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人並由真さん
平均点: 6.33点 書評数: 2106件

プロフィール高評価と近い人書評おすすめ

No.926 7点 わたしを深く埋めて- ハロルド・Q・マスル 2020/08/08 14:46
(ネタバレなし)
「ぼく」ことニューヨークの青年弁護士スカット・ジョーダンは、マイアミでの休暇を切り上げて早めに自宅のアパートに帰参する。だがそこで待っていたのは、黒い下着のみをまとう見知らぬ美女だった。美女は勝手に酒に酔いつぶれ、旅行帰りで疲労しているジョーダンは流しのタクシーに10ドル渡して彼女を預け、目が覚めたら自宅を聞いて送り届けてほしいと依頼。ようやく眠れると思ったジョーダンだが、またも初対面の面々が来訪。さらにしばらくして警察と先のタクシー運転手が現れ、あの美女がタクシーの中で毒によって絶命した、と告げる。驚くジョーダンだが、事件はさらに大きく広がりを見せていく。

 1947年のアメリカ作品。日本にも来訪したことのある弁護士作家マスル(マスゥール)の作品で、20年の活躍期間のうちに全10冊と意外に冊数は少ない、弁護士探偵スカット(スコット)・ジョーダンものの第一弾。
 手にしたポケミスの初版はどうも厚めに見えるが、実際の総ページ数は本文280ページちょっとで、そんなでもない。いつものポケミスとは違う、斤量の多い紙を使っている感じだ。

 毒殺された美女ダンサー、ヴァーナ・フォードは、ある目的のためにジョーダンの留守中に自宅に侵入。しかしその行為とは別に、別の大きな案件に関わっていたことが次第に明らかになり、ストーリーの裾野が広がっていく。ちょっとややこしめに見えるプロットだが、作中の登場人物が多い割にそのほぼ全員が実にくっきりしたキャラクターとして書かれて、物語を理解させるリーダビリティはかなり高い。また話造りも実に面白い。

 ポケミスの解説によるとこの処女作の原書(サイモン&シャスターから刊行)は本国で100万部売れた(!)上に六か国語に翻訳されたそうで、ホントかよ!? とも思ったが、まあ第二次大戦を経て平和になった時代に登場したイキのいい&よくできたルーキー作品として好評を博したのだろう。

 殺人事件の真相は「あ、そっち?」という感じの意外性。nukkamさんがおっしゃるように確かに必然的なロジックはちょっと弱いんだけれど、一方で、真犯人の意外な動機については、とある形で読者に前もってインスピレーションが働くように示唆が与えられているように思う。そういう意味で、謎解きミステリとしてもよく出来た作品ではないか。
 このシリーズも少しずつ読み進めていこう。

No.925 6点 ウェンズ氏の切り札- S=A・ステーマン 2020/08/07 04:11
(ネタバレなし)
『ウェンズ氏の切り札』
 犯罪者フレデリック(フレディ)・ドローが黒幕と思われる、人身売買や麻薬犯罪、強盗事件の報道が日々の新聞を賑わしていた。そんな中、そのドローと交流のある犯罪者ジョルジュ・ダウーが頓死。当初はダウーの自殺かと思われたが、殺人の可能性が浮上する。容疑者はドローを含む4人の犯罪者たちと、そしてダウーの美しい妻のカトリーヌ(カティ)。ダウーの情婦だった娘クララ・ボナンジュの依頼を受けた名探偵「ウェンズ氏」ことヴェンセラス・ヴォロペイチクは事件の調査に乗り出すが、事態は次の惨劇へと移行していく。

『ゼロ』
「わたし」こと若手の新聞記者ミシェル・アドネは、予知能力者ムッシュー・ハッサンから、自分の周囲で近く人死にがあることを宣告された。悲劇に関連するというキーワードも告げられ、それは「サリー」という女性の名前。やがてミシェルは、老境の探検家H-J・ドナルドソンの取材に赴く。だがその取材直後に老探検家は、出立先から持ち帰った手斧にて顔を叩き割られて絶命する。そんなミシェルは惨事と前後して旧友の「シャルルカン」に再会。そのシャルルカンの現在の彼女が他ならぬドナルドソン老人の娘であり、彼女の名前がサリーだと知る。

 ベルギー作家ステーマンの著作。教養文庫の日本語版は表題作である短めの長編と、中編『ゼロ』を一冊にまとめて刊行。巻末の書誌情報によると表題作は1932年の初版を経て、1959年に改稿版が出版。一方で中編『ゼロ』は1920年代の著作のようだが子細な初出年は不明。
 表題作の探偵役は元ロシア貴族のウェンズ氏だが、ステーマンのもうひとりのレギュラー探偵マレーズ警部も(ほぼ)相棒として登場。マレーズ警部は中編『ゼロ』の方にも登場する。
 
 作者があのステーマンなので何か仕掛けてくるだろうと思いながら、まず表題作を読むが、残念ながら真相は完全に予想の範疇。実はこちらはもうひとつ斜め上の下らないオチまでも予想して、いい感じにバカミスになってくれるのを期待していたが、そこまでもいかなかった。大方の人も先は読めるだろう。
 教養文庫版の84ページで、映画版『殺人者は二十一番地に住む』の上映ポスターが登場するメタギャグがあるのは、ちょっと楽しい。

 個人的には中編『ゼロ』の方がずっと拾いもので、ちょっとウールリッチの『夜は千の目を持つ』を思わせるようなフシギな導入部から開幕。
 私的には、少なくとも後半の三つ以上のギミックの相乗で楽しませてくれた。こちらは良い意味でステーマンらしさが全開。ラストのなんともいえない余韻もなかなか良い。
 
 ステーマンの未訳の中にはしょーもない作品も多いんだろうけれど、それでも何か楽しめるものももうちょっと残っていそうな気配もあるので(いやまったくの適当なカンだが)、またそのうち折を見て、発掘紹介してほしい作家ではある。

No.924 7点 ハニーと連続殺人- G・G・フィックリング 2020/08/05 03:00
(ネタバレなし)
 ロサンジェルスで開催される国際美人コンテスト「ミス20世紀ペイジェント」。その優勝の有力候補者と目される「ミス・カリフォルニア」ことジョセフィーン・ケラーの、殺害された水死体が上がる。だがコンテストの主催者モーソン・ローレンスは、この死体はジョセフィーンではなく別人だと主張。ローレンスは金の力でゲスな検屍官ワトキンスを懐柔し、事実をごまかそうとしているフシがあった。一方で地元の保安官事務所の殺人課警部マーク・ストームは、かねてからローレンスの裏の顔(売春シンジケートのボス)に探りを入れていた。ストームのGFで、成り行きからこの事件に関わり合うのは「わたし」こと女性私立探偵のハニー・ウェスト。ハニーはまず美人コンテストに参加する各国各地の美女たちに接触し、被害者の身元を改めて検証する。だが事件は、さらなる広がりを見せていく。

