皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
していません。ご注意を!
雪さん |
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平均点: 6.24点 | 書評数: 586件 |
No.15 | 7点 | プレーグ・コートの殺人- カーター・ディクスン | 2020/11/21 15:06 |
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一九三〇年九月六日のこと、元陸軍省防諜部員ケン・ブレークは、ノーツ・アンド・クロッシズ・クラブの喫煙室でディーン・ハリディから頼みを受けた。「幽霊屋敷でひと晩明かしてほしいんだ」
『黒死荘』と呼ばれるその邸はロンドン大疫病の際、食料を蓄えて門を閉ざしており、そこに押し入ろうとして拒絶され息絶えた絞刑吏、ルイス・プレージの恨みが纏わりついていた。百年以上前の悪霊を祓う為、命日にあたる今夜そこで、心霊学者ロジャー・ダーワースによる徹夜の勤行が行われるのだ。儀式に先立つ一週間前の夜にも奇妙な事件が起こっており、ディーンの不安は高まっていた。さらに今朝がたにはロンドン博物館の「死刑囚監房」から、プレージの短剣が盗まれたのだという。 ケンは〈幽霊狩人〉の異名を持つスコットランド・ヤード首席警部、ハンフリー・マスターズを伴い現地に赴くが、その『黒死荘』で鳴り響く鐘の音を合図に始まったのは、異様な殺人事件だった。石室で発見されたダーワースは背中に数ヵ所の突き傷を受けて血の海の中に倒れ伏しており、右腕には例の短剣を握っている。しかも完全な密室の周囲は当夜の雨のため泥の海と化し、足跡さえも残っていなかった・・・ 1934年発表の記念すべきヘンリ・メリヴェール卿シリーズ第一作。今回は心霊繋がりという事で、南條竹則・高沢治の新訳版で読了。本書の254P~255P、ハリー・フーディーニの著作『心霊の間の奇術師』の転用と思われる部分を見ると、霊媒のメソッドは基本この時代から変わってない事が分かります。効果的な方法が残っていくのですからあたりまえですが。 探偵役となるH・Mの登場は全体の半ば過ぎと遅く、緩衝的存在が無いため、序盤はガッツリゴシック小説風に進行します。このため読み辛いという意見も多々あり。ただこれは幽霊好きの作者が〈いっぺんやってみたかった〉だけでしょう。 問題の密室に加え念入りな犯人隠しプラス隠れ共犯者と、かなり気合が入っており、カー/ディクスン名義のベスト10に入ってもおかしくない仕上がり。薬物を目眩ましに使うのは好みでないので、私が選ぶと入りませんが。これに絡めてH・Mが証拠の〈白い粉〉を、「わしだったら、その粉を舐めようなんて料簡は起こさんぞ」とか言ってるのが笑えます。この展開だと絶対麻薬か何かだと思うよねえ。陰惨な本編の数少ない笑い所です。 さらにダグラス・G・グリーンに「ジョン・ディクスン・カーの真骨頂が発揮された幽霊屋敷譚」と評されただけあって、それに相応しい犯人が登場。カー/ディクスンの著作にはバンコラン物以外そこまで凶悪な犯罪者は現れませんが、本書は例外の一つでしょう。ルイス・プレージとこの人物をダブらせたH・Mの最後のセリフも、怪奇譚の〆として綺麗に決まっています。 |
No.14 | 5点 | 爬虫類館の殺人- カーター・ディクスン | 2020/10/04 11:31 |
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ガスだ! 流れ出してきた有毒な気体の波にその場の全員がたじろぐなか、ヘンリー・メリヴェール卿だけが部屋の中に突進していった。部屋には苦悶にねじ曲がった動物園長の死体が・・・しかも部屋は内側からゴム引きの紙で目張りされていたのだ。戦時下のロンドン、史上空前の密室に挑んだH・M卿が暴く驚愕の真相とは?
