皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
していません。ご注意を!
zusoさん |
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平均点: 6.29点 | 書評数: 230件 |
No.210 | 6点 | 終着駅殺人事件- 西村京太郎 | 2024/07/25 22:11 |
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招待状によって集められたメンバーが絢に殺されるという、クリスティーの「そして誰もいなくなった」を想起させる連続殺人。それぞれにアリバイ、密室、偽装などのトリックが仕掛けられる。
青森から都会に出てきた若者たちの孤独が、そのまま物語の持つ寂寥感につながっている。最後に判明する事件の引き金となったある事実は、戦慄するしかない。 |
No.209 | 5点 | 贄の夜会- 香納諒一 | 2024/07/13 22:24 |
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謎のサイコキラー、プロの殺し屋、そして捜査一課の刑事。様々な過去を持ち、心に闇を抱えた三者の物語が別々に進み、最後にまとまっていく。それでいて最大の謎である猟奇殺人の黒幕については結末近くまで隠し通しており、ミステリとしての魅力が高い。
展開が広がるため、冒頭こそ多数散漫な印象を受けるが、ボリュームの割に登場人物が厳選され、じっくり書き込まれた造形に深みがある。特に中盤以降の大河内刑事と目取真渉の内心の葛藤や人生への覚悟などは強く印象に残る。 |
No.208 | 6点 | キャプテンサンダーボルト- 阿部和重 伊坂幸太郎 | 2024/07/13 22:18 |
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伊坂幸太郎特有の荒唐無稽なテイストは主要キャラには顕著だが、彼らが動き回る社会の状況や世情は、いつもよりシリアスに描かれている。阿部和重の持ち味が反映されていると思われる。
二人が執筆を開始したのは、東日本大震災の後らしいが、コロナ禍や露ウ戦争を観た二人が、時を遡って書いたのではないかと思えるぐらいリアルな世界観に興奮。 |
No.207 | 5点 | そこに無い家に呼ばれる- 三津田信三 | 2024/06/30 22:20 |
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作者と同名の小説家の三津田信三が語り手となる実話風怪談シリーズ。
旧家の蔵から見つかった新社会人の報告、自分宛の私信、精神科医の記録の三つのテキストには、ある共通した怪異体験が書かれていた。 実話風の語り口を巧みに使い、読み手と物語との距離感を誘導していく手法は見事。 |
No.206 | 7点 | 録音された誘拐- 阿津川辰海 | 2024/06/30 22:15 |
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探偵事務所の所長・大野が誘拐された。助手の美緒は、自慢の耳の良さで犯人との通話から相手の様子を探ろうとする。誘拐された大野も、わずかな機会を活かして情報を伝えようとするが。
現在進行形の誘拐と並行して、大野の一家が巻き込まれた15年前の事件が掘り起こされる。分断された二人の探偵がどのように連携して犯人との駆け引きを繰り広げ、真相に辿り着くのかの緻密な展開の頭脳戦を堪能できる。 |
No.205 | 9点 | 向日葵の咲かない夏- 道尾秀介 | 2024/06/18 22:16 |
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子供特有の残酷さ、悲しみを詩情性豊かに描き出し、結末では主人公の少年が背負う物語の重さに抑えがたい哀切の念を湧き起こさせる。
オカルティックな設定を本格ミステリの骨法と融合してみせた傑作。 |
No.204 | 9点 | 十戒- 夕木春央 | 2024/06/18 22:12 |
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殺人犯を見つけてはならない。それが犯人から課された戒律。破られた場合、離島内の起爆装置が作動、全員の命が失われる。
戒律が課せられることにより、これまで無かったようなクローズドサークル化させている。 ラストの衝撃度は前作の「方舟」に譲るが、舞台設定はこちらの方が好み。また「方舟」との繋がりも隠されていて、作者のサービス精神も感じた。 |
No.203 | 10点 | 名探偵のいけにえ 人民教会殺人事件- 白井智之 | 2024/06/04 22:03 |
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消息を絶った助手を探すため、ある教団に潜入した私立探偵。だが次々と奇怪な殺人事件が。
カルトへの深い洞察と実際の事件の衝撃を上回る独創的な展開に魅力を感じた。登場人物の世界観に応じて反転する多重解決というアクロバティックな構造、最後の最後に明かされるタイトルの意味など、隅々まで考え抜かれた多重解決もののひとつの到達点と言っても過言ではないでしょう。 |
No.202 | 7点 | #真相をお話しします- 結城真一郎 | 2024/06/04 21:59 |
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第74回日本推理作家協会賞を受賞した「#拡散希望」を筆頭に、現代日本の闇を反映させた短編集。
捻りをきかせた構成、張り巡らされた巧みな罠と最後まで目が離せない。どんでん返しを堪能できる作品集で満足。 |
No.201 | 9点 | 地雷グリコ- 青崎有吾 | 2024/05/22 21:24 |
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都立頬白高校に通う女子高生の射守矢真兎が活躍する5編からなる連作短編集。
