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テツローさん
平均点: 7.46点 書評数: 108件

プロフィール高評価と近い人書評おすすめ

No.48 6点 東亰異聞- 小野不由美 2002/04/24 00:42
 ミステリの約束事で落とす部分と、ホラーの約束事で落とす部分があって、混然となってはいるが、ミステリとホラーは干渉してはいない。
 ミステリ部分の見所は動機でしょう。家督相続などはよくあるネタだが、そこから派生したこの動機はよく練られたものだと思う。犯人の扮装も、時代と合ってるし、ケレン味たっぷりで良いと思う。
 ホラー部分で良かったのは黒子と人形で、秋波を発する人形の描写は、何かエロチシズムを感じてドキドキしてしまった。しかし文句もある。ホラー部分の善玉キャラたる輔(たすく)が全然活躍しないのはどうした訳か?それがため、カタルシスには至らないと感じた。ラストの変貌した東亰の描写も、唐突だなと感じただけ。これ、素直にミステリだけでまとめても、作品としては充分だと思うのだが、何故この人は、こういう作風なんだろうか?

No.47 6点 魔性の子- 小野不由美 2002/04/24 00:07
「魔性の子」(新潮文庫)
最初に、この作品はミステリではない。後、ネタばれも少々。

 主人公の一人、高里を傷つけようとした級友が殺され、アンタッチャブル扱いした級友が殺され、正義面のマスコミが殺され、高里を拒絶した街が破壊される。マス・ヒステリーでスケープゴートにされそうになる個人が、まあ反則技をつかってだが、反撃して何とか勝ちを収める。こう考えれば、割と痛快な話かも。 高里の悪い噂を払拭しようとした級友まで殺されたことと、「十二国記」ネタで落とすラストは、納得いかないが。
 もう一人の主人公、広瀬について。僕自身偽善という言葉は嫌いだし、他の作者で偽善行為が描かれても、単に作者の好き嫌いを描いてるだけのような気がして、納得できる作品はあまり無かった。しかし、この広瀬のエゴの描写は納得できる。納得と言っても良し悪しのことでなく、この広瀬というキャラの存在をリアルに感じることができるということ。ああ、これが偽善だったのだな、と、スッと腑に落ちた感じだった。この広瀬の書き方はうまいなと思った。
 実際、最初はミステリの感覚で読め、途中で人外の物がするりと出現して、いつの間にかホラーになってる。「屍鬼」もそうらしいけど、これ読んだから「屍鬼」はもう読まないかも。この趣向は1作読めば、僕は充分。

No.46 10点 冬のオペラ- 北村薫 2002/04/23 00:40
 「名探偵はなるのではない。ある時に自分がそうであることに気付くのです」 あるいは「《名探偵》というのは、行為や結果ではないのですか」「いや、存在であり意思です」 ここら辺のセリフに代表される、名探偵という存在に対する考え方やそのスタイル、いいですよねえ。およそ、ミステリに、もっと言えば名探偵というものに、憧れ・幻想・レゾンデートル(使い方、正しいかな)を持つ者が、漠然と感じていることを明文化してくれた。そんな感じです。ふと思ったのですが、これはいわゆる後期クイーン問題に対する、北村氏自身の回答なのでしょうか?(確かめたわけではないが)

 「三角の水」佐伯先輩に代表される、名探偵というものに思い入れの無い一般人の描写は、まあ実際こんなもんなんでしょうけど、何か嫌ですね。犯人の無自覚な悪意も相変わらず北村氏らしい。「蘭と韋駄天」唯一スカッとした作品。こういうので続編を期待したいのだけど、円志師匠シリーズとかぶるかな? 「冬のオペラ」巫探偵は毅然とした態度を崩さず、さすがですね。椿さんのその後がとても気になります。また、あゆみちゃんもワトソン役を続けているのでしょうか。そういう余韻が後に残って、思い返すとしんみりする作品集です。

No.45 9点 漱石と倫敦ミイラ殺人事件- 島田荘司 2002/04/21 23:44
考えてみれば、この作品が僕の島田作品初体験でした。このサイトに書く為に約10年振りに読み返しました。密室トリックは覚えていたのに、犯人逮捕に至るプロセスはそっくり忘れていました。

