皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
していません。ご注意を!
斎藤警部さん |
|
---|---|
平均点: 6.70点 | 書評数: 1303件 |
No.36 | 5点 | UFO大通り- 島田荘司 | 2024/04/24 23:44 |
---|---|---|---|
UFO大通り
不可解興味がいまいち薄い。不可能興味など認められない。人間関係の落とし前とか何処へすっ飛んでったん? そこ読みたかったんだけどなー。。 あらすじとか書く気も失せまする。規模感の面白みすら無いバカバカ真相に、大枠も細部もバランス悪いグラグラ感。時にはそういうダメダメ遊びの日もあって良い。まして島荘の文章ならそこそこ許セタ。昔、セタセン(世田谷線)の特性を生かしたアリバイトリック考案したって言ってた友人を思い出しました。 2点強。 傘を折る女 表題作よりこっちがズズンと良い。夜中の公道で謎の行動を見せた謎の美女の目撃談から、やがて●●(?)殺人事件の実に込み入った真相が暴き出される。不可解興味が後に進むにつれ爆増しになる構造は誠にマーヴェラス。純粋理性推理部分のスリルと、犯罪実況パートに於ける直接心理描写爆裂のサスペンス。両者のスパンを取ったカットバックが最高。最後の最後まで、歯磨きチューブを絞り上げるに抗うが如く、魅力ある謎要素がしぶとく残留。 そこに□□が記してあったのか..!! んでやっぱちょっとバカなアレもあったけど、味わいのうち。 女とか男とか。。 仮に本作を普通の本格ミステリ仕様で仕立てたとしても、真相解明部分はさぞかしスリリングだったろうなと思わせるが、この犯人視線パートを挟む事によってこそ生じた或る大きな謎と不可解/不可能興味の牽引力はやはり格別。 序盤「9マイル」のふやけたパラフレーズかと危惧を弄んでいたら、ま~~るで違いました。 「ま、そうなりますな。ここにはイソップ型の教訓がある。」 7点。 ◆◆最後に、ぼかして書いても構造的ネタバレ◆◆ 二作とも或る○○学的キーワードで共通しているが、片方は「そもそもの発端」事象、片方は何気に付随的事象と、その位置づけを違えているのが実によろしい、上手いと思います。 |
No.35 | 8点 | Pの密室- 島田荘司 | 2023/09/04 12:40 |
---|---|---|---|
【鈴蘭事件】
被害者は学生街のバー経営者。 幼い御手洗潔が、悪の醜さを遥かに超えた、この世の恐るべき暗黒と出遭った物語。 「ぼうや、ありがとうよ(中略) 大きくなっても女には気をつけて、おじさんみたいにはなるなよ」 ●トリック(×2?)成功・・ 予想外の深みへ落とされ、もがきました。 過去(御手洗潔幼少時)と現在(御手洗潔不在)のカットバック構成が効いている。重要な脇役の存在良し。中盤のサスペンス展開良し。 最後の、言葉をよく選んだ台詞も、光を含んでじんわりと沁み渡ります。 この物語には大小織り混ぜ◯つの謎がある、などといい気で整理したつもりになっていたら、その中で一番大きな謎こそが、更に巨大な謎を視界から遮断していたとはな。。●トリック趣向そのものがデコイという構造か。。この◯◯◯像は、◯◯◯◯堂々と目の前に晒されていたにも関わらず、まるで眼中に無かったよ。。 しっかし酷い動機・・マザーファッカー・・・・ 違和感あるのは、いくらストーリー上の事情ありとは言え、アレした理由に誰も思い当たらないって(当時でも)あり得るか?・・ってのと、もひとつ、ある証拠物件を平らに均したら元が何だか分からなくなった、ってそれ当時の素人でも結構ピンと来るんじゃ。。 などとケチ付ける点はあるものの、御手洗潔ファンブック小説の様相をガッツリと見せつつ、そのど真ん中に見事な本格ミステリ豪速球を投げ込んだ本作、打ち取られた私は大いに満足。 「幼少時の事件である必然性」の核心部分が泣かせます。 【Pの密室】 被害者は著名な画家とその愛人。 ◯◯◯◯は一人だけじゃなかった(その前提でないと、リアリティ大きく損なう所がある・・)、という哀切極まりない物語。 