皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
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弾十六さん |
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平均点: 6.13点 | 書評数: 459件 |
No.19 | 8点 | 幸運の脚- E・S・ガードナー | 2018/10/30 20:55 |
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ペリーファン評価★★★★★
ペリー メイスン第3話 1934年2月出版 創元文庫で読みました。 目まぐるしい展開でタクシーや飛行機を使い飛び回るメイスン。何度も追い詰められますが、あの手この手で切り抜けるところが非常に楽しいです。残念ながら法廷シーンはありません。 メイスンのタバコはマールボロ。15章でメイスンが田舎者風に喋るのですが(Thash=That's, Shalesman=Salesmanなど)これはどこ訛りなのでしょうか。 ところで数回「ロスアンゼルス」と訳文にありますが、原文ではthe city(p11)とかhere(p86)とかで明言を避けています。意味のない補い訳はやめて欲しいですね。(ハリウッドという単語も出てきません。内容的にはバレバレですけど…) |
No.18 | 5点 | 剣の八- ジョン・ディクスン・カー | 2018/10/30 20:37 |
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JDC/CDファン評価★★★☆☆
フェル博士第2作 1934年出版 ハヤカワ文庫の新訳(2006年)で読了 (HPB1958年も参照) 三十数年前に読んだポケミスを引っ張り出して読んだところ、妹尾訳はセリフがめちゃくちゃ。どーにかならないか、と探したらハヤカワ文庫の新訳がありました。ハドリー退職?フェル博士ももーやらん!と弱音。JDCはシリーズ二作目でキャラをお払い箱にするつもりだったのでしょうか。 探偵作家のモーガンが良い味を出していてもーちょっとキャラ立ちさせれば… (JDCには無理な相談ですが) いつもの通り最初の犯罪は納得出来るのですが、2回目が苦しい感じです。全体的に小粒な印象ですが謎の解明部分はとても素晴らしい。ボタンフック(button hook)というものの存在を初めて知りました。(ググると素敵なのが見られます) さてフェルシリーズ恒例、歌のコーナーです。今回は原文が手に入らず翻訳をもとに調べました。(ページ数は妹尾訳のもの) {★R3/10/16}原文を入手したので若干追記。 p24 讃美歌の≪進め、キリストの兵士たちよ≫(妹尾訳では省略): "Onward, Christian Soldiers" (words: Sabine Baring-Gould 1865 / music: Arthur Sullivan 1871) p170 ≪陽気なしゃれ男≫を口ずさみながら(妹尾訳: 口を閉じて鼻で歌をうたい…): A Gay Caballeroでしょうか。1920年代後半に流行。エノケンも「洒落男」として歌っています。{★R3/10/16追記} 原文and humming, The Gay Caballero p173 私はバーリントン バーティ/朝起きるのは十時半/それから散歩に出かけるのさ、紳士気取りで… : Burlington Bertie from Bow (1915) p175 ≪オールド ジョン ウェズリー≫を歌ってくれよ!(妹尾訳: なつかしのジョン ウェスリーをうたえ!): John Wesleyはメソジストの創始者。メソジストは、当時の流行歌に歌詞をつけ、口語による平易な讃美歌を普及させた。{★R3/10/16追記}原文“Sing 'Old" John Wesley!” p181 「おれのはき古したコーデュロイ」と歌う声(妹尾訳: おれの着古しのコール天の服): 不明。{★R3/10/16追記}原文Somebody, in an unmusical baritone, was singing, "Me Old Corduroys” この歌詞で検索したが調べつかず。19世紀中盤に流行し、ミュージック・ホールでも流行ってたらしい伝承曲Corduroy(Roud 1219)と関係あり? 銃はS&W38口径、オートマティック拳銃(状況から考えるとコルトM1911?)、モーゼル拳銃(状況を考えると大型のC96ではなく、小型で隠し持つのに便利なHSc拳銃…と思ったら年代が合いません。ポケットピストルでしょうか?)が登場。 ところで最後のフェル博士の講釈がですます調なのには違和感ありでした。 |
No.17 | 6点 | カナリヤ殺人事件- S・S・ヴァン・ダイン | 2018/10/30 02:33 |
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ヴァンス第2の事件 1927年出版 新訳(2018年)で読みました。
