皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
していません。ご注意を!
Tetchyさん |
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平均点: 6.73点 | 書評数: 1601件 |
No.44 | 2点 | 創元推理18- 雑誌、年間ベスト、定期刊行物 | 2010/09/24 22:08 |
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とうとう平凡な同人誌のような内容になってしまった。
目次を見ても食指を動かされるようなコラムはもはや無い。東京創元社で囲われた単行本一冊を物にしていない名も知らぬ新人どもの寄せ集めに何処の物好きが¥1,600も出すんだろうか? また評論はますますマニアックになり、いわば「創元語」とも云うべき暗号の羅列に成り下がり、ますます排他性が強くなった。次に何を期待すればよいのだろう。 |
No.43 | 5点 | 創元推理17- 雑誌、年間ベスト、定期刊行物 | 2010/09/14 12:10 |
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副題になっている『ぼくらの愛した二十面相』の脚本が想像を巡らせるだけで愉しいものだったが、しかし評論はもう少し解り易くならないもんかなぁ。ああいう堅苦しい評論を読むと、推理小説が如何に排他的で閉塞されたジャンルなのかをまざまざと見せつけられる。理解できる者だけついて来なって、それじゃあ余りにも冷たいでしょう。 |
No.42 | 3点 | 創元推理16- 雑誌、年間ベスト、定期刊行物 | 2010/09/08 21:17 |
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巻を重ねるごとに内容が乏しくなっていき、単なるマニアの会報になってきた。休刊になるのもむべなるかなといった感じだ。
本巻で定期購読は打ち止め。その後の内容は知らない。 |
No.41 | 3点 | 創元推理15- 雑誌、年間ベスト、定期刊行物 | 2010/09/06 21:21 |
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セイヤーズの評論が抜群によかったのだが、クリスティの『アクロイド殺し』のネタバレが何の注釈もなく、されていたのがorz |
No.40 | 7点 | 創元推理14- 雑誌、年間ベスト、定期刊行物 | 2010/09/05 21:53 |
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久坂恭氏(森英俊氏)の「謎ときの王国」が毎度面白いが、この巻も鉄板。
また名作館の佐藤春夫に拍手を贈りたい。 |
No.39 | 5点 | 創元推理13- 雑誌、年間ベスト、定期刊行物 | 2010/09/01 21:18 |
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探偵小説名作館は好企画。時々こういう面白企画があるから止められなかった。
河田陸村の論文がけっこう面白かった。 |
No.38 | 5点 | 本格ミステリー・ワールド2010- 雑誌、年間ベスト、定期刊行物 | 2010/08/31 22:26 |
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相変わらず島田荘司監修と銘打たれているが、島田は冒頭に巻頭言を捧げるだけで、象徴的存在に過ぎない。今まで二階堂黎人の俺ミスと云われるほど、独裁的な内容で、むかつくことばかりだったが、今回は独裁的発言がなくなったことは喜ばしいものの、逆に毒気が無くなってしまった。まあ、非常に贅沢な感想ではあるが。
しかしこのムックはもう少し一般人に門戸を開いてもいいのではないか?コラムが学術的に富んでてとっつきにくい。装丁も特集の作家以外は一色刷りでなんとも味気ない。 よくこれで商売が成り立つなと余計な心配をしてしまうほど、硬派なムックだ。 |
No.37 | 6点 | 創元推理12- 雑誌、年間ベスト、定期刊行物 | 2010/08/19 20:59 |
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「1万円で選ぶベストミステリ」の企画は面白い!
