陸 | 2009/12/19 00:09 |
---|---|---|---|
物語は地方都市のありがちな風景と高校生のありがちな生活から超常的な内容へとシフトしていく。
その因子となるのがある能力を持った4人の高校生たちだ。 この辺の感覚的な用語や描写は後の常野物語に続くのかな? そして彼ら彼女らが共有しているある世界、「あそこ」がある。そこは暗くて殺伐とした風景が広がっているだけのところなのに、何故か妙に落ち着く場所だ。それは誰もが思春期の頃に抱く逃亡願望、つまり「ここではない何処か」。 物語はどこか鬱屈とした日常から脱出したいと毎日もやもやとした気持ちを抱いている高校生たちが能力者藤田晋の勧誘によって教会へ集うところで終る。 このもどかしさを感じる物語の結び方こそが、身体は大人でも心は未熟な高校生たちが抱く、なんとも説明のつかない不安定な感情を思わせる。 これはこれでいいのだと私は思った。 |
No.669 | 5点 | デイン家の呪い- ダシール・ハメット | 2009/12/17 23:51 |
---|---|---|---|
いわゆる“ファム・ファタール”物の系譜になるのだろうか。
ゲイブリエル・レゲットという女性に関わる者が次々と死んでいく。彼女の旧家であるデイン家の呪いなのかという、サスペンスと本格ミステリの妙味が合わさったようなプロットなのだが、登場人物が多すぎるのと事件の構造が複雑すぎて、最後の真相が明かされても、こんなの解るかい!と憤慨してしまった。 あと、悲劇のヒロインであるゲイブリエルがあまり、ほとんど魅力的でないのが難点か。 チャンドラーが書くとまた違った印象になったのだろうけれど。 |
No.668 | 7点 | 原始の骨- アーロン・エルキンズ | 2009/12/16 23:36 |
---|---|---|---|
今回は考古学の世界によくある捏造事件をテーマにした構成になっている。これは作中でも語られている実際の事件がモチーフになっているのだろう。
特に今回最も興味を惹いたのは作中に出てくるある有名な地名について。ネタとしては小粒だが、こういうの、けっこう好きだ。 しかしミステリの部分よりもシリーズを重ねるにつれ、余談の部分であった考古学の学術的薀蓄の方が面白くなってきているのだから、困った物だ。 そしてジョン・ロウの不在は痛い。彼がいないと物語のウィットが薄まった感じがするのだ。既に本国では次作が刊行されているそうなので、それにはジョンが登場している事を願うばかりだ。 |
No.667 | 7点 | 犬坊里美の冒険- 島田荘司 | 2009/12/16 00:05 |
---|---|---|---|
本書の狙いは裁判員制度について、一般の人に馴染みの薄い裁判という仕組みを解り易く噛み砕いて紹介する事だろう。そのために犬坊里美というキャラクターを弁護士の卵とし、その他司法に関わる法律家の卵たちを配して、裁判官、検察官、そして弁護士それぞれの立場と役割を述べていく。
そして裁判に関わる事の意味が色々包含されてもいる。 歪んだ社会の構造、そして日本の弁護士が形を軽減したいがためにこの手の司法取引に応じる事が逆に真犯人を世にのさばらされているのだと島田は登場人物の口を借りて糾弾する。これこそが本書で最も語りたかったテーマだろう。 ただ法曹関係者が本書を読んだ時にどう思うだろうか? メッセージは立派だが、修習生である里美が法廷で弁論を行ったり、最後のシーンの大団円など、夢物語のように思え、失笑を買うのではないだろうか。逆に云えば里美というキャラクター性からこのようなテイストを持ち込んだのかもしれないが、個人的にはいっぱしの法廷ミステリを期待していただけに何か物足りなさを感じる。 しかし本作における犬坊里美の年齢は27歳であるが、これがとても年相応とは思えないほど落ち着きがなく、涙脆い。 これでは二十歳前後の女性だし、せめて24までというのが正直な思いだ。 色々注文をつけたい作品だが、それでも最後のトリックには驚かされたし、何より伏線のさり気なさにビックリした。 |
