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みりんさん
平均点: 6.66点 書評数: 533件

プロフィール高評価と近い人書評おすすめ

No.213 7点 甲賀忍法帖- 山田風太郎 2023/10/14 20:20
『甲賀忍法帖』と聞いて思い浮かべるのはあの名曲の方。「下弦の月が♪朧に揺れる♪」という歌詞から始まるが、今回初めて原作を読んでまさにこの作品の主題じゃないかと妙に納得できた。
俺なんてキッズだから"異能力バトル"の先駆けって『ジョジョの奇妙な冒険』だとずっと思ってたよ。1959年にここまで下地が完成していたなんて驚いた。これより前の"異能バトルもの"ってあるんですか…?

心は少年のままなんで、甲賀10人vs伊賀10人が秘術を尽くして命懸けの集団戦をするなんて設定を聞くだけでワクワクしてしまう。少年漫画ではなかなかお目にかかれない能力もあったりして新鮮です。
この作品は本来時代ものとして評価すべきなんだろうけど、その風流を感じ取れないアホな私は異能バトルとして評価する(苦笑) そうするとやはり後発の『ジョジョ』や『ハンターハンター』を読んでいる身としては、(小説と漫画を比べるなんて馬鹿かって話だが)知略を巡らす攻防がなく戦いが単調であり、少々物足りないという評価になる。しかし、異能バトルの先駆けとして大変偉大な作品であることに間違いはなく、山田風太郎に感服です。

No.212 7点 レーエンデ国物語- 多崎礼 2023/10/14 00:12
これまた登録していいか微妙な所ですが『十二国記』が登録されてるしまあ良いよね…?
読んだ感想としては"子供にも見せられる『ゲーム・オブ・スローンズ』"でした。漫画だといっぱい読んできたけど、小説でここまでのハイファンタジーは新鮮。ハイファンタジーゆえに固有名詞が大変多く、読んでる途中のメモも過去最長クラス。小説界で話題沸騰なだけあってちゃんと面白いんだなこれが(ミステリ読みに刺さるかは怪しいですが・・・)

ディティールに拘った世界観の構築とセリフの力強さが素敵だなあと。ここまで練られていると作者が1章では書ききれずに隠した設定は数多そうなので、続編にも期待が高まる一方です。
想い人であり同胞であるユリアとトリスタン
恋敵から永遠の親友同士になったユリアとリリス
この二組の関係が特に好きでキャラクター小説としても楽しめると思います。

以下いいなと思ったセリフ p382より
「レーエンデに来なければ私は自由の意味を知ることもなく、世継ぎを産む道具として消費されていたでしょう。人を愛する喜びも、人を愛する苦しみも知らないまま、絶望の中で朽ち果てていたでしょう。ですからたとえ、時を戻せたとしても私は同じことをします。恐ろしい災禍に巻き込んでしまうとわかっていても、このレーエンデにきてトリスタンと出会い、彼を愛さずにはいられないでしょう」

No.211 7点 麦の海に沈む果実- 恩田陸 2023/10/10 17:55
学園サスペンス+ファンタジー。
【ネタバレあります】


主人公が魔女と呼ばれたり、背後で蠢く巨大な陰謀やホラー要素など『緋色の囁き』やダリオアルジェント監督『サスペリア』と似た舞台設定です。シリーズ前作の『三月は深き紅の淵を』の4章は今作の予告編のような作りになっていたのですね。
ここまで魅力的な世界観を映像的に表現できる著者の手腕に素直に感服しました。過去を顧みない凛とした主人公の選択にはほろ苦い青春小説としても心に深く残ります。リドル・ストーリーではなく最も大きな謎対しては明確な答えを示しますが、細部ははっきりと描かれません(特に学園関係)。
もっとこの不思議に包まれた学園に閉じ込められたい。キャラクター達のその後を見せてほしい。と引き摺らせる読後感。これが恩田ワールドでしょうか。

