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zusoさん
平均点: 6.24点 書評数: 195件

プロフィール高評価と近い人書評おすすめ

No.175 9点 楽園とは探偵の不在なり- 斜線堂有紀 2023/12/04 22:11
この作品には天使が登場する。二人殺した者を地獄に落とす天使。この天使が無数に降臨してきた結果、世界は変わった。そんな世界において、ある孤島の館で連続殺人らしき事件が発生する。誰がどうやってこの事件を成立させたのか。島に招待されていた探偵が真相解明に挑む。
解明される論理の面白さとともに、徐々に明かされる探偵の過去も興味深い。そしてこの事件の後の探偵の心も、読み手の心に響く。

No.174 6点 黄色い夜- 宮内悠介 2023/12/04 22:06
エチオピアの隣国が舞台。ギャンブルに支えられたこの国を訪れたルイこと龍一は、カジノ塔の頂上での国王との勝負を目指し、旅で出会った男を相棒に、様々な勝負に挑んでいく。架空の国におけるギャンブルの連続の中で、架空の国を「場」とする主人公の夢、計画が語られる。
現実から浮遊しつつもスリルはリアルであり、ルイの心もリアル。彼の旅と冒険に読者として伴走できたことを喜びたい。

No.173 7点 風神雷神 Juppiter, Aeolus- 原田マハ 2023/11/23 22:22
主人公は、近世でもっとも有名な画家の一人である俵屋宗達。天才少年・宗達は、信長の命令で大正遣欧使節団と共にヨーロッパに渡ることになり、使節の一人であるマルティノと固い友情を築きつつ、数々の名画と出会い成長していく。もちろんそのような史実はないが、実在する名画や画家が多く登場するので、美術が好きな人にはたまらないエンターテインメントだ。
使節団の少年たちにその後、訪れる過酷な運命を想像すると辛い気持ちになるが、信じるものや自分の行くべき道に真摯な彼らの姿に心が洗われた。

No.172 7点 捜査線上の夕映え- 有栖川有栖 2023/11/23 22:14
コロナ禍の大阪、マンションの一室で男が殺された。容疑者は数人に絞り込まれたが、そこからが難航した。各人に鉄壁のアリバイがあったのだ。かくして大阪府警は、火村に出馬を要請する。
捜査、新情報、推理、新たな疑問と基本的にはその繰り返しだが、知的刺激たっぷりで抜群に心地よい。しかもそこに異質な「筋」が織り込まれていたり、旅情や景色といいう魅力もある。もちろんあの伏線があのトリックに結びつき、あの壁が崩されるのかという驚きも味わえる。

No.171 5点 月下美人を待つ庭で 猫丸先輩の妄言- 倉知淳 2023/11/09 23:08
小柄で童顔な猫丸先輩が知人との会話の中などで興味深そうな謎を見つけると、無遠慮に首を突っ込んでいって真相を見抜いていくという短編が5つ収録されている。
ともすれば余計なものと思える饒舌な会話が終盤において伏線に化ける様は、この作品の醍醐味である。

No.170 6点 あなたの罪を数えましょう- 菅原和也 2023/11/09 23:05
作者ならではの痛みの描写能力の切れ味を活かし、読み手の心を刺激的な世界に、密閉された環境で一人また一人と惨殺されていく世界に引き込んでいく。
この模様と並行して、惨劇後の現場で探偵と助手、そして依頼人が事件を発見していく様子も語られ結末へ。それまで観ていた景色が真相を知ると同時に新鮮な形で一変する。あんな真相が判明するとはという驚きがある。

No.169 7点 密室黄金時代の殺人 雪の館と六つのトリック- 鴨崎暖炉 2023/10/27 23:02
「このミステリーがすごい!」大賞・文庫グランプリ受賞作。
曰くつきのホテルを舞台に、矢継ぎ早に密室殺人を繰り出す。施錠されたドアの唯一の鍵が瓶に封じられて密室内に置かれていたり、ドアの開閉を妨げるように遺体をドミノが囲んでいたりと、高い強度の密室が並ぶ点がまず嬉しい。しかも、その密室ミステリを支える大小さまざまなトリックは、質の面でも高水準。探偵役を務める高校二年生の男女ペアの造形も確かで、謎解きに次ぐ謎解きを素直に愉しめる。

No.168 5点 影踏亭の怪談- 大島清昭 2023/10/27 22:56
怪談作家が現地取材の過程で遭遇する事件を解決する、ホラーにして本格ミステリの連作。
怪異を単なる現象だけでなく、その背景まで徹底的に突き詰めていくところは、ミステリ的に見えて調査型実話系怪談の手法そのもの。謎解きがしばしば、はらむ不自然・強引さをホラーによって巧みに呑み込んでしまうのも極めて怪談的。

No.167 8点 ガダラの豚- 中島らも 2023/10/15 22:20
超人対魔人の派手な呪術合戦は、伝奇バイオレンスの特色のひとつだが、それをヒロイック・ファンタジーやSFの設定によらず、現代日本の日常世界を舞台に描いたのが本作。
前半で開陳されるオカルト批判が、呪術合戦の伏線として効果的に効いているのも見事。

No.166 8点 焦茶色のパステル- 岡嶋二人 2023/10/15 22:17
東北地方にある幕良牧場で、競馬評論家と牧場長、それに二頭の馬が射殺されるという事件が起こった。評論家の妻とその友人が調査に乗り出すが、事件はそれだけでは終わらず、今度は獣医学部の講師が殺されてしまう。
犯人の狙いは人間だったのか、それとも馬だったのか。そして事件の背後に隠された大掛かりな動機とは。競馬にまつわる蘊蓄と意外な真相が楽しめる。