『貴婦人として死す』に続くHM卿シリーズ第15弾。1944年発表。同年にはフェル博士シリーズの15作目『死が二人をわかつまで』も刊行されています。事件の発生日が一九四〇年九月六日からの二日間、バトル・オブ・ブリテンの真っ最中に設定されているだけあって、メイントリックの隠蔽に直接これを利用した、戦時ミステリここにありといった作品。ただこの頃になるとドイツの劣勢がほぼ確定しているせいか前作に比べるとコメディ調が強く、終始かなりはっちゃけたストーリーが繰り広げられます。他の方の書評にもあるように、特異な〈目張り密室〉でも名高い作品。 あのトリックは結構有名なので〈それ以外の要素〉に着目して読んだんですが、結果は微妙。爬虫類館の管理人マイク・パースンズの動きを読み解きながら並行して重要な手掛かりを放り込むところや、しょっぱなの大騒動が第三の事件に繋がる部分は流石ですが、ドタバタを除くと割と平板な展開で、前作ほどの手際の良さは見られません。メインとなる密室構成に比重が掛かり過ぎてる気もしますね。シリーズ筆頭格『ユダの窓』のような〈ネタは割れてもやはり面白い〉名作ではありません。 そういう意味で積極的に評価するのはいささか厳しいところ。水準はクリアしてるものの佳作の多い四〇年代前半の著作の中では、どちらかと言えば下位の出来でしょう。 |
No.13 | 6点 | 仮面荘の怪事件- カーター・ディクスン | 2020/09/10 05:54 |
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かのオスカー・ワイルドに『サロメ』を贈らせた悪名高き古典女優フラヴィア・ヴェナー。彼女が急逝した私設舞台を最上階に持つロンドン近郊のワルドミア荘は、エル・グレコをはじめとするスペイン絵画のコレクションと共に、今は大富豪ドワイト・スタンホープの所有に帰していた。
だが彼は何を思ったかそのうちでも特に優れた四点の名画を、警報装置に守られた二階の画廊から無防備な食堂へと移し始める。そして年の瀬の夜おそく――突如おこったすさまじい物音に人々がその場に駆けつけてみると、そこには画を盗みに入ったらしい泥棒が、胸を突きとおされ食器棚のそばにあおむけに倒れている。が、その覆面の下から現れたのは当のスタンホープ氏自身の顔だった! アンデス山中のインディアン信仰の象徴『メッキの男』をめぐって展開される、謎とユーモアと恐怖。名探偵ヘンリー・メリヴェール卿の活躍はいかに? 『殺人者と恐喝者』に続くHM卿シリーズ第13作。1942年発表。ノン・シリーズ代表作の一つ『皇帝のかぎ煙草入れ』と同年の作品で、既存の短編を膨らませて長編に仕立て直したもの。原型作品の方も読んでいますが、若干問題はあるとはいえそこまでスカスカしてはいません。この辺は元々のトリックの良さに救われた感じ。また被害者の化粧着関連の処理は、長編化にあたってのプラス要素の一つ。 残念なのはせっかく登場人物たちが温かい目で描かれてるのに肝心の後味が悪いこと。ドタバタ部分を少々削っても、やはり寝室で待ち構えるのがベストだったのではと思います。H・Mの株も落ちますし、被害者が引き伸ばしの都合で生かされた感も否めませんしね。 今回はHPBの村崎敏郎版『メッキの神像』で読了。読了前には若干不安もありましたが、巷で言われてるほど酷い訳者さんではありません。タイトルの方も創元版より内容に合ってる気がします。色々と問題はありますが、人物描写やファース部分など長編独自の味わいも出ており、リメイク作品としてはまずまずの出来だと思います。 |
No.12 | 5点 | かくして殺人へ- カーター・ディクスン | 2020/07/31 20:59 |
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ドイツへの宣戦布告を間近に控えた一九三九年八月二十三日水曜日。イギリス、ハートフォード州のイースト・ロイステッドからやって来た田舎牧師の娘モニカ・スタントンは、ロンドン近郊のパイナム・スタジオでアルビオン・フィルム社のプロデューサー、トマス・ハケットの面接を受け、見事脚本家に採用された。