No.210 8点 ルルとミミ(乙女の本棚)- 夢野久作 2023/10/09 02:47
図書館で予約して受け取りに行くとまさかまさかの児童文学。少し恥ずかしい思いをした。こんなに救いのない物語を児童に読ませるのは果たしてどうなのか…トラウマになるんじゃないか(笑)

この著者はそこそこ読んできたが、今までに見たことのない童話のような語り口です。
『瓶詰の地獄』といい夢Qは「兄妹」に何かフェティシズムでもあるんでしょうかね。いや〜子供には刺激が強すぎるぞこれ。ラストはサプライズと言えばサプライズであり、メリーバッドエンドと言えるかもしれない。最後の見開きは絵の効果も相まって儚く美しい。

ねこ助という方の絵が素敵でこの幻想的な作風に大変マッチしています(+1点)

No.209 5点 三月は深き紅の淵を- 恩田陸 2023/10/08 22:20
不思議な魅力のある作品です。
ミステリとしては1章『待っている人々』、人間ドラマとしては3章の『虹と雲と鳥と』が良いと思いました。4章は恩田先生が執筆の際に感じたことを思うままに書いている私小説ですかね。曰く付きの全寮制学校に途中入学した主人公が背後で蠢く陰謀と戦う学園サスペンスは個人的に興味をそそる設定(最近見たダリオ・アルジェント作『サスペリア』っぽい)で大変気になっていたのに、細部はあまり明かされないまま終わってしまった。考えるな感じろって事ですかね…4章はふつうに奇書です。

No.208 6点 暗色コメディ- 連城三紀彦 2023/10/07 17:57
連城作品で、ここまで論理的で高度な謎解きには正直ビックリです。

No.207 7点 人間の顔は食べづらい- 白井智之 2023/10/06 17:49
白井智之のデビュー作。これほどの作品が最終候補作止まりって恐ろしい世界ですねミステリ界は。

【ネタバレがあります】


病気で家畜が死滅した世界で非自然人であるクローン人間を食すこと(食人法)が許される世界。そのSF的世界観をベースに複数の怪奇事件と多重推理をたっぷり楽しめる本格ミステリ。そして最終的には物理の檻と人間社会の檻の2つを超える物語だったのですね。素晴らしい作品だと思います。
新型コロナウィルスという言葉が出てきた時にはこの作品の刊行年度が2014年であることに疑問符がつきましたが、そういえば元々あるウィルスだったんだな。わざわざ新型って付くんだから当然か…

No.206 7点 あやかしの鼓―夢野久作怪奇幻想傑作選 - 夢野久作 2023/10/04 02:11
夢野久作の傑作選にはとりあえず『死後の恋』『瓶詰の地獄』は入れておけという風潮があるほどには両者とも傑作だと思います。『死後の恋 夢野久作傑作選』とだいぶ選出がカブっているのもあって、今回未読作だったのは『難船小僧』『幽霊と推進器』『あやかしの鼓』の3つのみ。いや〜でも『死後の恋』は見かけるとつい読んでしまいます(^^)

『難船小僧』 6点
伊那一郎が乗り込んだ舟は必ず沈没してしまう。科学的にはそんな事はありえないという理由で実験的にその少年を同伴させた船長とその事に阿鼻叫喚の船員達が描かれる。
たぶん「難船小僧のナンセンス」っていう親父ギャグが言いたかっただけだと思うけど、登場人物の冷淡さもなかなか強烈。

『幽霊と推進機』 5点
これまた『難船小僧』と同じ怪奇海洋奇譚。船という閉鎖空間にやな奴ばかり出てくるのも似通っている。だがこのオチはだめだろうw

『あやかしの鼓』 7点
音を聞くと呪われるという「あやかしの鼓」 夢野久作処女作の短編という事で1番楽しみにしていましたが、期待を裏切りませんでした。
特に100年越しの『あやかしの鼓』演奏描写。愛する人に裏切られた時の憎悪。生きながらにして死んでいた男が鼓に込めた情念。鼓が奏でた音の怨みの響き。小説という媒体ではやむを得ず音を文字に変換する必要があるが、ここまで鼓が奏でる音の呪いに説得力を持たせる作者の筆には鳥肌が立ちます。

