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弾十六さん
平均点: 6.14点 書評数: 532件

プロフィール高評価と近い人書評おすすめ

No.92 8点 母なる夜- カート・ヴォネガット 2018/11/24 14:56
Uブックス版は池澤さんがさらに練った訳、というので買って読まねば! と思いました。情報ありがとうございます。(私は白水社の旧版で読みました)
「チャンピオンたちの朝食」(1973)までは熱心な読者だったのですが、それ以降は読んだり読まなかったりです。
本作はヴォネガットの作品中、もっとも普通の小説でその点の完成度が高いです。確か小鷹さんが引用していた作者の言葉Make love while you can, it’s very good thing.(うろ覚えです)とともにいい思い出として心に残っている作品です。
再読を果たしたら、追記しようと思います…
「デッドアイ・ディック」は殺人が出てくるし、SFっぽくない小説なので追加しようかな…

No.91 7点 一九八四年- ジョージ・オーウェル 2018/11/24 14:00
この作品自体は素晴らしいと思います。(ロンドンの鐘の音と、ネズミが心に深く残っています)
私が気に食わないのは、日本ではザミャーチンの「われら」との関連が抹殺されてることなんです… 事実を無かったことにする、その行為自体が1984的な世界だと思うのです。まあ一度「われら」(岩波文庫で入手可能)を読んでいただければ、私の言いたいことがわかっていただけるのではないか、と思います。
WikiのZamyatin “We”の項目より引用。
Orwell began “Nineteen Eighty-Four”(1949) some eight months after he read Zamyatin's “We”(1921) in a French translation and wrote a review of it.

<誤解を与えそうなので、追記>
パクリ云々の話(全ての芸術はパクリである)ではなく「われらを読んで強い印象を受けたものと思われ、その設定を発展させ1984年を執筆した」と何故素直に書けないのか?ということです。(パクリアレルギーの人っていますよね…)
英Wikiでも上記の文章は1984の項には書かれていません… (日本Wikiの「われら」の項目が特に気持ち悪い。躍起になって1984年を褒め称えています)
オーウェルの書評 E・I・ザミャーチン著「われら」(Tribune 1946-1-4)がWEB上で読めるんですね… 最後の文はオーウェルの犯行予告です。
This is a book to look out for when an English version appears.

No.90 7点 溺れるアヒル- E・S・ガードナー 2018/11/24 08:52
ペリーファン評価★★★★☆
ペリー メイスン第20話。1942年5月出版。
冒頭はパームスプリングスのホテルで休暇中のメイスンとデラ。やはり主人公とともに何だかわからない事件に巻き込まれて行くこの感じが好きです。地方新聞に動向が乗るほどの有名弁護士メイスンに持ち込まれた依頼は18年前の殺人事件の調査。今は1942年と明示され、出征間近で結婚を急ぐ青年や、この戦争が若者たちを鍛え上げるだろう、といったセリフが開戦直後の雰囲気を感じさせます。豪邸でドレイクと合流し、乾杯は「犯罪を祝して!」(Here’s to crime.) メイスンの無茶な行動はほとんど無く、デラと乗馬を楽しんだり、猛犬を簡単に手なづけたり、路肩でタイヤを交換したり。(ただし危険な助言は結構あり) 舞台がエル テムプロ(El Templo: 架空地名、多分インディオの近く)なのでトラッグはお休み。
法廷ではメイスンは傍聴人席(シリーズ初)でイライラ、最後は「待ってました」の独壇場で得意の攻撃を繰り出し、事件を解決に導きます。
タイトルに動物が登場するの(吠え犬、門番猫、びっこカナリヤ、偽証オウムなど)には傑作が多く、この作品も切れ味がとても良い秀作。
ではトリヴィアです。(◼︎はPerry Mason Bookからのネタ)
銃はライフル銃(rifles)、六連発銃(six-shooters)、散弾銃(shotguns)が登場。詳細不明。
p102「重装の、あの20ゲージの銃を発射して」(You take one of these twenty-gauge guns with a good heavy load): heavy loadは重い散弾(反対語 light load)のことなので「20ゲージの銃で重装弾を発射して」が正確。20ゲージ(.615インチ)は12ゲージ(.729)より小口径で小型鳥獣猟用。
p34「自分が、劇にでてくる主人公のようだと思ってるだろうな。客は腰を打つし…」(must feel he’s like the host in that play where the man broke a hip): この劇はGeorge S. Kaufman & Moss Hart 作の喜劇The Man Who Came to Dinner(1939初演、1941映画化 日本未公開)とのこと。(某Tubeに楽しそうなトレイラーあり) ◼︎
p36「パリス型石膏」(a plaster of Paris cast): ギプスのこと。
p120「清浄剤」(detergent) :「界面活性剤」が正訳。翻訳時(1958)には普及していなかったのかな? 現在「清浄剤」は界面活性作用ではなく、化学作用や物理作用で汚れを落とす洗剤に使われる。なお米国でも本書出版当時detergentは一般家庭で使用されておらず、ライフ誌1939-2-27号に“Aerosol Makes Even Ducks Sink”という記事が載ったとのこと。◼︎
p125「シカゴのセントラル・サイエンティフィック商会、ニューオルリーンズのナショナル・ケミカル商会、ニューヨークのアメリカン・シアン・ケミカル会社」(Central Scientific Company of Chicago, National Chemical Company of New Orleans, and American Cyanamid and Chemical Corporation in New York): いずれも当時実在の会社です。作者はAmerican Cyanamidの社員(その娘は後年のミステリ作家Sally Wright)に取材したので、ここで一つ宣伝、ということでしょう。◼︎
p181「われわれアメリカ人全部にとっても、このあたりで、ひとつがんと喰らわされるのはよいことかもしれないんだ」(It might be a good thing for all of us to get jolted out of it.): 後段で「(我々は)戦争に一度も負けたことがない」と言っています。当時はまだ日本軍も善戦中。(ミッドウェー海戦は1942年6月)