スキャンダラスなベストセラー小説『欲望』をものしたことで新聞各紙から標的にされ、伯母のフロッシーには事あるごとに「せめて面白い探偵小説でも書いていれば――」と言われてきたが、それももう終わり。『欲望』の脚本を映画界の傑作にし、自分もこの巨大な、まばゆい世界の一部となるのだ。モニカは純粋な感謝と使命感に燃えていた。 ――だが彼女に割り当てられたのは探偵小説『かくして殺人へ』の映画脚本。しかもその原作者は、伯母が当てつけのように口にしてきた探偵作家、ウィリアム・カートライトだったのだ。 カートライトと衝突しながらも彼に指導され脚本執筆に勤しむモニカだが、面接初日から謎の人物に付け狙われ、いきなり硫酸を浴びせかけられる。なおも続く銃撃事件を受けて密かに彼女に一目惚れしたウィリアムは、陸軍省情報部に自分の推理を送りつけることで直接、情報部長ヘンリ・メリヴェール卿の出馬を促すが・・・ 『読者よ欺かるるなかれ』に続くHM卿シリーズ第10作。次作『九人と死で十人だ』及びフェル博士シリーズ第12作『震えない男』と共に、イギリス参戦直後の1940年に発表されました。バトル・オブ・ブリテン突入前の刊行という事もあってか、スパイ云々はあるものの結構お気楽な雰囲気です。 創元文庫版解説で霞流一氏が「自選ミステリ十傑中の或る作品にチャレンジしたもの」と述べていますが、どちらかと言うとコメディ風の軽いシロモノ。毒煙草のトリックも軽妙ではあるものの小技の類で、身構えるほどの物でもない。むしろ中盤に用意されたダマシをどう評価するかでしょう。この時期だと構造的に一番近いのは『殺人者と恐喝者』になりますかね。でもこっちは更に悪辣なので、ちょっと擁護できそうにありません。 ただしこのおかげで容疑者の幅が広がり、十章以降のサスペンスがより高まっているのも事実。メイントリックの鍵となる旧館の構造も、手掛かりとしてしっかり描写されています。 灯火管制を利用した戦時中ならではの襲撃方法に加え、ラストのヌケヌケとした皮肉など、要所々々は締めた作品。高くは評価できませんが、退屈させない仕上がりとは言えるでしょう。 |
No.11 | 6点 | 赤い鎧戸のかげで- カーター・ディクスン | 2020/06/28 09:35 |
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ニューヨークでマニング事件(『墓場貸します』)を解決したのち、ポルトガルのリスボンから内密に飛行機で、モロッコ最北端の国際管理都市タンジール(タンジェ)に向かったH・Mことヘンリー・メリヴェール卿。だが空港に降り立つや、各国言語の垂れ幕やブラスバンドによる英国国家演奏、赤絨毯の大々的な歓迎が彼を出迎える。H・Mの到着は大使館からの情報で、既に筒抜けになっていた。
タンジール警察のコマンダント(警部)、ホアン・アルヴァレスの出迎えを受け、機内で知り合ったアメリカ娘モーリーン・ホームズを秘書に仕立てて警視総監ジョルジュ・デュロック大佐に面会するメリヴェール。空港での大仰な式典の全ては、マエストロの助力を得るための大佐の企みだった。ヨーロッパ各地で宝石強盗を繰り返す神出鬼没の怪盗、アイアン・チェスト(鉄箪笥)がタンジールに潜入したとの情報を掴んだ彼には、各国警察の鼻をあかすためメリヴェールの頭脳が必要だったのだ。 彼らはスタテュ通りのベルンステン宝石店に水も漏らさぬ警備を敷くが、出現したアイアン・チェストはタックルしてきたイギリス領事館員ビル・ベントリーに向けて発砲すると、いっさんにウォーラー通りへ向けて駆けおりていき、そのまま行方を眩ましてしまう。だがプライドの高い怪盗がこのまま引き下がるはずがない。必ずや名誉にかけてもう一度、ベルンステンを襲ってくるだろう。 ジブラルタル海峡に面した陽光あふれる港湾都市で繰り広げられる怪盗対名探偵の対決。果たしてその結末は――? 『魔女が笑う夜』に続く、最後から二番目のHM卿シリーズ長編。1952年発表。前々作への言及など記述に若干の異同がありますが、草稿段階で前後していたのかもしれません。本編とマニング事件の間に挟まる〈メトロポリタン美術館での人殺し〉については〈語られざる事件〉かどうかは不明。 舞台となるタンジールは第二次大戦を挟んで約50年間に、 ドイツ侵攻→国際管理地域(フランス保護領→英西仏管理→ソ連を含む八カ国管理)→スペイン侵攻→再び八カ国管理→モロッコ領 と、目まぐるしく統治権が入れ替わった地域。カーには珍しくエキゾシズム溢れる各種描写が目を引きます。 ラジオドラマ『鉄の箪笥を持つ男』の基本トリックを、シリーズ前作同様アルヴァレス警部&モーリーン、ベントリー夫妻のダブルカップルロマンスで支える構成。着膨れ気味とはいえスリラー風の展開やアクションに加え、いくつかの仕掛けもありそこまで退屈はしません。トリック自体は少年探偵ですけども。 それよりも気になるのは問題描写の数々。クリスチアナ・ブランドによるディテクション・クラブの回想(雑誌「EQ」NO.34 1983年07月号)によるとカーは「すさまじい空想家」であり「自分が頭でこしらえた事柄を丸ごと信じこんでいた」そうですが、本作では例の有名なシーンを含めソ連嫌いや男の友情、度を越した騎士道趣味など、作者のナマの部分が出過ぎています。ビル・ベントリーと元ボクサー、G・W・コリアーのボクシング対決はかなり読ませますけれども。そこに目を瞑れば、エンタメ性その他は『魔女が笑う夜』より上がっていて面白いのですが、そのため本書を敬遠する読者も多い。 『ビロードの悪魔』で中世イギリス世界にどっぷり浸かったのと、持病の瘻孔による体調悪化の影響ががもろに出た作品。ダグラス・G・グリーンによれば『騎士の盃』含め「書かれない方がよかった」そうですが、まあそこまでとは思いません。ある意味貴重なものなので、リーズナブルに入手できるなら手元に置いた方が良いでしょう。 追記:ブランドの総合評価によればカーは「賢くて、親切で、思いやりがあって、物惜しみしない愛すべき男」「様々な奇行を繰り返したとはいえ、素顔の彼は正真正銘の紳士」だったそうです。誤解の無いよう一言申し添えておきます。 |