不可能犯罪興味はともかく、不可解犯罪興味の訴求力が凄まじく熱い。 あからさまな数学要素が真相にどう連関するのかと思えば、、ここまで有機的に結束していたか!! 幻想的に、一部数学的に、美しくも残酷なビジュアルイメージの某シーンは本作一方の主役であろう。 或る偽装トリック実行に弾みを付けた「心情」よ。。。。 「才能ってのは電気みたいに●●駆けあがってくるからすぐ解る」 本作もやはり、「鈴蘭事件」とはまた別種の、御手洗幼少の頃の犯罪物語である必然性があった。 物理トリック説明文の比率が異様に高いにも関わらず、この押し寄せて止まない心理葛藤の大波よ。 とどめは、この、松本清張流儀のエンディング。。。。よくやった、島荘。。。。。。。。(涙) |
No.34 | 6点 | 御手洗潔のメロディ- 島田荘司 | 2022/10/31 13:38 |
---|---|---|---|
IgE
バカロジック、バカ真相に唐突な科学社会派演説。ちょっとセコいトコもあるけど、まぁ悪かない。 SIVAD SELIM 石岡が思いっきりふさぎ込んだ後、最後、一気に飛翔する美しい音楽ファンタジー。タイトルの分かり易さは、わざとですね。 ボストン幽霊絵画事件 逆トリック?からの家族の悲劇×心理的物理トリック? 小味な展開からドラマチックな結末へ。哀しみに化けたユーモアと、最初っから哀しいユーモア発露の掛け合わせ。 さらば遠い輝き レッツゴー近況報告。レオナが女性受けするようになった契機の作とか。そうであろうよ。ほんの微かでいいから、ミステリ要素の薫りが欲しかったかな。 ミステリ/非ミステリにこだわらない事にこだわった、というわけでなく、いい意味の寄せ集めでこうなった、という経緯の短篇集のようですね。 結果、ファンブックのような一冊に。 |
No.33 | 7点 | ロシア幽霊軍艦事件- 島田荘司 | 2022/07/18 23:25 |
---|---|---|---|
革命史ミステリ、医学ミステリ、感動を呼ぶ◯◯ミステリ。 ここまで時空を超えた巨大な謎を、堂々の物理的物理大トリックで!! これほどの歴史恋愛人情ドラマを、こんな豪腕大胆トリックの渦中に放り込んで。。!! 核心となる長い長い事象は、前後する時系列で繋ぎ合わされ、様々な視点で語られる。だからこそ「エピローグ」はまるっと読者の想像まかせでよろしいのでは?とも(前半が冗長に感じ)思ってみたが、やはりそれまでの物語「空白」部分がそこで埋められたからこそ、ベルリンでの件がより切実に、米国での件も重みと迫真性とを増して感じられるのだな。。おかげで(途中までちょっとばかり危ぶまれた)アンチクライマックスも回避された。 そのくせ、全体通してミステリとしては大作というより小味によく纏まったコンパクト作品という感覚。不思議だね。 小道具 ”ブラシ” の小粋なトリックには感心。 著者あとがきの、本作を著した米国でのきっかけ、ははーんと思いましたね。 |
No.32 | 7点 | ネジ式ザゼツキー- 島田荘司 | 2021/07/21 23:23 |
---|---|---|---|
螺旋が、物理的に心理の大罪を犯した話。 “私は、このセリフを言いたかったのだ。うっかり言わないで、この世界を去るところだった。” ファンタジーのドレスを纏い、自由奔放過ぎるが要所でクイーン張りに論理の閃きで崩しに掛かる御手洗。目を覆わんばかりだった奇想の群舞も折り目正しく着地。音楽の力がシビアに威力を発揮するシーンは強力だ。 死体にネジを嵌めた理由、見事な隠匿ぶり。「首を斬る理由」の凄い応用編、巧妙な広域目眩し付き。 或る人物の職業遍歴に微妙な唐突感があったのは、その、どこか笑ってしまうトリックのためだったのか。。 或る人物の正体バラシはもう少し勿体ぶってというか、重みを持たせても良かったんじゃないか。。? 或る人物の、告白に至る条件と経緯、これが熱い。。。そこがこの物語成立の肝なわけだ。。
