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◇・・さん
平均点: 6.05点 書評数: 239件

プロフィール高評価と近い人書評おすすめ

No.239 5点 マンハッタンの戦慄- F・ポール・ウィルソン 2026/08/06 22:54
ニューヨークで浮浪者たちが次々と謎の失踪をとげる。非合法の始末屋ジャックは、別の事件を調査するうちに、この一連の失踪事件の真相を知ることになる。
前半はミステリアスなハードボイルドタッチ、後半は追いつ追われつの手に汗握る冒険活劇として展開される本書の特色は、全体が古き良き時代のパルプ・フィクションの雰囲気に満ちていることだ。

No.238 5点 ある人殺しの物語 香水- パトリック・ジュースキント 2026/08/06 22:49
十八世紀初頭のフランスに特異体質の男の子が生まれる。彼は全く体臭がないかわりに、人一倍嗅覚が敏感だった。男は大きくなると、自分の才能を利用して若き美女を次々と殺しては、犠牲者の体臭を集めていった。
ヨーロッパの嗅覚文化を背景にした、フランス版「切り裂きジャック」といったところ。話術の巧みなホラ吹きお爺さんの語ったオブセッションに取り憑かれた男の黒い笑いに満ちた恐怖譚である。

No.237 6点 カーリーの歌- ダン・シモンズ 2026/07/24 19:48
死んだはずの大詩人が新作を発表したという情報を得た編集者・詩人のルーザックは、その作品をいち早く入手しようと妻子を伴って、東洋の魔都カルカッタにやってくる。
だが、ルーザック一家を待ち受けていたのは悲惨な出来事の数々だった。インドの暗黒神カーリーを信奉するカルト教団の前に近代西欧が築いた合理的知の論理がなし崩しにされていく恐怖を、不条理感を漂させながらリアルな筆致で描いている。

No.236 5点 アムレット- マイケル・マクダウエル 2026/07/24 19:44
深南部の小さな町を舞台に、呪われた魔除けのお守りが呼ぶ死と悲劇の数々。
呪いのお守りを手に入れた人は、必ず凄惨な最期を迎えるというパターンによって物語が展開するために話の先は読めてしまうが、それでも最後までページをめくらしてしまうのは、その惨劇のヴァリエーションに工夫がされているから。また、呪われたお守りを媒介にして浮き彫りにされる普通の人々の内なる暗黒面の描写も興味深い。

No.235 5点 大聖堂は大騒ぎ- エドマンド・クリスピン 2026/07/08 17:01
不可能犯罪をメインにして、文学談義あり、怪奇趣味あり、ドタバタ喜劇あり。
不可能犯罪は、この事件の謎のスケールの大きさというか、不可能状況のプレゼンテーションの派手さ加減は、カーも顔負けなぐらい。とはいえ、この大掛かりなトリックを犯人が一人で、とっさに計画したことは、かなり無理があるのではないか。

No.234 5点 皇帝に捧げる乳歯- フリッツ・フォン・ヘルツマノヴスキィ=オルランド 2026/07/08 16:51
奇妙奇天烈な人物たちが繰り広げる狂態が実に楽しいが、とりわけ女性歌手の乳歯をいただこうとして巨大な蝶に変身して主人公が風にあおられて町中を大混乱に陥れるシーンが笑える。作者自筆のイラストが多数入っており、ナンセンスな笑いを増幅してくれる。

No.233 6点 北極基地/潜航作戦- アリステア・マクリーン 2026/06/18 16:52
北極海を漂う氷の上に建てられたイギリスの気象観測基地ゼブラで火災が発生。米原潜ドルフィンは生存者を救うべく、分厚い氷が覆う凍てつく海に突入する。
零下五十度の中、吹き荒ぶるアイス・ストームを突いての救出行を始めとして、これでもかとばかりに襲い来る困難に男たちが立ち向かう冒険活劇の面白さに、密閉された原潜内で連続殺人が発生するという謎解きの興趣が加わる。作者の冒険小説の中でも本格ミステリとしての完成度が高い方ではないか。

No.232 6点 毒蛇- レックス・スタウト 2026/05/29 19:33
大学学長の死を知って、男はなぜ失踪したのか。意外な展開と軽快な躍動感、探偵コンビの佇まいは、デビュー作とは思えぬ堂に入り、その魅力も冴え渡っている。

No.231 7点 怪奇探偵小説傑作選〈3〉久生十蘭集-ハムレット- 久生十蘭 2026/05/29 19:31
虚無と皮肉に満ちた物語を鋭利な言葉で語る「黒い手帳」、巨大洞窟に向かったソ連探検隊の運命を描く「地底獣国」など、研ぎ澄まされた文章と奇想が楽しめる短編集。

No.230 7点 サマー・アポカリプス- 笠井潔 2026/05/09 21:27
異端カタリ派の聖地を訪れたナディアと駆は黙示録の見立て殺人に遭遇する。
推理、活劇、思想闘争の均衡が見事。終章で明かされる駆の酷薄な行動原理は衝撃的。

No.229 4点 レベッカ- ダフネ・デュ・モーリア 2026/05/09 21:23
一九四二年、北アフリカ戦線の趨勢、ひいては第三帝国の存亡をかけてロンメルがカイロに送り込んだスパイ、アレックス・ヴォルフと彼の前に立ちふさがる英国情報部ウィリアム・ヴァンダムがコード・ブック「レベッカ」をめぐって展開する息詰まる一騎打ち、というふれこみだが、あまりにも型通り、定石通りの連続でしらけるし、何より「レベッカ」が別段大して重要な役割を占めているわけではないことが分かりガッカリ。

