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斎藤警部さん
平均点: 6.70点 書評数: 1303件

プロフィール高評価と近い人書評おすすめ

No.14 7点 七人の証人- 西村京太郎 2015/12/18 12:30
ものすごォー~く特殊なJKK(状況下)で進行するCCM(クローズド・サークル・ミステリ)の豪腕変化球!冒頭提示される奇妙千万な舞台設定と、その裏側で芬々匂わされる謎の切れ端群はあま~ァりにも魅力的。何しろ、十津川警部+見知らぬ七人、都合八人の人間が目覚めると全く見知らぬ街角に、後に知れば何と無人島の中に徹底して緻密に再現されたという原寸大街角模型(ボルヘスの斜め先を行く3D原寸大地図か!)の中に、移動されていた、という。。何なんでしょうこの、有り得ない世界に有りえる側代表の十津川警部がスリップ・インしてしまう幻惑感は!

しかし。。。またしてもキョータさんの悪い癖が露呈!ACMX(アンチクライマックス)を誘発するKDKK(小出し解決)が引き起こす、もはや運命的と言って良い尻すぼみのストーリー展開が、早くも物語中盤あたりからレッツ・ビギンの掛け声を轟かせ始めるんです。。ってのと、もひとつ、その小出しにされて結局ぜんぶ暴露されちゃう真相自体がちょっと。。あんだけ派手なオープニング・ギミックで隠蔽した割には、特に天地もひっくり返らないというか、普通というか。(評者はアユテツのRSJやアガサクのSDNNさえ同様の理由で2点も減点しちゃうような奴なんで、そのへんの癖を勘案していただければ幸いです)

ま、わざと好きな人の悪口並べちゃったけど、そうは言ってもね、とても現実世界の警察官が巻き込まれるとは考えられない荒唐無稽度MAXな本格桃源郷に、あの渋い10TG(十津川)のおじさまが、目覚めたら、放り出されていた。。という初速で快調に飛ばす本作はやっぱり見逃せない面白さでいっぱいなんです!サスペンスが思ったほど持続しないのも味のうちって事で、京太郎クローズド独特のやり過ぎ世界を是非あなたも堪能していただきたいのです。ジャンルはこのさい新本格でいいでしょう。

No.13 8点 北帰行殺人事件- 西村京太郎 2015/12/04 03:13
数多有る氏のトラベル本でも、その悲劇性故か名作と名指される機会の多い本作。突如辞意を申し入れ失踪を遂げた若い刑事の辿る北海道各所で次々と殺人が起こり、刑事は自然最有力の容疑者と目される。被害者達、刑事、十津川警部、そして見えない何者かが縺れ合う逃亡追跡劇の真の構図は何か?まして物語は複数視線(十津川と、もう一人の女)で煙幕は張られっぱなし!予想に反し変態チックな殺人現場に内心唖然としつつも垣間見える怨念激烈な過去への懐疑遡及に引かれサスペンスは濃厚機敏。外は真冬、読むなら今だ!
尚、若い刑事とは後の私立探偵橋本豊その人です。

そうそう、光文社文庫の巻末解説を鮎川哲也氏が共感豊かに書いておられます。これは萌えます。

No.12 7点 夜間飛行(ムーンライト)殺人事件- 西村京太郎 2015/12/04 02:32
十津川警部四十路の新婚旅行先は北海道。同じ飛行機に乗り合わせた新婚カップルばかり三組もの失踪事件が旅先の海岸にて発生! 空の便を駆使したアリバイトリック破りってわけじゃあないが、手探りの奥行きある謎とサスペンスの牽引力で最後まで読者を引き摺り回す。意外と社会派。しかも國際。(あんまり書くとネタバレだ) しかし通俗っぽいタイトルとハードな内容と新婚警部のお茶目ぶりに三位一体の愉しいギャップを感じるなあ。

ちなみに本作で十津川警部と亀井さんの設定が年齢含み固定されます。サザエさんで喩えると磯野サザエがフグ田マス夫と結婚してフグ田姓になりタラ夫を出産、波平もめでたくツルッパゲになり(いや彼は最初からツルッパゲ)ノリスケおじさんもタイ人の美子さんと、いや美人のタイ子さんと結婚してハイーことイクラちゃんをもうける、旧単行本で言うと第十五巻あたりに相当しますかね。←当てずっぽう

No.11 7点 天使の傷痕- 西村京太郎 2015/10/23 02:09
長篇第一作「四つの終止符」に続き若き京太郎が世に問うたハード社会派サスペンス、いや社会派本格推理と呼ぶべきか。
「終止符」ほどの唯一無二な雰囲気は無く、普通の推理小説然として進むが、事件そのものと社会背景、その両方の謎解き興味が読み進むほど強烈に襲い掛かる名編だ。社会派サイドのテーマはやはり重い。京太郎の名を未来から消さない為にも、君は読め。

No.10 7点 イヴが死んだ夜- 西村京太郎 2015/10/23 01:56
ふとももにバラの刺青が印象的な若い女性が殺された。続いて同様の刺青を持つ女性が自殺。渦中に十津川警部の婚約者が巻き込まれるが、彼女と亡くなった二人を結ぶのは或る一人の男。。。悩める十津川警部はなんとインターポール(國際警察)への派遣が終わったパリ帰り(!)。いつにも増して、表情は苦い。警視庁と岐阜県警の合同捜査は躍動的。十津川警部の私生活を侵す影に悶々としつつ、スピーディーな展開の果てに見出した結論は如何。
暗く重い読後感をもたらす、サスペンスフルなハード本格長篇。
初期京太郎が好きなら、行け。