<ちょっと誤訳>
p31「マーヴィンは、研究所の実験に生き物を使用するには、ちょっと神経質すぎると思うよ。」(I think he’s a bit sensitive about using live things in laboratory experiments.) heの直前に話に出てくる男性はFatherだけなので、内容から言っても「お父さんは随分気にするだろうと思う」ということですね。
p87「昔、毒ガス室で、犯罪者を死刑にしたものと同種のものだ。」(It’s the same kind they use to execute criminals in a gas chamber.): 当時バリバリの新方法(カリフォルニア州では1938年からガス室実施)なので、変だと思いました。used toの見誤り。

No.89 6点 鬼平犯科帳 (コミックス)- さいとう・たかを 2018/11/23 07:19
池波先生には大変申し訳無いのですが、梅安も秋山小兵衛も鬼平も、全部さいとう氏の劇画でしか知りません。でもそれらの劇画のおかげですっかり池波先生の小説のファンみたいな気持ちです。(エッセイは読んでおり大好きです)
さいとう・たかを氏は、リアリティに気を使う主義なので、江戸時代の描写も正確なのでは?と思っています。絵で見ないとわからないものって結構ありますよね。
まー内容は「本格の盗賊」とか、当時はもっと身分制度が窮屈な感じじゃないの?とかフィクション味が多い気がしますが…

No.88 10点 半七捕物帳- 岡本綺堂 2018/11/23 05:53
光文社文庫で全話読了。
1917-1937発表。
他所ではタダで本文が手に入りますが、おすすめは講談社 ≪大衆文学館≫文庫。雑誌掲載時のイラスト付きです!人によっては邪魔に感じるでしょうが、この企画は是非ほかでも実施して欲しいですね。乱歩さんも当時のイラスト付きが見たいと思いますし、パジェット付きのホームズやテニエル付きのアリスは当たり前ですよね。
綺堂先生には本物の江戸時代を感じます。特に、江戸の夜の暗さがイイ。会話の口調も心地良いです。
トリックも雰囲気を壊さないような工夫が見どころ。でも江戸の警察制度のリアルではないとも思われます… (実は謎解き小説より江戸岡っ引き裏話のようなのが読みたいほうです)

No.87 7点 フーディーニ!!!- 伝記・評伝 2018/11/23 05:00
脱出マジック、降霊術、コナンドイルとくればミステリの範疇ですよね!

Kenneth Silverman. Houdini!!! The Career of Ehrich Weiss (New York; Harper Collins 1996) フーディーニ(エーリッヒ・ヴァイス)は科学の時代の子であり、個人の時代の子だったのですね。コナンドイルとの対立について漠然とした知識はありましたが、友情関係が意外でした。1890年代から1920年代、ボードビルなどの興行界、奇術界、手錠抜け(残念ながら謎解きはありません)、脱出(といえば私の時代では初代引田天功ですね。TVで見ていても強烈な体験でした)、黎明期の映画産業、ジャックロンドン(意外な繋がりあり)、降霊術&心霊主義、黎明期の飛行機、などなどに興味があればとても面白いと思います。エネルギッシュで騒々しく挑戦的な人生の記録の後に、姪が書いた短い回想録があり、ほろりときます。この後、世界は大不況・大戦を経て、集団の時代・画一化の時代に移ってゆきます。生フーディーニの手錠抜けや脱出、見たかったですね… (フィルムの記録があるようですが…)