またも実在の未解決事件がモデルです。元ネタのDorothy King殺人事件(1923年3月)の記事をWebで探してみましたが、残念ながら日本語で書かれたものはありませんでした。どのくらい設定が似てるのか気になります。 さて小説の方は一種の密室殺人で探偵小説の王道ですね。軽薄な口調で捜査をからかうファイロの探偵術が冴え渡ります。大ネタはああそうですか、という感じ(あの図解は読者にとても親切、JDC/CDは特に見習って欲しい!)ですが結構楽しい読書でした。でも重要容疑者を見張ってた警官はドジすぎですね。 次のグリーン家は新訳がいつ出るかわからないので井上勇さんで読もうかな… 銃は38口径コルト オートマチック(38 Colt automatic)が登場。M1903 Pocket Hammerだと思われます。 |
No.16 | 7点 | 白い僧院の殺人- カーター・ディクスン | 2018/10/30 01:58 |
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JDC/CDファン評価★★★★★
H.M.卿第2作 1934年出版 創元文庫(1977年)で読みました。 状況設定はプレーグコート黒死荘とネガポジの関係?姉妹編といった印象です。いかにもJDC/CD的な工夫たっぷりで小ネタを上手く散りばめて大ネタでドカンといった感じの良くできた探偵小説なのですが、いつものように被害者を上手く描けていません。美人女優で誰もが夢中になるような女ですよ… こんな美味しい小説的ネタをスルーするのがJDC/CDです。警察の捜査能力が低すぎなのと、階段事件の顛末がアレなのがちょっと不満。それに良い設定が多いのにイメージが絵としてはっきりと浮かばないのは描写がゴタゴタしてるからだと思います。(例えばJDC/CDの人物描写で外見がパッと想像出来たことがあります?) |
No.15 | 5点 | プリーストリー氏の問題- A・B・コックス | 2018/10/29 21:06 |
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1927年出版 (A.B. コックス名義)
どんなペテンにかけるのかな、というところまでは面白かったのですが、ネタがあんなに嘘っぽくては… 登場人物の行動もちょっと信じられない感じ。所々面白い場面があるものの、お気楽、無邪気で切実感の無い空騒ぎという印象でした。高等遊民な人々や有能な執事も出てくるしウッドハウス好きなら気にいるかも。 (昭和元年鬼熊事件の記事を読むと、この小説に出てくるジャーナリストのとんでもない行動はありうる…と思ってしまいました。) |
No.14 | 6点 | 検事他殺を主張する- E・S・ガードナー | 2018/10/29 20:49 |
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ダグラス セルビイ第1話。1937年1月出版 Country Gentleman誌連載(1936-9〜1937-1) 連載時のタイトルはThe Thread of Truth。
メイスンものでは間抜けな敵役のD.A.を主人公にして、どんな話になるのか、そこが興味深かったのですが、本作には法廷シーンが無く、ちょっと拍子抜け。ガードナー得意の複雑に入り組んだ筋立てで、サスペンスの盛り上げ方は上手です。地味で真面目な主人公ですが、公務と自分に忠実な姿は、わがまま放題、金使い放題の自由人メイスンより好感が持てます。でもやはり主人公に華が無いのは残念ですね。 |
No.13 | 7点 | 怒りっぽい女- E・S・ガードナー | 2018/10/29 20:22 |
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ペリーファン評価★★★★☆
ペリー メイスン第2話 1933年9月出版 ハヤカワ文庫で読みました。 デラはabout twentyseven。この頃のメイスン事務所の従業員はデラ(タイピスト、速記者兼秘書: a typist, Della Street, combination stenographer and secretary この順番がちょっと意外でした…)と見習い弁護士のフランク エヴァリー(今回、ちょっとだけ活躍)の二人だけ。本作には事務所の間取りの紹介もあります。(応接間2つ、図書室、速記室、私室2つ) ドレイク登場は12章から、この位の塩梅が良いですね。(ドレイク探偵の尾行講座や意外な過去も語られますのでドレイクファンは注目) 前作と異なり、本作ではメイスンが無敗(絞首刑なし)を自慢しています。法廷場面はシリーズ初。異例の弁護が炸裂します。ハヤカワ文庫のカヴァー絵の車は時代が違いますね… (どう見ても1950年代の車です) |
No.12 | 6点 | 魔女の隠れ家- ジョン・ディクスン・カー | 2018/10/29 20:02 |
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JDC/CDファン評価★★★★☆