最終地点へ近づくにつれ、じわじわ小波で押し寄せる感動と、やっぱり出て来たバカ要素への苦笑との、小さなせめぎ合いが。。外連味たっぷりの構成で壮大なバックグラウンドを匂わせつつ、終わってみれば当初の予感よりこじんまりとした収束。。ハナッカら大風呂敷を拡げなければ。。という気もしたが、んーー、それだとこの不可解な事件の猟奇性とバランス取りづらいよな。 出来れば、もっとスケールの大きいバカと感動のアウフヘーベン体験の渦の中に投げ込んで欲しかったものです(島荘さんなら出来る!)。 でもまあ、この人の作品世界はやっぱり特別に好きですよ。異物感無くスゥッとはまれます。 ビートルズの歌詞の記憶の件は、まあ装飾ですよね。これがたまたま、たとえばキンクスの「ローラ」だったらどんな不思議な童話が生まれたものかと妄想したりして。。 ところでスペース◯◯◯◯のアレはどうなったんだっけ? あのへん、一番あがる推理だったのに。。。 あとまあ、途中危惧したほどレペゼン反日でもなくてほっとしました。 ちょっと意味不明なタイトルが実は、、という大胆さにも拍手です!(つげさんは関係無かった) にしても、陰の主役、キーマンは天災か。。。(そいつが●●に運命のいたずらを。。) |
No.31 | 7点 | 天に昇った男- 島田荘司 | 2021/01/21 18:40 |
---|---|---|---|
赤い公園の「108」曲想を彷彿とさせる、時系列行ったり来たりの複雑な一筆書きを一気に書き切ったような疾走作。短篇でなく、長~い長篇でもなく、中篇に近い短めの長篇だからこそ活きる、このエンドでしょう。しかしこんな渋い主題の作でも微妙にバカな偽装トリックを持って来るなど、流石はしまそうです。 こういう内容の●を●●って事は、つまり、主人公の心の奥底に。。。。 というもう一つのどんでん返しも含んでいるわけか。。残酷だ。。 しかし(作者本人も語る)死刑に関する問題提起方向の押しはさほど感じられなかったです。 |
No.30 | 9点 | アトポス- 島田荘司 | 2020/07/20 18:10 |
---|---|---|---|
ベイビイ、流石にやり過ぎだ! デカ過ぎる! 次もまた頼む!
「きっと同じこと、やると思う」 巨大なミスディレクション、ありましたねえ。 何しろ、イスラエル。。。 周到な、或る種の叙述欺瞞(大胆伏線、思いも寄りませんでした)もあった。。すげえなあこれ。 「だから、君はやれ!」 「了解!」 分かり易い構成の妙に包まれて抜群の面白さながらも、それだけに大バカ結末の雪崩打ちで締めるのかと半ば覚悟していたら、そんな事は無かった。。。。(??) 決して一点に収束しない或る種のリアリズム溢れ落ちる悩ましい結末。そして希望はじけ飛ぶ、涙のエンド。 (( 薬のせいにし過ぎだろ、って感じる所もあるにはあったが。。。 )) “こう言った時私は、殺せる、と確認した。大丈夫だ。私は奴を殺せるぞ。” 本篇(?)部分、スピード,グルー&シンキの聴こえて来るシーンがモザイクの様に現れては去りを繰り返します。 キヨシ登場の遅さとその機敏は鮎川さんへのオマージュかと疼くレベルでした。 読み返せば、実は冒頭シーンこそ激烈にヤバイんだっつうね。。 流石だ、マイベイビイ島荘。 |
No.29 | 7点 | 幽体離脱殺人事件- 島田荘司 | 2019/12/26 11:23 |
---|---|---|---|
“女の問題は、単純な理屈では割り切れない。あらゆる把握解決法が複雑に絡み合った化合物のようなものだ”
ゆきずりの友情を守り抜く話。と書くとまるで(題名にそぐわぬ)ハードボイルド調みたいだが、、こんなドタクタ嫌ミスに加賀、じゃなかった吉敷を当てましたか。もしや元祖トラベルイヤミスですか。評判悪いのは納得で、私は嫌いじゃありません。この、ほど心地良い狂気の轍に浮かぶ時折の演説のくすぐり、しまそうならではのざらつく撫で付けにうっとりします。掴みっから強烈過ぎて、運が悪けりゃ撃沈する裏表紙あらすじ一言もチェゲラでけへんです。 しっかしずいぶん意外な展開を意外なバランスで見せるもんだな。そしてそこに、表題の持つ方向知れずの痛い圧力が。。見え隠れ、、奇妙に後ろのめりの遅いタイミングで待っていたのは本格推理の落とし前。挙句まさかのドタバタ終結に急襲されるまさかの吉敷(男のファン減らしたかな)。泣けたり何なりで忙しく満ち足りた終章。(終章の晒し表題がそそるのよね) 森誠先輩の大演説癖には苦笑するのが愉しいが、しまそう先輩の演説は素敵にくすぐってくれる。 メインのトリックはありきたりであからさまだが、しまそうの筆致に翻弄されてから明かされると、面白く豪快に思える。 しかしバランス悪い小説だね。 “私はついにそうつぶやいた” |