No.10 | 6点 | 殺人者と恐喝者- カーター・ディクスン | 2020/06/11 08:57 |
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一九三八年八月二十三日の蒸し暑い午後のこと、英国チェルテナムのフィッツハーバート街に住む美貌の若妻ヴィッキー・フェインは、同居人ヒューバート叔父から、弁護士の夫アーサーが自宅のソファーで、十九歳の少女ポリー・アレンを絞殺した事実を告げられる。
事件が起きる前から夫を激しく嫌悪するようになっていた彼女だが、工兵連隊大尉フランク・シャープレスに惹かれているとはいえ、まる二年連れ添った夫を告発することは出来なかった。明日はそのシャープレスが他の客人たちと共に夕食に訪れるのだ。ゆすり屋のヒューバートは居直り、ヴィッキーの消耗に拍車を掛ける。 一方、シャープレスの友人で伝記専門のゴーストライター、フィリップ・コートニーは、フェイン夫妻の隣人アダムズ少佐の来客になっているヘンリー・メリヴェール卿の口述を聞き取り、彼の一大回想録を代筆していた。友人にヴィッキーへの想いを打ち明けられ、今夜問題の人妻の住む〈憩いの場所(ザ・ネスト)〉で行われるという催眠実験に、一抹の不安を覚えながら。 それから間もなく州警察長官レース大佐からH・Mの元に、ザ・ネストでアーサー・フェインがその夫人に刺殺されたとの連絡が入る。しかもそれはある意味ヴィッキーを含むその場の誰にも不可能な、特殊状況の下での犯行だった―― 1941年発表。『九人と死で十人だ』に続くメリヴェール卿シリーズ第12長編で、同年には『連続殺人事件』『猫と鼠の殺人(嘲るものの座)』などのフェル博士ものも執筆されています。今回の使用テキストは原書房の森英俊訳。まあこれが一番無難なのではないかと。 小技の組み合わせといった感じである意味しょうもないトリックしか使われていませんが、鮮やかな反転とそれを補強する作劇が達者。問題部分の描写は少々疑問符付きですが、他の所で埋め合わせてあるのでまあ良しとしましょう。正直催眠術関連がムリクリなのではと危惧してたんですが、そんなに違和感無かったです。合間に挟まるH・Mの悪ガキ回想シーンもスパイスになってて読み易いし。 それよりも難点なのは犯行が綱渡り過ぎるとこですかね。室内の目線があの瞬間ただ一点に集中するのは納得できますが、あれほどの短時間で一連の動作がこなせるとは思えません。また実験に完全にタイミングを合わせるのは難しいのではないかな。焦りもあるだろうし。かなりの意欲作なのは間違いないですが、そのへんは減点対象。 小ぶりな割にはなかなか面白いけど、佳作ではないですね。ややおまけして6.5点。アン・ブラウニングが襲われるシーンを付け加えたり、ラストの活劇でもまだ騙してやろうとしてるところは好きです。 |
No.9 | 6点 | 青ひげの花嫁- カーター・ディクスン | 2020/04/14 10:50 |
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一九三〇年九月から一九三四年七月にかけて、変名を駆使して独身女性との結婚を重ね続けた謎の男、ロージャー・ビューリー。牧師の娘、音楽好きのオールドミス、占いの手伝い女――彼の妻となった女たちはある日を境にふっつりと姿を消し、そのまま二度と現れなかった。ロンドン警視庁のマスターズ主任警部はけっして証拠を残さぬビューリーの犯行に歯ぎしりを続けるが、やっと殺人鬼に手が届くかと思われた四度目の事件を境に、彼の足跡は途絶える。欧州大陸諸国の混乱も重なり、"青ひげ"ロージャー・ビューリーの名は次第に忘れられていった。