No.165 6点 アンダードッグス- 長浦京 2023/10/01 22:49
中国返還前の香港を舞台に負け犬たちが挑む、手に汗握る国家機密の強奪計画。
それから二十年後、その計画に関わった亡き義父の過去を追走する娘がたどり着く万感のラストは感涙必至。

No.164 6点 殺し屋、やってます。- 石持浅海 2023/10/01 22:39
本書の大半で主人公を務めるのが経営コンサルタントの富澤允。とはいえ、それは表の顔で、実のところは一人につき六五〇万円で殺しを請け負う殺し屋だ。
本書のミステリとしての旨味は、富澤や彼の仲間が、ターゲットや依頼人の奇妙な行動について推理を巡らす点にある。
殺し屋視点の謎解きという設定の魅力と、その設定を活かしきった謎解きの魅力が堪能できる。

No.163 6点 罪人が祈るとき- 小林由香 2023/09/17 22:52
いじめの渦中で死を考えている男子高校生の時田と、かつていじめにより子供を自殺で失った風見という中年男の視点を中心に、加害者側の意識の軽さや被害者側の絶望感、周囲の人間たちの及び腰な姿勢を描いている。
加害者たちを殺して自分も死のうという時田の現在進行形の物語と、息子の自殺へ追い込んだ犯人を捜す風見の物語は、それぞれにミステリとして読ませると同時に、お互いに絡み合って更なるうねりを生じさせ、心に響く結末へと到達する。そのうえで、いじめの加害者への怒りを強く感じさせるだけに、復讐の是非を深く考えさせる作品となっている。

No.162 5点 ディア・ペイシェント- 南杏子 2023/09/17 22:45
真野千晶は医療法人社団医新会・佐々井記念病院に勤める内科医である。患者の利益が何よりも優先するということを求められており、言葉遣いに気を配り、笑顔を作るトレーニングが従業員に課せられている。
そんな千晶の前にストーカーとなって付け狙うモンスター・ペイシェントの座間敦司が現れた。私物が盗まれ、盗撮され、ネットに悪口が書き込まれる。彼の目的は何か、恐怖の駆け引きが始まる。病院という組織のバックヤードで起こる問題を真っ向から世間に突きつける問題作である。

No.161 7点 入れ子細工の夜- 阿津川辰海 2023/09/01 22:39
一冊の古書に着目しつつ、殺人の被害者の足取りを追う私立探偵というハードボイルド風の構図の第一話や、犯人当てミステリを大学入試に用いる試みを描く第二話、学生プロレスの面々が覆面で集う第四話など、スタイルは異なるが、いずれも意外性に満ちた短編が並ぶ。中でも注目したいのは、第三話である表題作。読者の目撃する光景が二転三転していく様は華麗の極み。

No.160 5点 倒産続きの彼女- 新川帆立 2023/09/01 22:31
前作ヒロインが脇役に回り、美馬玉子という「ぶりっ子弁護士」を新たなヒロインに据えたミステリ。
玉子が挑むのは、連続殺人ならぬ連続「法人」事件だ。ある女性が認識する会社が次々と倒産していく。彼女は経理担当の「小者」で会社を潰す権力などない。一体何が起きているのか。
謎の設定と人物造形が魅力的であり、心地良くページをめくり続けられる。現代日本が抱える問題提起が極めて自然体で楽しめる。

No.159 6点 カモフラージュ- 松井玲奈 2023/08/16 22:29
不穏さがベースにある男女の官能物語からスプラッタ・ホラーまで収録作はバラエティに富んている。
主人公たちは希望通りの彼氏や夢を手に入れたのに、喜びきれない事態に苦しんでいる。そして得たものを嫌いにならないようにすることが「愛」だと思っている。「私が望んだのだから」と言い聞かせて、無理やり人生を進めようとする。
奈津子の親友・洋子の言葉に、書き手自身のこの先を見つめるまなざしと矜持を感じたし、女二人のラストシーンが何となくエロティックなのもいい。あらかじめ用意された正しさを手放すことで得る、心身の解放のされ方が新鮮。

No.158 5点 触手(タッチ)- F・ポール・ウィルソン 2023/08/16 22:23
超能力者となった善良な医師と彼をめぐる人たちの葛藤が、静かな緊張感をはらんで描かれるうちに、全てのドラマが集約されて怒涛のラストを迎える。
専門知識が迫真の物語にしているが、作者は一人の医師としての夢を主人公に託しているのかもしれない。

No.157 5点 聚楽 太閤の錬金窟- 宇月原晴明 2023/08/16 22:18
戦国時代の日本に西洋のグノーシス思想と錬金術を持ち込みジャンヌ・ダルクとジル・ド・レの伝説まで結びつけてしまうという力技。
大胆で巧緻な奇想の限りを尽くした、異形の戦国絵巻が堪能できる伝奇巨編である。半村良の伝奇小説を愛する人に、特に強くおすすめしたい。

No.156 8点 ゴールデンスランバー- 伊坂幸太郎 2023/08/03 22:14
ケネディ大統領暗殺事件と酷似した首相暗殺事件が仙台市内で起きる。
無実にもかかわらず事件の犯人として追われる青柳雅春という青年が主人公だが、彼の視点から語られる話と交互に、かつて青柳の恋人だった樋口晴子の話が重要な副旋律として奏でられる。
青柳の友人や元同僚との過去のエピソードも交えつつ緻密に構成された物語は、最後に意外な結末を迎え感動する。

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