 赤毛組合もどきの奇妙な新聞広告や、漱石の幽霊騒ぎなど、一見何の関連も無いように見える事柄がラストで有機的に結びついて、一つの犯罪を形作る。突飛だとも思うが、同じだけ見事だとも思う、そんな作品でした。
 一つ気になったのは、例の「バリツ」の処理について。加納一郎「ホック氏の異郷の冒険」も読んでいますが、そちらの処理の方が自然な気がする…(ちなみに「ホック氏」では、「『バリツではなくブジュツだろう』『そう、ブリツだ』ホック氏は言い難そうに発音した」となってる)
 ところで島田先生は、あの空白の3年間にホームズは渡日していない、という考えなんですかね? 来さしときゃいいのに、と思うんですけどねえ。

No.44 4点 ディプロトドンティア・マクロプス- 我孫子武丸 2002/04/20 19:13
 ハードボイルド・ミステリを意匠とした、ナンセンス・ギャグ小説、かな? これ、いいとこついてると思うが。

 キャラクターは良いと思う。咲ちゃんはいい娘だし、主人公もまあ面白い。しかし、このストーリー展開、巨大カンガルー対巨大私立探偵というのは、付いて行きかねた。

No.43 5点 倒錯のロンド- 折原一 2002/04/20 18:49
 どこかで読んだ逸話で、作者はこの作品の原稿に実際に血をなすりつけて、乱歩賞に投稿したらしい。何なんだろう、この情熱の方向性は?

 描かれる狂いの描写が、鬼気迫る迫力なのだが、それ故、爽快感というものとは、袂を分かつ作品となっていると思う。まあ、サイコ物で「スカッと爽やか」とはいかんだろけど。残念ながら自分の好みではなかった。

No.42 9点 暗闇坂の人喰いの木- 島田荘司 2002/04/16 00:17
 メインのトリックはあまり感心しなかった。偶然自体は、別に良いのだが。むしろ、巨人の家のからくりの方が良かったと思う。分かる人はすぐ分かるのだろうが、僕は思わず膝を打ったので。
 
 全体的に大変興味深く読めた作品でした。世界死刑史のペダントリーも良かった。こういう薀蓄を分かり易く披露してくれる作風って、僕自身は結構好きなので。後は石岡君の奮戦ですね。大楠に対する及び腰な態度や、冒頭での森女史との顛末など、「あぁ、やっぱり石岡君だなあ」と何か微笑ましくなった。スコットランドの旅行記の部分もよかった。クリスティーやカーの諸作で、イギリスの田舎町ってミステリの故郷という感慨を持っているので。

No.41 8点 メルカトルと美袋のための殺人- 麻耶雄嵩 2002/04/15 22:25
 芦辺拓氏がどこかのエッセイで「僕の創造した探偵(森江春策)は地味だ地味だとしか言われないのに、何故あんな非人道的な探偵に人気が出るのか」と書いてたのは、やはりメルのことなんでしょうね。
 「化粧した男の冒険」の「ペーパームーン・ショー」というのは、やはりセーラームーンのこと?
 「水難」の登場人物のネーミング、「鳥人戦隊ジェットマン」からきてることは、皆さんご存知ですか?
 以上、小ネタでした。

 「小人間居為不善」が見事だったかな。「ノスタルジア」も、作中作の雰囲気はわりと好き。解決は、屁理屈すぎると思わないでもないが。
 メルの奇行に目を奪われがちだが、短編ミステリとしてそれぞれ及第点以上のできだと思います。

No.40 7点 プレゼント- 若竹七海 2002/04/11 00:40
 短編の1つ1つはよくできていると思います。葉村晶パートの「海の底」「ロバの穴」などは、ホワイダニッド
の良品でしょう。小林警部補パートの「冬物語」は倒叙物の傑作だと思います。
 全体的には、人間関係の描写が重くきつい。
 ラストの「トラブル・メイカー」、それまで別々だった二人の主役がクロスオーバーする話ですが、個人的にはもう少し盛り上げて欲しかった。二人で協力して、事件解決にあたるとかね。でもそうはならず、少々淡々としすぎている印象でした。

No.39 3点 閉ざされた夏- 若竹七海 2002/04/09 00:50
 ストーリーはいまいちでした。ラストの犯人の一言も、どういう方向へ余韻を残そうとしているのか、どうにも意味をつかみ難い締めですね。また、このタイトルの意味もよく分かりませんでした。全体的に低調な一編だったと思います。
 探偵役、最初は妹の方かと思っていたのですが…。ただ、この探偵役の兄貴も、感情的に走り過ぎるきらいがあると感じました。せめてこいつらが、もう少ししっかりした探偵役だったら、話も締まっただろうに。