 1959年のアメリカ作品。ハニー・シリーズの第四弾。
 評者は本シリーズは大昔に何か1~2冊、読んだ覚えがあるが具体的にどの作品だったかは、まったく失念。じゃあ改めて、シリーズ第一作(『ハニー貸します』)から読もうと思ったが、確実に持っているはずの蔵書が見つからない。しばらく数か月ほど探していたが出てこないので、まあいいやと思って、適当に手にしたのがこの作品である。
 まあ、コレから読んでもほとんど問題はないみたいね(笑)。ハニーのキャラクターの大設定(4年前にやはり私立探偵だった父親ハンクを殺され、今もその正体不明の犯人を追っている)はこの作品中でも改めておさらいされるし。(ただ、マークがハニーに向けて、何かどうも以前のエピソードのことらしい話題をチラリと出してはいるが。)

 事件の関係者を訪ね回ってあちこちとび回り、その間に主人公の予期しない形で死体の山が積み重なっていく流れは、ものの見事に50年代の王道ハードボイルド私立探偵小説。それで中盤ではハニーが女性としての弱点をつかれる、かなりショッキングな場面もあり(直接のレイプなどではない)、その辺の緊張感にも事欠かない。
 さらに某登場人物の、あれよあれよと変幻するキャラクターも強烈で、見方によってはかなり強引にご都合主義的にいろんな文芸設定を押し付けられた感もあるが、その辺のキャラ描写のある種のダイナミズムも、独特なハイテンションさを感じさせる。

 ちなみにハニーとマークの、仕事の上ではライバル関係、しかし男刑事の方が女私立探偵にホレている、というのは、先日読んだ後輩格の女私立探偵シャロン・マコーンそのままで、こういう明快なキャラシフトに、女私立探偵もののひとつのトラディッショナルを改めて実感する。
 
 ミステリとしてはかなり錯綜した物語をかきわけて、最後の3~4分の1で、なんとも斜め方向に驀進。しかし意外なほどに伏線は張られていて、そこから手がかりをひろいまくる丁寧さを見せつけてくれる。
 なんかWebでチラチラ、ミステリファンの感想を見たところ、ハニー・シリーズって、おおむねこういういびつなパズラー志向みたいだね?
 特にこの作品は、かのクイーンが後期の某長編でやった趣向を先取りしており、あわわわわ……といささか驚かされた(笑)。いやもちろんここでは詳しくは言わないけれど、その辺の仕掛けが見えてくるあたりの軽いゾクゾク感は、ちょっとしたもので。
 ただ弱点は、真犯人がわかってもさほどのミステリ的なトキメキがないこと。この辺は(中略)ゆえにまあ、仕方がないか。

 とはいえ思った以上に、楽しめた一作。ワイズクラックのてんこ盛りも、いかにもこの時代のB級ハードボイルド私立探偵小説らしくっていい(彼氏のマークの方が、ハニーに負けず劣らず、減らず口を叩きまくるのが笑えた)。
 またそのうち、このシリーズは、順不同を気にしないで読みましょう。評点は0.5点オマケ。

No.923 8点 完全試合- 佐野洋 2020/08/04 17:37
(ネタバレなし)
「ユニヴァーサル・リーグ」(この物語世界の球団リーグの一翼)がその年のペナント・レースを迎えようとしていた、ある秋の日。銀座の大竹デパート内から2歳の幼女・有川珠美が姿を消した。彼女は、ユ・リーグの優勝候補チーム「明星プレヤデス」のエース投手・有川紳の一人娘。そして間もなく、有川家、そして各報道機関に「有川のペナントレースへの登板を禁じる。断れば珠美の無事は保障しない」という意の連絡が届いた。球界、警察、報道機関がこの状況にそれぞれの対応を見せるなか、事件の実態についてさまざまな可能性が取りざたされるが、事態はさらに予想外の展開を見せていく。

 元版のカッパ・ノベルスで読了。一段組で紙幅もそんなに多くないので、これはサラッと読めるだろうと思ったが、いや、トリッキィな誘拐サスペンスミステリとして、予想以上の傑作であった。

 とにかく、あれやこれやと詰め込まれた野球ネタからのミステリ分野への置換が手際よく、現実のプロ野球観戦なんかにまったく興味がない(アニメや漫画での野球ものは大好きだが)自分がこれだけ面白く読めたのだから、昭和の野球ファンにはたまらないのではないか。
 中盤の報道陣の暴走のあたりも、(もちろん現在の目では望ましいことではないが)社会規範の固まる昭和の過渡期の時局なら、こういうことがあったとしてもおかしくないというリアリティを実感する(倫理的な視点の部分は、警察側の憤りの叙述でクリアされていると思うし)。

 野球の試合経過になぞらえた章見出しのお遊びも、その流れに即した終盤の二転三転ぶりもあっぱれ。それとは別に、第10章の3パートあたりの描写なんか、すごく印象深い。

 佐野洋はおそらく大のプロ野球ファンだったのであろうが(すみません。現状でよく再確認してない~汗~)、筆の立つ作家が好きな題材(たぶん)をネタにして、しっかり成功した一作。
 最後の最後の「ああ、佐野サンらしいなあ……」という苦笑いを呼ぶクロージングまで含めて、とても作者の良い持ち味が出た作品ではないかと。
 個人的に、今まで読んだ佐野作品のベストワン。

No.922 7点 犠牲者は誰だ- ロス・マクドナルド 2020/08/03 17:53
(ネタバレなし)
 麻薬犯罪取締の法律委員会に雇われた私立探偵リュウ・アーチャーは、サクラメントにある同組織のもとに向かう途上、銃撃されて重傷を負った男を道脇の溝の中に見つけた。男を助けてとりあえず最寄りの自動車ホテルに駆け込み、同ホテルの主人ドン・ケリガンとその妻ケートに協力を求めるアーチャー。だが病院にかつぎこまれた男はそのまま死亡した。アーチャーは、死んだ男がトラック運転手のトニイ・アクィスタで、彼が先の自動車ホテルの女性マネージャー、アン・メイヤーと縁があったことを知る。アンの父親のメイヤーは、運送業者の社長で、トニイの雇い主でもあった。だがそのアンは一週間ほど前から行方をくらましており、そしてホテルの主人ケリガンも不審な動きを見せる。アーチャーはアンの父親メイヤーに接触し、トニイ殺人事件の調査とアンの捜索を仕事の形で請け負うが。

 1954年のアメリカ作品で、アーチャー・シリーズの第六作。
 評者は2010年代の半ばに『ブラック・マネー』を読んで以来、本当に久々に紐解く本シリーズである。後年に成熟していくロス・マクらしい作風の香りを感じさせながら、物語の大筋はいかにも1950年代の王道私立探偵ハードボイルド調。円熟期のチャンドラーからの影響を実に良い感じで継承しながら、だんだんと一皮剥けていく過渡期の一編という感覚で、そのグラディーションぶりが本当に快い。

 事件に関わる主要キャラはもちろん、お喋り好きの中年女サリイ・デヴォーアとか、孤高の老人マッガヴァンなどの脇役もしごく存在感豊かに描かれている。その部分だけのデティルの鮮やかさで言うなら、本気で『さらば愛しき女よ』にも『長いお別れ』にも匹敵するくらい。特に物語の表面になかなか出てこないキーパーソンのメインヒロイン、アン・メイヤーの扱いは格別で、後半でのその初登場シーンには深い感慨を覚えた。