そしてそれから十一年後の一九四五年九月、グラナダ劇場付きの舞台俳優ブルース・ランソムの元に、ビューリーを主人公にした殺人劇の台本が送られてくる。そこには警察しか知り得ない最後の事件の詳細が記されていた。ブルースはこの脚本をそのまま、休暇明けに上演しようとする。 彼と恋仲の女流演出家ベリル・ウェストは、これからブルースが休養に赴くサフォークのオールドブリッジで、五度目の婚約を描いた芝居の内容どおり、彼が〈現実に〉ロージャー・ビューリーの役柄を演ずることを提案するが・・・ 『青銅ランプの呪い』に続くヘンリー・メリヴェール卿もの第17作。1946年発表。フェル博士シリーズ中期の傑作『囁く影』と同年の作だけあって、とらえどころのないストーリーながら雰囲気作りはかなり上手い。数々の俳優の不可解な言動もあり、「もしかしたら?」の含みを持たせつつ最後まで引っ張る趣向。 主人公はブルースではなく友人のデニス・フォスター弁護士ですが、彼がブルースに言いくるめられ、あわや第五の犠牲者の遺体を運ばされかけるグラン・ギニョール風シーンもあって、なかなか読ませます。すべての決着となる〈あの場所〉もけっこう不気味。ミステリとしては薄味ですが、物語要素の配置が的確で良いですね。 殺人鬼ビューリーの正体には巧みに煙幕が施されていて、対決アクションは後の歴史ミステリ風。全体としては不気味なムードのサスペンス調。いつものドタバタはあるものの『囁く影』のフェル博士と同じく、ここでのH・M卿は一歩引いた形。登場は前半と〆のみで、ムードの醸成に助力しています。 とはいえ佳作とするには味付けが少々足りないので、総合すると6.5点。それでもマイナー作品にしては結構楽しめます。 |
No.8 | 8点 | 貴婦人として死す- カーター・ディクスン | 2020/03/11 10:34 |
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第二次世界大戦のさなか、ナチス・ドイツによるパリ占領とフランス降伏から約半月後の一九四〇年六月二十九日土曜日、イギリスのノース・デヴォン海岸沿いにあるリンクーム村で不可解な事件が起こった。崖っぷちに建つ大きな山小屋風の一軒家〈清閑荘(モン・ルポ)〉に住む元数学教授アレック・ウェインライトの妻リタが、カードに招かれた俳優志望の車のセールスマン、バリー・サリヴァンと共に断崖から身を投げて心中したのだ。だが数日後に引き上げられた二人の遺体は両方とも心臓を撃ち抜かれており、着衣には銃を体に押しつけて発射した痕跡が残っていた。
凶器に使われた三二口径のブローニングは半マイルも離れた路上で見つかり、また現場に残された二組の男女の足跡は偽装されたものではなく、周囲には第一発見者のほかに足跡はない。心中への関与と偽装工作を疑われた発見者、ルーク・クロックスリー医師は、己が嫌疑を晴らすため独力で、たまたま村に滞在中のヘンリ・メリヴェール卿すら匙を投げるほどの謎を解こうとするのだが・・・ 『仮面荘の怪事件』に引き続き戦時中の1943年に発表された、HM卿シリーズ第14作。翌年の『爬虫類館の殺人』ほどではないにせよ、同年七月十日からの英国空中戦(バトル・オブ・ブリテン)大空襲を控え、シチュエーションのところどころに戦争の影が見られる作品。にもかかわらず非常にシンプルかつコンパクトな出来映えで、『囁く影』などと共に中期の佳作と目されるもの。 脚の親指を挫いてモーター付き車椅子を駆るH・Mの強烈なお笑いはありますが、それを除けば無理のない流れで、泡坂妻夫『右腕山上空』を思わせる時間差での盲点が指摘されます。足跡トリックとしては同作者の『白い僧院の殺人』よりも上でしょう。カー/ディクスンにしては短めの長編ですが、メインの叙述トリックと併せて非常に中身が詰まっています。こちらの設定もその自然さにおいて出色。 犯人がほとんど策を弄さず、被害者二人の企てに便乗しただけというモダンな構図。2年前に発表されたフェル博士ものの『猫と鼠の殺人』もそうでしたね。ケレン味皆無でこの作者らしからぬところがファンにはやや物足りないのですが、秀作なのは間違いないでしょう。 評者の好みだとメリヴェール卿シリーズ最終作『騎士の盃』になりますが、普通に選べばカー/ディクスン全作品ベスト10にギリギリ食い込んでくる作品。戦中ミステリの収穫のひとつです。 |
No.7 | 6点 | 一角獣殺人事件- カーター・ディクスン | 2019/11/29 11:46 |
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「ライオンと一角獣が王位を狙って闘った。
ライオンは一角獣を打ち負かし、街の中じゅう追い回す」 ロワイヤル通りのルモアンの店でパリの気だるさに浸かりこんでいた元情報部員ケンウッド・ブレイクは、歩み寄ってきた元同僚イヴリン・チェインの謎かけに応えたことからとんだトラブルに巻き込まれた。歌は任務の合い言葉で、彼らは謎の「一角獣」を運んでくる外交官ジョージ・ラムズデン卿を追って、これからホテル『盲人館』へ行かねばならぬのだという。「一角獣」は神出鬼没の怪盗フラマンドに盗難を予告されており、フランス政府は彼を逮捕するため名探偵ガストン・ガスケを派遣したのだった。 イヴリンと共に嵐の中一路オルレアンに向かうケンだったが、シャルトル近郊で赤いボアザンに乗った男に逮捕されかける。