皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
していません。ご注意を!
ねここねこ男爵さん |
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平均点: 5.65点 | 書評数: 172件 |
No.7 | 7点 | 天使の耳- 東野圭吾 | 2018/05/08 15:37 |
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面白い!粒ぞろいの短編集。
交通警察の夜、となっているが、現場のタイヤ痕や車の破損具合から事故の真相を探り出す…というガチガチの事故ミステリではなく、物語の発端が交通事故に由来しているという程度。 表題作が最もミステリ色が濃く、話の出来も突出している。この話だけでも読む価値あり。 他はミステリというより交通事故にからんだ復讐譚や因果応報話(当世風に言うなら『嘘松』『スカッとジャパン』っぽい)で、ややご都合主義だったりオチが見えすくものもあるが十分に面白い。 |
No.6 | 7点 | ある閉ざされた雪の山荘で- 東野圭吾 | 2018/03/25 12:33 |
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おー、これは面白い!
手記=隠蔽工作が普通ですが、本作はそんな手垢のついた手法はとらずそれでいて衝撃成分はしっかり確保。犯行シーンを克明に描写したり、視点が頻繁に入れ替わったり…これらがちゃんと意味を持っている。 導入や人物の行動がややご都合な感もあるが良く出来ていて素晴らしい。 仮面山荘と比較されてる方が多いようで、たしかにその誘惑にかられるとは思います。 仮面山荘は(東野ファンではない自分から見ると)とても東野圭吾的で、あれこれツッコまず仕掛けの大枠やお話を楽しむもので、本作はストーリーや人物はやや弱いもののミステリ部分がしっかり作り込んであり(ツッコミたい所が皆無ではないが)、その完成度を楽しむものかと。自分はこっちが好みです。 |
No.5 | 2点 | ゲームの名は誘拐- 東野圭吾 | 2018/03/08 17:37 |
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ラストまでとにかく我慢。ひたすら我慢。
とてもこの作者らしい作品で、細かい事が気にならないなら楽しめるかも。 以下ネタバレ含みます。 主人公サイドの二人がアタマ悪すぎでものすごく苦痛。まず、主人公が女を追ってタクシーに乗った時点で計画は実行困難赤信号なのに主人公が都合よくスルーしているのがもうダメダメ。次に(何しても大丈夫だとはいえ)女の行動がメチャクチャで、どれもこれも即計画ストップすべき暴挙。髪切って染めた時点で…。そしてさんざん偉そうなことを言いつつ女の体に負けてストップしない主人公。主人公は女に価値を見出してないとか冒頭でカッコつけてるのにさぁ…。女の行動が荒唐無稽すぎるため、すぐに誰かと通じていることやどんでん返しへの布石だというのが読者にバレてしまう。これだけ地雷を踏みながらなぜかストップしない主人公にストレスを抱えつつオチまで歯を食いしばって読まなければならない。 黒幕さんは主人公がマトモな判断をして計画を中止したらどうするつもりだったんだろう? |
No.4 | 7点 | 容疑者Xの献身- 東野圭吾 | 2018/02/08 15:26 |
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映画を見てから小説を読みました。
採点には映画も含めています(映画は文句なしに面白かった。ましゃ兄かっこいい)。 小説を読んでみて、こりゃあ意見が割れるだろうなと思ったら、容疑者X論争なるものがあるのですね。ごく最近知ったので論争の細かい内容は分かりませんでした(リンク切れなど)ので、ひょっとしたらすでに論じられていて解決済みのことを言うかもしれません。何卒ご容赦を。 作者は突っ込まれそうな際どい部分には一応の理由を持たせているのでいいのですが、はっきりごまかしを感じたのは、 『現場の自転車の(人為的な)パンクの件が解決していない』こと。 コレに触れている書評が見当たらなかったので…。自転車を残す必要性は湯川先生が語っていて、誰かに乗り逃げされないようにパンクさせたのはいいとして、石神は意図を悟られないために「自転車の存在そのものを知らなかった」と嘘の供述をしています。