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了然和尚さん
平均点: 5.53点 書評数: 116件

プロフィール高評価と近い人書評おすすめ

No.15 4点 騎士の盃- カーター・ディクスン 2016/05/19 19:33
HM卿最後の作品です。全く最後っぽくないです。前作同様殺人事件のない笑劇で、少しオカルトや歴史的味がつい多分、冒険やスポーツ要素がなくなり、本格構成も苦しいものとなってます。
全体によく分からない作品でした。

No.14 4点 赤い鎧戸のかげで- カーター・ディクスン 2016/05/19 19:30
HM卿事件簿もあと2作です。次も読んでますので、まとめて言いますと本格ではあるが、事件が軽い(殺人でもオカルトでもない)ので、読後がっかりです。本作は怪盗は誰かという笑劇冒険譚でした。あまり集中して読めなかったのですが、本格ものとして手がかりが振られ、最後に回収されています。スポーツネタは過去2作と続いて野球→テニス→ボクシングときましたか。

No.13 5点 魔女が笑う夜- カーター・ディクスン 2016/03/31 20:02
カーのパズル小説としては最低レベルでした。ピースも組み立て方も出来上がった絵も特に印象に残りません。HM得意のドタバタ劇が本作では序盤とクライマックスと2回読めます。なんかドタバタ劇に関しては手抜きなしな感じで力が入ってます。HMものはこの後2作となってしまいましたが、紹介文を読めば、2作ともドタバタが楽しめるようです。実は大昔に両方読んでるのですが、内容はすっかり忘れてます。

No.12 5点 墓場貸します- カーター・ディクスン 2016/03/22 10:00
人間消失ものですが、騙される人3人、騙す人3人というがっかりなトリックです。ネタのヒントを提示したり(いつものドタバタで)、別解を用意したり、奥行きは出しているのですが、肝心の犯人(被害者?)の行動の必然性がイマイチでした。
次作「魔女が笑う夜」を読み始めましたが、冒頭でテニスの試合に関する細かい描写があるのですが、本作では野球に関してかなりページが割かれています。何か、本編のトリックと関係があるのかと思い、HMの打ったホームランボールが被害者に当たって、はずみでナイフが刺さったという空想をしてしまいました。

No.11 5点 時計の中の骸骨- カーター・ディクスン 2015/12/28 16:59
カーの作品は30年くらい前にほぼ全部一回は読んでいるのですが、本書は初読。あらためて書かれた順番で読んできましたが、本作は初期の頃のスタンダードなカーの雰囲気に戻った感じですね。で、内容は平凡なので、結果としてぼちぼちな感じです。
本作は、自分には意外な犯人でした。ネタバレで書きますが、子供が犯人であるというのは、あの有名作品の専売特許かと思っていたので、カーにもあったというのが驚きでした。あとがきで書いてあったのですが、この犯人は「曲がった蝶番」の変形で(どっかでクリスティーが先にやられたと言ったとか書いてたっけ)カーとしては自慢のトリックだろうと思います。
その落下トリックですが、冷静に考えるとむこうずねの裏を殴られて前に倒れるか後ろに倒れるかが1/2のような気もしますが、痛そうなので実験する気にはなりませんね。
本作は前半の内容であれば、犯人は死刑部屋に閉じ込められたアリバイの完璧な男で、ちゃんと血の付いた剣で時間トリックもはってあり、共犯らしき女性の行為も出てきます。この燻製にしんに比べると、過去の事件はトリッキーですが現在の事件があまりにも意味不明なので、全体にまとまりがなくなってます。


No.10 6点 青ひげの花嫁- カーター・ディクスン 2015/11/30 15:36
まず11年前の殺人鬼と不可能犯罪が語られて、現在においてさあ、殺人鬼は誰でしょう?という趣向は、良かったし、犯人を演じる役者(終始、燻製にしん)というのもはまっていたので、7点ものだったのですが、読書後、整理してみると、そもそもの発端である殺人鬼が自伝台本を役者に送るあたりの心情とか必然性が不明で、マイナス1点でした。
 H.Mは本作でもゲーセンでクレーンゲームにパンチバッグぶつけるなど大活躍ですが、肝心の推理では、最終盤に妙な活劇を物陰でじっと見つめているだけで、イマイチでした。
 本編ではないのですが、あとがきにて翻訳者さんが、歴史上の殺人者を小辞典並みに解説されてますので、参考までに名前だけでも上げておきます。
ランドリュー、スミス(浴室の花嫁)、ドゥーガル、ソーン、ディーミング、マニング夫妻、グロスマン。なお、切り裂きジャック、クリッペン この2名は有名すぎるので省略されてます

No.9 8点 青銅ランプの呪- カーター・ディクスン 2015/11/15 02:26
巨匠の作品で、おそらく自分の読書人生で、二度とはない作品パターンと評価して8点。今年の新人作家の作品でしたとかで読まされてたら、迷うことなく1点。
このサイトではネタバレありですが、それでもこの結末は書くことを控えておきます。
(長編でありながら、短編的結末というのが評価を分けるでしょうね)
そもそも推理小説では思わせぶりなセリフや場面は多いものなのですが、本作は特に中途半端な雰囲気が多く、読んでいてイライラしました。それが見事にマスターズの気持ちとシンクロし、H.Mが失踪後に呑気に現れた時にマスターズが鋭利な彫刻用のナイフを掴みかけたというのは、笑えすぎました。

