皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
していません。ご注意を!
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◇・・さん |
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| 平均点: 6.07点 | 書評数: 216件 |
| No.216 | 7点 | 死体が多すぎる- エリス・ピーターズ | 2025/12/23 21:42 |
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| スティーヴン王の戦いと九十四人の囚人の処刑で幕を開ける。カドフェルは埋葬の手伝いのため、城に呼び出される。そこで彼は、九十五の死体があることに気付き、一つが殺人の犠牲者であると確信する。
主役も脇役も、それぞれのキャラクターが善と名誉を試されるさまには魅了される。作者の生き生きとした複雑なプロットと力強いキャラクターを作り上げ、道徳観を強調しながらも少し説教じみたところがない小説に仕上げている。 |
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| No.215 | 7点 | 大いなる救い- エリザベス・ジョージ | 2025/12/23 21:36 |
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| ある男が農場の庭で首を切られ、飼い犬がそばで死んでいた。そして彼の娘が、死体のそばで斧を手に座っていた。リンリーはこの事件には何か裏があると確信する。
この小説の魅力は、なぜ犯罪が起きるのかを探っていくところにある。プロットはキャラクターによって決められるが、それでも結末はひどく衝撃的で、また必然的な解決になっている。 |
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| No.214 | 6点 | 並木通りの男- フレデリック・ダール | 2025/11/19 19:48 |
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| 友人宅でのニュー・イヤーパーティに向かう途中の並木通りで、突然飛び出してきた男を轢き殺してしまったアメリカ人男性が体験する悪夢の中で、迷宮を彷徨うかのような底知れぬ不安感が漂う一夜を描いたサスペンス。
わずか二百ページの中で、事態は目まぐるしく変化し、ショッキングな出だしから予想外のラストまで一気に突き進む。犯罪のただ中に身を置いた主人公の心理描写に重点を置き、トリッキーな構成とスピーディーな展開で、暗い情念を抱えた男と女の愛憎劇を鮮烈に描くという作者の特徴が発揮されたサスペンス。 |
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| No.213 | 8点 | ジャンピング・ジェニイ- アントニイ・バークリー | 2025/11/19 19:39 |
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| ある探偵作家の邸で開かれた仮装パーティー。参加者全員が史上有名な殺人事件の犯人が被害者に扮するという趣向の夜、屋上に設えた絞首台にストラトン夫人の死体が吊り下がっているのが発見された。
椅子の位置や指紋の有無といった単純な問題から、これほどサスペンスフルな物語が生み出せるとは。一部倒叙的な描写も交えたユニークな構成と脱力感を催すどんでん返しが鮮やか。多重解決の手法を駆使し、真相の不確定さを描いて見せた作品。 |
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| No.212 | 6点 | 悪魔の収穫祭- トマス・トライオン | 2025/10/29 21:46 |
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| 余所者に対して排他的な閉じられた空間、愛憎渦巻く密な人間関係、そして土俗的信仰といった田舎社会の特徴がホラーを語る上で格好な舞台と状況を提供してくれる。
本書は、そうした田舎に都会から移住してきた家族に向かられる。一見したところ善良で人の良さそうな村人たちのファナティックな言動の脅威が描かれている。 |
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| No.211 | 7点 | 地獄の家- リチャード・マシスン | 2025/10/29 21:41 |
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| ある富豪から幽霊屋敷の調査を通して死後の世界を証明するように依頼された科学者とその妻、心霊主義者と自称超能力者の四人が悪意に満ちた超常現象に挑む。
性的倒錯とモラルの崩壊、合理的精神と超自然的精神との闘いといった問題を提起しながら、憎悪という情念について遺憾なく語り、古典的幽霊屋敷ものに新境地を拓いた作品として名高い。 |
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| No.210 | 9点 | オランダ靴の秘密- エラリイ・クイーン | 2025/10/13 19:57 |
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| 国名シリーズ中、最もエレガントな論理を展開する
些細な物証から真相が導き出される過程には知的ショックを覚える。 |
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| No.209 | 7点 | 海野十三集 三人の双生児- 海野十三 | 2025/10/13 19:55 |
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| 初期の探偵小説、ショートショート、故郷を舞台にした幻想小説など、どれも科学とエログロナンセンスが交錯する作品が揃っている。 | |||
| No.208 | 5点 | 聖アンセルム923号室- コーネル・ウールリッチ | 2025/09/20 19:22 |
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| あるホテルのある一室を舞台として、そこで起こった人間ドラマ。七つの話からできている連作短編集で、最初が一八九六年のホテル開業日、最後が一九五七年のホテル閉鎖日となっている。
作者はホテルの部屋そのものを主人公としたかったらしいが、七つの話それぞれが平面的で、話そのものもありふれているので、部屋の性格などが立体的に浮き彫りになるはずはない。良くも悪くも作者らしいセンチメンタルな作品である。 |
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| No.207 | 4点 | 殺人混成曲- マリオン・マナリング | 2025/09/20 19:17 |