これは今やってもいいくらい。本書が発行された96年に比べ、本の値段は高騰しているから挙げられる冊数も減ってくるだろう。それがゆえに呻吟して選びそうな気がする。 あと戦前・戦後の本格推理小説の紹介には疑問を覚える。埋もれさせてはいけないという小説史的に価値はあるかもしれないが、現在読む価値があるかというとはなはだ疑問。 まさにマニアの為の雑誌だな、こりゃ。 |
No.36 | 5点 | 創元推理11- 雑誌、年間ベスト、定期刊行物 | 2010/08/18 21:24 |
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当時本格ミステリを極めんと定期購読していたのがこの雑誌。初めて買ったのがこの号だった。
とにかく高度というか、次元の違う話が展開されててビックリした記憶がある。各書評家の言葉を理解することからまず始まった。 今読んでどう感じるかはあるが、まあ若気の至りということで。 |
No.35 | 7点 | 本格ミステリ・ベスト10 2010- 雑誌、年間ベスト、定期刊行物 | 2010/07/14 21:06 |
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今なおその年の本格ミステリを総括するミステリ愛好家の痒いところに手が届く、マニアックな作りを愚直なまでに踏襲しているのが非常に心地よい。
さてランキングに目を移してみると、やはり歌野晶午の『密室殺人ゲーム2.0』が1位というのが正にこのランキングを象徴しているようだ。トリックに特化したこの作品こそ確かに2009年の本格ミステリシーンを代表する1作に違いない。『このミス』でダントツの1位だった東野の『新参者』は5位と、本格ミステリファンにも好評のようだ。その他『このミス』と重複しているのは柳広司の『ダブル・ジョーカー』、綾辻の『Another』、米澤穂信の『追想五断章』と『秋期限定栗きんとん事件』、道尾秀介の『龍神の雨』、北村薫の『鷺と雪』に詠坂雄二の『電氣人閒の虞』と20作品中9作と約半分を占めるが、双方のランキング順位が違うので、それぞれの特色は出ている。 そして個人的に楽しく読んだのが辻真先氏のインタビュー。なんと御齢77歳にして本格ミステリクラブ会長に就任し、更にはまだ出版待ちの新作が5冊もあるというからそのヴァイタリティに畏れ入る。何年も新作を書かない新本格Ⅰ期生の人間に爪の垢を煎じて飲ませたいくらいだ。 しかしやはり残念なのは今年も海外ミステリの扱いが少なかった事。座談会は充実しているのに国内作品と比べるとそのページの占める割合はかなりの格差を感じる。もうこれはフォーマットとして決まっているのかもしれないが、値段が上がってもいいからもっと海外ミステリにページを割いてほしい。 しかし例年のイベントとしては本家『このミス』よりもこちらの方が愉しみになってきた。後は海外ミステリに関する内容の充実さえあればもう望むものはない。 |
No.34 | 3点 | このミステリーがすごい!2010年版- 雑誌、年間ベスト、定期刊行物 | 2010/07/13 20:58 |
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マスコットキャラの登場といい、冒頭の俳優のインタビューといい、なんだかどんどん方向性が変わっていっている。
もうこれはミステリ愛好家のための書物ではなく、ただの商業誌に成り下がってしまった。 まあ、出版不況にミステリの売れない時代と云われて久しいから、普段本を読まない人を取り込むためのポピュラー路線なんだろうけど、昔から『このミス』を読んでいる者にとってはなんとも云えない残念な思いがある。 毎年のミステリシーを振り返る資料としての意義しかなくなって来たなあ。とりあえず宝島社お抱え作家の書き下ろし短編は要らない。 |
No.33 | 6点 | 本格ミステリー・ワールド 2009- 雑誌、年間ベスト、定期刊行物 | 2010/07/04 22:57 |
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二階堂黎人の「俺ミス」と呼ばれる「黄金の本格ミステリー」選出は幾分薄められていた(それとも編集の際にカットされたか)。