あと初読時は普通だと感じた『白菊』の持つ妖しい魅力に気づき、再評価路線。

No.205 6点 アヒルと鴨のコインロッカー- 伊坂幸太郎 2023/10/03 02:40
大御所の方ってリーダビリティの高さが異常ですね。360ページ一気読みです。
魅力溢れるキャラクターと軽快な会話から生まれるユーモアで終始心地良く読書に浸れます。まあ青春ミステリというジャンルの割に大変シリアスなのですが…(笑)
本筋以外の要素だけである程度どの作品も面白さは保証されてそうな作家さんだなという印象を受けました。他の作品も気になるところです。

No.204 8点 厳冬之棺- 孫沁文 2023/10/01 19:27
お二方の書評で気になり、普段読まない翻訳物を購入。5時間の楽しい読書体験でした。
トリックを重視する方・不可能犯罪に興奮を覚える方・実現可能性を気にしない方・島田荘司が好きな方
ぜひ1200円を握りしめて書店に向かいましょう。 

【ネタバレあります】



密室殺人×3に見立て殺人に首無死体となんとサービス精神旺盛なミステリでしょう。
トリックはいつも通りちっとも見当がつかないのですが、私途中で確信を持って犯人が分かってしまいました。何作品ぶりの快挙かと喜びを噛み締めていると、「密室の王」はそこまで甘くなかったです。
ハウダニットとフーダニットどちらも高い次元で楽しめるでしょう。
不満点を挙げるとすると作中の謎が100%明かされないこと(続編匂わせか?)。あとタイトルの『厳冬之棺』と装丁から想像していた荘厳で幻想的な雰囲気が欲しかったことでしょうか。

No.203 6点 私雨邸の殺人に関する各人の視点- 渡辺優 2023/10/01 04:16
探偵役以外にあまり真新しさはないのですが、ロジックがよく練り込まれている作品だと思いました。フーダニットが好きな方におすすめできます。
改名前のツイッターという言葉が出てくるのには時代を感じさせますよね、今年の作品なのに笑 ある人がある人を犯人だと気付いた理由もいかにも現代らしくて良いです。


うわ〜読む前に人並由真さんの書評を読んでおけば良かったですね〜 クリスティのおそらく有名作(?)に関してネタバレの如き仄めかすものをくらいました。実は私、今年の新刊でもう一つクリスティの超超有名作のネタバレをされているのでまたか〜と少し消沈。まあこちらは流石に読んでない私が悪いと思うのですが、クリスティは必修という共通認識があるんですかねぇ… 国内作品に逃げずに海外古典も読めよというメッセージだと前向きに受け取っておきます。

No.202 6点 死後の恋- 夢野久作 2023/09/30 15:10
アレを読んでから毎日1度は夢野久作のあの荘厳な尊顔を思い浮かべる時がくる。これが『死後の恋』か…
という冗談はさておき収録作は『死後の恋』『瓶詰の地獄』『悪魔祈祷書』『人の顔』『支那米の袋』『白菊』『いなか、の、じけん』『怪夢』『木魂』『あやかしの鼓』
私が読んだのは新潮文庫の「夢野久作傑作選」なのでどうやら前の方が読んだ作品集とは違うようですがここに書評します。

【ネタバレあります】



『死後の恋』9点 『瓶詰の地獄』9点
この二つはどの作品集にも収録されていますね。『死後の恋』の猟奇と耽美の融合、臓器と宝石の対比がホントに好きで、まだそれほど読んでないのに夢Q中短編の最高作だろうと勝手に思ってます。

『悪魔祈祷書』 6点
タイトルを見るからに著者らしい作品かと思いきや予想外の方向へ。こういうのも書くんだね。

『人の顔』6点 『支那米の袋』7点
既に読んでいましたね。『瓶詰の地獄』で感想書いたのでソチラで

『白菊』5点
幻想的な雰囲気に誘い出される犯罪者と世にも美しい少女。んんん…つまりどういうこと?