No.28 | 7点 | 見えない女- 島田荘司 | 2019/02/16 18:16 |
---|---|---|---|
異国旅情の三篇。 割とファン向け。 インドネシアの恋唄 かの国の三十五年前だから最早歴史スケッチ。そういや本篇のキーパーソン早見優ちゃんも四十路記念ベストアルバム『不惑優』からもう十+α年か。。そんなアルバム出してないけど。 見えない女 こ、これぞ、心理的大物理バカトリック。。。。でも物語の情緒に呑み込まれちゃってるな。そこがまたいい。 一人で食事をする女 サスペンスフルな旅情と旅先の謎多き女スケッチから入り(このへん他二篇より濃密)、風景と歴史への陶酔をひと舐め大旋回した後、やっと謎の堆積へ戻り来る。。。 最後になって何気にまさかのバカ動機というかバカホヮットダニットに収斂したのは如何せん。。 ところがだ、最後の最後、あの涙のシーンですべてが危ういバランスの上の綺麗なセンティメンタル・ストーリーに収まった。拍手を。 ファンサービス風とは言えファンはファンでもしまそうのファン向けだけあって、それなりに意外で軽ショッキングな、異国ならではの背景を最後に露出する作品が並びます。 こんなラグジュアリーな箸休めも時に素晴らしかろう。 |
No.27 | 7点 | 水晶のピラミッド- 島田荘司 | 2018/08/10 12:23 |
---|---|---|---|
「あなたには、トリックをゆっくり煮詰める時間が無かった。」
不格好で不完全、諦観ロマン溢れる、見上げても見渡せない、造りの大きなミステリ建造物。 敢えてのダミー解決に切実な意味があった(●●●●●●●のための方便だった)ってのは立派。 どっかで聞いたような名前のジンガイ(魔境じゃないほう)がいっぱい出て来るのも魅力。 『なんとか屋敷』とのシマダ相似があまりに露骨過ぎて心の万年回転ベッドが軋んだ。言わば『斜めなんとか』の断面図を螺旋状に切り込ませてみたような。。って原理から全然違うんですけどね。なんとなく、イメージってやつが。 余分と言われがちな『古代エジプト』『タイタニック』部分は、ストーリー伏線とトリック誤誘導との素敵なミクスチュア。ピラミッドの構造であったり、水が移動する過程であったり、人と人とのつながりだったり。。 ただ、あの『化け物』はなあ。。。 これ言うとネタバレですけど、いかにも島荘魂の大トリックがダミー水域に没したのは。。。。やっぱ彼のある程度長い読者ならどうしたって、細かい事は置いといて、そのあたりのなんかのアレだろと、勘付かれる、まして本作の頃の人気作家島荘にはテンション下げずのチェンジオヴペース(微妙に早いのが肝腎)がそろそろ必要だったのか。。って事情もありましょうか。それにしても、あっさりあのトリックは不可能って、早くもアンチミステリならぬアンチバカミスの意思表示ってってことですか?いくらデカイからって原理は同じだろ、とつい前提考えずはまり込んでしまう素人の憶測に一撃喰らわしてもらったのは痛快です。んで逆バカトリックの効力はやはり『エジプト』『タイタニック』あってこそでしょう。どちらの物語も愛おしく素晴らしい。 後の物理トリック種明かしに備えての注意事項らしき長っ広い講釈の坩堝は、眠くなりました。。その代わり、時折訪れる、岩に砕けながら流れる大河の様なしまそう切実エッセイ的部分はいつもながら最高に素敵です。 レオナさんの質問「●●なの!?」が直球過ぎて(笑)、何とか「月がきれいですね」並みにもどかしくも美しい婉曲表現は無かったものかと(笑々)。 ところで件の二人の関係が一方通行で終わるのはまさか「試行機会は水の泡」という手の込んだ洒落じゃあないでしょうね。(しかも機会あらば試行できたのは奇怪な嗜好だったりして?) そういや細野氏らしき日本人は出て来なかったですかな、たしか。 |