No.86 5点 寝室には窓がある- A・A・フェア 2018/11/23 02:39
クール&ラム第12話。1949年1月出版。ハヤカワ文庫で読了。
ホテルのロビーでブロンドに出会うラム君。作者お気に入りの「犯罪に乾杯」(Here’s to crime)が出てきます。複雑な展開の物語ですが、登場人物の魅力が薄いです。バーサやセラーズ部長刑事も表面をなぞるような描写。銃は32口径の六連発のリボルバーが登場、詳細不明。
小実昌さんのグチだらけの訳者あとがき(翻訳の日本語について)が面白いです。

No.85 5点 空っぽの罐- E・S・ガードナー 2018/11/21 05:39
ペリーファン評価★★★★☆
ペリー メイスン第19話。1941年10月出版。HPBで読了。
冒頭は中年主婦の家庭の悩みが語られ、全然ワクワクしません。メイスンは第三章(p23)から登場。舞台はロスアンジェルスとサンフランシスコ。依頼が普段とは全然違うのがユニーク。支那と日本の戦争が遠景にあり、支那人の召使い、名前はガウ ルーン(Gow Loong 広東語「九竜」)で正しい音訳のようです。(作者は中国人と交流あり) メイスンの好みはオルガン曲かハワイアンミュージック。ドレイクはメイスンにスカされおかんむり、酔い覚まし炭酸(Bromo-Seltzer)をガブ飲みします。メイスンとデラはS.F.に飛んで、おふざけから無茶な大冒険に発展、口から出まかせ出たとこ勝負のお芝居で何とか危機を切り抜けます。(個人的にはここが一番の見どころ) トラッグ視点の記述が丸ごと一章分あります(第11章)が、活躍は地味です。
いつもの込み入った筋で、スリリングな展開が楽しめますが、全体的にバラけた印象、上手く絵が仕上がらない感じです。(そもそも罐の謎が、それめんどくさすぎでは?なので…)
ではトリヴィアです。
銃は銀色のピストル(revolver)、短い鈍色の自動拳銃(a grim snub-nosed revolver)、38口径のピストル(.38 caliber revolver)が登場。いずれもメーカー等詳細不明です。リボルバー(回転式拳銃)を自動拳銃(これだとsemi-automatic pistolの意味になってしまいます)とか単にピストルと訳すのはいただけません。
p12 洗濯ものを絞り器(mangle)に…: 圧縮ローラー式のやつです。
p13 Webster's Collegiate Dictionary 5th edition(1936)は当時の最新版。「新聞のクロスワードに必要な言葉はみんなはいっているはずよ」クロスワードは、その発明(1913)以来30年程は辞書の定義をそのままカギに使うという暗黙の了解があり辞書は大変な売れ行きだった(遠山顕2002)
p14 [靴下の]中にカガリ玉(darning egg)を入れて…: 私は初めて知りました。
p53 「本で」メイスンの活躍を読んだ、と訳されていますが、原文では単にread aboutなので、新聞とかで有名なのでしょう。
p71 口述録音機(dictating machine)はディスク式の発明(1945)まで記録メディアは蝋管。(と言うことは「あの作品」も蝋管ですね)ガードナーは1933年ごろから全て口述録音。
p180「やなにーも」(maskee) 支那人の召使いが使うピジン英語。
p220 冷蔵庫は、電気製品だった。(The icebox was electric) 完全には普及していない時代です。
デラが先導したメイスンとの乾杯は「犯罪事件に!」(Here's to crime)
ところで、トラッグの「弟」が出てきますが、原文はa brother、年齢の上下は不明です。

<意味不明なので原文を解釈>
p238のメイスンとデラの会話がちょっと…
単なるアクセサリーになろうとしたら、[秘書は]アマチュア資格を喪失する(becomes an accessory, she loses her amateur status): 試訳「共犯者になっちゃったら、シロではなくなるね」
アクセサリーって?(What's an accessory?): 「共犯者?」
賭場の見張り女のことさ(A moll who cases the joint): 「見張り役の女(スケ)」(p214のことなので隠語っぽく訳すのがいいでしょう)