フェル博士第1作 1933年出版 創元文庫(1979年)で読みました。 全体的にフレッシュな若々しさが感じられる楽しい探偵小説。米国と英国の間で戸惑う(もちろんイギリス贔屓)記述が多めでJDCの心情を正直に吐露している感じです。でも、肝心のネタはあまり謎めいていないので小盛り上がり。事件が進行中なのに古文書を読んでしまうブッキッシュな態度や、普通の作家ならきっと意気込んで書くであろう井戸調査の場面をコミック仕立てにしてしまうので、怪奇は全然盛り上がりません。 初登場のフェル博士はHe likes band music, melodrama, beer, and slapstick comediesと評されています。 登場人物がやたら歌ったり飲んだりするのがフェルシリーズの特徴。出てくる歌などを原文から調べてみました。 p21「ラウス ヴィ二 エクセルシタス クルシス」(Laus Vini Exercitus Crucis): 1187年の第一回十字軍のさいブイヨンのゴドフリーの部下たちが歌った『酒の歌』で『朝まで家に帰るまい』(We Won't Be Home until Morning)と同じ旋律だと主張しています。Laus Vini... の方は真偽不明。We Won’t Be Home… の方はWebで何件かヒットしました。 p46 古い文句「地には大いなる叫びが満ち…」(There was a great crying in the land): 聖書の引用? And there shall be a great cry throughout all the land of Egypt (Exodus 11:6 KJV)がありますが… p67 ずっと昔に流行った戯れ歌(long-forgotten comic-songs)2曲 『マリーよ、すぎし憩いの日、そなたはどこにおわせしか』(Where Was You, ‘Arry, on the Last Bank 'Oliday?)と 『ブルームズベリー広場のバラ』(The Rose of Bloomsbury Square): いずれも調べがつきませんでした。‘ArryはHarryの略だと思います。 p192『蛍の光』Auld Lang Syne: 英語圏では大晦日のカウントダウンの定番曲。でも、ここのイメージがちょっとわかりません。うら寂しさを表現しているようなのですが… 銃は「旧式のデリンジャー」an old-style derringer revolver が登場。Remington Doubleだと思います。(revolveしませんが…) 他に「銃身の長いピストル」a long-barrelled pistol (後に出てくる「ブラウニング型拳銃」a Browning pistol と多分同じ)も登場。 |
No.11 | 5点 | 法螺吹き友の会- G・K・チェスタトン | 2018/10/28 16:33 |
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連作短編集「法螺吹き友の会」(Tales of the Long Bow 連載Storyteller 1924.6-1925.3、単行本Cassell 1925): 推理・探偵ものではありません。英語の言い回しが鍵なので、翻訳が難しい作品だと思いました。静かに狂い突発的に実行する登場人物(奇妙な行動には深い訳がある)は作者の十八番ですが、この作品ではその発想に共感出来ず、変てこな寓話になっています。風刺の元ネタが実はあって、それを知れば理解出来るのかも… でも訳者も何も書いていないのでよく判りません。(3点)
併録の三短編: 単行本未収額のブラウン神父もの「ミダスの仮面」(1936)神父の現代に対する愚痴が聴けます。(4点) 他二編は、単発もの。見かけに騙される事なかれ、というテーマは共通で、夕方の情景が印象深い「キツネを撃った男」(1921)も良い(5点)のですが、探偵小説を完全否定する探偵小説「白柱荘の殺人」(1925)がとても面白かったです。(8点) |
No.10 | 5点 | 殺人は広告する- ドロシー・L・セイヤーズ | 2018/10/28 00:39 |
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1933年出版 翻訳1997年
探偵小説というより超人ヒーローものですね。麻薬の売人と渡り合ったり、クリケットの試合では大活躍をしたり… (クリケットって日本の会社の野球みたいな位置なのでしょうか) セイヤーズさん自身が身を置いていた広告業界の内情が生き生きと(楽しげに)描かれているのが良い。探偵ものとしてはネタが小さくて展開も控えめです。 男目線で見るとピーター卿のヒーローぶりはちょっとやり過ぎという感じですね。 ところでパブリック・スクールとは、イートンとハロウに限られるらしい…(あくまでピーター卿の意見です) |
No.9 | 7点 | 赤い拇指紋- R・オースティン・フリーマン | 2018/10/27 23:57 |
