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[ 警察小説 ]
ニューヨーク・デッド
スチュアート・ウッズ 出版月: 1994年06月 平均: 7.00点 書評数: 2件

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文藝春秋
1994年06月

No.2 7点 ROM大臣 2021/10/05 14:27
ニューヨーク市警刑事ストーン・バリントンがイーストサイドを歩いていると、いきなり空中から女が落ちてきた。二番街のペントハウスから落下したらしいと察したストーンは、大急ぎで階段を駆け上がり怪しげな人影を目撃するが取り逃してしまう。
住民の息遣いまでも感じさせるような都市描写、会話の面白さ、発端の奇抜さ、中盤の展開、ラストの鮮やかな幕切れなど、どれをとっても一級品で、さすがに名手ウッズだと納得させられる。ニューヨークを知り尽くした作者が巧みな表現力を生かした都市ミステリとして高い評価を得るに値する作品といえるだろう。

No.1 7点 人並由真 2021/03/11 05:18
(ネタバレなし)
 その年の9月。深夜のニューヨーク。銃創で足を痛め、少し前に退院したばかりの38歳の二級刑事、ストーン・バリントンは、高級マンションの12階から若い女性が転落するのを目撃した。奇跡的に柔らかい土砂の上に落ちて即死を免れた彼女は、TVの人気キャスター、サーシャ・ニジンスキーだった。ストーンは救急車を手配するが、病院に向かう途中でその救急車は事故を起こし、気がつくとサーシャの姿はいずこへかと消えていた。NY市警は総力を上げて、重傷またはすでに死んでいるであろうサーシャの行方を探すが、やがてストーンたちの目前に意外な事実が明らかになってくる。

 1991年のアメリカ作品。
 ウッズ作品は初読みの評者で、少し前からそろそろ代表作らしい『警察署長』あたりを読もうか……とか思っていた。そうしたら今年正月のブックオフの近所の店の一部半額セールの際、100円棚で状態のいい本作を発見。あらすじを見て面白そうだったので50円(+税)で購入し、数か月後の今回読む。これが、自分にとっての最初のウッズ作品だ。
 
 訳者あとがきに「ジェットコースター。ほとんど解説のいらないお話なのである。」の一文があるが、正にそのとおり。予想を数段上回るリーダビリティの高さで、430ページ以上の紙幅をいっきに読ませてしまう。
 
 物語はメインの事件となるサーシャの身柄消失、その前段階のそもそもの彼女の転落の事情の謎(事故か自殺か他殺か不明~さる理由からその内のひとつが有力視はされるが)、このふたつの興味を主軸に進むが、途中から、この事件に関わりあったがゆえに彼自身の立場が大きく変遷してゆく主人公ストーンのドラマにもフォーカス。
 さらにモジュラー形式の警察小説的に、NY市内で続発するタクシー運転手連続殺人事件もサイドストーリーの流れを築いていく。

 前述のとおり実にハイテンションかつスピーディに読ませる娯楽編の警察小説(の変種……というべきか。ここではあまり詳しいことは言えないけれど)だが、最後まで読み終えると事件の枝葉の広がりに対して、人間関係の裾野が一部せせこましい。そのためこの辺は、箱庭的でミニマムな作劇、という思いも感じたりもした。

 なおこの種の作品では肝要となるはずの<NYという都市空間>は相応に書き込まれ、あちこちのロケーションをとびまわるストーンたち主要人物の姿は順当に躍動的だ。
 まあ文明観的に大都会=NYを外から中から見る視点などがあまり感じられず、さらに地下鉄などがほとんど登場しないのが、ちょっと残念な印象もあるが。

 面白さだけ言ったら8点でもいいけれど、前述のいくつかの弱点(特に人間関係の狭さ、など)がちょっとだけ気に障るので、若干減点して、この点数で。
 一日フツーにしっかり楽しめる、エンターテインメント警察小説(の変種)……ではあります。、


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スチュアート・ウッズ
2000年08月
草の根
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1994年06月
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