そうすると警察は「パンクさせたのは誰か?」という問題を解決する必要が出てくることになりますが作中コレに触れた部分はありません。勿論やったのは石神ですが、彼は上記のことからパンクさせたことを主張できません。被害者がやるはずもありません。自転車は死体のそばにあったと書かれているので(死体と関連付けるためそばに置かざるを得ない)、自転車をパンクさせ死体に気づかないということはないでしょう。「犯行後、無関係な誰かが現場に来て面白がってパンクさせたがそばの死体に気づかなかったか、気づいても通報せずスルーした」というのは苦しく、これだけで草薙の言う「一つでも矛盾があれば」に相当すると思うのですが。 作者はこのことを忘れていたのではなく、解決法が無いので触れないことにしてごまかしたものと思われます。 それから、これは個人的なイチャモンですが、雰囲気づくりのため物理だの数学だのに触れる割に、石神の思考法が数学者的ではないように感じます。 石神はブルートフォース的な証明を良しとせず、本質を押さえればすべてが明らかになる「美しい」証明を理想とする古いタイプの数学者として描かれているのに、彼のやったことは原理的にそうなる、というものではなく蓋然性を高めるだけのもの、現実の処理にはコレで十分という方法で、どちらかと言うとエンジニア的です(と思ったら、作者はエンジニア出身なんですね、納得)。そもそも数学以外興味がないとされる石神が、警察の捜査の深さ杜撰さ思考法を見切っていた、というのもらしくないし、蓋然性を高めるだけのことで論理的思考とは言えず、とにかく数学者らしくない。(念のため富樫の生家などから臍の緒を手に入れて鑑定しよう、となったらどうするつもりだったのだろう) おそらくこの作者は「本格原理主義者」を読者としては端から相手にしておらず、ライト層向けの商売に特化しているのでしょう。それはそれでうなづけるスタンスですし、本格原理主義者からの批判もどこ吹く風だとは思います。 |
No.3 | 3点 | 悪意- 東野圭吾 | 2017/10/17 20:42 |
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緻密さより衝撃優先のこの作者らしい内容。
ですが、同様のアイデアを用いた他作品より数段クオリティが落ちる。 手記=虚実入り混じり、読者はそんなこと分かってるので読者は警戒し作者はいかにソレを上回るかですが、結局ありがちな『手記の著者は都合の良いことしか書いてなくて実はすごく悪いやつだったよ〜』以外の要素なしで残念。 そういう小説ではないのは分かっているのだが、証拠として重要なビデオテープの内容に関して、解決編でいきなり「あのビデオはこれこれこういう理由でダメ」と探偵役が言うのがちょっと…。だったら予めソレを著述しておくべきではないか?(何度も見返したが、事前にソレに触れている部分はなかったように思う。もしワタクシの見落としならご指摘頂きたい) |
No.2 | 5点 | 白夜行- 東野圭吾 | 2017/10/13 22:34 |
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面白いけど、長い。
長さが苦痛にならないのはさすがの力量だけど、長い。 正確に言うと、こんだけ長いならもうちょっと具体的に書いても良い部分があるでしょうというのと、後半になると各エピソードの流れとオチが推測できるようになってしまうのがキツい。「最初は警戒→でもすぐ色仕掛けで陥落」がバレバレなので…。あるときは色仕掛け、あるときは破綻への工作みたいに仕掛けのバリエーションを期待してはいけないのだろうか。 オチはああするしかないとは思うけど、あっさり。 |
No.1 | 4点 | 仮面山荘殺人事件- 東野圭吾 | 2017/09/30 23:42 |
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二通りの解釈が可能な話を構築し、一方の可能性に触れた上で真相はより衝撃的なもう一つの方だった、というこの年代からしばしば見る形式です。
真相がある意味古典の焼き直しゆえ、エクスキューズとしてもう一つの可能性を提示しているのでしょう。が、評価できるのはそういう話を構築した労力に関してで、お話としては「ふーん」という感想以上のものはありませんでした。(メタ的な視点ながら)かなり早い段階でネタバレしがちなのもマイナスではないでしょうか。だって登場人物の行動が不審で浮いてるもん。 |