No.84 7点 レスター・リースの新冒険- E・S・ガードナー 2018/11/18 11:24
本書に収録されているのは全てDetective Fiction Weekly(以下D.F.W.)に掲載されたものですが49作目(1936-3-21)を最後にシリーズ第1作目から続いていた同誌への掲載が一時中断し、Street&Smith's Detective Story誌(月刊誌)が50作目(1938年12月号)から56作目(1939年8月号)までリースものを掲載します。ところが57作目(1939-9-16, Lester Leith, Magician 本書に収録)は雑誌表紙の最上部に大きく"Lester Leith is Home Again!"と書かれ、D.F.W.に再び掲載されました。(これ以降最終話まで同誌及び後継誌に掲載。63作目掲載のDetective Fiction誌及び64作目と65作目<最終話>を掲載したFlynn's Detective FictionはD.F.W.の後継誌) この時期D.F.W.は表紙の雰囲気を変えたり週間から隔週刊、月刊に変わったり版元が変わったり雑誌タイトルを変えたりと台所事情が苦しかったのがうかがえますが、1938年の突然の掲載誌変更(大人気作のライヴァル社への移籍ですから…)にはどんな事情ががあったのか気になります。(長編作家として安定してきたガードナー自身の中短編の寄稿自体が減っており、既にパルプマガジンは主戦場では無かったのですが…)
さて、本書には以下の5作を収録、いずれも楽しい紳士怪盗ものです。(#はリースものの掲載順通し番号)
#19 In Round Figures (D.F.W. August 23, 1930)
#33 The Bird in the Hand (D.F.W. April 9, 1932)
#57 Lester Leith, Magician (D.F.W. September 16, 1939) [aka The Hand Is Quicker Than the Eye]
#2 A Tip from Scuttle (D.F.W. March 2, 1929)
#62 The Exact Opposite (D.F.W. March 29, 1941)

No.83 7点 レスター・リースの冒険- E・S・ガードナー 2018/11/18 11:03
文庫版で読了。
なぜレスター リースはほんの数作しか翻訳されないのか?
答えは簡単でテキストが手に入らないから。ガードナーの短編集に収録された2作、Ellery Queen編の単行本The Bird in the Hand and Four Other Stories(1969)及びThe Amazing Adventures of Lester Leith(1980)収録の7作以外はパルプマガジンを漁るしかありません。(EQMM採録作で未翻訳のものがあるのかなあ…)
FictionMags Indexという素晴らしいHPで調べるとレスター リースものは全部で65作。Detective Story誌に掲載された7作以外は全てDetective Fiction Weekly誌(以下D.F.W.)及びその後継誌に掲載されました。(ヒューズのガードナー伝付属の全作品リストでD.F.W.1929年夏頃?と記載していたA Sock on the Jawは存在せず、逆に全作品リストに漏れている1作 Vanishing Shadows, D.F.W. 1930-2-8 をFictionMags Indexで見つけました。このHPでは各号の表紙の画像を掲載していて、リースものは人気が高く大抵カヴァーストーリーになっているので当時のリースのイメージがわかります)
私はレスター大好きなのですが、本国での人気が高まるのを待つしかありませんね… (あと56作も楽しみが残ってる!と思うことにしましょう)
怪盗サムでお馴染みの大正ボーイ乾先生の翻訳も快調。いずれも楽しい紳士怪盗ものです。
今回収録されてるのは以下の4作(#はリースものの雑誌掲載順通し番号です)
#23 The Candy Kid (D.F.W., March 14, 1931)
#64 Something Like a Pelican (Flynn's Detective Fiction, January 1943) [aka Lester Leith, Financier]
#51 The Monkey Murder (Detective Story, January 1939)
#58 A Thousand to One (D.F.W., October 28, 1939) [aka Lester Leith, Impersonator]

(2023-4-22追記)
アマゾンで探したら、グーテンベルク21に妹尾訳『レスター・リースの冒険』があることに気づいたので(以前は翻訳の問題でパスしていました…)文庫版未収録の1篇のためにポチりました。収録内容、訳者あとがきから判断してグーテンベルク21版は早川HPBと同一であることはほぼ確実です。(ここまで慎重になる必要ある?「ほぼ」は不要ですね)

訳者あとがきに興味深い文章がありました。

(…)レスター・リースのシリーズは、二十年ほどまえにアメリカの雑誌にのっただけで、まだ単行本にはなっていない。この本におさめた六編のうち、五編までは、最近クイーンマガジンに再録されたのを訳したのである。
(…)
この六編のうち、「いたずらな七つの帽子」だけは、ディテクティヴ・ストーリーといういま廃刊になっている雑誌の、一九三九年二月号からとった。私はいまこの雑誌を探しているがこれ一冊しかもっていない。(…)

単行本出版時には、もう雑誌が行方不明になってたみたい。妹尾さんは1962年(70歳)お亡くなりになっています。蔵書はどうなったのかなあ…

最初の二篇を読みましたが、翻訳はやっぱり怪しげ(口調は良く、日本語にはなっていますが、意味が良くわからないところがちょっと多めにあるのです)。

でもレスター・リース楽しいなあ。筋はすっかり忘れていて、本当に既読物件なの?と思うくらい。人並由真さまのおっしゃる通り、ESGのスピーディーな中篇は現代でも十分通じると思います!(とは言うものの、中篇集の売れ行きは長篇と比べると悪そうだと勝手に感じているので、出版側とすれば二の足を踏むのではないか、とも思ってしまいます…)