 アーチャー本人の書き込みの程合いも、先のレビューでクリスティ再読さんが語る通り。とりあえずそれに付け加えることはない。
 なお、かつて日本語版「マンハント」誌上で、当時のミステリ作家、翻訳家たちがおなじみのハードボイルド名探偵たちのそれぞれの述懐(的なパスティーシュ短編)の形で、各人のプロフィールを語る連載企画があり、当然、アーチャーもその連載の中に登場。たしかその執筆担当者が本作の翻訳者・中田耕治であり、アーチャーの心情吐露のネタの大部分を、今にして思えばこの作品『犠牲者は誰だ』から採取していたようだったと気がつく。つまりこの作品は、そういう一編なのであった。
 
 ミステリ的にはややこしい事件のほぐれ具合がかなり自然で、その点では本シリーズ中でも、かなり上位の方ではないかと思う。余韻のあるクロージングも最高で、これはアーチャーものとして、高めの評価でいい、とも一度は思った。
 が、し・か・し、アーチャーと本作中のとあるキーパーソンとの関係性。これをあえて最後まできちんと書かずに、事実上の未決着にしたのが、う~ん……。
 いやまあ、シリーズ名探偵もののお約束パターンのひとつだとも、そこは言わず(書かず)が花だとも、いえるかもしれない……のだけれど、正直、実にもったいない、「そこ」のドラマが(どんな形であれ)見たい、読みたい、というのが、どうしようもない本音。
 ロスマクが存命中に「なんでこの作品は(中略)だったのか?」と聞いてみたかった(どっかで語っているのか?)。
 その点にこだわって、あえて1点減点。
 いや、優秀作なのは間違いないです。

No.921 5点 ドリームダスト・モンスターズ 眠り月は、ただ骨の冬- 櫛木理宇 2020/08/02 15:18
(ネタバレなし)
 他人の夢の世界に入り、問題を抱えた相手の心を救う「ゆめみや」の老女・山江千代。とある事件を経て千代の不思議な能力と温和な人柄に救われた女子高校生・石川晶水(あきみ)は、彼女に想いを寄せる学友で、千代の孫でもある少年・壱とともに、ゆめみやの仕事に関わっていた。だがそんな3人の周囲で、蛇と妖しい老女に関係する悪夢に苦しむ者が続出。晶水たちは、事態の解明と解決を図ろうとするが。

 シリーズ3冊目。2015年の新刊(文庫書き下ろし)。
 今回は連作短編集っぽい仕様で、実際には本書の最後のエピソードで事件の真相がわかる長編作品。
 ラブコメ要素はシリーズ初期より薄くなったが、その分、巻を重ねて付き合ってきたこちらは登場人物たちといい具合になじんでいるので、キャラクターミステリとしてのバランスは悪くはない。
 ただしなんかシリアスで緊張感のありげな主人公コンビの問題が、最後で拍子抜けだったのはなんとも。まあ作者は、シリーズに緩急をつけるためのお約束でやっているところもあるんだろうけれど?

 ホラーミステリとしては、ちょっとしたトリック(ギミック)を使用。その切なさとグルーミーさはいかにも櫛木作品っぽくて、このシリーズのなかではギリギリのところであろう。あんまり主人公トリオが辛い目に遭わされるのもなんだし。

 しかし覚悟の上で読んだけれど(参考:ラノベ『エロマンガ先生』のいやがらせ)、このあとの続きが5年間書かれてないので、いったんここでシリーズは休止なのね。こういうのって、どういうことを機会に再開するのでしょうか? いや、そんなのが千差万別なのは百も承知ですが(笑・涙)。

No.920 6点 謀殺の弾丸特急- 山田正紀 2020/08/02 14:39
(ネタバレなし)
 東南アジアの小国アンダカム。そこで日本の二流ジャーナリスト、大塚良介は軍事秘密基地らしき施設を撮影した。だが実はそこは独裁者の大統領が政敵などを拘禁する秘密の強制収容所で、大塚の動向を知った対ゲリラ部隊の冷酷な指揮官デイヴ・オル大佐は、日本人スパイと見なした相手の口封じに動き出す。旅行会社「ゴールデン・トラベル社」のパッケージ旅行者に紛れて国外に出るつもりだった大塚は軍の追求を察知すると、美人添乗員の吉岡晶子、そして老若男女6人の旅行仲間を強引に巻き込み、日本から何十年も前にこの国に輸出されていたいまだ現役の蒸気機関車C-57で隣国タイへの逃走を図るが。

 山田正紀1980年代冒険小説路線の一編。舞台がエキゾチシズム満点の異国で、大道具(陰の主役)となる蒸気機関車も初刊の時点ですでにレトロチックだったため、作品の大枠そのものは21世紀の今でも逆説的に? 古びた感じがしない。
 ただし作者がここで楽しませよう、と思ったのであろう、一般人旅行客チームによる軍の迎撃場面の一部などは、さすがにどっかで見たようなものも目立つ。これはこの作品の罪ではなく、35年も経ってから遅れて読んだこっちが悪いのだろうね。
 あと気になったのは、敵がテロリストや犯罪組織ではなく、とにもかくにもれっきとした公的機関なんだから、無線や何かを用いて軌道のはっきりしている蒸気機関車の先回りをすればいいような気もするのだが、ほとんどそういう種類の戦略が描かれていない。極端な話、一時間後にそこを通るであろう線路の上に廃棄してもよい大型廃車とか置けば、それで(主人公たちには悪い意味で)「勝負あった」だよね? 
 あと、婆ちゃん・加賀佳美さんの後半の活躍はともかく、彼女の病院院長の母親という設定が死に文芸だったのもちょっと残念。実は、玉の輿に乗った元看護婦とかなんとかで、久しぶりに救護の腕をふるうとか、そういうのを考えていたが、この辺は仕込みだけしておいて、ネタを使う間がなかったのか?(連載作品を加筆・改訂したとのことだから、いくらでもやりようはあったとは思うが。)

 たしかに本作は、先行する『火神を盗め』の系列ではありますが、満足度も感興のほども、あの大大・傑作の向こうには遠く及びません。まあ当初から、あそこまでのものがまたもう一度読めるなどと夢のようなことは毫も期待してはいませんでしたが。
 まあ和製『高い砦』プラスロードムービー的な冒険小説としては、そこそこの佳作。悪くないけれどね。ヒロインの晶子は、ちゃんと見せ場はこなしてくれたし。

No.919 5点 弱った蚊- E・S・ガードナー 2020/08/01 12:30
(ネタバレなし)
 その年の春先。ペリイ・メイスンの事務所は、中年の鉱山師ソルティ・パワースの訪問を受ける。本当の用向きがあるのはパワースの相棒の鉱山師バニング・クラークだが、彼は心臓がよくないので代理で来たとのことだった。秘書のデラ・ストリートとともに、クラーク当人の屋敷に向かうメイスンだが、砂漠での生活を愛するクラークとパワースは庭でキャンプ生活を営み、屋敷にはクラークの亡き妻エルヴィンの兄ジェームズ・ブラディスンや、その兄妹の実母(つまりクラークの義母)リリアンたち雑多な人間が居住。しかもその面々のなかの一部は、クラークの鉱山の所有権にも密接な関係があった。同家に宿泊して事態に関わるメイスンとデラだが、やがて予期しない殺人事件が……。

