皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
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パメルさん |
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平均点: 6.13点 | 書評数: 622件 |
No.14 | 6点 | 生首に聞いてみろ- 法月綸太郎 | 2023/08/17 06:32 |
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法月綸太郎は、高校時代の後輩であるカメラマンの写真展の会場で、彫刻家・川島伊作の一人娘・江知佳と出会う。川島伊作は娘の江知佳に、かつてその母をモデルにして使った「母子像」を完成するが急逝してしまう。しかしその葬儀の間に、母子像の首が何者かに切断され持ち去られてしまう。母子像モデルの江知佳への殺人予告ではないかと恐れた伊作の弟・敦志は、法月に調査を依頼する。
タイトルの印象からして、おどろおどろしい展開が予想されたが、そうではない。謎の真相に近づいていくと、また新たな謎が現れていく感じで、緻密に張り巡らされた伏線が複雑なプロットを支え、二重三重の企みが幻惑する。複雑な人間関係が徐々に見え始めるが、物語自体は淡々と進み起伏に乏しいし、殺人事件が起こるのもかなりページが進んでからであり、どちらかといえば地味であるためインパクトの面ではかなり劣る。 ただ、トリックの重要な要素となる型取り石膏像をめぐる蘊蓄などのペダントリーは好奇心をくすぐるし、石膏像の首がなぜ切断されたかの理由や事件の全貌を明らかにするパズラーの部分はよく出来ているのではないか。 首の切断をめぐってあらゆる仮説もおざなりではなく、最終的に否定されるそれらの仮説も、真相と同様の緻密さと説得力を持っていて見事だった。 |
No.13 | 6点 | ふたたび赤い悪夢- 法月綸太郎 | 2023/03/15 08:10 |
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「頼子のために」の続編。何度も「頼子のために」の事件が言及されていたりと関連性がかなり強いので、まずは「頼子のために」を読んでからがよいと思います。
西村頼子殺害事件の後遺症に悩む法月綸太郎の元に「月蝕荘」での事件で知り合った女性より電話が入る。彼女はアイドルタレント・畠中有里奈(本名 中山美和子)として活動していたが、ラジオ東京近くの公園で死体が見つかったことを知ると、「私が殺したかのかもしれない」と話すのだった。 本作は、名探偵・法月綸太郎の再生の物語ともいえる。自分の母親が起こしたと思われる過去の事件に傷つき、心を閉ざしていく中山美和子の再生の過程に西村頼子事件で、法月綸太郎は精神的ダメージを引きずっている。それ故か本書は、それほどトリッキーなものにはなっていない。ある程度情報が出そろった時点で、それらを材料に真実らしい推理を組み立てるが、その直後にその推理を打ち砕く新情報がもたらされ、事件は混迷の度合いを深めていくといういパターンを何度も繰り返す。 無理筋のトリックは、このシチュエーションだからこそ成立するかもというようなものだが、本書のポイントはパズラーの部分ではなく名探偵・法月綸太郎の再生の過程が主題なので、あまり気にしない方がよいかも知れない。 |
No.12 | 6点 | 赤い部屋異聞- 法月綸太郎 | 2022/04/18 08:32 |
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江戸川乱歩の「赤い部屋」のオマージュ作品である表題作の「赤い部屋異聞」をはじめ、日本や海外の古典作にオマージュを捧げた9編からなる短編集。
オマージュといっても、ストーリー展開を踏襲しつつ最後のオチにオリジナル要素を加えたもの、ミステリ的なアイデアから着想を得て物語を作り上げたものなど、元ネタとのシンクロ度合いはそれぞれ異なる。怪談めいた作品もあれば、SFっぽい作品もあり、さまざまな味わいを楽しむことが出来る。 オマージュ元の作品を先に読んんでいた方が、どのようにアレンジされているのかが分かってより楽しめると思いますが、それぞれの元作品が有名作品といえるものではないので、あまり気にしなくてもいいかもしれません。 あとがきで自作解説をしていますが、制作過程や苦心したエピソードが書かれており、これを読むだけでも満足感が得られる。 ベストは読後の余韻が戦慄的な「葬式がえり」、次点で立て続けに事態の構図を反転させる「続・夢判断」。 |
No.11 | 5点 | 法月綸太郎の消息- 法月綸太郎 | 2021/05/07 08:58 |
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「白面のたてがみ」と「カーテンコール」は、ドイルとクリスティーという偉大な先人の作品に法月綸太郎が切り込む、小説の小説というべき作品。表面には浮かび上がってこない作品の真意が、彼らの作品のあるものに隠されている可能性があると綸太郎は睨む。そして原作を精読し、行間から浮かび上がる真実を捕まえようとする。彼の到達した結論が正しいか否かはあまり問題ではなく、読むという行為がいかに創造的になりうるかを改めて認識させるのが、この2作品の価値でしょう。目の付け所は評価したいし、考察に興味のある方は楽しめると思いますが、このような事に興味のないような自分にとっては、退屈で仕方がなかった。
残りの「あべこべの遺書」と「殺さぬ先の自首」は、帰宅した法月警視から推理作家で息子の綸太郎が話を聞き、事件の真相を推理する形といういつものパターンで悪くは無いのだが切れ味は今ひとつ。 |
No.10 | 5点 | しらみつぶしの時計- 法月綸太郎 | 2020/10/07 09:23 |
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名探偵・法月綸太郎が登場しない9編と名探偵・法月「林」太郎が登場する1編の計10編からなるノンシリーズの短編集。