No.38 9点 女囮捜査官 2 視姦- 山田正紀 2002/04/08 01:42
少々ネタばれします。
 「発掘の章」のラストの所が良いのです。全体のラスト近くまで来ていて、最後の詰めの予定で死体の捜索をしていたのが、予定外の死体を大量発掘し、恐慌をきたす捜査官達。それどころか、犯人として十中八九決まっていた人物までもが、ここで死体となって見つかるという、この期に及んでの大逆転、大転回、探偵側の(一時的)敗北。しかし、その中で切れずに残っていた細い一本の糸を辿り、さらにそこから起死回生の逆転の一撃を決める。
 このシーン読んでいる時、もうとにかく、ぞくぞくしどおしでした。とにかくすごいぜと感動しました。

No.37 9点 ロシア紅茶の謎- 有栖川有栖 2002/04/08 01:04
 表題作、毒の隠し場所の候補を、一つ挙げては潰し、一つ挙げては吟味し、最後に残ったのが正解、という筋立てになっているのが、正に本格で、良いと思った。「動物園の暗号」の、中糸氏の特技を追求する辺りもそうかな。
 そして、これは探偵役の人物像・背景・性格設定にも係わるが、火村が犯人を追い詰める時の容赦無さが、大変小気味よいと感じる。このシリーズ全体の好きな点の一つである。

No.36 6点 まどろみ消去- 森博嗣 2002/04/07 00:11
 「誰もいなくなった」が良かった。どこが良かったかというと、ラストのそれぞれのキャラクターのポジションです。颯爽と(かどうかは?だが)謎を解く犀川。畏怖のまなざしで「あれが犀川先生か」とつぶやくミステリ研の面々。愛情と同時に探偵としての頭脳勝負でライバル心剥き出しの萌絵。ここら辺がすごく、僕にとってのツボでした。
 全体的には、SFっぽい不条理小説という性格の短編の方が多く、点数はこの程度。

No.35 8点 掌の中の小鳥- 加納朋子 2002/04/06 23:57
 「できない相談」は赤川次郎「三毛猫ホームズの追跡」、「エッグスタンド」はチェスタートン「奇妙な足音」を、それぞれ連想させるミステリでした。決してパクリという訳ではないが、何となく。
 それはともかく、全体的に「女心は分からん」と感じる小説だったと思います。僕が男だからで、女の方には別の意見があるんでしょうねえ(苦笑)。

No.34 6点 瞬間移動死体- 西澤保彦 2002/04/06 23:44
 今回のSF的趣向の説明は、少しくどかったように思う。ミステリとしても、今回のは穴があったような。犯人を断定する辺りの手がかりが表示されてない(僕が読み落としてたらすまん)。
 一応ハッピーエンドになっているが、登場人物の関係も生臭い気がして、何だかなと感じた。
 主人公が下戸なので、西澤氏も調子がでなかったとか?(笑)

No.33 5点 腐蝕の街- 我孫子武丸 2002/04/06 23:33
 本格とは言いがたい、近未来バイオレンス・サスペンスといったもの。ラストのたたみかけるような展開は、良かったです。
 続編、まだ読んでないけど、何かボーイズっぽくなるのか?それだとやだな。

No.32 7点 なつこ、孤島に囚われ。- 西澤保彦 2002/04/06 23:17
 いや、レズ物って好きなので。(これレズ物じゃないだろう、という話もあるが) 僕にとっては、割と笑えて良かったですけどね。

No.31 8点 今はもうない- 森博嗣 2002/04/06 23:12
 嵐の山荘、2つの密室、姉妹入れ替わり、素人探偵達の推理百出。途中までは、一番本格本格していた。解決が…う〜ん…。
 でも、全体としては良いと思います。その全体の仕掛けに見事に引っ掛かったので。…この姪にして、この叔母ありか。

No.30 8点 英国庭園の謎- 有栖川有栖 2002/03/31 23:24
 無理のある話もあるとは思います。「雨天決行」とか。でもまあ、それも含めて全体的に良い短編集だったと思います。
 気に入った作品は、「竜胆紅一の疑惑」と「英国庭園の謎」。前者は犯人の動機の設定が良いと感じた。後者でアリスが言っていたセリフ「江戸川乱歩の『大金塊』、この暗号を諳んじてなかったら、モグリやろう」には、まさしく同感。僕も言えます。何かうれしかったので。

No.29 5点 あくむ- 井上夢人 2002/03/30 01:35
妹が妊娠中に読んだと行っていたので、思わず、胎教に悪いからやめとけ、と言ってしまった。グロいよね、実際。

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