 1943年(第二次大戦中、真っ盛り)のアメリカ作品。
 評者が本当に久々に読んだメイスンシリーズだが、この作品は大昔の少年時代に少しだけ中身を齧りかけて、そのときは物語の主題の鉱山業のことがよくわからず、放り出した記憶がある。
 長年の宿題を片付けるつもりで改めて読んでみると、先行の方のレビューにあるように、いかにもガードナーらしい砂漠&探鉱生活への憧憬がそこかしこの叙述に見受けられ、その辺は正に本作の味であった。昔はこういうところが、まだコドモで分からなかったのだな。

 メイスンとデラがとんでもないピンチに遭遇したり(詳しくは書かないが、このシリーズで<こういう趣向>があったのか! とギョッとなった)、妙にイカれた登場人物(自称二重人格者で、自分に不利益な責任はぜんぶ、その第二人格の方に押し付けようとする)が登場したりと中盤まではなかなか面白い。
 が、ストーリーが錯綜する割に、前述の特化されたキャラクター以外の登場人物の書き分けが平板で、正直、ミステリとしての狙いどころをしっかりと楽しむにはかなりキツイ。
 いや、珍妙なトリックとか、斜め方向の事件の真相と犯人の意外性とか、それなりに凝ったことをしようとしていることは理解できるのだが(とある被害者が被った、かなり特殊な状況の殺人についての法律的見解なんかも、興味深いといえば興味深い)。

 なお、終盤、メイスンとデラが互いの関係性を確かめ合うくだりは、ちょっと感じるものがある。評者みたいな本シリーズをつまみ食いする読者じゃなければ、もっとさらに思うところも多いだろうね。

No.918 6点 金蝿- エドマンド・クリスピン 2020/07/30 19:26
(ネタバレなし)
 オクスフォード大学周辺の施設「オクスフォード・レパトリー劇場」。そこで今回、30台後半の中堅劇作家ロバート・ウォーナーの作品『詩作狂』が、原作者自身の演出で上演されることになった。だが主演女優のひとりヘレン・ハスケルの腹違いの姉で同じく共演予定の女優イズーは、皆の嫌われ者。かつてロバートの彼女だった自己中心的な性格のイズーは、現在は別の恋人レイチェル・ウェストがいるロバートに復縁を求め、その無軌道ぶりはますます周囲の不興を買う。そんななか、演劇の関係者一同の周囲では、いささか不可解な殺人? 自殺? 事件が発生して。

 1941年の英国作品。
 クリスピン作品はまだ『玩具屋』『愛は』の二作しか読んでなかった評者だが、本作に関してはまだ処女作だけあって、このあとの諸作に見られるファース味が薄いといった噂は聞きおよんでいた。
 というわけでこちらもそのつもりで読み始めたら、順を追うように各自の素性を語られながら登場してくる劇中人物とか、その人間関係のからみ合いがやがて迎える殺人事件の助走になっていく作劇とか、ものの見事にクリスティ風味。さらに薄味とはいえ、主人公探偵ジャーヴァス・フェンの指示で、自殺の真似事をする彼の奥さんドリーの天然な描写とか、地味に笑えるところはしっかり笑える。(しかし、フェンって奥さんや子供がいたんだな。なんとなく独身だと勘違いしていた。)
 事件発生後、人間模様がさらにゆるやかに錯綜していく流れもふくめて英国ミステリ小説としては十分に練熟した感じの作風で、これを作者はハタチの時に書いたのか! やっぱり天才っているんだな……! と軽い衝撃を覚えた。
 
 ミステリとしては1941年という旧作であることをさっぴいても、ちょっとトリックに傷があり、犯人が使ったこの手段は当時の警察の鑑識レベルでもバレてしまうのでは? とも思う。そもそもこのトリックの要点に関しては、アメリカの某作家が1930年代にちゃんとその件にこだわった描写をしているので、当時のクリスピンはそっちは読んでないか忘れていたんだろうね? そんなことを考えたりした。
 とまあ、減点要素はちょっと見過ごせない部分はあるものの、堂に入った小説の仕上げぶりは本当にスゴイです。正に栴檀は双葉より芳し。佳作~秀作。

※余談がいっぱいある作品なので、以下に思うままに(もちろんネタバレを警戒しながら)箇条書き。
・35ページ(ポケミス版・以下同)で登場人物のひとりが『ミス・ブランディッシュの蘭』(このポケミス内では「ブランディッシュ嬢に蘭は無用」表記)を読んでいる描写があり、当然、のちに発禁になった元版バージョンであろう。ニコラス・ブレイクの『旅人の首』の作中でも読まれていたけれど、いかに同作(の元版)が当時の英国のミステリ文壇に衝撃を与えたかが伺える。
・そのニコラス・ブレイクだが、本作『金蠅』の作中に登場する主要キャラ(中年ジャーナリスト)の名前が「ナイジェル・ブレイク」(!)。劇中では名探偵フェンのワトスン役的なポジションとして動く面もあり、「ナイジェルは~」「ナイジェルが」と書かれるたびに、いまオレが読んでるのはクリスピン作品だよな、ニコラス・ブレイク作品じゃないよな、と何度も混同しかけた(汗)。わざとやってんのか、クリスピン。カンベンしてくれ。
・第一章の最後のとあるメタ的な記述は、物語を盛り上げる演出として「おおっ!」と思わせるものだが、一方で他のクリスピン作品にからめてちょっと思うこともある。この辺はいつかクリスピン作品を全部読んでいる人を限定・対象にくわしく語り合いたい。(これくらいならネタバレにはならないだろう。)
・92ページ、「蠅」を「ハイ」とカタカナ表記。そもそも本作の題名の金蠅とはエジプト製の装身具で、蠅をかたどった指輪のこと。「ハエ」と「ハイ」の混用・混同なんて乱歩の『宇宙怪人』を思い出した。
・123ページ、翻訳の本文に「年に二百万円」。こういうの、なんかイラっときます。
・153ページ、本作の事件は広義の密室殺人といえる状況でもあるのだが、「ギデオン・フェル」の名前も登場。

 とりあえず思いつく限り(メモに残したくなった限り)に、そんなところで。

No.917 4点 魔弾の射手- 高木彬光 2020/07/29 03:39
(ネタバレなし~なお、本書をこれから読む人向けに、ネタバレ回避のための警告をしております。)
 
 1974年の4月初版の「桃源社・ポピュラー・ブックス」版で読了。
 1950年初頭刊行の元版や後年の角川文庫版はどうなっているか知らないが、この74年のポピュラー・ブックス版では、目次に並べられた各章の小見出し、その最後の方を見ると、おおむね一目で犯人がわかってしまう(……)。
 このヒドい仕様はあんまりで、こんな目次を設けた作者も編集者も天然か! と腹を立てた。
【そういうわけで本書をまだ未読で、これから読む意志のある人は、絶対に目次を見ないように!】