ただ選出された作品群が今後数年に渡って「黄金の本格ミステリー」として本格ミステリ史に残っていく物なのかは非常に疑問。 逆に内容が濃かったのが島田荘司×綾辻行人の対談である。特に島田に見出されデビューした綾辻が既に当時の島田の立場にいることを自覚し、かつて自分を見出した島田の志の高さに思いを馳せる件は、なかなか胸を打つものがあった。本格ミステリの遺産はこのように師から弟子へ引き継がれていくのだと、その現場を目撃した思いがした。 |
No.32 | 8点 | 本格ミステリ・ベスト10 2009- 雑誌、年間ベスト、定期刊行物 | 2010/07/03 22:51 |
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この年とうとう『このミス』の追随書であった本書がその出来映えで本家を超えた、そう確信した内容だった。
新企画として「ミステリ作家オススメ映画アンケート」なるものが登場したのが大きい。こういう新しい企画こそ、マンネリになりがちなムックの梃入れとして必要なのだ。 だがこの企画、やはりミステリ作家の方々は通というか捻くれ者が多く、アンケートに挙げられた作品は一般的な物が少なく、逆に一般的な物が挙がると、非常に浅薄に見えるからまた不思議だ。成功したかどうかはもとよりも、内容云々ではなく、そのアイデアを買う。 ランキングは三津田信三、道尾秀介、有栖川有栖の三方の活躍が目立つ。特に三津田はようやく初首位に立ち、これで名実共に今の本格ミステリを代表する作家になった。妖怪シリーズを思わせる刀城言耶シリーズは本家からの世代交代を示すほどのクオリティと人気を誇り、京極夏彦のシリーズ新作がなかなか刊行されない渇きを潤す絶好のピンチヒッターとなった。 中身は相変わらずディープでオタクの薫りが漂うのは否めない物の、本当に本格ミステリが好きなのだという愛情に満ちている。本家『このミス』が単なる商業雑誌に堕ちてしまったのに対し、こちらの純化は非常に対照的である。 しかし今年も海外本格ミステリの扱いが日本本格ミステリに比べると少ないのはやはり合点が行かない。海外本格あっての日本本格である。海外本格の裾野はまだ広く、懐はまだまだ深いのだ。綾辻行人氏の新本格以降の本格ミステリファンが多い中、海外本格ミステリファンを増やす事はこのムックの大きな役割の1つと云えよう。 虚しい叫びかも知れないが、まだ私は声高に苦言を呈し続けよう。それだけ期待する価値がこのムックにはあるのだから。 |
No.31 | 4点 | このミステリーがすごい!2009年版- 雑誌、年間ベスト、定期刊行物 | 2010/07/01 21:26 |
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前年同様この年も値段は500円据置きで発行された同ムックだが、残念ながら内容まで据置きされてしまった。
新人賞クロスレビューという、その年の各新人賞受賞作を俎上に上げて4人の評者が10点満点中、何点かつけて論じる新企画が入っている。これはもろ『ファミ通』のパクリである。 総じてみると、たったこれだけ?といった作り。20周年を境に退化してしまったとしか思えない体たらくではないか。 ある人が述べていたが、年末ベストランキングムックの意義はその年のミステリシーンを包括する意義があったのだが、それさえも希薄になり、将来に向けてその年のベスト本にどんな物があったかを知るだけの統計的資料でしかなくなってしまった。確かにそれはそれで意義があるが、折角世のミステリ書評家が一同に会する場であるのに、投票して終わりとはなんとも寂しい限りだ。 国内では伊坂氏の首位獲得はよかったと思うが、山口雅也氏の復活は諸手を挙げて迎えられなかったようだ。今年は海外物が充実していたように思う。前評判の高かった『チャイルド44』が見事首位獲得。新潮社久々のヒット作だ。ルヘイン、ディーヴァー、マンケル、ヒルが常連として今年もランキングしているのはいい。そして今年はもう1人のヒルに注目したい。キングの息子である事を敢えて伏せ、作家活動をしていたジョー・ヒルが4位に短編集で初ランクインと、将来性を感じさせる作家の登場を手放しで歓迎したい。 |
No.30 | 5点 | 本格ミステリー・ワールド 2008- 雑誌、年間ベスト、定期刊行物 | 2010/07/01 21:19 |
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収穫といえば、今まで謎のヴェールに隠されていた三津田信三のインタビュー記事ぐらいか。下世話な云い方をすれば南雲堂という出版社が本格ミステリはおいしい商売だから、1年を総括するムックを出すとそれなりに利益も出るし、マイナーな自社の宣伝にもなる、そういう商売根性が透けて見えるかのようだ。