ケンはルモアンで彼のパスポートを奪ったその男を殴り倒し、警官と大立ち回りをした末その場から逃げ出すが、増水したロアール河に足止めされてとうとう車から降りざるを得なくなる。さらに彼らを追いかけて情報部長ヘンリー・メリヴェール卿までやって来た。ついでにフラマンドを自分の手で捕まえるのだと息巻くH・M卿。だが嵐も洪水も熄まない。そうこうするうち近くの平地にラムズデン卿の乗る飛行機が不時着した。 修理が終わるまで機の乗客たちと中州の城館『島の城』に緊急避難するH・M一行。だが館の主ダンドリュー伯爵は彼らの到着を待っていたのだと語る。そして彼はH・Mに、フラマンドから来たという予告状を見せるのだった―― 1935年発表のH・M卿シリーズ第4作。「パンチとジュディ」の前作で、上記のとおり冒頭からわやくちゃな展開。ケン・ブレイクは常識家ぶっていますが、本作での行動はどう見てもH・Mの同類です。 フラマンドとガスケ、変装の名人が二人も登場。物語はここから更に混乱の度を増し、最後はケンとイヴリンの二人がガスケに犯人扱いされるとんでもない展開に。難解さは続編を超え、カー/ディクスン全作品中でも指折りの悪辣さを誇ります。偶然に偶然が重なり、H・Mの推理も仮説と仮定の積み重ね。これを当てられる人間は相当なものでしょう。 ただ解説にもあるように失敗作と切って捨てるには惜しい。犯人隠蔽と密接に結びついた不可能犯罪のトリックはなかなか。一進一退の推理に加えて趣向もてんこもり。ゴチャゴチャした構成とアンフェア臭が低評価の理由でしょうか。どことなくインチキ臭いけど、ファンなのでそれも面白く感じてしまいます。6.5点。 |
No.6 | 6点 | パンチとジュディ- カーター・ディクスン | 2019/11/21 03:10 |
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元英国情報部員ケンウッド・ブレイクは、婚約者イヴリン・チェインとの結婚式を前にして強引にヘンリー・メリヴェール卿に呼び出された。トーキーで待ち構えていた情報部長のH・Mと警察署長のOBチャーターズ大佐は、彼に元ドイツ・スパイ、ポール・ホウゲナウアの身辺を探るよう指示する。ホウゲナウアは情報部に、指名手配中の国際ブローカー「L」の正体を二千ポンドで明かそうと持ちかけてきたのだ。
途中で偽名のバレるアクシデントはあったもののとにかくモートン・アボットに辿り着いたケンだったが、なぜか早々と警察に拘束される羽目になってしまう。手違いからか当のH・Mとチャーターズが、ケンの逮捕命令を出したというのだ。イヴリンとの挙式は明日の午前十時半。こんなところで油を売っている暇は無い。 警官に化けてさっさと署から逃走するケン。追っ手を巻きながらようよう目的の屋敷を訪れるが、書斎で彼を待っていたのは肘掛椅子に腰掛けたまま笑っているホウゲナウアの毒殺死体だった・・・ 「一角獣殺人事件」に続くケンとイヴリンのスクリューボール・コメディ。1936年発表。なかなか面白い作品ですが、作者に頭を掴まれ反対方向を向かされて、強制的に突っ走らされる展開には拒否感を持つ人もいるでしょう。以前書評した「首のない女」よりもはるかに嫌らしく、初読の際にはなにがなにやら分からない。しかし読み返すと事件の連続でテンポも良く、作者の語りの上手さを感じさせます。 警官に引き続き今度は牧師に扮装。駆け付けたイヴリンの助けで背広に着替えたのちにホテルの窓から泥棒まがいの侵入、ギロチン窓の恐怖、第二の死体の発見、偽札を使用して逮捕されかかり知人の助けで救出と、混乱の連続。笑わせる最後のオチも良く効いていてよろしい。 ただ変則的な構成に加えミステリとしては前作に比べると弱いかなと。ドタバタ騒ぎの中に手掛かりを仕込むいつもの手ですが、今回それほど冴えてはいません。ストーリーテリングで勝負する型の作品です。 |
No.5 | 5点 | 魔女が笑う夜- カーター・ディクスン | 2019/07/06 11:44 |
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サマセット州ののどかな村ストーク・ドルイドで起こった「中傷の手紙」事件は、六週間に渡って人びとの体面をめった打ちにしていた。北東の川に近い草原にそびえる巨大な石像――"あざ笑う後家"にちなんで〈後家〉と署名された手紙が、次々と村人に送られてくるのだ。仕立て屋の妹アニー・マーチンの溺死も〈後家〉の手紙に耐えられなくなっての自殺だと、村では噂されていた。