文庫本と収録内容を比較後、人並由真さまからご指示のあったHPBと文庫版との異同の詳細を追記します。そして「いたずらな七つの帽子」はネットで原文を入手済なので、読後、妹尾訳の実態を分析(という大袈裟なものではない)したいと思っています…

No.82 5点 検事卵を割る- E・S・ガードナー 2018/11/18 09:29
ダグラス セルビイ第9話。1949年8月出版。
最後の事件です。冒頭からブレード新聞の新しいオーナーが登場し、セルビイを脅します。A.B.C.は第8話からセルビイ少佐と呼びかけます。セルビイは戦時中、敵のスパイ組織に対抗するスパイ活動をしていたらしい。(A.B.C.はきっと、スパイだったお前はまだ綺麗な手なのか?と言いたいのでしょう) A.B.C.が振る舞うバター入りラム酒を味わうセルビイと保安官。セルビイの武器は頭脳と気魄のこもった誠実。「卵を割る」ところが一番盛り上がるのですが、あとは惰性な感じで結末まで進みます。今回もアイネズは登場しません。
訳者あとがきによると地理的にはマディスン郡はリバーサイド郡のことらしいです。
セルビイvs.メイスン(のような弁護士)という夢の対決が見たかったなー。(まーでも多分、お互いの理想が同じなので対立せず協力しつつ、メイスンのトリックプレーで一気に解決してセルビイ苦笑、シルヴィアおかんむり「あんなズルいやり方って!」という流れですね)

No.81 5点 馬鹿者は金曜日に死ぬ- A・A・フェア 2018/11/18 08:16
クール&ラム第11話。1947年9月出版。HPBで読了。
井上訳ではラム君の一人称は「私」です。 お金に目が眩んで依頼を受けるバーサ。ラム君は作戦をひねり出し、セラーズ部長刑事は礼儀正しく帽子を脱ぎます。複雑な筋立ては相変わらず、解決も一筋縄ではありません。こんがらがって胃もたれする感じ。

No.80 6点 憑かれた夫- E・S・ガードナー 2018/11/17 16:58
ペリーファン評価★★★★☆
ペリー メイスン第18話。1941年2月出版。HPBで読了。
冒頭、ハリウッドに向かうプラチナブロンドが事件に巻き込まれます。メイスン登場は第五章p23から。あの犬の事件の法廷で有名なメイスン。シナリオ作家あがりで、ここ2年余りでのし上がった34才の映画プロデューサーのモデルってプレストン スタージェスをすぐに思いついたのですが1940年にやっと初の監督・脚本作を仕上げたばかりなので、まだ大物という感じではないはず。メイスン映画(1934-37)の経験から作者が見聞きしたイメージなのでしょう。
メイスンが見つける死体の数は多すぎる、メイスンを信じない警察の人間はすぐ思いつくだけで3876人いる、メイスンには兄弟も妻もいない、いずれもトラッグ調べ。
メイスンとトラッグが味方となり敵となり絡み合って事件は進み、裁判は予審で終了。あとはメイスンが解説するのですが、ちょっと複雑すぎて解決編を2回読み直しました。
トラッグ警部が前作に続き大活躍。メイスンへの好意(僕は君が好きだ。君も僕が好きなんだろう)を隠さずBL好きには堪らないかも。
以下トリヴィアです。
銃は小口径(多分32口径)のオートマチックが登場。メーカー不明です。
p36『映画』誌(Photoplay): 映画関係セレブのゴシップ雑誌(1911-1980)。
p154 3丁目とタウンゼント街の角のサザン パシフィック鉄道駅(Southern Pacific Depot at Third and Townsend Streets): Southern Pacific Depot San FranciscoでWeb検索すると駅ビルの写真が見られます。1914年建造のMission Revival-styleで1970年代に取り壊されたとのこと。
p217 四人で仲良くレストランで夕食の時、デラと先に踊りたいとトラッグが言うと、ドレイクは「年の順だよ。」(Age before beauty, my lad)と返します。トラッグとメイスンの歳はほぼ同じと書かれてるので、ドレイクはメイスンより年上なのでしょうか?作者がメイスンとドレイクの年の差や上下をはっきり書いたことは無いように思います。(60年代メイスンシリーズではトラッグはメイスンより年上な感じの描写ですが、これは多分TVシリーズの逆影響。あるいは翻訳がTVの印象に引きずられたのかも。なお、TVシリーズ主演者の生年はメイスン=レイモンド バー1917年、デラ=バーバラ ヘイル1922年、ドレイク=ウィリアム ホッパー1915年、トラッグ=レイ コリンズ1889年)
p221 乾杯の音頭をとったメイスンは「犯罪のために乾杯」(Here is to crime)、このあとの作品で何度も出てくる作者お気に入りの文句です。(D.A.セルビイやクール&ラムにも出てきます) トラッグが「そして犯人の逮捕に」(And the catching of criminals)とすかさず返すのが可笑しい。