しかし二階堂黎人がここでは「大きな声を出す」選出者となっているのだ。その好き嫌い度は露骨過ぎる。本書には選考会議の一部始終が収録されているのだが、彼のある発言にはビックリした。ちょっと長くなるが、抜粋しよう。 なお、この犯行動機を古いとか大時代だから良くないななどという者は、最初から本格読みとしての資格はないわけで(事件に見合うだけのあの動機や現代性などを提言できるならともかく)、余計ないちゃもんをつけずに黙っていてほしいものですね。 驚嘆すべき暴論である。どう好意的にとっても他者の反論を封じ込め、彼のナチズムを充足しようとする意図しか見えない。カッコ内は選考座談会の後で津波のように押し寄せてくるだろう、世の本格愛好者を筆頭にしたミステリ読者、一般読者の反論を緩和すべく足された文章であろうが、それがあってさえ、彼の暴挙は目に余る。 このシリーズを有意義に、そして未来に残して恥ずかしくない物にするには、一日も早く彼を排除すべきだ。 |
No.29 | 7点 | 本格ミステリ・ベスト10 2008- 雑誌、年間ベスト、定期刊行物 | 2010/06/29 22:29 |
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ランキングはネット上での評判を色濃く反映したような感じ。
今回も前年に引き続き、一位の作品は『このミス』と違い、『このミス』が佐々木譲の『警官の血』、本ムックが有栖川有栖の『女王国の城』と、両者の特色が色濃く出た結果となっている。しかし、その後のランキングを見てみるとけっこう『このミス』に近いものがある。しかしこれは本格ミステリ作家たちが切磋琢磨し、いい作品を上梓してきた結果であるから、逆に日本のミステリ界は依然本格ミステリシーンが熱く発展してきているように思う。 確かに本ムックに寄せられたランキング作品への解説を読むと、どれもこれも読みたくて堪らなくなる、魅力的な謎、作者の企み、謎解きのカタルシスに溢れている。特に新興勢力として位置づけられる米澤穂信、石持浅海、道尾秀介、三津田信三など、当然の如くランクインし、しかも1作などに留まっていない。 そしてそれを向かい討つかの如く、新本格Ⅰ期生の有栖川、歌野、そして彼らの師匠とも云える御大島田氏が名を連ねている。 更には西澤保彦、柄刀一、霞流一といった中堅どころも負けじと参戦し、さらにちょっと最近は大人しかった石崎幸二、北山猛邦らメフィスト系作家もランクインと、なんとも絢爛豪華なランキングとなった。 もしかしたら2007年は本格ミステリ界にとって5年に一度、いや10年に一度の大収穫の年であったと、今後振り返ったときに話題に上るのではないだろうか。なにしろ有栖川の江神シリーズが15年ぶりに出た年なのだから。 とはいえ、その他の部分においては従来の形式となんら変わることがなかったというのがこのムックらしいといえばムックらしいところ。足してもなく、引いてもいない。まあ、座談会が増えたかもしれないが、全く構成・各種コラムの内容が変わっていない。本当にその年の本格ミステリシーンを従来のテーマに沿って回顧する、そんなムックに徹している。 ただ装幀大賞が京極夏彦氏も審査に加わることがなくなり、何となくトーンダウン。喜国夫妻が頑張っているが、なにげに鋭い発言をする京極氏の毒がやはり欲しいところだ。 |
No.28 | 5点 | ミステリが読みたい!2008年版- 雑誌、年間ベスト、定期刊行物 | 2010/06/27 18:04 |
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とうとう海外ミステリ出版の老舗早川書房がこのような年間ベストランキングムックに手を出したのかと複雑な思いがした。