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1907年出版 翻訳1982年
実はソーンダイクものは初めて。どー見ても怪しいやつを作中では誰も怪しいと思わないのが変ですが、無邪気な語り手の恋愛模様が面白く、法廷でのソーンダイクの実験が素晴らしい作品。そして(ある意味)意外な物語の終わらせ方。凝った暗殺道具は無茶で、そこのところの筋は荒っぽいのですが、それ以外は順当な出来でとても楽しめました。当て推量(guess)論は明らかに偉大な先達を意識しています。(指紋関係では「ノーウッドの建築士」が1903年の発表) 騒がしい監獄、汚い法廷の描写にとてもリアリティがあります。全般的な印象として、女性の役割が当時はこの程度か、という感じ。とても息苦しかったでしょうね。 ところでBlickensderferを知らなかったのですが、なかなか面白いタイプライターですね。Model 5がリテラリイ型でModel 7がコマーシャル型かな? (ストーントン型Stauntonのチェスの駒というのもこの作品で覚えました) |
No.8 | 6点 | ローマ帽子の秘密- エラリイ・クイーン | 2018/10/27 23:12 |
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1929年出版 今回は創元文庫(2011年)で読みました。
親子で仲良く口笛を吹いています。父は「ニューヨークの歩道」、息子はシューベルトのアリア。四十年前に創元文庫の旧訳で読んだのですが例によって全く覚えておらず、犯人の動機だけが朧げに記憶の片隅にありました。う〜ん、本格ですね。とても真っ当な推理ですが「素晴らしい!」という程ではありません。こちらはシルクハットが無いことが謎ですが、JDCの帽子収集狂(1933)はシルクハットが有ることが謎でした。(きっと意識してますね) あと国名シリーズと言われているが、ローマは国名ではない!(ローマ帝国なら国名か?) ローマ帽子というのも後の国名シリーズの名付け方からすると変です。 ヴァンダインからの影響ですが、第1作を読み比べてみたら、言われてるほど似てるかな?という印象。もっと類似点が多いと誤解してました。(鼻眼鏡・片眼鏡、稀覯本・絵画を買い逃すとか確かに似てますけど…) ところで当時の劇場にトイレはなかったのでしょうか?ヴェリーが下水を調べてる場面は想像したくもありませんが… --- (2020-4-18追記) The Saturday Review of Literature October 12, 1929に掲載された本作の評は、ハメットの手によるものらしい。(Don Herron主宰のWebサイト “Up and Down These Mean Streets”のHammett: Book Reviewer参照) 「この「推論の問題」は二人の新探偵クイーンたち(父と子)のお披露目である。愛想良い嗅ぎタバコ好きとファイロヴァンス風の本の虫。感じは良いが、ちょっとウブ過ぎで会話がchorus-likeに過ぎる感じ。[評の中盤はストーリーの要約なので省略] 小さな欠点(劇場支配人が座席表を知らなかったり、動機がちょっと前の劇場ミステリに使われていた)を除けば、本作は本格(straight)探偵小説好きの要望にかなう作品だ。ただし鋭い愛好家なら、全ての証拠は提示された、という告知のところで、真相にたどり着いているかもしれない。」 似た動機が使われてたというanother theatrical mysteryが気になりますね… (ストーリー要約以外は全文を翻訳しました。chorusのニュアンスが掴めず手抜き) ところで、この評、EQ『最後の一撃』(1958) 第二部の冒頭に(一部略で)引用されています。EQは匿名の評者がハメットだったことを知っていたのか?(知ってたならハメットの名を大いばりで書き込んだに違いない、と思う) なお、私は『最後の一撃』青田訳を確認してから試訳を公表するつもりだったのですが、文庫本がどこかに埋れてて… 重大な誤りがあったらこっそり修正します… |
No.7 | 6点 | ベンスン殺人事件- S・S・ヴァン・ダイン | 2018/10/27 22:36 |
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1926年出版 今回読んだのは2013年の新訳