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| 登場人物にクイーンやメイスンやポアロなどが飛び出し大騒ぎする。
パロディといえば、推理小説の神髄を把握してこそのパロディだが、この場合はそういうものがない。いたずらにゴタゴタした混乱が続き、何が何だかわからにうちに幕となる始末。 |
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| No.206 | 6点 | 理想的な容疑者- カトリーヌ・アルレー | 2025/08/16 21:52 |
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| 夫婦喧嘩の挙句に妻を自動車から放り出した男が、その後妻がひき逃げされたのではないかと案じられる立場に立たたされ、遂には妻殺しの容疑者として逮捕される。
いかにもフランス心理小説の伝統を踏まえた繊細で皮肉で哀しいミステリとなっており、男と女の間に横たわる永遠の暗黒が、くっきりと姿を現わしてくるのがいい。 |
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| No.205 | 7点 | わが目の悪魔- ルース・レンデル | 2025/08/16 21:45 |
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| ロンドン市西北の一画の独身下宿に住む同性の二人の男。同性ながら似ても似つかぬ二人。
この二人が同姓ゆえの郵便物の取り違えをきっかけとするトラブルに巻き込まれる過程を交互に描く着想がうまい。しかも、一方が相手に抱く疑心暗鬼を片方は知らず、その些細な日常生活の行き違いが恐ろしい破局へと徐々に発展する面白さ。これぞサスペンスの醍醐味。この原タイトルの邦訳は予告では「わが目には悪魔と見えて」だったらしいが、この方がいいのになぜ変更されたのかが疑問。 |
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| No.204 | 7点 | 死の泉- 皆川博子 | 2025/07/30 19:33 |
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| ナチスの優生施設を舞台に、エリート医師クラウスの、なかば狂気ともいえる美への執着が引き起こした悲劇を中心に語られている。
ここには、プロットに始まり舞台設定、人物造形、心理描写にいたるまで、あらゆる点において、この二層構造の仕掛けが生きている。また単なる謎解きで終わらない人間ドラマとしての魅力も十分兼ね備えている。 |
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| No.203 | 4点 | 血ぬられた報酬- ニコラス・ブレイク | 2025/07/30 19:26 |
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| 犯罪計画そのものに緻密性を欠く上に、犯罪者の一人が超人的な底の浅い人物のため、心理描写が退屈になる個所が多いのが残念。 | |||
| No.202 | 8点 | 九尾の猫- エラリイ・クイーン | 2025/07/11 21:14 |
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| 連続殺人鬼(猫)との戦いを描いた傑作。
メディア社会の中の名探偵の苦悩という問題をリアリズムに扱い、現在もなおその尖鋭性を失っていない衝撃作。 |
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| No.201 | 6点 | 時計の中の骸骨- カーター・ディクスン | 2025/07/11 21:12 |
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| 古い大時計を巡るオークションでのドタバタ騒ぎに始まるシリーズ中、最もスラップスティックな一作。
卿の暴れっぷりが楽しいながらも、どことなく不気味な作品。 |
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| No.200 | 7点 | 第二の銃声- アントニイ・バークリー | 2025/06/28 18:38 |
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| 余興で行われた「殺人ゲーム」の被害者役が本当に射殺されてしまう。容疑者だらけの状況下、シュリンガムは、7通りの解決に辿り着くのだが。
大胆かつ皮肉に満ちた構成はあまりにも印象的。 |
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| No.199 | 7点 | シャドー81- ルシアン・ネイハム | 2025/06/28 18:35 |
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| 米空軍パイロットがベトナム戦争中に戦闘爆撃機を見事に窃取し、それを使ってジャンボ旅客機をハイジャック、乗客と引き替えに巨額の金塊を要求する。
アイデアやストーリーが斬新で、その奇想天外さを納得いくリアルさで描いている。 |
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| No.198 | 7点 | 殺す風- マーガレット・ミラー | 2025/06/13 20:43 |
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| 平凡な日常性の中に、どこか明確には指摘しにくいような異常性をとらえている。ありふれたメロドラマでありながら、その影にミラーという気味の悪い女性の眼が陰々と光っているのが分かる。
男の行方不明に至るまでの展開が、達者な会話で運ばれつつ、徐々に不安が広がっていく効果が巧い。 |
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| No.197 | 4点 | 海の牙- 水上勉 | 2025/06/13 20:39 |
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| 水俣病に材をとり、リアリスティックな描写で圧倒される。これがどこまで、実際の状況に則っているのかは分からないが、症状にはショックを与えられる。
ただ惜しむらくは、こういった社会悪の追求が、ありきたりのロマンチシズムに堕している。目を向けるべき対象をないがしろにしてセンチメンタルにすり替えてしまっているところが残念。このことは、犯行の動機にも言える。 |
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