『いなか、の、じけん』3点
いなかで起こる少し奇妙な事件が無数に載っているショートショート。吝嗇家なおばさんが窒息する話以外はあまり記憶に残らず

『怪夢』4点
これまた怪しい夢に関するショートショート。『病院』では精神病患者=主人公が発狂すると同時に研究が完成するという研究者が登場するが、これまさにドグマグの原形ですね。ずっと前から構想を練っていたのが伺えます。

『木魂』6点
妻と子を無くし、どこからともなく声が聞こえるという狂人。異常な現象を数学で解釈する部分はユニークです。終始陰鬱、暗澹たる雰囲気が続く中、ラストは一筋の光明が差した…のかどうか 

『あやかしの鼓』はどうせならこれがタイトルになってる作品集で読もうと決意。デビュー作の中編、楽しみですな

未読作で刺さったのが少なくてこの評価に。相変わらず「狂人」「夢」「ロシア」が好きなんですね

No.201 5点 夜は短し歩けよ乙女- 森見登美彦 2023/09/29 00:20
京都府民なので作中で巡る場所を「あ〜あそこね〜イイよね〜」と脳内で思い浮かべながら楽しく読めた。こんなふうに少し不思議で情緒溢れるオシャレな青春大学生活憧れますねぇ…

※アオハルの祭典なら10点満点です

No.200 5点 夜のピクニック- 恩田陸 2023/09/26 21:54
ただ本当に友達と歩くだけで、物語に起伏はない。でも高校の頃って友達とくだらない話をするのが1番楽しくて、あれこそが黄金の日々なんですよね。清涼感100%、ノスタルジーにたっぷり浸れる青春小説。ああ…たまにはこういう非ミステリ作品も良いな

※『アオハルの祭典』なら10点満点です

No.199 6点 狂骨の夢- 京極夏彦 2023/09/24 03:52
皆様が『鵼の碑』を読んでいるであろう頃に自分はまだ狂骨の夢(´-ω-`)
いや〜すごいねぇ…京極夏彦。1000ページほどあるのに1日半ほどで読み終えちゃったよ。しかし『姑獲鳥の夏』『魍魎の匣』に比べると蘊蓄部分のとっつきにくさと事件の真相の複雑さを感じました。作者自身は特にこのシリーズを推理小説だと思って執筆しているわけではないそうですが、今作の本格度はなかなか高いと思います。
相変わらず京極堂の推理力は神のレベルに達しているな。もしも「名探偵推理力トーナメント」があれば決勝で亜愛一郎を打ち負かして余裕で優勝するぞコイツ。

No.198 9点 日本探偵小説全集(4)夢野久作集- 夢野久作 2023/09/22 17:48
収録作は『瓶詰の地獄』『氷の涯』『ドグラ・マグラ』
いやあ、『氷の涯』以外は再読なのに読破に5日かかった。
ふつう再読って忘れた頃にするもんだろうけど、『ドグラ・マグラ』に関してはある程度本筋を整理している状態の方が楽しめるのではと思い再読。例によって細部は忘れていて「こんな文章、前読んだ時あったか?」と疑う始末です。

【ネタバレあります】



『瓶詰の地獄』 9点
4読目くらいですね。やはり妹とは一言も書かれていないため、兄弟ではないかという思いを強くしたところです。聖書に同性愛って禁止されてたり…? 3通の手紙の順番が実は3→2→1だというのが通説ですが、3通目は2人だけのユートピアに行ってしまったと牽強付会な解釈をしておこう。

『氷の涯』 7点
著者の数少ない100p超えの作品かな?ロシア好きなんですねぇ夢野久作。やはりこの作品でも、夢久は探偵小説というのを上空から冷静に俯瞰しているような印象を受けます。考えすぎですか?
なんやかんやあってラストのロマネスクな逃避行。そのなんやかんやは色々ワケアリでしたが、こういうの好きですよウン。