実はヴァンダインを読むのは初めてです。日付と曜日と序文とエルウェル事件(1920年)から判断すると1918年6月の事件ですが、内容的に戦後(1918年11月以降)を思わせます。そしてブラックマンデー前のイケイケなUSAの雰囲気です。ファイロのネチネチした皮肉っぽい物言い(美術関係の発言さえも薄っぺらい)にイライラしますが、探偵小説としては王道の内容で楽しめる作品でした。(警察が間抜け過ぎなのがご愛嬌) 次作以降のシリーズがとても楽しみ。この人の探偵小説論を読みましたが、結構真面目な人ではないか、と感じています。 銃は表紙にカッコ良く描かれているコルトM1911(原文U. S. Government Colt—and not the ordinary Colt automatic)が登場。(通常のコルト自動拳銃じゃないよ、というのはM1911が当時市販されてなかったため) グリップが真珠細工(原文pearl handle)のS&W38口径リボルバーも出てました。 でもp354のM1911分解描写はめちゃくちゃ、原文からわけがわかりません。(翻訳が悪いわけではない) He opened the plates of the stock, and drawing back the sear, took out the firing-pin. He removed the slide, unscrewed the link, and extracted the recoil spring. どこがストック?何でシアが出てくる?ファイアリングピンを外す必要ある?著者が知らない用語(シア・ファイアリングピン)を振り回したのでしょう。正しい分解手順(M1911 field stripでWeb検索すると映像が沢山あります)に基づき用語を訂正すると(ストック云々はグリップからマガジンを抜くこと?)「スライドオープンにして、撃鉄を後退させてから(この状態でファイアリングピンは安全な位置にある)、スライドストップを引き抜いた。スライドを外し、バレルブッシングを回して外し、リコイルスプリングを取り出した。」これで銃身がスライドから抜き出せますので、じっくりとライフリングを観察できます。 ところで弾丸の線状痕から発射した銃が特定出来る、というは1925年4月にゴダードらが比較顕微鏡を開発してからのようです。 |
No.6 | 7点 | 屠所の羊- A・A・フェア | 2018/10/27 21:46 |
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1939年1月出版 クール&ラム第1話。
ボスの妻とかフレッドの造形が愉快です。どちらもペリー メイスン世界には絶対出てこないキャラ。でも大ネタの法律的トリックはちょっと微妙な感じ。バーサは肝心なところで結構活躍。役割分担がしっかりしてるところが良い。 銃は32口径でレバー式セイフティとグリップセイフティがあり、マガジンに7発入る自動拳銃が登場(FN M1910ですね) |
No.5 | 6点 | シシリーは消えた- アントニイ・バークリー | 2018/10/27 21:35 |
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1927年出版 翻訳2005年
一捻りした執事もの。有閑主人公が金に詰まり従僕として勤める羽目に陥り、勤めた屋敷の夕食会には大学時代の友人や知り合いが来て、召使の立場で接しなければならない、という面白い設定で始まります。 その後の小ネタも上手く効いていて、まあ大ネタは地味目なのですが、明るさに溢れたバークリー世界が展開します。初出は新聞の連載(デイリーミラー1926年3月〜4月) 軽くて楽しい物語を読みたい人に最適です。 |
No.4 | 8点 | 樽- F・W・クロフツ | 2018/10/27 21:14 |
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1920年出版 今回読んだのは2013年の新訳
実はクロフツを読むのは初めて。職業人出身らしい、丁寧な文体が地道な捜査を印象づけます。フランス側の描写もなんとなくそれっぽい雰囲気。(作者はフォリー ベルジェールが好きらしい) 全体の構成も面白く効果的。落ち着いた時間が流れる読書でした。ところで自動拳銃に関して「ジョン コッカリルあたりをもってゆく」(I should bring your John Cockerill)という表現が出てきます。当時の拳銃の代名詞?でも拳銃では全然Web検索で引っかからない(コッカリル鋼鉄製バレルのショットガンがヒットしたくらい)ので、大袈裟な表現かも。(クルップ砲をもってゆく、みたいな感じ?) 私が参照した原文には作者の前書き(1946年Pocket Classics収録に際して)がついていて、なかなか興味深い内容なので以下抄訳。 『病気療養中だったので暇過ぎて死にそうなので、一番アホくさい思いつきを書いてたら小説になった。妻は結構喜んでくれたが、病気が治って仕事に戻り、それっきりに。後日ふと読み返してみたら結構イケるのでは、と思い、書き直しつつ隣人に読んでもらい、ここ馬鹿げてるから変えた方が良い、といわれたところを直して完成。(なので献呈はその隣人に) 有名代理人A.P.Wattに原稿を送付。Collins社は1-2章は気に入ってくれたが3章は直しが必要とのこと。たしかに第3章(元は法廷シーン)は有り得ないものだった。書き直したものが採用され、出版されると聞いた時は天にも登る心地だった。自分でつけていた題はA Mystery of Two Cities(ディケンズ風) 後悔してるのは約120000語を費やしたが、80000語でも同じ稿料だと後で知ったこと。40000語は無駄だった…』 素人の日曜大工的な作品だったのですね。 <以下、ほんのちょっとだけネタバレ> ***** ところで鮎川説(樽のキズ)に異議あり。新訳p159を読めば明快に「送り先や日時(先週というのは確実)は覚えとらん」という証言です。そして刑事から樽を発送した日時を聞いてから、運転手が帳簿で送り先を確認した(p161)のです。クロフツさんも日本の推理作家を手玉にとったのだから素晴らしいですね。 ***** |