No.666 | 7点 | 闇へ降りゆく- ディーン・クーンツ | 2009/11/10 00:20 |
---|---|---|---|
クーンツ得意のモダン・ホラーからファンタジー、幻想小説とその趣向は様々。
全7作の内、最も印象的だったのは最初の「フン族のアッチラ女王」と表題作。 特に前者は植物のような宇宙生命体の侵略物語がどう題名に結びつくのかが興味深く、その趣向に1本取られた感じだ(結局、内容的には大したことはないのだが)。 後者は家に現れる地下への階段というモチーフが秀逸。つまりこれこそが主人公の心の闇の深さのメタファーとなっており、人の悪意の底知れなさを仄めかして終わるラストも良い。 その他特殊な両手を備えた男の哀しみを描く「オリーの手」、実験で知能を備えた鼠の恐怖を描いた「罠」、異世界から来た熊の私立探偵とその異世界と現世との比較が面白い「ブルーノ」など前述のようにヴァラエティに富んでいるがずば抜けた物がないのも確か。 |
No.665 | 6点 | 祝福の園の殺人- 篠田真由美 | 2009/11/08 20:42 |
---|---|---|---|
今回は中世イタリアの僻地の村に存在する豪奢な庭園。
作者あとがきによれば、前作『琥珀の城の殺人』が少女マンガ的だという思いもよらない評価を受けて、逆に徹底して少女マンガ的舞台設定、登場人物にしたとのこと。 篠田作品は2回目だったのでこちらに免疫が出来たようで、『琥珀の城の殺人』よりも浸れた。 しかし4件もの殺人事件、しかも3件は毒殺事件と本格ミステリのコードに忠実なのに、全く本格ミステリらしくない。 実際事件そのものよりも「祝福の庭」に込められた亡き美女エレオノーラの切なる思いに胸を打たれた。 しかしそんなエレオノーラが愛を捧げた相手がそれほどいい男かぁ?と首を傾げたくなるほど魅力的に描かれていないので、違和感があって仕方がなかったが。 |
No.664 | 5点 | 琥珀の城の殺人- 篠田真由美 | 2009/11/08 01:56 |
---|---|---|---|
異色なのは18世紀の東ヨーロッパという日本ではなく異国、しかも現代ではなく中世を舞台にしている点だろう。この頃の価値観は現在とは全く違い、疑わしき者を公然と犯人に仕立て上げ、処刑する事が罷り通っていた時代である。
それはカーの『エドマンド・ゴッドフリー卿殺害事件』でも理不尽な裁判の様子が詳細に描かれており、冤罪などは当たり前だった。そういう風潮ゆえに成し得うる、このシチュエーション。 つまり身元不明の部外者を犯人に仕立て上げ、その無実を晴らすために探偵役を買って出る事になる状況はなかなかに斬新である。 その頃多く刊行された本格ミステリの例に洩れず、本書でも1つだけでなく、連続殺人事件が発生する。 吸血夫人バートリ・エルジェベトから引き継がれたという呪われし深紅の琥珀の首飾り、夜な夜な館の周囲を徘徊する亡き前妻の亡霊、消失した伯爵の死体と、甲冑を着た伯爵に襲われ、瀕死の重傷を負う侍従などなど、幻想味溢れる謎の応酬に作中に散りばめられた奇行と伝説めいた逸話が最後に謎の因子の1つ1つとなって表層からは見えなかった真のブリーセンエック伯爵家の姿、犯人解明、そしてさらに真犯人の解明、更に本書でしきりにその存在を謳われた琥珀の存在意義が溶け合って明らかに真相と、本格ミステリのコードに実に忠実に則った作品である。 しかし何故かそれらは上滑りで物語は流れていくように感じた。 やはり足りないのは「物語の力」だろう。人の心に物語を浸透させるフックのような物を感じなかった。 物語世界や登場人物たちも何となく一昔前の低迷期の少女マンガを読んでいるようだった。 そこまで云うと酷だろうか。 |
No.663 | 6点 | 奇妙な道- ディーン・クーンツ | 2009/11/04 00:29 |
---|---|---|---|