事態を憂いた村の古書籍商レイフ・ダンヴァーズは名探偵ヘンリー・メリヴェール卿を村に招き、ジョゼフ・フーシェの回顧録を餌に事件の解決を要請するが、神出鬼没の〈後家〉の新たな行動は間近に迫っていた・・・ 「ニューゲイトの花嫁」と同じく1950年発表のHM卿もの。しょっぱなの車輪付きスーツケースの暴走から、解決間際にインディアンの酋長に扮し、主教を迎えた教会バザーでの泥んこ合戦と、終始大暴れ。同時に二組のカップル誕生も描いたコージー風ミステリ。 バカミスとして有名な作品ですが、メイントリックはそこまで酷くは感じません。とはいえ、この長さを支えるには少々弱い。後味の悪さを緩和するため、ひいてはストーリーを補強するため、HM卿のドタバタとロマンスを加えてバランスを取っているとも言えます。 動機がいくぶん不明ですが、事件をわざわざ大戦直前の1938年に設定している事が答えではないかと。戦後の回想部分もあり、V2号によるロンドン空爆やナチスの影も見え隠れします。開戦間際のストレスを抱えた、不穏な社会情勢を背景に起こった事件ということでしょう。 この頃のカーは歴史ミステリに移行する時期でもあり、現代への不満や、その裏返しとしての騎士道礼賛がときおり見られます。本書でメリヴェールがレイシー母娘を精神的に救い、「"鎧を着た騎士"みたい」と呼ばれるシーンは、その典型例でしょう。H・Mファンには見所が多いですが、ミステリとしてはゆるめの出来栄えです。 |
No.4 | 6点 | 第三の銃弾<完全版>- カーター・ディクスン | 2019/04/03 13:22 |
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高等法院判事チャールズ・モートレイクは画家と名乗る男ゲイブリエル・ホワイトに、老婆を殴りつけ数ポンドを奪った罪で、十五回の鞭打ちと十八カ月の重労働を言い渡した。ホワイトはその場で、判事を脅す言葉を口にする。彼は模範囚として六分の一の刑期を減刑され釈放されたが、モートレイクへの復讐は忘れていなかった。
出獄したホワイトに脅されたチャールズの娘アイダは「殺してやる」という彼の言葉に怯え、すぐさまロンドン警視庁に連絡する。判事宅の門から人影を追って離れにたどり着き、二度の銃声を聞きつけ窓から飛び込んだペイジ警部が見たのは、机に突っ伏したモートレイク判事と、銃を突き出し呆けたような顔をして突っ立つゲイブリエル・ホワイトだった。 状況は明白と思われたが、次々と意外な事実が判明する。ホワイトが持っていた銃は一発しか撃たれていないアイヴァー・ジョンソンの三八口径リヴォルヴァー。そして窓ぎわの花瓶からは、これも一発しか発射されていないブローニングの三二口径オートマティックが発見された。 そして判事の体内から発見された弾丸は、そのどれでもない二二口径エルクマンの空気銃だったのだ。室内からは、壁にめり込んだ三八口径の弾丸しか見つからなかった。 三つの銃に二発の銃声、そして発見されぬブローニングの弾丸。事態に窮したペイジ警部は、上司である警視監マーキス大佐の助けを求める。 1937年発表。出版社の要請に応えて執筆された短めの長編で、最高傑作「火刑法廷」と同年に発表された作品。いやが上にも期待が高まりますが、内容もそれに恥じません。 複雑な謎に加えて釣瓶撃ちに新事実が提示され、読者は五里夢中の状態。ある発想に至れば一気に真相に迫れるのですが、それを思いつくのは簡単ではないでしょう。 読んだのはハヤカワの完全版ですが、探偵役のマーキス大佐がいい雰囲気を出していて、これ一作で退場というのはちょっと残念。このアイデアもここで使い捨てるのは少々もったいない気がします。細かい配慮も行き届いていますが、佳作というにはいかんせん短く物足りないので、7点には至らず6.5点。 |
No.3 | 6点 | 九人と死で十人だ- カーター・ディクスン | 2018/12/23 00:41 |
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第二次大戦初頭の一九四〇年一月、ニューヨークから〈イギリス某港〉へ向けた大量の軍需物資の輸送を担う大型商船エドワーディック号。船長フランシス・マシューズ中佐の弟マックスは、他7名の男女と共に船客として乗り込む。だが船にはもう一人、フランシスが認可した謎の人物がいるらしい。
そんな中マックスは、派手な服装と態度で船内に妖艶な雰囲気を振りまく美女、エステル・ジア・ベイ夫人と親しくなる。だがある夜、彼女は自室に戻った短時間のうちに喉を切り裂かれて殺されていた。そして現場に残された犯人の指紋は、秘密裏に帰国の途に就いていたヘンリー・メリヴェール卿を含む、9人の船客の誰とも一致しないのだった。 深夜に女の顔を的にダーツを行う人物。謎のガスマスクの怪人。ドイツ潜水艦の襲撃に脅える人々を嘲笑うように、やがて第二第三の殺人が起こる・・・。 1940年発表。この作者にしてはあっさりめな作品。メイントリックは非常にシンプルなものですが、"戦時下の船旅"という舞台設定をうまく活用しています。 ただ問題点も少々。