No.228 6点 轢き逃げ人生- アーナス・ボーデルセン 2026/04/20 18:19
デンマークの自動車メーカーの若手幹部モルクは、ドイツの会社との合弁契約が成立し、重役就任が内定した夜に偶然知り合った若者たちのドラッグ・パーティーに参加。その帰り道に自転車に乗った老人を轢き殺してしまう。発覚を恐れつつも、小手先芸で保身を図る彼の前に一人の若者が現れる。
アメリカン・ニューシネマを彷彿させる若者と体制との対立を基調とした犯罪小説。主人公と一風変わった恐喝者の間で深く静かに展開される心理戦は読み手の心をじわじわと侵蝕する。陰鬱な空気が全編を覆うダウナー系サスペンス。

No.227 6点 サンタマリア特命隊- ジャック・ヒギンズ 2026/04/20 18:13
メキシコ革命とアイルランド独立戦争を背景に、憎悪と不満が渦巻き欺瞞と暴力が支配する「神が最後につくった土地」に生まれし者と流れ着いた者が織り成す愛と死と再生の物語。
語り手である元IRAの闘士ケ才一をはじめ、理想と現実の差に傷つき憤り魂を失った者たちが、己の過去と向き合い現実を直視して信じるもののために闘い、新たな一歩を踏み出す勇気が胸を打つ。簡潔で抑制が効き陰影のはっきりした文章から漂う情感、いわゆるヒギンズ節も決まっている。

No.226 5点 学長の死- マイケル・イネス 2026/03/31 19:29
オックスフォード大学のセントアントニー学寮長が、額を撃ち抜かれ頭をガウンで包まれ、周囲には標本の人骨がばらまかれているという謎めいた状況で発見された。諸事情から容疑者は門の鍵を所持しているほぼ七人に限定された。
時間と場所と人物関係は錯綜しており複雑である。プロットの中心となるアイデア、その喜劇的パターンは大変ユニークで魅力的だが、細部があまりにゴタゴタしすぎている。もう少し整理すれば、ウェットと皮肉のきいた物語になったのではないかと惜しまれる。

No.225 8点 スターヴェルの悲劇- F・W・クロフツ 2026/03/31 19:23
ヨークシャーの荒野に立つ屋敷が炎上し、当主を含む三人の住人の遺体が発見される。しかも金庫の中に貯めておいた大量の紙幣は灰に。原因不明の事故として処理されたものの、当主と取引のあった銀行支配人が疑念を抱いたことがきっかけとなり、捜査が再開されスコットランド・ヤードはフレンチ警部を派遣する。
作者の代名詞のように語られてきたアリバイ崩し要素がほとんどない本作は、入念に布石が打たれ丁寧に伏線が張られた堂々たる本格ミステリ。二転三転するプロットの妙味と予想を裏切る緊迫感あふれるクライマックスには思わず唸った。

No.224 5点 トラブルはわが影法師- ロス・マクドナルド 2026/03/12 18:47
外面的にはスパイ追求のサスペンスだが、真のドラマは探偵役の海軍士官が精神の充足を求めて破滅し、逃避を希求する運命にある。
自らを限りなく不器量な存在と感じた精神の空虚をサスペンス小説に仕立てたことに歴史的存在理由がある。

No.223 6点 フィッシャーを殺せ- クリストファー・フィッツサイモンズ 2026/03/12 18:44
仮想国の独裁政権を逃れてロンドンに亡命している元スパイをめぐる追いつ追われつがスピーディに描かれ、しかも共感を呼ぶ。
刺客側のダイアローグをところどころに配した簡潔な構成も良く、ラストの苦い味わいもさらに簡潔で効いている。

No.222 6点 死の扉- レオ・ブルース 2026/02/19 19:48
前半まではユーモアある文章がいかにも英国の本格探偵小説らしいおっとりした味わいを楽しみながらも、平板な展開で少し不満だった。
しかし、カロラスがリムブリック氏に会うあたりから、容疑者の相次ぐ告白、カロラスの推理の方向転換、カロラスの危機を経て大詰めへと運ばれる後半の展開は、サスペンスも加わり盛り上がる。
カロラスの絵解きも充実した内容で、メイントリックの動機の転換を土台とする事件の再構成はお見事。犯人の意外性も申し分なく、伏線も巧妙に張られており、ミスディレクションもきいている。

No.221 5点 バビロンを夢見て- リチャード・ブローティガン 2026/02/19 19:41
真珠湾攻撃の翌月のサンフランシスコを舞台に、「バビロン」の白昼夢に取りつかれたC・ガードのオフビートな逸脱ぶりを強調したメタハードボイルドの記念碑的作品。
ネオ・ハードボイルドの負の部分を煮詰めた結果、アンチハードボイルドの域に達した問題作。

No.220 7点 花園の迷宮- 山崎洋子 2026/01/30 20:27
遊郭で起きた連続殺人事件を、下働きとして働く少女・ふみが追いかける。遊郭で働く女性たちの生々しさときらびやかさを色彩豊かに描いた第三十二回江戸川乱歩賞受賞作。
悲惨さはほとんどなく、特殊な閉鎖空間で起きた不可能犯罪とその謎解きの楽しさを存分に味わえ、解決後は爽快感と甘酸っぱさを残す。

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◇・・さん
ひとこと
若い頃に海外の有名古典は、ほとんど読んだ。今現在は、斜め読みというかたちで、再読している。
歴史的価値は、多少考慮しながら採点したいと思いいます。
好きな作家
クリスティー
採点傾向
平均点: 6.05点   採点数: 239件
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