「奇妙な道」と「ハロウィーンの訪問者」を収録した作品集。
本書の大半を占める前者は自分の理想とする新たな人生を取り戻そうとするという男の再生譚なのだが、どうもこの設定は受け入れ難い。 失敗したらリセットできるという能力はいくらなんでもやりすぎでしょう。 これじゃハッピーエンドに終わるわけだ。 後者は他愛のない話で恐らくこれは児童向けの説教小説だろう。怪物を出すあたり、クーンツらしいといえばそうだが。 実に小粒な印象。 |
No.662 | 5点 | ファンハウス- ディーン・クーンツ | 2009/11/02 23:46 |
---|---|---|---|
赤ん坊を妻に殺され、数年後に元妻の子供を必ず嬲り殺しにすると誓うフリーク・ショーのボス。そしてそのカーニバルがついにやって来る―このワクワクする設定によくぞクーンツ、思い付いたなぁと感心した。
また悪しき子供を産み、殺害したトラウマを持つエレンの、実の娘・息子を抱きしめたいほど可愛がりたいのにそれが出来ない葛藤などドラマも用意され、そして一方、サーカスの方では行く街ごとに第2の息子による性欲を爆発させた殺戮ショーが繰り返される模様も描かれている。 単純な設定を魅力的なエピソードを加えて厚みを持たせていく筆達者ぶりに感心した…のに。 最後は、何とも簡単に終わってしまう。 結局母と娘の確執は解消されたのか、それさえも解らずに敵が死ぬことで物語は幕を閉じ、大味な感じが残されるのだ。 ああ、読み捨て小説の典型だな、こりゃ。 |
No.661 | 4点 | 呪われた少女- ディーン・クーンツ | 2009/11/01 23:15 |
---|---|---|---|
クーンツは巷間ではモダン・ホラー界のヒット・メーカーで通っているが、私に云わせれば、モダン・ホラー界のジョン・ディクスン・カーだという方が最も的を射ていると思う。それほど当り外れの激しい作家なのだ。今回はその例に準えれば外れになろう。
冒頭の少女の苦悶のシーンがその後のテーマに繋がっていくのだが、どちらかと云えば展開は凡庸でクーンツならではという特徴がない。キャロルの私生児が実は、という設定も凡百の小説に見られる「意外ではない意外性」の域を脱せず、あざといテクニックを露呈するだけに。 作者自身も書いてて面白くなくなったのだろうか、『邪教集団~』、『雷鳴の館』でこれでもかとばかり見せ付けた主人公を完膚なきまでに追い詰めていく展開が意外にあっさりと片付けられ、しかも唐突に迎えるあのエンディング。 それ以降を書いて唯一無二の結末を提示するよりもその後あの4人がどうなったのかを読者の想像に委ねる手法を敢えてとったのかは定かではないが、正直消化不足ではないだろうか。 邦題もよくよく考えれば的外れでもあり、う~ん、色々含めて凡作だなぁ。 |
No.660 | 8点 | 邪馬台国はどこですか?- 鯨統一郎 | 2009/11/01 01:49 |
---|---|---|---|
5W1Hで語られる歴史の謎6編―正確に云えば4編目の“WHAT”は動機を尋ねているから“WHY”と同じなのだが―。歴史は覆されるとは別な意味で使われるが本書は正にこの言葉がぴったりの逸品。
今までそういう風に教わっていた事は実はよくよく考えてみるとおかしな部分がある、というのは良くある事で、本作は誰もが常識、通念として捉えていた歴史的事実に潜む矛盾に論理の一突きを食らわす知的興味溢れる歴史ミステリだ。 歴史に詳しいセミプロはだしの作者だからこそ、固定観念を打ち破った理論を構築できたのだろう。 4作目まではホント、これはスゴイ!と思ったが、「維新は~」以降の2編はもうネタ切れ感ありありで、かなりこじつけているなぁと思った。 催眠術で何でも片付けるのは万能すぎるだろう・・・。 ま、それでも大いに愉しめた。 |
No.659 | 9点 | 雷鳴の館- ディーン・クーンツ | 2009/10/30 00:27 |