もともと早川書房は古くからミステリマガジン誌上で年間ベスト本のアンケートを募り、毎年3月号に各選者のコメントを載せていたが、今回のようにそれらに点数を付加してランキングを作るなんて事はしなかった。しかし、今回から編まれた本書ではベスト本選出に関しては従来の3冊選出を踏襲しているが、他のランキング本にあやかるかの如く、同様のランキングを作っている。 つまりこれはこれらランキング本が引き起こす本の売り上げが無視できないほど出版界では大きい物になっている事を物語っている。そして不況に喘ぐ出版界では今、どうにか利益を上げようと必死なのだ。 そしてそれを裏付けるのかのように本書のベスト1は当の早川書房が出版した村上春樹による新訳、チャンドラーの『ロング・グッドバイ』である。 この結果については特に早川書房が自社の作品の売り上げを伸ばすために作った自作自演ランキング本だ!といった痛烈な批判がその大半を占めていたように思う。 で、その感想は意外とまともだったという事だ。ミステリマガジン誌上のアンケートの延長といえばそれまでかもしれないが、個人的には原尞、小鷹信光、山本博御三方による公開鼎談が収録されているのが収穫だった。 他にこのランキング本の特徴としては、他のランキング本が予め出版社側で選定した書評家、作家、ネット書評家と限られた人間のみなのに対し、この本が不特定多数の読者も対称にしていること。それゆえ、ランキング参加者数は日本ミステリが127名、海外ミステリが93名と他のランキング本と比しても圧倒的に多い。これは本書の強みであると感じた。 しかし、上にも述べたように、中身はやはりミステリマガジン3月号の延長に過ぎない。特に本書の約4割近くを受賞リストや索引に費やすのはいかがなものだろうか?この辺は従来の作りを忠実に作りすぎた感があり、工夫が欲しかったところだ。 しかし早川書房からベスト本アンケートをお願いされて早川書房の作品を1作も入れないなんて、自ら仕事を失しようとしている行為のように思えてならない。そういう意味ではやはりこのムックに公平さを求めるのは無理を感じずにはいられない。 |
No.27 | 6点 | このミステリーがすごい!2008年版- 雑誌、年間ベスト、定期刊行物 | 2010/06/26 21:38 |
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20周年記念号でもあるこの年の投票ランキング結果は正直意外だった。
なんせ佐々木譲である。 『このミス』初期の常連であったが、『昭南島に蘭ありや』以降、ランキングからは姿を消しており、昨年警察物でランキング復活したかと思えば、今年いきなりの1位獲得である。この『警官の血』、解説を読むとスチュアート・ウッズの名作『警察署長』のもろ本歌取りである。もちろんオリジナリティも加味されているからこその支持だろうけど、この『警察署長』が訳出されたのが1987年だから、最近のミステリ読者でこの作品を読んでいる人は少ないのかもしれない。良い物は何年経っても支持される、つまり名作の歴史は繰り返されるということなのか。 その他ランキングはやはり桜庭一樹が旬ということで上位にランキング。有栖川有栖のなんと15年ぶりの江神シリーズ『女王国の城』も3位と大健闘しているのがちょっとビックリ。宮部みゆき、歌野晶午もランキングしており、また新進気鋭の道尾秀介もどうにかランクインとなかなかバランスよく分散されているのではと思った。しかし発表当時世評高かった伊坂幸太郎の『フィッシュストーリー』がランク外だったのはちょっと意外。 で、海外はとうとう常連ジェフリー・ディーヴァー1位獲得である。そして2位にハイアセン(!?)、さらにディヴァイン、ゴアズ、ウォルターズ、ヒルにクック、そしてローレンス・ブロックと往年のランカーが勢ぞろいし、さらにその間を縫うように最近評価の高いマンケル、アルテ、ジャック・カーリイ、サラ・ウォーターズが食い込むといった当方にとって非常に気持ちのいいランキングとなった。海外ミステリ不況といわれるがこれを見るとまだ安泰。いやむしろ真の海外ミステリファンによる支持票という色合いが出て、非常に面白かった。 とまあ、ランキングに関しては、納得できる反面、内容についてちょっと首を傾げざるを得ない。 今までの恒例の特集である「座談会」、「わが社の隠し玉」、そして20周年特別寄稿としての各作家の「私の隠し玉」プラスエッセイという趣向はいい。しかしそこから各ジャンル別の年間を通じた傾向、名作群の紹介がなく、なんと『このミス』大賞出身者の海堂尊の書き下ろし短編やその年の『このミス』大賞受賞作の抄掲載といった、商業主義丸出しの小説が載っているのが非常に解せない。 こういう者を読みたいためにこのムックを買っているわけではなく、その年一年のミステリの総括を含めた年一回のお祭りを愉しむために買っているのだ。それにどこの馬の骨とも知らぬ作家の(海堂氏は別として)作品発表をされても、興を殺ぐだけである。非常に不愉快に思った。 特に受賞作の抄文掲載は、読んでみてもはっきり云って何の食指も湧かなかった。恐らくこれで刊行時の部数引き上げを狙ったのだろうが、私個人としてはこれを読んだがために買わなくていいやと思ったくらい。逆効果に過ぎないと思った。 なんか勘違いしてきたなぁ、宝島社。 |