No.26 | 6点 | 御手洗潔のダンス- 島田荘司 | 2018/03/26 17:32 |
---|---|---|---|
山高帽のイカロス 祭典富農
これ、実に意識の高い、初期段階にして早のセルフパロディですよね?? 万が一そうでなかったら、バカ過ぎますよね??? いや~、セルフの域を踏み越えたパロディストの意気はまず間違い無く伝わります。パロディである動かぬ証拠は、最高に鮮烈な後日談を添えずにいられなかった事かも知れません。 ある騎士の物語 6点 おセンチな感情吐露とおバカな狼藉実行のぶん殴り合いやっぱり素敵! 最高に危険で最高に気持ち最高によいウィンタースポーツの最高中継を観るよう。。 冷静の神にやさしく抱かれた瞬時殺戮シーンも涙を搾る。そこでちょっと拗らせて、ストーリー後半ぐいっと仰け反らすやり方もあろうが、やらなくて良かったね。 舞踏病 6点 バカなようでゾ~ンヮリ人肌の苦い旨味を残す、これも俺の好きなしまそうの、やわらかな世間告発劇。 近況報告 7点 これが好きなオイラはやはり。。。。倖せモンだ。 が、全体通してそんなに高い点数は付けられないな。長篇作家の短篇がたまに読めると愉しい、ってとこ。 |
No.25 | 7点 | 天国からの銃弾- 島田荘司 | 2017/10/15 12:04 |
---|---|---|---|
中篇力作x3
ドアX 冒頭は森村誠一風演説がセックス領域に入り込み過ぎたかの様な上等パロディの様相。その部分含み、等比級数でも放物線でもなく優しい比例直線でむずむず増殖してくれるイヤミス濃度。この、加速を抑えつけようとするかの島荘の優しさ表出には泣ける。こんだけごってり激烈粘着心理劇の末にまさかの大物理現象で〆る気なんじゃ、、と怖れていたら。。 7.2点 首都高速の亡霊 “それでは殺意を悟られる。。。””なんと敏感な奴だ。。””どちらかと言えば善人。。。” バカかこぃつわ バカか、こぃっ,, ちっともイヤにならなぃイヤミス+ドタバタ+豪快物理+偶然+複数視点+ちょィとした怪談風味。しかし最後の「誰も損をしなかった」は大嘘もいいとこ、というか、本作のプチ社会派サイド主題への当てこすりか。 6.8点 表題作 数学的興味が最強の悲しみを削ぎ溶かし続けるかのような、解決シーン滑り出しには何とも本格ミステリ独特の感動があり、泣けた。 謎も熱く、持続する。 日常の謎然としたオープニングからまさかの●●展開、更には盲点を衝く人物背景の暴露、と意外性に満ち満ちた本格興味炸裂の中篇大作。アクションシーンもあるぞ(笑)! 8.3点 通しテーマは「老人の逞しさ」かも知れん。 |
No.24 | 7点 | 殺人ダイヤルを捜せ- 島田荘司 | 2016/10/05 00:38 |
---|---|---|---|
「確率2/2の死」が痛快B級サスペンスなら、「殺人ダイヤルを捜せ」は力作A級サスペンスと言ったところ。しまそうの資質じゃB級よりA級が面白い。主人公女性の造形に時々リアリティを野暮に逸するアンバランスな所は感じるけど、悪人側の意図に怖さを損なう底の浅さは見えたけれど、そんなことお構いなしに中盤のサスペンスは十分! 都会の怖さがどうしたとかはあまり感じませんが。。捩(ねじ)れた性的要素をモチーフに扱ったあたり、もしも佐野洋が洒脱の代わりに拗(こじ)らせの味わいで魅せたら、なんて喩えを言ってみたくなる。んであの電話トリックはね、まぁいいじゃないの他の諸々との噛み合わせでもあるんだし。
さて最後の台詞はちょっと、ブラックユーモアなんでしょうが、ゾッとさせるよりプッと噴き出しちゃいそな唐突のエイティーズ・コメディ・タッチ。ナウいぜ。。。。 |
No.23 | 7点 | 出雲伝説7/8の殺人- 島田荘司 | 2016/08/22 12:26 |
---|---|---|---|