  ……ということで、大昔から何回か手にしながら、そのたびに興ざめな思いを感じて、とうとうウン十年もの間、読むことのなかった神津ものの初期長編。
 でもってまあ、ここで年貢を納めるつもりで(涙)覚悟して読んでみたら、いや、これは金田一耕助のB級スリラーと同じ方向性で、しかも作品そのもののできは少年ものレベルでしょう(苦笑)。
 実際に本作の神津は『覆面紳士』『死神博士』そのほかのジュブナイルに出てきそうな中期以降の明智小五郎の、エピゴーネン的なキャラクターであった。
 ただまあ最後の辺りは、これはこれで神津のキャラクター性のひとつを強く押し出した感じではある。だから全編を読み終えた瞬間だけは、この作品の存在意義をちょっとは認めてもいいかという気になった。
 
 とはいえシビアな言い方を許してもらえるなら、今後ずっとプロ作家としてやっていこうと思った当時の作者が『刺青』『能面』『呪縛』みたいなハイレベルのものばかり輩出することなんか無理だと自覚し、「あの乱歩先生も横溝先生もそういうものを書いているんだから、オレもこういうユルいものもいいだろう」と割り切ってものにした一作という感じ。
 当時、これを読んで「期待の本格派の新鋭も、全部が全部、傑作・秀作というわけにはやはりいかないのだな……」と大きく失望したであろう、探偵小説の鬼(ミステリマニア)たちの落胆ぶりが察せられる。
 まあそれでもここで終わらなかったからこそ、高木彬光という創作者はやっぱりすごいんだけれど。

No.916 6点 タロットは死の匂い- マーシャ・マラー 2020/07/28 13:47
(ネタバレなし)
 その年の6月のサンフランシスコ。「わたし」こと女性私立探偵のシャロン(シャー)・マコーンは、自分のアパートの住人で、ふだん仲が良かった老婦人モリー・アントニーオが絞殺された事件に遭遇する。シャロンは嘱託している組織「オール・ソウルズ法律課協同組合」に頼んでこの事件の調査を業務扱いにしてもらい、情報収集を開始。やがてモリーの周辺や、近所の人々の錯綜した人間関係が見えてくる。だがそんなシャロンを悩ますもうひとつの案件、それは幼なじみの親友だが、今はアル中になりかかっている29歳の離婚女性リニア・キャラウェイのことだった。

 1982年のアメリカ作品。
 シャロン・マコーンシリーズの第二作目。評者は本シリーズは、大昔に先に講談社文庫で翻訳刊行された第一作『人形の夜』(日本では作者名マーシャ・ミュラー標記で刊行)と、プロンジーニの名無しのオプとの共演編『ダブル』を既読。
 つまりだいぶ遅ればせながら、なるべくシリーズ順(&翻訳刊行順)に読んでいることになる。

 おなじみ深町眞理子のこなれた訳文もあってとても読みやすい。良い意味で、50~60年代の軽ハードボイルド私立探偵小説を、80年代・女性私立探偵ものの枠内に再生した歯ごたえ。

 関係者の間を訪ねてまわる主人公探偵の調査が連鎖的に事件の真相を少しずつ引き寄せ、やがて(ちょっと)意外な犯罪の真実が浮かび上がってくる流れはきわめて王道で、この作品では殺人の向こうにどういう種類の犯罪が起きていたのかの具体的なビジュアルイメージが、なかなか面白い。まあある意味では、単純に違法行為というだけでなく、地味に、しかしかなり倫理的にインモラルな悪事であった。

 なお、シャロンの「鳥が弱点」「チョコレートに目がない」という特化されたキャラクター設定はいささか記号的でマンガチックではあるけれど、総体としては地に足のついた正統派私立探偵の女性主人公。
 犯罪捜査官としてシャロンにライバル心を抱きながら、一方で彼女に岡惚れしていつも不器用な恋のアタックをかけてくるサンフランシスコ警察の中年刑事グレッグ・マーカスや、前述したシャロンの親友リニアなど、周辺キャラとの関係性もけっこう楽しい。
 題名に掲げられたタロット(タロー)・カード(原題では単に「~CARDS~」)が大した意味をもってないのだけは、ちょっと「あれ?」という感じであった。
 また気が向いたら、手元にある未読のシリーズ作品を読んでみよう。佳作。

No.915 7点 死が招く- ポール・アルテ 2020/07/25 20:32
(ネタバレなし)
 終盤の(中略)というサプライズに向けて、労力の大部を傾注した感のある一作。その分、密室や幽霊騒ぎの興味の方が、やや希薄になってしまった。ゆえに中盤は、いささか冗長な印象。

 しかし最後まで読むと、作者がニヤニヤしながら&かなりのドヤ顔で物語を完成させた気配もあり、総体的な評価としては、ホメるにやぶさかではない。
 それと、中盤での(中略)ファン向けの、とある趣向は「まさか、このネタを伏線にするのか!?」と期待を煽られ、そして実際に(中略)。いや、ちょっとウケました(笑)。

 ただ、評者がこれまで接してきたアルテの作品群は、おおむね、スリムな紙幅の中に、それなりの中身が詰まっていた手応えだった。
 その密度感は魅力ではあったんだけれど、それでもこの作品なんかはもうちょ~っとだけ、良い意味での<物語の贅肉>がついた方がいいという思いも抱く(これだけ豊富なネタを用意して、ポケミスで全180ページちょっと、というのは、短かすぎる)。

 今後もアルテ作品は読んでいくと思うが、そういったミステリ成分とストーリーテリング部分の兼ね合いの上でバランスのとれたものに出会えると、実に嬉しいのだが。

No.914 6点 犠牲者たち- ボアロー&ナルスジャック 2020/07/24 13:46
(ネタバレなし)
「ぼく」こと出版社の編集者で独身のピエール・ブリュランは、著作の原稿を投稿の形で持ち込んできた美貌の若妻マヌーことエマニュエルと知り合った。マヌーの対応をする中でやがて彼女の不倫相手となったピエールは、加速度的に彼女への思慕を募らせていく。だがそのマヌーが、高名なダム建設の専門家である夫ルネ・ジャリュとともに長期アフガニスタンに行くことになった。マヌーと離れがたいピエールは半年の長期休暇を半ば強引にとると、ジャリュの秘書としての役職まで獲得して2人とともに現地に向かうことにする。やがて出立の日程の関係でジャリュとともに先に異国に着いたピエールは、多忙なジャリュにかわって後から来ることになったマヌーを迎えにいくが……!?