『ドグラ・マグラ』 10点
"胎児よ 胎児よ なぜ躍る 母親の心がわかって おそろしいのか"

ドグラ・マグラ単体の書評欄で「混沌の渦の中に実にウェットな人間ドラマが描かれている」みたいな書評があったのですが、それを見てから読むと確かにウェットな気がしてきたぞ。
「正木教授が生涯をかけて2つの学説を証明する物語」だと1読目の時は解釈したが、「2人の教授間での学術研究を超えた闘争」に上書き。呉一郎が2人の教授を両方とも「お父さん」と認識し、若林教授が激怒するシーン。初読時はすっかり忘れていたが腑に落ちた。
まあ相変わらず分からんところは分からんし、奇書に酔ってるだけな気もする。しかし、精神医療なんてないに等しく、狂人になると隔離される上にその家族までも村八分にされてしまうようなこの時代に一介の探偵小説家である夢野久作がこんな先見性のある物語を作ったというのはやはり脱帽せざるを得ない。

※冒頭のブウウウーンと夢遊病者の書いた作中作「ドグラマグラ」のブウウウーンではウの数が違うっての初めて知りました。気づいた人よう気づいたなと。

No.197 9点 飢餓海峡- 水上勉 2023/09/17 23:06
take5様の書評に釣られて高得点配布おじさんが駆けつけてきましたよ(王者の如き〜は大好きな作品ですけどね笑)
社会派はほぼ食わず嫌い状態なのでチラッと読んで合わなかったらやめようと図書館で借りると、一気に200ページほどノンストップで進んでしまいました。60年前に書かれたとは思えないほど文章が読みやすい(これ大変ありがたい^^)上に風情があり、1000ページの長さを感じさせない抜群のリーダビリティです。

蟷螂の斧さんと斎藤警部さんも仰っていますが再度警告を。
【新潮文庫で読む方は裏のあらすじを絶対に読まないこと】
これめっちゃ大事です。そこが作品の真価でないにしてもネタバレのオンパレードで笑ってしまいました。

【ネタバレがあります】


1963年刊行の作品ですが最初の舞台は終戦直後の1947年。とうもろこしが6円で買える時代。船の転覆事件に扮した2つの身元不明死体が発見され、事件の影には六尺の大男。六尺ってそんな大きいのかと調べると180cmらしく「アレ?そこまで目立たなくね?」と思ってしまった。

上巻では貧困と病魔が蔓延る退廃的なこの時代における娼婦の艱難辛苦がありありと描かれ、読み応え抜群。そういえばそれこそ三津田先生の物理波多矢シリーズもこの時代&こんな雰囲気でしたねぇ…『飢餓海峡』が好きな方はぜひ。
下巻ではガラリと雰囲気が変わり、警察の執念の捜査編。倒叙ミステリの色が濃くなります。上巻に登場したキャラクターが10年後に再登場するこの同窓会感には込み上げるものがあります。私が再会したのは数時間後でも、作中で10年経っていれば私の脳内でも10年後になっているのです。

下巻p110より引用
「徒労の日々が、今大きく助けになったと、弓坂はよろこんでいるのである。10年前の苦労を、弓坂はいま、いっきに思い起こしたのだ。誰にぶつけるようにも出来なかった10年の憤懣を、いま、消し飛ばすことが出来たのだ。」
その中でもやっぱり弓坂警部が報われるここがグッときましたね。

主題は"刑余者保護制度の欠陥"だと思われますが、東京という魔都や舞鶴・大湊などの田舎が抱える種々の問題点、そして人間としてのあり方など1000ページの中に大小様々なテーマが見え隠れします。


正直なところは8点だけど、大作を読み終わった後の達成感+犯人の独白に心打たれたので9点に。なにより説教臭くなく、全てのメッセージが物語に自然に落とし込まれているところがイイですね!