No.79 8点 おとなしい共同経営者- E・S・ガードナー 2018/11/17 14:59
ペリーファン評価★★★★★
ペリー メイスン第17話。1940年11月出版。ハヤカワ文庫で読了。
冒頭にメイスンが登場せず依頼人の三人称で始まる(この形式、私は嫌いです)のはシリーズ初、第三章(p38)からメイスンが事務所に出勤し、やっと物語に現れます。
ホルコム(馬鹿で意地っぱりで頑固な…)は転勤し、代わりのトラッグ警部(メイスンと同年代でほぼ同じ背丈)は初登場でいきなりナイトクラブで大暴れ、その後も派手に大活躍、頭脳戦でメイスンと互角に張り合います。
ドレイク探偵が全く姿を見せないのはシリーズで唯一です。(裏で情報収集活動はしていますが、セリフはたった5行(p170-171)電話の声として登場するだけ)
前作に引き続き医師ウィルモント博士が登場。今回は赤毛の看護婦3人とゴージャス。
物語はいつものこんがらがる筋で、メイスンが打つ手をトラッグがことごとく潰してゆく緊張感あふれるストーリー。デラも逮捕寸前まで追い詰められます。でもペリー自身の危ない冒険は控え目なのがズルい。トラッグから習ったスピード運転をデラに披露して物語は終了。
以下トリヴィア。
銃は32口径のリボルバーが登場。メーカー不明で、らでん細工の握りがついてることだけしかわかりません。
p10 メイスン事務所の時間外連絡先はグレンウッドGlenwood 6-8345(電話取次サービスの番号)
p107 パラフィン・テスト(paraffin test)シリーズ初登場、当時の新技術です。(1933年にメキシコ警察が初導入とのこと)
p222 雑誌「探偵実話」(one of the True Detective magazines): 正確にはTrue Detective Mysteries、小説系&実話系のパルプ雑誌(ハメットやトンプソンの初期作品を掲載)だったが1930年代から実話系にシフトして行き、1941年からはTrue Detectiveと改称。
今回は新機軸が多いのですが、ルーティーンも懐かしいです… (お馬鹿なホルコムとのドタバタはしばらくお預けです)

<これ誤訳?>
ラストシーン、デラがメイスンに言います。
「あなたは国産のネクタイが嫌なのと同じに、後見人なんか嫌いですもの…」You don’t want a guardian any more than you want domestic ties: 家庭的な絆、じゃないでしょうか…

No.78 6点 餌のついた釣針- E・S・ガードナー 2018/11/17 13:31
ペリーファン評価★★★★☆
ペリー メイスン第16話。1940年3月出版。ハヤカワ文庫で読了。
三月はじめの嵐の真夜中、メイスンの自宅の電話が鳴ります。依頼人が誰だかわからない、という珍しい謎。メイスン版「依頼人を探せ!」です。(冒頭のジョーク「キャッシュならキャリー」はCash and Carryのこと)
受付嬢ガーティの描写が前作と違います。ここでは愛想の良い大柄で豊満な肉体の金髪。big, good-natured blonde(第2章) an ample figure(第12章)
車は大型のクーペ、傘は大嫌い、といったメイスンのプロフィールがちらほら。どもり主教事件が初出のグレーヴィ話(Thousand-Island Gravy)も再び出てきます。(後年の作でも何回か登場。お気に入りのジョークを何度も繰り返すジジイですね…)
身元を上手に隠す女の正体を無理やり暴く手口が鮮やか。でも、今回の策略(p209)はちょっとやりすぎだと思います。(かなり人騒がせです)
込み入ってこんがらがった筋を、メイスンが不敵な口先攻撃で解明してゆくいつものストーリー。終盤、地方検事バーガーが登場し、メイスン逮捕状が発行されますが… 結末ではお馴染みホルコム部長刑事が結構いい奴です。
銃は32口径のリヴォルヴァと38口径のリヴォルヴァが登場。どちらもメーカー不明です。
なおp133でメイスンが引用する“法律の解説”(Restatement of the Law)はThe American Law Institute出版の実在本とのこと。