 1964年のフランス作品。
 かねてより本サイトでのレビューをうかがうと(作品の現物を未読の時点では、しっかりは拝読させていただかないが)、総じてあまり評価は高くないようである。だが一方で、手元の創元文庫版(1995年の第四版)では服部まゆみからわざわざ新原稿をいただく形で、同人の激賞を授かっている。この温度差は何ぞや? という興味も踏まえて読んでみる。
 
 読了したらなんとなく状況がわかったような気がする。本作にはかなりシンプルかつ大技の着想があり、それは、ヘタに書くと、たぶん本当にとてもつまらなくなってしまいそうなもの。だから意外にこれまでのミステリでもあまり使われたことのない? 実例という印象だが(これが評者の不見識だったらスミマセン)、それがここではなかなか、筋立ての上で効果的に使われている。
 ただそんな反面、作者コンビによる一人称でのキャラクター描写に独特のクセがあり(本作はそこが味なのだが)、そこにある種の微妙さも覚えたりする。特に中盤、主人公ピエールが「そこ」まで考えたなら、なんであと一歩、思索しないのかとイライラさせられる読者は多いのでは?(当然、評者もそうなんだけど。)

 だから服部まゆみのように食いつきの良かった部分でホメる人はかなりホメるし、減点部分というか気に障る部分が気に障る方の評価はあまり高くないのだろう。もしかしたらそんなところかな、と愚考してみたりする。
 ちなみに評者の評点はそんなもろもろのところを踏まえたつもりで、こんなところ。傑作とは言わないし、一方で長打の打球が惜しくもファールに終わった作品だとも思わない。
 まあ翻訳ミステリファンとしての長い人生のなかで、一回くらいは読んでおいた方がいい? 佳作~秀作であります。

No.913 5点 天才は善人を殺す- 梶龍雄 2020/07/23 17:33
(ネタバレなし)
 1978年の元版(ハードカバー)の方で読了。
 過渡期のキャッシュ・ディスペンサーのシステムの描写やら個人情報保護法の調査に関するユルさは正にこの時代ならではのもの。特に前者の発展期の電子文明についての叙述を21世紀の現在に読む座りの悪さは、テッド・オールビュリーの『敵の選択』(1973年)での当時のコンピューター技術の記述を想起させた。

 序盤は作者が登場人物の口を借りて、かなり声高にその手の機械化文明の非人間さへの批判をしてくる一面もあり、この時代ならでの社会派ミステリっぽい感じもある。
 ただしそういった当時のコンピューター環境上の問題点や難点は、現在ではある程度整備されているので(利用者の方が飼いならされてしまったともいえるが)、今さらあえて読む(人に勧める)必要もない作品かな? とも思った。
 が、とりあえず本作のミステリとしての主題<どういう人物が金を盗んだか?>の割り出しに向けて主人公チームの実働が始まると、まあまあ(今の目で見ても一応は)楽しめるようになってくる。
 とはいえそこでまた、前述の個人情報獲得のゆるさに苦笑するし、何より、ある件では人海戦術によるシラミ潰しという納得できる作劇(手続き的な流れなのでストーリーとしてはあまり面白くないが)をした一方で、そのあとのまた別の案件ではほとんど思いつきで掲げた仮説が(中略)。
 かなり雑な筋立てだと思っていたら、後半でいくぶんのフォローは用意されていた。とはいえ基本的に後半の残り3分の1ほどの展開が、けっこうご都合主義であったのには変わらない。

 とまあ、あれこれ思うことは書いたが、殺人にからむトリックや事件全体の構図の反転ぶりなど、小技~中技の登用ぶりはなかなかで、総体的にはそんなにキライになれない。
 最後の主人公チームのメンバーの迎える個々の状況は青年時代に読んでいたらもっと違った感慨をきっと抱いたと思うが、オッサンになった今ならこれはこれで、と了解もする。
 続編『殺人者にダイアルを』もすぐ脇に用意してあるので、そのうちに気が向いたら読もう。
(というより、実は先日、蔵書の中からその続編が見つかったので、積ん読にしてあったこの正編の本作の方を、まず今回読んだのだけれど・笑。)

No.912 8点 エクソシスト- ウィリアム・ピーター・ブラッティ 2020/07/22 14:38
(ネタバレなし)
 ワシントンに在住の、32歳になる人気の映画女優クリス・マックニール。夫ハワードと離婚した彼女は現在、12歳の愛嬢リーガン、そして秘書兼娘の家庭教師シャーロン・スペンサー、忠実な使用人の中年夫婦カール・エングストロームとウィリーと暮らしていた。だがそんな中、リーガンに異常が生じ、まるで人格が変わったように卑猥な言動を続発する。しかも彼女の周囲では数百キロもある大型家具が動いたりする怪異が発生。献身的な内科医サムエル・クラインを初めとする医療スタッフが対処に当たるが事態の改善は見られなかった。そんな折、クリスの周囲では知人の残虐かつ不自然な殺人事件が発生。ハーバード大学出の精神病理学者でもあるイエズス会のディミアン・カラス神父は、万策尽きたクリスとマックニール家の面々の依頼を受けて、この状況に介入するが。

 1971年のアメリカ作品。映画はいまだに未見で小説から読みたい、古書を探そうか図書館で借りようかと思っていたら、蔵書の中からすでに購入してそのことを忘れていた新潮文庫版の初版が出てきた。こういうのもよくあるパターンである(汗)。
 
 映画版のあらすじ記事やショッキングなスチールなどはもうこれまでにあちこちで目にしてきているが、大筋はたぶん同じ。しかしおそらく悪魔の設定や細部の描写などに異同がある? ようにも思われる(正確には、きちんと映画の現物を観た上で語るべきだが)。

 一方でああ、少なくとも小説の物語にはこういう要素があったのか、と思わされたのは中盤で生じた殺人事件を契機に、くわせものの中年刑事ウィリアム・F・キンダーマンが介入してくる一連の流れ。クリスのファンを名乗り、その一方でオトボケ風の普段の顔と切れ者の正体を器用に使い分けるキンダーマンのキャラクターは、どこかあのコロンボを思わせる味のあるサブメインキャラであった(ちなみにコロンボは、この『エクソシスト』の原作が刊行された1971年から本格的なテレビシリーズ開幕だから、特に影響とかはないと思うが)。キンダーマンのキャラが映画でどのような扱いになっているかは知らないし、もしかしたら彼に関連する部分を大幅にコンデンスしてもなんとかなるかもしれないが、一方で彼の存在と活躍がこの小説をぐっと面白くしているのは間違いない。非日常の事件と日常の枠に留まる世界のひとつの繋ぎ役という意味もふくめて。

 あと印象的なのは、クライン先生を初めとする<リーガンの異常を、なんとか通常の世界の条理のなかで解明したいと必死になる>医療スタッフの奮闘ぶり。
 大昔にどこか(「ミステリマガジン」かな?)で、モダンホラーの系譜の中で、疑似科学性を本格的に導入することで、その非日常的な魔性にも逆説的なリアリティを与える作法を最初にやったのはこの『エクソシスト』が先駆である、という主旨の言説を読んだ気がするが、正にそのオリジン(?)の栄誉に相応しい。リーガンへの直接の対処としては空振りに終わるが、その奮闘は本命のエクソシストのカラス神父の戦いの礎となった面もあり、胸熱。
 
 なお本当の主人公カラス神父だが、丁寧にキャラクター造形されて、予期した以上に精神医学の方面からまずは検証していく攻め込み具合も印象的。イエズス会が悪魔祓いに関して長期計画を見据え、事例のなかにはフェイクもありうるので、その真偽を確認させるため、組織の方で世話してカラスにハーバード大学で精神医学を学ばせたというリアリティにも唸る。ああ、メチャクチャ面白い!