捻くれた密室もので脱力系の「使用中」、ダメ人間が奇妙な交換殺人を目論む「ダブル・プレイ」、ブラックな味わいで笑える「素人芸」、秀逸なロジックが味わえる頭の体操的パズル小説の「盗まれた手紙」、サスペンス風に展開しておきながら、異様なロジックでオチはダジャレネタという表題作の「しらみつぶしの時計」、切なくて哀しい叙情的な青春ミステリの「トゥ・オブ・アス」は佳作~秀作。ベストは「盗まれた手紙」。 「四色問題」と「幽霊をやとった女」は過去の名作のパスティーシュ。バレバレのネタなのでミステリとしての出来は今ひとつ。「イン・メモリアム」と「猫の巡礼」は幻想小説?ミステリとはいえない、または弱いと思う。 |
No.9 | 5点 | 密閉教室- 法月綸太郎 | 2020/07/27 09:40 |
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作者のデビュー作。シリーズ探偵である作者と同姓同名の法月綸太郎は登場しない。
ある朝、女生徒が学校に来ると、教室でクラスメートが倒れており死亡が確認された。さらに、あるはずの机と椅子が全て消失していた。不可解な状況の謎を、ロジカルに解明していく本格推理小説であり、青春小説でもある。 自殺なのか他殺なのか、密室の謎、机と椅子の消失と提示された謎は魅力的。真相を突き止めるために、ミステリマニアのクラスメイトが推理していく。中盤までは、オーソドックスな推理小説を読んでいる感じで進むが、終盤になると作者らしい?捻くれた展開になり楽しい。 真相が明らかになった時、現実的ではないとは思いながらも、納得できる部分もあり、まずまずといったところ。 ただ、無駄な描写が多く、文章がぎこちない。プロットも洗練されていないので、点数はこの程度か。 |
No.8 | 6点 | 法月綸太郎の新冒険- 法月綸太郎 | 2018/05/09 01:15 |
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パズル・ロジックを重きをおいた作品ばかりで、さすが短編の名手と言われているだけあって切れ味が鋭い。
その中でも一つの事件からガラリと反転する「背信の交点」と語りの仕掛けとトリックが噛み合った「身投げ女のブルース」が好み。 ただ、登場人物に魅力が欠ける点と、ストーリー自体が地味な作品が多いため、パズル好き以外にはお勧めできない。 |
No.7 | 4点 | 二の悲劇- 法月綸太郎 | 2017/05/17 01:11 |
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ノスタルジックな恋愛小説をミステリ風味に仕立ててみましたというような感じの作品
内向的な乙女の様々な葛藤がもどかしく語られた純愛小説でどうも肌に合わなかった ある真相は意外性があるがトリックやフーダニットで楽しむ事は難しいと思う 二人称叙述という変わった手法を用いており終盤に至るための語りとしては非常に有効的だったという点は評価出来る |
No.6 | 6点 | キングを探せ- 法月綸太郎 | 2016/08/29 19:05 |
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今まで繋がりの無かった者同士がある場所で出会い四重交換殺人を目論む
ネット上での闇サイトで出会うなら理解できるが「よくぞこんな場所で」というツッコミどころはある 導入部は倒叙形式でサスペンスタッチで描かれている 次々と起こる不測の事態に探偵役と犯人共々翻弄されていくところが読みどころ 騙し合いのコンゲーム要素も楽しめる 良く出来ているが地味な印象は否めない |
No.5 | 5点 | 頼子のために- 法月綸太郎 | 2016/04/04 18:36 |
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冒頭の手記の微妙な違和感から驚愕の真相にたどり着く
深刻な家庭の悲劇が暗鬱した雰囲気で描かれている 虚像に支配された人間が歪んだ論理のまま突き進んでいく 犯人の気持ちは全く理解できない 歪んだ愛の物語で読後感は悪い |
No.4 | 5点 | 怪盗グリフィン、絶体絶命- 法月綸太郎 | 2016/03/07 13:59 |
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児童向けの冒険活劇小説
児童向けなので仕方ないのだが平仮名が多く 漢字にはすべてふり仮名がふってあり逆に読みにくい 内容的には小学生対象では少し難しいと思うし かといって大人が楽しめるかというと疑問が残る |
No.3 | 6点 | 法月綸太郎の冒険- 法月綸太郎 | 2016/02/29 01:09 |
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収録されている七編は本格謎解き・安楽椅子探偵・図書館を
舞台にした軽パズラーなど多岐にわたっている 全体的に地味ではあるがトリッキーな論理展開が楽しめる ただ図書館シリーズは自分には軽すぎました 巻頭に正統派パズラーそして後半に同一シリーズの 軽い短編を配置する構成となっている |
No.2 | 8点 | 一の悲劇- 法月綸太郎 | 2016/02/22 19:05 |
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複雑な人間関係が絡み合う誘拐殺人事件
ほとんどの登場人物を一度は容疑者へと 浮かび上がらせるプロットはワクワクさせてくれる 秘密を抱えた男の視点で物語は語られ 終始張りつめられた緊張感に包まれている 展開も二転三転し明らかにされるトリックも衝撃的 不満な点はダイイングメッセージ あの解釈は強引すぎるし普通誰も気づかないでしょう |
No.1 | 7点 | 法月綸太郎の功績- 法月綸太郎 | 2016/02/17 21:44 |
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人間関係を入れ替え置き換えて別のパターンを見出していく
謎を解決するというよりも事件の構図を どんどん変形させていく過程の面白さが楽しめる短編集 |