---|---|---|---|
私的クーンツ裏ベスト。
誰もが胸の奥底に抱いている若き日、もしくは幼き日の恐怖体験を完膚なきまでにこれでもかこれでもかと畳み掛けるように主人公に叩きつけるその様は、もしこれが自分にも身に覚えのある恐怖体験へと擬えさせられ、こちらも仮想体験を余儀なくされた。 しかもとてつもない設定を用いた島田荘司もかくやと云った本格ミステリ的などんでん返し付き。 とにかく恐怖体験に持って行き方が今回はすごかった。今までのクーンツならばじわじわと予兆を畳み掛け、いい加減その物ズバリを出してくれよっ!!といったじれったさがあったのだが、今回は普通に振舞っていた中、ああ、今日は何事もなく過ぎていくのかという安堵感を与えた瞬間、ズドンと主人公を恐怖のどん底に陥れる手際が本当に見事で、背筋がゾクッと来た。 最後の1行はやはりクーンツらしいというべきか。 |
No.658 | 7点 | パンドラ抹殺文書- マイケル・バー=ゾウハー | 2009/10/28 20:12 |
---|---|---|---|
実によどみの無いストーリー展開。まるでスパイ映画の大作を観ているかのように物事が流転する。それも際どいスリルを伴って。
国際謀略小説でありながらも本格ミステリ張りのサプライズを提供するバー=ゾウハー。今回もやってくれた。真相が判明した後に今まで書かれていた内容の意味が全く別の側面を持っていた事が解る。上手い、実に上手い。 しかしそれでも本書は致命的な瑕があると思う。 それはこれほど重要な任務を任せる人選を誤ったという、最も基本的なミスだ。 ジェームズが造反行動を起こす原因は文書を見たシルヴィーを抹殺するように命じられたからだ。彼にはかつて任務を遂行したが故に妻子を犠牲にした過去があることは局内でも知られた事実である。そんな彼に敢えて親しく近づくよう命じておきながら、その対象を殺す命令を下すのは全く以ってナンセンスだろう。 これほど高度な作戦を組み立てながらこのような低次元のケアレスミスを犯すというのはなんとも納得できないところがある。実に勿体無い。 |
No.657 | 9点 | 邪教集団トワイライトの追撃- ディーン・クーンツ | 2009/10/28 00:10 |
---|---|---|---|
※大いにネタバレ
本書のポイントとなっているのが「黄昏教団」というカルト集団が通常のクーンツ作品に登場する常軌を逸した狂乱の集団に配されているのが最後に裏返りそうになるところ。 つまり正しいのは主人公達なのか「黄昏集団」だったのか、一体どっちなの!?ってところだ。 だから題名の「邪教集団」ってのも実は誤りかもしれなく、しかも最後までそれを明かさなかったところが演出として心憎いのだ。 それがまた何故「黄昏教団」が再三再四に渡って行方を完全にくらましていたかに思えた主人公達を正確無比に追撃できたのかが終盤になって明かされるにおいて実はジョーイが・・・なんていう疑惑が沸々と巻き起こる辺り、演出効果は抜群である。 そして物語はクーンツ特有のハッピー・エンドの情景を呈して終幕となるのだが、果たしてそれは本当にハッピー・エンドなのかという疑問が残るのも従来から逸脱してて○。 結構無視できない作品だぞ、これは。クーンツ、やるなぁ!! |
No.656 | 7点 | 夜の終りに- ディーン・クーンツ | 2009/10/27 00:27 |
---|---|---|---|
ベトナム戦争帰りで社会人的な普通の生活が出来ない―女も抱けない!!―チェイスが脅迫者を辿る事で魅力的な女性と出会い、自己を再生していくという男の復活劇の要素を含んでおり、正に小説のツボを押さえた構成になっている。
が、故に定型を脱せず、凡百のミステリとなっているのも確か。犯人の正体が判明してからの展開がいかにも呆気ない。 |
No.655 | 8点 | 戦慄のシャドウファイア- ディーン・クーンツ | 2009/10/25 20:24 |
---|---|---|---|