No.77 7点 転がるダイス- E・S・ガードナー 2018/11/17 10:33
ペリーファン評価★★★★★
ペリー メイスン第15話。1939年9月出版。ハヤカワ文庫で読了。
大好きなネタ(今回はヤマ師)だとイキイキするガードナー。抜け目ないジジイのキャラが魅力的。タイトルは骨とサイコロの掛け言葉。レギュラー脇役の電話交換嬢兼受付ガートルード レイド初登場。本作では眼鏡で、背が高く、カマキリのように痩せている…(tall, thin as a rail, her figure angular, her face plain)などと描写されていますが、第16話以降はなぜか豊満タイプのブロンド(メガネ描写なし)に変身。ガードナーはキャラの一貫性に結構無頓着です。
物語は事務所のシーンからスタート。仕事の手紙と金持ちが嫌いなメイスンをデラがあやします。鑑定士ミルトン スタイブによる筆跡講座あり。ホルコム部長刑事は(なぜか)サンタに罵られます。メイスン事務所はセントラル・アンド・クラーク(Central and Clark 残念ながら架空の所番地)と明記。書中で言及されているニューヨークのモデル殺し(検死医が死亡時刻の推定を間違えた)は実在の事件かどうか不明。「サン クェンティン監獄のガス死刑室」p189とありますが、カリフォルニア州が絞首刑から致死性ガス刑に変更したのは1937年議決で、最初のガス室はサンクエンティン(1938)に作られ、12月に最初の執行があったそうです。
メイスンの冒険はスピード違反(ここでの警官に対するメイスンの態度は全くヒドい…)など小粒なものばかりで、法廷でもトリックを使い、好意的な老判事ノックスを呆れさせます。でも結末はパズルの紛らわしいピースがぴったりはまり、その切れ味でデラがロックを踊りたくなるほど興奮します。 (この時代に「ロック」?と思って原文を見たら I could dance a jig on the judge’s benchでした)

No.76 8点 偽証するおうむ- E・S・ガードナー 2018/11/17 07:45
ペリーファン評価★★★★★
ペリー メイスン第14話。1939年2月出版。電子本(グーテンベルク21)で読了。
9月12日月曜日(1938年が該当)から物語は始まります。冒頭はいつもの事務所ですが、殺人事件発生後にメイスンが依頼を受けるのはシリーズ初。「ホーカム」巡査部長(「わが20年の警察生活」原文は単にin twenty years)は、いつもお馴染みのホルコムですが、ここでは「ニューヨーク検察本部」の殺人班所属と訳され、メイスンに対するセリフもちょっと丁寧です。原文はSergeant Holcomb of the Metropolitan Police 宇野先生は本書の別の箇所でロスアンジェルスと補って訳してる(原文the city)のに、なぜMetropolitan=New York? なお原文にLos Angelesは一度も出てません。
いまは失業も珍しいことではない、という時代、登場人物が不況論を語ります。「ついこの間の保険代理業者殺人事件」は「カナリヤの爪」のこと。小鳥屋ヘルモンドは2度目の登場。電話の盗聴には大掛かりな仕掛けが必要です。(ポータブル録音機がポピュラーになるのはまだ先の話、本作はデラが速記する時代です。)
メイスン探偵の冒険はいつもの通り二転三転、圧倒的に不利な証言をどうするのか、が見もの。結末はとても鮮やかです。
銃は図書館収蔵の「41ミリ口径」(原文A forty-one. 迫撃砲じゃないんですから… 正解は.41インチ)デリンジャー式ピストルが登場。短い銃身が2本並んで双方から発射出来る、とあるので有名なRemington Double Derringer(1860年代からの生産)でしょうね。「仕込み銃の一種で畳み込むと小さくなる」(評者注: 折りたたみ式の銃ではない)とか「弾丸2発は同時に発射された」(評者注: 銃のバレルは2本ありますが1本ずつ代わり番こに発射する構造)という変な箇所があります。原文を見ると仕込み銃はtrick weapon(隠し武器、くらいの感じ?)、畳み込むのはOne of those short-barrelled guns, with a trigger which folds back out of the way. It’s small enough to be carried anywhere. 試訳「短銃身の銃で引き金が引っ込むやつ、小さくて何処にでも持ち込める」、弾丸2発同時はboth barrels of the gun had been fired at once. 続けざま、というニュアンスでしょうか。

No.75 5点 カラスは数をかぞえない- A・A・フェア 2018/11/17 06:33
クール&ラム第10話。1946年4月出版。HPBで読了。
ラム君は「旅行」から戻った、と訳されてますが、原文はit's so good to have you back in the office で「旅行」は関係ありません。コミさんは自分が訳した「猫」の「ヨーロッパ旅行」を思い浮かべたのでしょう。
セラーズは部長刑事から警部に昇進、殺人課から異動しご無沙汰だった様子。バーサに惚れており、自分は40歳だからバーサと釣り合うと自薦します。(バーサの歳が35から40の間って…)
いつものように複雑な筋立て。コロンビアに飛んで手がかりを得るラム君、最後は自分のオフィスを持ちエルシーを個人秘書にします。
銃は22口径の自動拳銃が登場、詳細不明。訳者あとがきでは登場人物の年齢や設定が作品によって結構違っていることを書いています。