※本格だらけのランキングに紅一点の社会派 
1件目の空様の書評から13年を経て10件揃うって本サイト新参者の私でも何か感慨深いものが…

No.196 8点 瓶詰の地獄- 夢野久作 2023/09/16 14:56
『ドグラ・マグラ』を読んでから頭が夢Qで埋め尽くされ、いつのまにか購入していました。角川の可愛いカバーで読了。収録作は『瓶詰の地獄』『人の顔』『死後の恋』『支那米の袋』『鉄鎚』『一足お先に』『冗談に殺す』の7作ですが、そのうち『瓶詰の地獄』と『死後の恋』は他の短編集で既に読んでいましたねぇ… もしかして夢野久作って作品数少ない?(泣) ちなみに解説はあの中井英夫です。滅多に見ないので驚いてしまいました。

【ネタバレがあります】


瓶詰の地獄 9点
再読です。代表作ですね。現代にも通用する趣向が見事。これは兄妹ではなく兄弟という可能性もあるのか?だとしたら聖書燃やしたくなるのも当然よね。

人の顔 6点
作中唯一のコメディタッチですね(嘘)

死後の恋 9点
再読となったがやはりこれが1番素晴らしい。臓器と宝石、猟奇と耽美の融合がなんとも美しく、初読時でもあのシーンでゾワッと鳥肌が立ったのを覚えています。なるほど『死後の恋』か

支那米の袋 7点
この作者の独白体好きですねぇ。しかしアレ、当時の日本で本当に流行っていたのでしょうか

鉄槌 7点
稀代の悪女の色気や艶かしさには読者も幻惑されてしまいます。しかし主人公、そこまで悪魔か?

一足お先に 8点
これはドグラ・マグラを構想するきっかけとなったオリジナルではないかと思われます。片足を無くしたモノに発症する特有の夢遊病、まさに短編版ドグラ・マグラという感じです。答えは闇の中ですねぇ… いつか整合性を分析して、論理的に犯人を導き出したいです。

冗談に殺す 6点
完全犯罪を完遂させた男による自供の謎。
ようわからん。自分が認識している時点で完全犯罪はあり得ない。必ず鏡にソレが滲み出る、鏡の恐ろしさといったテーマか。

No.195 7点 黒いトランク- 鮎川哲也 2023/09/15 15:45
地理・地名・駅名に疎く、時刻表で思考停止する私には途中まで殺人現場やどこが犯罪不可能とされてるアリバイなのかを把握するのですら難解でした(笑)
しかし物語中盤、久々のアリバイリスト表に出会って興奮はマックスに。鮎川哲也の自信満々な声が幻聴する。「ヒントをたくさん示したぞ。このトリックがお前には見破れるか?」と…
複数の人間やトランクが錯綜する複雑な物語の末には、大変シンプルにして絶大な効果をもたらす仕掛けが明かされる。評価の高さにも納得ですね。星影龍三より鬼貫警部シリーズを少しずつ読み進めていけたらいいなと思います。
読破には8時間とページ数を考慮すると最長クラスの時間がかかった。やはり古典はまだまだ読むのがニガテだ。

※作品と関係ない余談
なぜ私の好きな作家が揃いも揃って鮎川哲也が好きなのか少し垣間見えました。なんと私は鮎川も連城も泡坂も土屋も笹沢も未読作ばかりですよ幸せ者ですなあ。本作品の元ネタ(?)らしいクロフツの『樽』も当然未読なので読まんと。 いやでも昔の作品は読み疲れるのでたまにで(笑)

No.194 8点 パノラマ島奇談- 江戸川乱歩 2023/09/13 21:17
冒険モノを期待して読むと耽美で絢爛な幻想小説でした。
ここまでこの舞台を映像で見せてくれ!!と思わせたのは初めてで、パノラマ島の幽玄な描写に魅了されました。初恋の女性かずっと夢見たユートピアのどちらを選び取るのか見届ける作品でもあります。

(再読)これがいまのところ『芋虫』『孤島の鬼』に並んで最高作かもしれない。7点→8点

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みりんさん
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採点の多い作家(TOP10)
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