バラバラ屍体のパーツは七つの駅に送られたが、頭部だけが見つからない。。。。「占星術」を連想させずにおかないトリックの数学的美しさへの予感も嬉しい、神話と怨念に裏打ちされた大殺人絵巻。トラベル・ミステリーの風情は期待しなくてよい。 |
No.22 | 7点 | 夜は千の鈴を鳴らす- 島田荘司 | 2016/02/25 01:40 |
---|---|---|---|
美人社長とその秘書青年との間に閨房にて取り交わされた会話(私を殺して財産を手に入れてみなさい 云々)なるケレン味上等、疑惑タップリの初期設定がギラギラと付き纏う、こりゃあ魅惑の滑り出しだ、快調に飛ばせよ! と期待しながら読み始めよう。。
早速美人社長は疑惑屍体となり発見、青年秘書が本命容疑者となり。。 声のダイイング・メッセージ「ナチ云々」の正体は あぁ、そうでしたか。。。っておもむろにタバコに点火する程度でしたけど、複眼視点を要求するアリバイトリックは切れ味剛健でなかなかの味わい。過去からの因縁ストーリーも瑕疵少なく重厚にはまっています。 社会派ぶってみたアリバイ崩し本格推理、構成の妙も有り、まずは快作と言えましょう。 鮎哲ファンの方は是非ご一読を。(アッチの作品の方は敢えてノータッチ) |
No.21 | 6点 | 御手洗潔の挨拶- 島田荘司 | 2016/02/10 12:18 |
---|---|---|---|
その昔はじめて「あぁ、これがしまそうバカトリックですか」とのけぞった『疾走する死者』。何らかの心理トリックだと思い込み読んでたもんで、あのまさかのアレにはショックを受けましたよ。
御手洗が『数字錠』で見せる優しさとハッタリかまし(○○日掛かる云々)の噛み合せの妙は綺麗です。何ともやるせない哀しみが敷きつめられてもいるし。 他の二作も小粒感ありありながら良い出来。 でもやっぱ、しまそうの真髄は長篇だよな。(その真髄が『数字錠』にかなり沁み込んでいるとは思う) |
No.20 | 7点 | 寝台特急「はやぶさ」1/60秒の壁- 島田荘司 | 2016/01/06 01:18 |
---|---|---|---|
いやぁ、寝台特急ってそんなに壁薄いんだぁ、参ったなぁ音が漏れちゃうよ、色々と。
などとあらぬ誤解をしていた中学生の頃が懐かしいです。嘘です。だいたい「秒」は幅というか長さの単位じゃないだろ、っていう。 人によっては’邪道’と受け取るかも知れない、ガッツ溢れる豪速変化球のTM(トラベル・ミステリー)ですね。 色々盛り込んで、ひとまず成功と言えましょうよ。 社会派要素は期待(ないし警戒)しなくていいよ。 |
No.19 | 7点 | 消える「水晶特急」- 島田荘司 | 2016/01/06 00:57 |
---|---|---|---|
バカだが、美しさがある、この豪腕トリックには。
それはそうと、小説もかなりの面白さだ。 見逃すな! ←いろんな意味で(?) |
No.18 | 6点 | 高山殺人行1/2の女- 島田荘司 | 2015/12/01 12:28 |
---|---|---|---|
列車でも船でもなく自動車で動くトラベルミステリー。所謂アリバイ物とは違う。
良い意味でちょィと小味な、中篇の味がするサスペンス長篇。 重厚濃密な作品の間に、贅沢な息抜きが愉しめます。 運転するのは一人のハクいスケ。。 |
No.17 | 5点 | 漱石と倫敦ミイラ殺人事件- 島田荘司 | 2015/11/13 20:36 |
---|---|---|---|
表題にホームズのホの字も出て来ないでやんの。おまけにミイラって。でも漱石の時代のロンドンで島田荘司と来たらそこにホームズが浮かび上がらないわけがありませんね、いいタイトル付けです。
(つくづく、アガサ・クリスティ晩年とロンドンパンクムーヴメント勃興が絶妙なくらいあと一歩の所で重なっていない事実が悔やまれてなりません。) さ~て題名は良いとして中身のほうは。。漱石とワトソン、二人の叙述が交互に登場という形式は新鮮でなかなか面白いですが、最後まで読むとちょっとぬるかったですね~、謎解きが。ロンドンを舞台とした物語興味もさほど濃いものでなく、結果あまり心に残ってません。 もっと、ビシッと決めて欲しかった。 |