ジェットコースターのような疾走感で今回も物語は駆け抜ける。しかも相手は正真正銘の怪物で自分が想像していたモダン・ホラーかくありきという形と合致しており、非常に小気味よい。
物語はクーンツ特有のなかなか本質を明かさない焦らした駆け引き(本当にじれったい!!)をしながら進み、まず主人公二人は追う立場で始まる。そこでご対面とならずに今度は一路ラスベガスに向かい、主客一転して今度は追われる身になる。この辺りの構成の妙が実に巧い。 また脇役で出てくるフェルゼン・《石》・キール氏の造詣もまた印象的だ。これが結末において、ある人物の行動に必然性を与えている。 ただ、やはり良くも悪くもこのエンターテインメント色の濃さがハリウッド的でいささか軽めに感じるのも事実で、もうちょっとそれぞれの人物・エピソード・文体等、文学的深みがあってもいいのではないかと思われる。 |
No.654 | 6点 | エラリー・クイーンの事件簿1- エラリイ・クイーン | 2009/10/25 01:31 |
---|---|---|---|
映画オリジナル脚本を小説にリライトした「消えた死体」、「ペントハウスの謎」の2編を収録した中編集。
「消えた死体」は長編『ニッポン樫鳥の謎』の原形だろう。同一のアイデアで別の話を作っただけで、物語の構成は全く一緒だ。もう少しアレンジが欲しいところだ。ただなぜ犯人が死体を隠すのかという理由はさすがに秀逸。物語のスピード感といい、適度な長さといい、『ニッポン樫鳥の謎』が無ければ、クイーンの作品としても上位の部類に入っただろう。 「ペントハウスの謎」はクイーンの作品にしては異色とも云える派手な事件である。腹話術師と同じ船に乗り合わせた身元詐称の人物たち、消えた宝石の謎など色々エッセンスを放り込んでいるが、逆に謎の焦点が曖昧になり、最後の切れ味に欠ける。特に犯人を限定する決め手となったあるしるしの正体は全く解らないだろう。 容疑者一同を集めて謎解きという、古典的な手法に則った解決シーンだが、カタルシスは得られなかった。 |
No.653 | 10点 | ウィスパーズ- ディーン・クーンツ | 2009/10/24 00:01 |
---|---|---|---|
はっきり云って最後にやられた。打ちのめされました。
最後に現れるブルーノ・フライを脅かす「ささやき」の正体のおぞましさ!背筋に文字通り虫唾が走りました。 あれだけの存在感で迫るブルーノ・フライがいやに打たれ弱かったり、最期が呆気なかったり、幾分か瑕疵はあるが、トニーとヒラリーのラヴ・シーンに共感し、思わず胸が熱いなるシーンがあったり(クーンツはこういう人と人との感情の交わらせ方が非常に巧い!!)、フランクの殉職シーン、また各登場人物の愛する人を失った哀しみなどドラマティックな演出が散りばめられており、非常に美味しい作品だった。 |
No.652 | 9点 | ファントム- ディーン・クーンツ | 2009/10/23 00:21 |
---|---|---|---|
非常にエンターテインメント性の高い内容でその場面展開はハリウッド映画を観ている様。
内容は未知なる生物が次々に人間に襲い掛かり殺していくという80年代に流行った一連のスプラッタ・ムーヴィーのようなもの。 今回は珍しくプロットに破綻がなく、とてつもないアイデアをこれでもかこれでもかと云わんばかりに注ぎ込み、読者をぐいぐいと引き込んでくる。世評高い本作を体験してようやくクーンツの本領を垣間見た。特に長い作品なのに緊張感が持続していたのが賞賛に値しよう。 今までストーリーは非常に面白いのだがなぜ主人公が最後に残るのかという必然性に対する根拠が曖昧で非常に失望することが多く、また物語が盛り上がっていく途中で突然投げ出したような唐突な終わり方をする話もあり、いまいちカタルシスを感じなかったのだが、今回は「太古からの敵」の設定といい、その絶望感といい、また「太古からの敵」の弱点といい、淀みがなかった |