No.3 | 8点 | プレーグ・コートの殺人- カーター・ディクスン | 2018/10/27 20:06 |
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JDC/CDファン評価★★★★★
H.M.卿第1作目 1934年出版 今回読んだのは2012年の新訳 40年前ハヤカワ文庫(仁賀訳)で読んでいるのですが、H.M.が被害者の部屋を調べるシーンを朧げに記憶していた以外、ほぼ全部忘却の彼方。印象的な殺人方法も犯人もすっかり忘れていました。 注釈が読みずらい(是非同じページ内で処理して欲しい)のを除くと新訳は非常に良質。そして肝心の内容も抜群です。不可能犯罪はこのくらい設定に凝らないとリアルにならないよ、とJDC/CDがニヤついています。ただしいつもの通り2回目の犯行が雑。そして生きている時の被害者が描かれていないのが残念。マリオンや偏屈婆さんの描き方も物足りないです。小説的に良いネタをぶん投げてしまうJDC/CDの悪い癖ですね。 本作のマスターズの設定を読んでJDC/CDの怪奇趣味の正体がわかりました。オカルト・バスターズなんですね。ユリ ゲラーに対するランディの立場です。もし本物の不可能犯罪が存在したら超自然現象を肯定せざるを得ないのです。そこら辺も本作では明快に描かれていてJDC/CD入門に最適かつ最高傑作ではないか、と思いました。 |
No.2 | 7点 | ビロードの爪- E・S・ガードナー | 2018/10/27 11:22 |
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ペリーファン評価★★★★☆
1933年3月出版。ペリー メイスン第1話。 弁護士が行動派探偵という設定は先行例があったのでしょうか?開始早々にパンチを繰り出す荒ぶる弁護士、それが初期ペリーです。デラはapproximately twenty sevenで、シリーズ唯一ちょっとだけ生い立ちが語られます。デラのセリフでI've known you [Mason] for five years (...) Some of your clients got hung. ということはメイスンは無敗ではなかった?今作ではメイスンの無茶な行動は控えめですが、依頼人に翻弄されながらも上手く切り抜ける姿が見もの。法廷場面はありません。ところで私が見た原文では、デラの人物紹介がDella Street – who was a faithful Girl Friday (also Sunday and Monday, if not quite always).となっていました。(正しい意味がよく判りません…) 銃は32口径コルト・オートマチック、シリアル127337が登場。シリアルから判断すると1912年製のM1903 Pocket Hammerless, Type IIIだと思われます。 ところで原文にはロサンジェルスもカリフォルニアも出てきません。(いつ明示されたかは、その作品の評に書くことにします) |
No.1 | 4点 | 黒い塔の恐怖- ジョン・ディクスン・カー | 2018/10/27 09:37 |
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JDC/CDファン評価★★★☆☆
ダグラス グリーン編の埋もれたカー作品集(1980)の翻訳後半(前半はカー短編全集4) 本書の目玉は「史上最高のゲーム」(1946) 探偵小説の理想を述べたエッセイ(幻のアンソロジーの序文)で、これを読むとJDC/CDは「小説なんてどーでも良い」と考えていたことが判ります。あくまでも作者と読者の対決が主眼なんですね。でも「お前が言うな」と言いたくなることも平気で書いてます。まぁ理想論ですから… この中で触れられているキャロライン ウェルズのThe Technique of the Mystery Stories(1913)はGutenbergに無料版あり。JDCのラジオドラマも無料公開のものがあるので、英語が得意ならさぞ面白いんだろうなぁと思います。収録作品には傑作はありません。でも1935年の筆力旺盛な時期に何故パルプマガジン?ある程度売れてきたので昔好きだった雑誌に売り込むか!ということだったのでしょうか。買った当時(1983)は巻末のカー書誌が便利でしたが、今は随分新しい翻訳が出ているので改訂が必要ですね。 なおp43の詩はBartholomew Dowling作The Revel(East India)、使われた銃は1917年の事件なのでM1911でしょうか。 |