No.74 6点 万引女の靴- E・S・ガードナー 2018/11/15 06:23
ペリーファン評価★★★★☆
ペリー メイスン第13話。1938年9月出版。HPBで読了。
雨宿りしたデパートのレストランで食事をとる二人。メイスンの夢は動く鉄道模型の大きなジオラマセットを事務所に置くこと、助手ジャクスンはゲジゲジ眉毛で子供時代がなかったような感じの男、デラは今112ポンドで109ポンドが理想、などの他愛のない会話から物語の幕が開きます。
誰でも知っている有名弁護士メイスンというのが第2シーズンの設定。メイスンが賭博場のバーで注文したのはオールド・ファッション。ちょい役でシナハラ・イツモという名の日本人コックが顔を出します。
メイスンの無茶は控え目ですが、今回はドレイクが巻き込まれて災難を受けます。地方検事が証人を入念にコーチする場面が興味深い。ホルコムは「捜査課」(homicide squad)在籍10年と証言、いつもの活躍が見られます。法廷でメイスンが最終弁論を行い、陪審の評決が出るのは珍しい。
いつもの込み入った筋でスピーディな冒険物語が楽しめますが、突飛な習慣の叔父さん(計画的な突発性泥酔及び賭博症って…)が変テコで、周りの人物の行動も不自然な感じ、解決もちょっとスッキリしません。
さてトリヴィアです。
デパートでの37ドル83セントの買い物、現在価値は930ドル程度(食パン換算)。
11章の引用「自分の仕掛けた爆発物に吹っ飛ばされた技師を見るのは楽しい」(For 'tis sport to see the engineer, hoist by his own petard. )はハムレットからの有名句。
銃は38口径拳銃が2丁登場。いずれもリヴォルヴァですがメーカー型式不明。銃関係の翻訳は難あり。
p149「いわゆる練習用拳銃」(what they call a service revolver) 練習用ではなく、「官給品の拳銃=軍用拳銃」のこと。「女性には反動が強い、重すぎる」とあるのでM1917(45口径、Colt製・S&W製の二種類あり)だと思われます。
p229「38口径弾といわれる弾丸」(女性に手頃な弾)と訳されているのは原文では「38ショート弾」(a shell known generally as a thirty-eight short) 特に断りなく「38口径弾」といえば、普通は38スペシャル弾(1899年開発、正式名称.38 Smith&Wesson Special)を指します。38 shortは正確には38 Short Colt弾(1874)で「38口径」ファミリーの元祖的な存在。38 S&W弾(1876)[稀に38 S&W short弾と呼ばれる]とは別物。いずれも38スペシャルと比較すれば弱い弾。38スペシャルが撃てる銃なら38ショートも撃てます。なおモロ族との戦闘でストッピングパワー不足が指摘された「38口径」は38 Long Colt弾(1874)のこと…

<大事なところで誤訳>
p254 それは拳銃で撃たれて死んでいたある人物なのです。(That was someone who was a dead shot with a revolver): dead shot=marksman リヴォルヴァを持った射撃の名手、という意味ですね… (これは訳文の前後から明白に変だと気づきましたが、もしかしたら他にも結構誤訳あり?)

No.73 6点 サイロの死体- ロナルド・A・ノックス 2018/11/14 20:37
1933年出版。
冒頭の謎が地味目で、展開はゆったりとしているのですが、解決編は怒涛の勢いがあり楽しめました。探偵ブリードン夫妻(と言っても妻はちゃちゃを入れるだけ?)のシリーズものなんですね。ブリッジ、トートー、モスマンが車の愛称?と註釈され、冒頭に車が6台も出てくる割に具体的な描写が少ないので、どんな自動車なのかイメージしにくかったです。作者は車にあまり興味がなかったような気がします。

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弾十六さん
ひとこと
気になるトリヴィア中心です。ネタバレ大嫌いなので粗筋すらなるべく書かないようにしています。
採点基準は「趣好が似てる人に薦めるとしたら」で
10 殿堂入り(好きすぎて採点不能)
9 読まずに死ぬ...
好きな作家
ディクスン カー(カーター ディクスン)、E.S. ガードナー、アンソニー バーク...
採点傾向
平均点: 6.14点   採点数: 532件
採点の多い作家(TOP10)
E・S・ガードナー(96)
A・A・フェア(29)
ジョン・ディクスン・カー(29)
カーター・ディクスン(19)
雑誌、年間ベスト、定期刊行物(19)
アガサ・クリスティー(19)
アントニイ・バークリー(13)
G・K・チェスタトン(12)
アンソロジー(国内編集者)(12)
R・オースティン・フリーマン(12)