 500ページ弱の文庫本、半分徹夜で一晩で読んでしまった。決着点が(たぶん映画を観ていなくても)ある程度読めてしまうところはないでもないが、この作品の場合、それは弱点に当たらないだろう。
 なおラストシーンの某登場人物たちのやりとりは、大昔にどっかでたまたま目にしかけてしまったことがあり、その見かけた断片的な会話からなんか実際のものとはだいぶ異なるイメージを抱いていた。そのエピローグ現物の読み方は人によって色々だろうし、それでいいと思うが、ちょっとだけ深読みすればかなり余韻のあるクロージング……かもしれない。

No.911 6点 猫は夜中に散歩する- A・A・フェア 2020/07/21 18:41
(ネタバレなし)
 その年の4月のロスアンジェルス。バーサ・クール&ドナルド・ラム探偵事務所を、独立営業セールスマンのエヴレット・G・ベルダーが訪ねた。以前の共同経営者ジョージ・ナンリーと金銭上の揉め事を抱えたベルダーは、知人に紹介されたやり手のトラブルコンサルタントとしてラムに相談を求めに来たが、あいにくラムは欧州に旅行中だった。ベルダーから事情を聞いたバーサはそこにもうけ話の匂いをかぎつけた。だが、この案件が済まないうちに、匿名の密告者からベルダーの妻メーブル宛に、ベルダーと女中サリー・ブレントナーが密通しているという手紙が送られてきた。その手紙は妻が見る前にベルダーが抑えたが、実はべルダーの全財産は差し押さえをのがれる為に妻メーブルの名義になっており、メーブルを怒らせたらベルダーは一文無しで放り出される弱い立場だったのだ。話が面倒になっていくと思いながらも依頼人のため、匿名の密告者を探し始めるバーサだが、そんな折、予期しない殺人事件が発生して。

 1943年のアメリカ作品。ポケミス版で読んだので、訳者あとがきの類はなかったのがちょっと残念。

 バーサひとりで活躍する「ラム&クール」シリーズ変化球路線の一本だが、これがなかなか快調。
 とにかく登場人物の大半が、バーサやベルダーを筆頭に「カネ・カネ」の論理で動き回り、儲けたい一方で無駄な金はわずかなりとも出したくない。その徹底ぶりは、ものの見事に清々しい(笑)。
 おなじみの秘書エルシー・ブランドの支援を受け、フランク・セラーズ部長刑事との協力と軋轢を重ねながら「なにがなんでもカネにしてやる」の精神で突き進んでいくバーサ。そんな彼女が今回はラム不在ゆえに自ら前線に出た分、思わぬ形で足をすくわれ、(財政的に)大ピンチになりかける趣向も面白い(ここではあまり詳しくは書かないが)。
 
 ミステリとしては確かに錯綜した事件だが、人物リストを作りながら読むとそれほどフクザツという訳でもない。とあるキーパーソンの正体をぎりぎりまで読者に明かさないのはちょっと……という感じがしないでもないが、これはたぶんセラーズがバーサの視界から隠していたんだろうね。まあしょうがない。
 最後、いっきに、バーサからのラムへの私信の形で事件の真相をドバッと語ってしまう作劇はいささか豪快すぎるが、あれよあれよといううちに色んな情報を託されるジェットコースター的な感覚が楽しくもあった。殺人トリックも小技ながら、ちょっと印象的。

 しかしこの終盤の描写には、かなり驚いた(!)。フェア(ガードナー)先生、この時点ではこのシリーズで<こんな展開>をしようかと、考えていたんですな。結局は、マトモに次の作品には続けなかった文芸みたいだけれど(笑)。

No.910 5点 誰の死体?- ドロシー・L・セイヤーズ 2020/07/19 21:09
(ネタバレなし)
 ようやっとセイヤーズのピーター卿ものの長編、初読です(汗・笑)。例によって買うだけは、それなりに買い込んでありますが(大汗)。
 
 序盤の、いきなり浴室に出現した死体の謎は魅力的。ただしその真相はちょっと腰砕け。
 それでその謎解きと表裏一体のあのメイントリックは、何十年かあとに新本格派の某作家氏が<自慢のトリック>と称してほぼ同じものを使っていたような……。
 そのお方は、こっち(セイヤーズの本作)を大昔に旧訳で読んでいてそのことをいつのまにか忘れ、さも自分の創意のつもりで無意識に書いてしまったりしたのか?

 ちなみに評者の本作でのそのメイントリックへの感慨は、先のレビューのあびびびさんに全く同感です。それぞれの作業は独立してみればわかるんだけれど、両方をやってしまうのは効果の相殺だよね? 

 そういう訳でミステリとしてはボチボチ。
 翻訳の良さもあってキャラクターミステリとしての楽しみどころはわかるつもりなんだけれど(バンターの調査のくだりのギャグとか、ピーター卿の戦傷の描写とか)、いまいちのれない、まさに薄味のコンソメスープ(ファンの人、すみません。個人的な感想です)。
 噂の恋人ハリエットが出てくる頃には、またシリーズの印象も変わるのかね。
 
 ところでウィンダムズ・クラブ内の描写だけど、ご馳走を前にケチをつけながら食するのって、(それが当時の英国貴族階級への諧謔とはいえ)人としてどーかと思う(軽く憤怒)。

No.909 6点 泡の女- 笹沢左保 2020/07/19 04:53
(ネタバレなし)
 その年の12月。統計庁に務める共働きの若い女性・木塚夏子は、茨城の大洗にて、実父で小学校の校長、木塚重四郎が死んだとの連絡を受ける。早速、婿養子で同じ庁に勤務する夫、達也とともに、現地にむかう夏子。だが当初は首吊り自殺に見えた父の死には不審点があり、さることから達也は地元の警察に嫌疑を掛けられた。やがて達也は、重四郎が死亡した当夜のアリバイが証明できず、殺人容疑で逮捕されてしまう。夫の無実を信じる夏子は、検察庁が起訴して、職場の懲戒免職処分を受ける前に、達也の身の潔白を晴らそうとするが。

 1961年10月に東都書房から「東都ミステリー」の13巻目として、書き下ろし刊行された長編。島崎博の書誌情報(1964年版)によれば、作者の11番目の長編作品となる。

 評者は今回、大昔に入手してそのまま放っておいた、宝石社の叢書「現代推理作家シリーズ」の笹沢左保編(1964年4月刊行)で読了。
 この叢書「現代推理作家シリーズ」は一冊しか持っていないが、仕様が後年の「別冊幻影城」を思わせるムック的な編集で造本。今にして気づいたがこれって、日本出版史においてかなり先駆的な、ミステリムック(風)の叢書だったかもしれない。
 具体的にくだんの笹沢佐保編には、本長編『泡の女』とあわせて『六本木心中』『不安な証言』『反復』の初期3短編を併録。ロングインタビューこそないが、巻頭に作者のポートレイトを載せて、巻末に数本の評論、作者による自作群へのコメント集、詳細な書誌情報などを掲載する「現代推理作家シリーズ」の構成は、正に「別冊幻影城」のプロトタイプの趣がある。編集の主幹はもちろん島崎博。

