海外/国内ミステリ小説の投稿型書評サイト
皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止 していません。ご注意を!

クリスティ再読さん
平均点: 6.40点 書評数: 1378件

プロフィール高評価と近い人書評おすすめ

No.2 8点 サン・フォリアン寺院の首吊人- ジョルジュ・シムノン 2017/01/29 22:09
本作は特に日本人好みのせいか、いろいろと影響絶大な作品なんだけど、あれ、昔角川文庫で出てたっきりで、現在入手困難な本みたいだ...これ本当にもったいないよ。シムノンはファンは厚いから、数がハケて損しないと思うんだけどな(角川の水谷準の訳は格調も高く、読みやすいイイ訳だが、論創社から新訳で出るうわさがあるようだ)。
影響は、というと乱歩はこれを翻案して「幽鬼の塔」にしているし、本作の冒頭を角田喜久雄は複数作品でパクってるし...で近いところだと「マークスの山」が本作をイタダキしていて鼻白んだオボエがある。そのくらい日本人好みの、「無残な青春」の話である。
がまあ、今の若い人が読めば「黒歴史」な話でもある...昔っからこういうの、あるんだよ。まあ評者だとわが身を顧みてあまり他人様のこと言えない立場にあるから、まさに身の置き場もないな。本作の一番悲惨な自殺者のように、恐喝した金を一銭も使わずすべて燃やし尽くして、元の仲間を夢に強引に縛り付けようとする...そういう立場にはならずに済んだことを、感謝したいくらいのものである。
そんな無残な夢のかたみに。

No.1 8点 メグレのバカンス- ジョルジュ・シムノン 2015/08/29 22:34
ベストテン選びとかは、メグレ物には極めて縁遠いものなのだが、評者はメグレ物の中で一番好きなのがこの作品だ。

タイトル通りバカンスに出かけたメグレ夫妻。メグレ夫人の旅先での急な入院をきっかけに、半ば巻き込まれるようにメグレが旅先での事件に介入して...という話だが、まあ犯人らしい人物はただ一人で、フーダニット的な色はまったくないが、事件の背景が明らかになるのが最終盤で、そこで話が一気につながっていく快感が○。

また、メグレは自分の推理を語らないので、結果的に(未来の)「被害者を探せ!」になっている箇所があるが、この作品の最大のポイントは、犯人が自分から連続殺人を「降りて」しまうところなのである(そのためメグレが見つけた推定被害者は最大のウラ事情をメグレに話す)。

シムノンの一番イイところというのは、たとえ連続殺人の犯人であっても、鉄の如き非情の神経を持った殺人鬼ではなくて、当たり前の人間の繊細な神経をもち、恐れ惑いながら必死に抗う普通の人間だ、というところなんだよね。どちらか言えば一番非情な犯人の職業として選ばれがちな「医者」で、しかもそれらしいキャラであるにも関わらず、この犯人は殺人が殺人を呼び止められなくなることを理解し、途中で不毛な連続殺人を自ら止める。だからどちらか言えば「小説的でない」結末を迎えるのだが、それでもしっかりと「小説を読んだ」満足感があるのが、シムノン独特の円熟の味だ。類型的ではないオリジナルな良さのある作品。すばらしい。

キーワードから探す
クリスティ再読さん
ひとこと
大人になってからは、母に「あんたの買ってくる本は難しくて..」となかなか一緒に楽しめる本がなかったのですが、クリスティだけは例外でした。その母も先年亡くなりました。

母の記憶のために...

...
好きな作家
クリスティ、チャンドラー、J=P.マンシェット、ライオネル・デヴィッドスン、小栗虫...
採点傾向
平均点: 6.40点   採点数: 1378件
採点の多い作家(TOP10)
ジョルジュ・シムノン(102)
アガサ・クリスティー(97)
エラリイ・クイーン(47)
ジョン・ディクスン・カー(32)
ボアロー&ナルスジャック(26)
ロス・マクドナルド(26)
アンドリュウ・ガーヴ(21)
ウィリアム・P・マッギヴァーン(17)
エリック・アンブラー(17)
アーサー・コナン・ドイル(16)