No.26 | 5点 | 本格ミステリー・ワールド2007- 雑誌、年間ベスト、定期刊行物 | 2010/06/25 02:56 |
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島田荘司監修で始まった新たな年末本格ミステリベスト選出ムック。
大いに期待し、飛びついたのだが、結果的には無難に纏まったなというのが感想。 島田が携わるということで期待の新人達との対談や第一期新本格作家達との対談などミステリ論が展開されるかと期待したが、さにあらず、島田が出てくるのは巻頭言のみでその後は2006年に新人賞を受賞した作家達と二階堂黎人との鼎談、2006年黄金本格ミステリー選出、各作者達の今後の予定やその他鼎談など、どこかで見たような内容ばかりで、島田色が出ているというよりもなぜか二階堂の影がちらつくような内容だった。 唯一このムックの特色が出ているのは黄金本格ミステリー選出か。有識者たちによる2006年に発行されたミステリーの中で今後歴史に残すべき黄金本格ミステリーなるものをしかも10作とか20作とかいう縛りを無くして選出しようというこの企画、私的にはかなり血湧き肉躍った。島田が提案したこの企画はなかなかに素晴らしく、こういうのはもっとやってほしいと思った。 しかし、やはりここにも二階堂が絡んでいるのだ。二階堂が求めるミステリについての文章(彼曰く、「檄文」だそうだ)が掲載されているが、これが明らかに独善的である。自分の趣味を他人に押し付けているだけなのだ。選者の俺はこういう話が読みたいの、普通の本格は面白くないの、もうわがまま云い放題である。しかも自分が本格だと認めるものしか選ばないのだから困ったものだ。 しかし『本格ミステリ・ベスト10』とどう差別化するかが、このムックの大きな課題だろう。 |
No.25 | 7点 | このミステリーがすごい!2007年版- 雑誌、年間ベスト、定期刊行物 | 2010/06/23 21:17 |
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パッと見て表紙の雰囲気や全体の紙質の変化にまず驚いた。ちょっと見、本屋で並んでも『このミス』だとは気付かないかもしれない。しかし、内容は全く以って例年通り。
一年のミステリを総括する本書、敢えて新しい趣向を凝らさず、マンネリ化を以って安定感を与えようとしているのか。とはいえ、このマンネリが一ファンとしては年に一度の祭りが今年も来たなぁと思わせるのだけれど。 さて今回のランキングは前に読んだ『本格ミステリ・ベスト10』とは結構違った印象を受け、非常に興味深かった。あちらで評価の高い有栖川は下位に属し、2作がランキングした三津田信三なんかは蚊帳の外である。共通して評価が高かったのは道尾秀介か。 こうして並べると昨年は『本格ミステリ~』がミステリど真ん中のランキングであり、『このミス』が広い範囲でのランキングだという両者の特色が色濃く出た年だった。 あとやはり『このミス』では警察小説が強いという感じが。佐々木譲久々のヒット作『制服捜査』の2位を筆頭に、9作めにして4位という高位にランクインした『狼花 新宿鮫Ⅸ』、東野圭吾の『赤い指』や香納諒一の2作などがランクインしている。また常連の宮部みゆきも健在だ。 一方海外に眼を通すと、昨年巷間で話題になった『あなたに不利な証拠として』が堅実に1位を獲得。ディーヴァー、コナリー、クックの常連作家も健在で、さらに昔からの作家ハイアセンも登場と往年の『このミス』を見ているかのようだ。近年の物故作家の隠れた名品の刊行もランクインしていることから海外ランキングはとても21世紀の2006年のミステリシーンを伝えるものとは思えないほどヴァラエティに富んでいる。 やはりミステリは面白いと再認識できた事が素直に楽しかった。以前感じた、作家の使い捨て感がようやく払拭されつつあるのもよかった。やはり素直に面白い物は面白いと評価しているのが一番いい。 しかし一方で『本格ミステリ~』の方で感じた新しい作家の力の躍進も馬鹿に出来ない。個人的には今年のように各ランキングで全く違う結果が出て、それぞれのフィールドで評価が違うのが一番読者として面白いし、また興味も尽きない。 |