誰もが知っているゲームのルールにひと手間加えることで、複雑かつ先が読めない対戦を演出している。その上で心理戦を仕掛ける駆け引きの描写が読ませる。 ゲームの行方もさることながら、青春学園ドラマとしても読み応えがあるし、読後感も爽やか。 年末の各種ランキングで上位になることが確実と思えた一冊。 |
No.200 | 4点 | 名探偵に甘美なる死を- 方丈貴恵 | 2024/05/22 21:19 |
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8人の素人探偵がプレイヤーとしてメガロドン荘に集められた。現実世界のメガロドン荘とVR空間の傀儡館を特別なルールのもとで行き来して、その両方で殺人が起こる。プレイヤーたちは、大切な人と自分の命をかけ、殺人事件の謎を解明しなければならない。
設定自体は魅力的だが、かなり複雑でややこしいし、詰め込みすぎに思えた。特殊ルールの説明も、小出しに行われるためアンフェアに感じてしまった。 |
No.199 | 7点 | 妻は忘れない- 矢樹純 | 2024/05/09 23:25 |
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人と人が織り成す綾が、見事にミステリとして結実している5編からなる短編集。
表題作は、夫にいずれ殺されると怯える妻の心を彼女の視点から掘り下げつつ、思わぬ着地点へと誘う。第二話と第四話では、価値観の相違や人との距離感の相違に起因するいら立ちや怖さが、伏線の効いたミステリに鮮やかに昇華されている。第三話は、我儘な青年の物語が一変する様がスリリングに描かれている。第五話では、恋に悩む大学生の息子を持つ母親を襲った惨事と、彼女がそれに対峙する姿を描き、驚かせつつ温もりも感じさせてくれる。 |
No.198 | 7点 | 神薙虚無最後の事件- 紺野天龍 | 2024/05/09 23:17 |
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二十年前のベストセラー「神薙虚無最後の事件」。実在した名探偵の活躍を記したシリーズの最終作で、未完のまま謎が残されていた。大学生の白兎と志希は、たまたま出会った作者の娘・御剣唯に頼まれて、大学の「名探偵倶楽部」のメンバーとともに謎解きに挑む。
作中作に多重推理、奇妙な構造の館と、数々のギミックを堪能できる。一方で、そうした技巧を取り払ってみると、そこには極めて真っ直ぐな物語が浮かび上がる。最初の一行に結びつく素敵な結末が、幸福を感じさせてくれる。 |
No.197 | 5点 | 化け物心中- 蝉谷めぐ実 | 2024/04/28 22:15 |
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冒頭から漂う異様なムード。一度取り憑いたら離れない鬼気迫る迫力。
中村座で起きた不可解な事件を通じて浮かび上がる、演じることに魅入られた者たちの業。読後しばらく放心状態。 |
No.196 | 7点 | 黄色い家- 川上未映子 | 2024/04/28 22:12 |
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様々な束縛によって歪んだ善意。そして絶望の闇に渦巻く悪意。
どんなに呪われたような日々であっても、そこには光が射し込む祈りもある。破滅に向かいながらも寄り添い生きる姿が激しく胸に迫る。 |
No.195 | 6点 | 大江戸科学捜査 八丁堀のおゆう- 山本巧次 | 2024/04/15 22:23 |
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現代人がタイムトンネルを出入りして、江戸時代の目明として二重生活を送るという設定のシリーズもの。
現代人であることを隠すため主人公が努力するのが読みどころだが、意外なところでタイムパラドックスの話題が出ることもあり楽しい。 |
No.194 | 10点 | 白夜行- 東野圭吾 | 2024/04/15 22:20 |
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十九年前の事件が発端で、その頃小学生だった人物に、ずっと付きまとう事件の影が、ある周到さをもって次第に実態を現してくる。そして多様な登場人物が、それぞれに鎖状に絡まり、ほつれ合い最後には犯人へと繋がる。
そこまでの過程が、映画のカットバックのように経過していく。その時の流れが、タイトルの「白夜行」と調和しており素晴らしい。 |
No.193 | 6点 | アクセス- 誉田哲也 | 2024/04/01 22:34 |
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登録すれば携帯電話の料金が一切無料になるという不思議なプロバイダーから始まる物語で、タガの外れたドタバタ劇が小気味よく描かれている。キャラクターも個性的なライトタッチパニックホラー。 |
No.192 | 6点 | 闇祓- 辻村深月 | 2024/04/01 22:29 |
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謎の高校生・要へ親切に接した委員長・澪。そんな澪へ不自然な行動をとる要。部活の先輩・神原が澪の身を案じるが。悪意を持って人の心に宿る闇を増幅し、家族ごと追い詰める恐ろしい存在がすぐそばに。心の奥底まで入り込む恐怖に震えた。 |
No.191 | 6点 | 赤い部屋異聞- 法月綸太郎 | 2024/03/19 22:54 |
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作者が各媒体に発表した、古今東西の傑作ミステリにオマージュを捧げた短編を集成した作品集。
江戸川乱歩の有名短編を基にした表題作のように、オリジナル作品を捻りに捻ったものが勢ぞろい。元ネタと読み比べながら鑑賞すると楽しみは倍増するだろう。 |