マックスは兄の口から出航前に爆薬が仕掛けられていた事を伝えられるのですが、これがミスディレクションのみで物語に絡んでこないこと。彼の立場上殺人以上に躍起にならなければならない事件なので、それ以上詮索されないのは明らかに不自然。ここは最初から削った方が良かったでしょう。 船体構造もトリックと有機的に結びついているので船室図面も欲しかったところですが、戦時出版の限界でしょうか。これに限らずカー/ディクスンの作品には「図面があればいいのに」と思う作品が多い気がします。クリスティーとかに比べてビジュアルな把握がし辛いですね。 限られた空間内で実質的な容疑者は僅かですから、キャラクターにももっとメリハリ付けた方が良い。カーの作品は大体男女ロマンスがベースなので、本作はトリック面の制約プラスでその辺の欠点が出た感じです。魅力的なシチュエーションを完全には生かしきれてないので、佳作とは言えないかな。6点作品。 |
No.2 | 7点 | 騎士の盃- カーター・ディクスン | 2018/11/12 01:25 |
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純金にダイヤ、ルビー、エメラルドをちりばめたブレイス子爵家の家宝「騎士の盃」。完全極まりない密室で張り番をしていた当主のトムが眠りから目覚めると、眼前のテーブルには金庫から取り出された盃が輝いていた・・・。
不可能犯罪にうんざりしていたマスターズ主任警部は、ロンドン警視庁に訪れたトムの妻ヴァージニアの懇願を退けようとしますが、副総監じきじきのお達しにより調査に踏み切らざるを得なくなります。近隣に隠棲していたヘンリー・メリヴェール卿に全てを押し付けようとするマスターズですが、先祖代々の居館であるクランリ・コートを訪れると、H・Mはイタリア人教師と歌の練習の真っ最中でした。 しかもなぜか館には事件の関係者が集まり始め、マスターズはその場の成り行きから現場のテルフォード館で二度目の不寝番をせざるを得なくなります。その晩彼は殴り倒され、床には再び金庫から持ち出された盃が転がるのでした。 いやひどいですね(誉め言葉)。H・Mの自宅訪問から関係者全員集合の時点で相当なものですが、その後の展開はファースというより乱痴気騒ぎ。ほとんどモンティ・パイソンの世界です。お下品でもあるので、顔を顰める本格ファンもいるでしょう。全体に点が辛めなのは多分そのせい。 しかし最後まで読むと、一連のおふざけの中に精緻に手掛かりが仕込まれているのが分かります。ほとんど職人芸の域。それでも高得点は付け難いのかな。この手の作品では最高レベルの伏線の張り具合だと思うんですけどね。 弁護しておくと本作は1954年発表。HM卿最後の事件ですが、彼の引退はフェル博士より遥かに早く、「ビロードの悪魔」「九つの答」といった、カー最長編クラスの発表年と重なります。「魔女が笑う夜」「赤い鎧戸のかげで」(これも長い)等と共に息抜きとして執筆された可能性が高い。つまり作者がまだ枯れてないわけです。 読者に提出された"なぜ犯人は密室に侵入しながら盃を盗まなかったのか?"という謎も魅力的。個人的にかなり好みの作品です。 追記:巻頭に掲げられた献辞をついでに記しておきます。 「娘のジュリアと夫のリチャードへ、でもおじいちゃんを忘れないでおくれ。」 読了するとこれがなかなかに来るものがあります。 |
No.1 | 6点 | 墓場貸します- カーター・ディクスン | 2018/06/09 14:14 |
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実は再読です。初読時の印象は消失トリックのネタがありきたり過ぎるとかあんま良くなかったのですが、数年ぶりに読み返してみて評価が上がりました。
あの時点でひととおり仕込みは終わってますが、肝心の「いつ消失するか」は明言していない為、初動が失敗したならスルー出来るというのが良いです。 加えてプールからの人物の出し入れに不自然さがほとんどないのが素晴らしい。実行する場合の安全性はかなり高いと思います。冒頭の献辞でクレイトン・ロースンに捧げられてるのも頷けます。 複数共犯者の存在はさほどマイナスに考えなくていいでしょう。プールでの先入観がミスディレクションにもなっている事ですし。 とは言え7点を付けるには少々厳しいのも事実。お前たちとはもうこれきりだみたいに大見得切って翌日には消えちゃう訳ですし、被害者がトラップを仕掛ける動機となる、子供たちへの思い入れ描写が不十分なんですよね。ちょっとその辺りはフェアじゃないかなと。 オカルト趣味もなく事件もこれ一つだけで全体に小さく纏まった感じの作品です。 あ、例のH・M卿がホームランかっとばすシーンは心配してたけどそんなに浮いてなかったです。でも、ボールがあそこに飛ばなかったらどうなってたんだろ。 |