 それでこの「現代推理作家シリーズ」版『泡の女』の本文には、作中に登場する実在の場所のロケーション写真が多数掲載。たぶん1960年代当時の都内各地や大洗の雰囲気の一端を記録した貴重な? 資料にもなっている。そういった編集のありようも物語そのものへの臨場感を高め、おかげで楽しく本作を読めた。
 
 ミステリとしての設定・大筋パターンは、ほぼ、まんまアイリッシュの『幻の女』の縮小再生産という方向。
 しかし夫の無実を晴らすにしても、現時点で処刑されるばかりの死刑囚になっているわけでもなく、今後の生活・人生を考えて早いうちに状況をよくしておきたいという思惑で動いてるので、なんかまだまだ余裕があるうちのワガママ、という感じがしないでもない(まあたしかに、リアルさを感じる思考だが)。サスペンス、テンション的な訴求力はギリギリだろう。
 
 ストーリーそのものの語り口は例によって滑らかだし、21世紀の今なら絶対に個人情報保護法に触れるような情報もホイホイ入手できてしまう大らかさも、まあ昭和ミステリの味だね……という感じ。
 でもってそんな風にちょっと舐めながら(?)読み進んでいたら、最後は結構、足元をすくわれた(!)。
 真相への道筋が全般的にチープな感触はあるものの、終盤の反転ぶりは、それなりにホメておきたい出来。少なくとも佳作ぐらいには、評価してもいいでしょう。

 ちなみにこの叢書の巻末の、前述した作者の自作コメントを覗くと、この作品については「(前略)推理小説ファンには失敗作といわれましたが、一般読者からの評判はこれが一番良かったようです。好きな作品です」とのこと。
 素直に読むなら、それなりに広い裾野の読者の支持があり、作者も気に入っていたらしい作品ということになる(まあ、本作を本叢書に入れてもらったことを前提にした、リップサービス的なコメントかもしれないが)。
 評者も個人的に、良い意味での笹沢カラーがにじみ出た作品だとは、思うのですよ。

No.908 7点 蘭の肉体- ハドリー・チェイス 2020/07/18 20:23
(ネタバレなし)
 精神病院に強制収容される22歳の赤毛の美女キャロル・ブランディッシ。彼女はかつて誘拐犯に拉致された、アメリカ有数の大富豪ジョン・ブランディッシの令嬢が、犯人に陵辱されて出産した女性だった。その母親はキャロルを出産直後に自殺。重犯罪者の父親の血を引く彼女は、祖父の一歩距離を置いた後見のもとに成長したが、その心には普段は静かで優しいが、一度枷が外れると凶暴になる闇の部分が巣くっていた。そんな彼女はある夜、病院から脱走するが。

 1942年(1948年?)の英国作品。
(刊行年の異同については、空さんのレビューをご参照ください。)

 世界観は同一ながら、当時の近未来設定で、しかも登場人物は完全に一新。刊行当時としては、結構、斬新な文芸だったのでは、とも思う。
 初老になった(前作で活躍の)私立探偵フェナーくらい、ちらりと出してもよかったとも思うが。
 ……もしかしたら作者的には、前作の初版を外圧で絶版にされたのが悔しくて、旧作の文芸は払底しながらも一方でその世界線を受け継いだ物語を築きたいとか、やや倒錯した心境だったかもしれない?

 しかし悪魔的な殺人淫楽症のヒロインが世間で凶行を重ねるダーク作品かと予期していたら、あにはからんや主人公のキャロルは普段はもの静かで優しい面もある。そんな彼女が、好きな動物が虐待されるとスイッチが入ってリミッターが外れる描写など、かなりイメージは違っていた(どこか、ラノベシリーズ『デート・ア・ライブ』の人気ヒロイン、時崎狂三ちゃんを連想させないでもない)。
 どちらかといえば、先天的な悲惨な出自に悩み苦しむ当人のキャラ描写もあって、読者の感情移入を呼び込む薄幸タイプのヒロインという趣もあるくらいだ(まあそんなキャロルはそうはいいながらも、かなり凶暴なことを色々やってもいるのだが)。

 ストーリーは妙なカメラワークで全編の物語が形作られていく感覚で、ジェットコースタームービー的な疾走感で突き進む反面、随所のキャラ描写にも味があって面白い。
 メインキャラの一角である殺し屋の「兄弟」が地方の宿に宿泊したところ、たまたま現地では明日の公式処刑のための絞首台を組み立てていて、その作業の音をききながらいろんな思いが「兄弟」の胸によぎるシーンなど、作者の鋭利な創作センスを実感させる。
 
 キャラクター配置も妙に「いい人」が意外なほどに続出してくる面もふくめて、過激な物語の反面、どこかに微温的というか、ほのかにのどかな一面もあり、そんなカオスな作風が異彩を放っている。

 ラストは……思うことはあるんだけれど、ネタバレになりそうなので、ここでは書かない。ただまあ、最終的に作者がたぶんヒロインのキャロルに、生みの親としての相応の感情移入をしてしまったのだろうことは推し量れる。

 前作を読んでなくて、単品で接しても、まったく問題ないと思う。チェイス作品の魅力がやや変化球的に(?)よく出た一編だとは思う。
 ただしこれをチェイスの代表作のひとつに入れると、ちょっぴり違うな、という感じがしないでもないのだが。

No.907 6点 奇蹟のボレロ- 角田喜久雄 2020/07/17 19:00
(ネタバレなし)
 1976年9月初版の春陽堂文庫版(中編『霊魂の足』を併録)で読了。
 第三者が出入した様子がない屋内で殺人が発生。中には殺された被害者と容疑者の4人がいたが、彼らはみな厳重に縛られていて殺人など不可能なハズだった……という謎の訴求力は最高! さらに主人公探偵・加賀美課長の捜査につれて複数の疑問点や矛盾点が浮かび上がってくる辺りのワクワク感もとどまることをしらない。中途、そんな不可能犯罪の謎を暴くことを前提に突き進んでいた加賀美に無粋な横槍が入り、それでも己の洞察と信念に確固と従うヒーロー探偵の姿は正に「燃える!」の一言。
 こりゃ『高木家』より、数段面白いのではないの? と思っていたら、後半でいろいろとコケました。いや、丁寧な謎解きの説明はいいけれどね。風呂敷の畳み方が素直すぎて、ミステリのエンターテインメント性が薄れてしまったというか。
 ただまあ和製メグレと一部で噂されている加賀美のキャラクターは『高木家』よりこっちで本領発揮された感じはあります。某・事件関係者を前にして、加賀美が胸中に浮かべる想念など、初出の頃にはかなりインパクトがあったのではないか。

 併録の『霊魂の足』は、予想外に読みごたえがあって面白かった。物語の小さな見せ場や謎解きの要素が豊潤で、これなら長編に仕立ててもよかったのでは、と思う。
 第二の殺人の実働に関しては、そんなにキレイにうまいこといくのだろうか? とも思わされたけれど。

 しかし地の文で「濁った目」と形容されるヒーロー探偵というのも、そういないのではないだろうか(名探偵の概念のパロディ的な意味合いのキャラなら、別だろうけれど)。

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