本作で、初めて「クイーン談話室」という本のことを知りましたので、早速、中古本で発注しました。

No.8 6点 爬虫類館の殺人- カーター・ディクスン 2015/09/12 19:51
数十年ぶりの再読ですが、密室のトリックはピンときました。この今でも2時間ドラマで出てきそうなネタも先生の発案でしたか。それでも、犯人は絞りきれなかったのでさすがです。(動機が金なのも明白なのですが) 最後の章で、「どうや、犯人は娘かおじさんかドクターかと思ったやろ」と書かれて、まいりましたという感じです。
 真犯人ですが、重要な役割の犯人の夫の方が、みごとに消えすぎていて影しかなく(いや、影薄すぎませんか)え、って感じであっけなかったです。共犯であるにせよないにせよ、もうすこし露出してくれれば読後感が良かったと思います。
 H.Mの拷問に近い強制自白(あるいは、仕返し)という結末に+1点。

No.7 7点 貴婦人として死す- カーター・ディクスン 2015/08/05 21:49
ちょっと地味な内容かと思いましたが、作品としてよくまとまってました。第二、第三の殺人が組み込まれてもおかしくない構成なのですが、最初の事件だけにすることで、結末を(またもや超法規的、人情的な決着)盛り上げています。「王立美術院会員ポール・フェラーズによって書かれた補足と結末」と唯一タイトルが付けられた1ページのインパクトは最高の効果を上げていました。確かに本書は他の人に勧めたい一冊ですね。

No.6 6点 仮面荘の怪事件- カーター・ディクスン 2015/06/27 08:36
チェスタートンの短編っぽい内容でしたが、短編の再構成だとは知りませんでした。泥棒が行動する場面で叙述トリックが使われています。カーはトリックの内容が注目されることが多いですが、表現の工夫も素晴らしいです。比較的単純な被害者と加害者の入れ替えですが、この泥棒の行動表現がよく効いています。

No.5 6点 殺人者と恐喝者- カーター・ディクスン 2015/06/14 09:21
この翻訳タイトルはやっぱり反則ですね。タイトルと本文1行目で全てがわかってしまいますよ。今回は初読なのでまあいいのですが、10年、20年後に再読した時に「あ。これか」って感じになりそうです。再読時に備えてカバーとタイトルのページは破り捨てておこうと思います。 文庫本の麻耶雄嵩氏の解説は良かったですね。「カーが単独犯に拘る」とか犯人の印象の消し方は、なるほどという感じでした。それにしても、カーの作品で使われるトリックは空間認識が必要ですよね。私は数学でも幾何的なものは苦手だったので、どうも読んでいるだけでは、場面が浮かびにくく、本作でも改めて最初から読み直して問題の部屋や窓を書き出してみましたが、うーん。。。 「震えない男」では、落書きのような簡単な平面図が実に重要な図面で驚きました。「アラビアンナイトの殺人」では、複雑すぎて理解不能でしたが、たまたま見つけた英語の原書には詳しい平面図が付いていて、細かな設定の作り込みに改めて感動しました。他にも翻訳時に省略されていることがあるとするなら残念です。以後カーを読む時は間取りとかをこまめにメモしながら読まねば。

No.4 6点 九人と死で十人だ- カーター・ディクスン 2015/05/11 23:36
本作の良い点、悪い点は他の方が書かれている通りと同感します。それで、本作の指紋トリックについてですが、本当に可能か入浴前に実験してみました。シャチハタでまず、普通に指紋をスタンプした後、さらに強くスタンプ台に押し付けて、ティッシュで軽く拭いた後押してみましたが、ぼやけただけで、別指紋は無理でした。そもそも、個人差かもしれませんが、溝がそんなに深くないので、溝だけで形をとるのは無理です。また、よく考えてみたら、ネガポジ関係と違い、山と谷なので、似たような模様になりそうな気がしますが。

No.3 4点 かくして殺人へ- カーター・ディクスン 2015/04/25 18:16
最初に動機なく狙われる事件が続けば、真の目的は別の殺人というのはパターンすぎます。但し、真のターゲットはちょっとひねってます。それでも、全体に平凡でした。本格の手がかりもカーにしては不明確でした。メイントリックの吸いかけタバコの取り換えは面白くはあるが、詰めが不足しているように感じます。口紅ついてないか?とか、毒タバコにどうやって火をつけて長さを調整したかとか。どっかのテレビサスペンスでパクリが出そうな面白い着想ですが。

No.2 7点 読者よ欺かるるなかれ- カーター・ディクスン 2015/03/28 11:20
本作品の骨格部分を検討すると、Aが過失によりBを殺してしまう。Xは犯人がAであることに気がつくが、Cを同じ方法で殺害することを目論む。Xは先に口封じでAを殺害し、Cを殺害(未遂)する。連続殺人であり口封じの殺人というありふれたモチーフが見事にアレンジされています。この骨格に怪奇趣味や不可能犯罪を組み入れて完全な作品になってます。手がかりはよく示されており、別解を消去すべく、おせっかいなまでな注意書きもついていて丁寧です。

No.1 8点 五つの箱の死- カーター・ディクスン 2015/02/11 00:39
一年に一回ぐらいはテレビの犯罪もので目にする、あの毒殺トリックはこのカーの作品が最初のようです。乱歩の類別トリック集成にも選ばれていました。
 偶発的な出来事が多いとはいえ、すべての手がかりが示され、意外な犯人を推理可能な本格物でした。
 毒を仕込む機会を考えると、別の人物が必然的に怪しくなるのですが、その線を丁寧に消しているのは、カーらしいと思いました。

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了然和尚さん
ひとこと
本格ミステリーを中心に研究しています。
古典のビッグ4である クリスティ、クイーン、かー、クロフツを再読を含めて全部読破が目標です。

「気ちがいじゃが仕方がない。」
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採点傾向
平均点: 5.53点   採点数: 116件
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