No.9 6点 トンネルに消えた・・・- 西村京太郎 2015/08/18 23:50
ダークトーンで小味な短篇集。 鉄道以外の京太郎サスペンスが(or も)大好きと言うあなたにだけ、こっそりとお薦めします。 彼らしい、手堅くも活きのいいストーリーがいっぱい。              

トンネルに消えた・・・ /殺しの慰謝料 /見事な被害者 /タレントの城 /落し穴(一億二千万の殺意)/死の代役 /ヌード協定 /闇の中の祭典
(廣済堂文庫)

No.8 5点 消えた巨人軍- 西村京太郎 2015/08/18 22:47
タンカー始め色んなものを消した京太郎さんですが、この野球チーム消失物語はちょいと大味。
V9黄金期ジャイアンツ選手達の描写にリアリティがまるで無いのはご愛嬌!
国民的人気集団をあんまりシリアスなプロットやトリックに巻き込んじゃ問題があったんですかね。巨人ファン向けのちょっとしたノヴェルティみたいな位置付けか。 探偵役は左文字進。

No.7 8点 四つの終止符- 西村京太郎 2015/08/13 14:10
母殺しの容疑で逮捕され、憤死を遂げた聾唖の青年。 その無罪を信じて調査を始めた、交流のあった飲み屋の女。。

この哀しさは沁みる。 義憤を湛え、ほの暗く静かな空気感で進む、美しい物語。

No.6 7点 夜行列車(ミッドナイト・トレイン)殺人事件- 西村京太郎 2015/07/16 13:49
タイトルが紛らわしい「寝台特急」とは似て非なる鉄道京太郎の初期作品。謎は強烈だが割と地味な場面に始まるかの作と異なり、いきなり国鉄(!)総裁に列車爆破脅迫状という派手な立ち回りでスタート。脅迫状の出し方がまた変わっててケレン味上等! 時を同じくして、脅迫とは無関係と見える、しかし謎多き殺人事件が発生。 さてその後は、、京太郎さんの筆に任せて安心、いや安心する隙も無いサスペンスで最後まで力走だ!

No.5 7点 寝台特急(ブルートレイン)殺人事件- 西村京太郎 2015/07/16 13:41
京太郎さん鉄道ミステリ第一号。 ちょっとホームズを思わせる冒頭の謎の畳み掛けがやはり光っています。 駅で撮影したフィルムが盗まれ(被写体はちょっと気になった若い女性!)、列車内で盗難に気付いた雑誌カメラマンは睡眠薬で眠らされ、気が付きゃ別の列車に! そういや最初乗った列車の食堂車で正体不明の男と知り合ったが、あいつはいったい誰だ? 翌日、盗まれたフィルムに映した若い女性と思われる屍体が見つかった、が。。 続く謎と事件の展開、捜査途上の描写は濃密。背後に、数年間の大物政治家名刺を利用した巨額詐欺事件が見え隠れ。果たして今回の殺人事件との連関は!? トラベル・ミステリーに食指の動かない人にこそ読んで欲しい、魅力満載の一冊です。

No.4 7点 消えた乗組員(クルー)- 西村京太郎 2015/06/09 00:33
京太郎海洋期。『消えたタンカー』に続くは、船が消えず中にいる筈の人間だけ消えて発見される、その名も『消えた乗組員(クルー)』。 
「魔の海域」を巡って対立するオカルト研究家と科学評論家の各派。 やがて件の海域に一台の大型クルーザーが出される事となり。。 「海難審判」なる毛色の違った法廷シーンも新鮮。 スピーディーに読めて爽快、納得の一冊。

No.3 9点 消えたタンカー- 西村京太郎 2015/06/04 12:15
京太郎さんが鉄路へ行く前、海洋期の雄大なる傑作。
世界の海を相手にする、手に汗握る冒険性が魅力ですが、そこに本格推理興味溢れるスケール大きな謎解きがガッツリ組まれているのだから尚更堪りません。
タンカーを消したトリックは。。物理的とも心理的とも割り切れない(海の広さあってこその部分もあるから、物理的要素も多少認められるのではないか)、盲点を突いた、そしたまた雄大なもの。唸らせます。

No.2 8点 殺しの双曲線- 西村京太郎 2015/06/02 12:19
いきなり「双子トリック宣言」! 前のめりな京太郎さん!
例によって冒頭の謎が派手で魅力的な割に謎解きが小出しに行われるゆえ一気にガツンと来ないきらいはあるけど、その癖を差し引いても充分エキサイティング!! 詰めの粗っぽいトコもあるが、肩透かしな部分もちょっとあるんだが、とにかく楽しませてくれました、ありがとう。 夏場の大ジョッキビールの様な魅力が満載です。

No.1 8点 終着駅殺人事件- 西村京太郎 2015/05/15 22:05
最後、手紙で終わるという小説は割と見かける気がしますが、この『終着駅(ターミナル)殺人事件』の最後の最後で明かされる手紙の内容、というか物語の中での立ち位置に、愕然。
作者のトリッキーな頓知ぶりに脱帽笑いすべきなのか、それとも手紙を読んだ犯人の心情に思いを巡らせ涙するべきなのか、それまでに味わった事の無い感情が押し寄せました。 これぞ本格ミステリならではの、独特な感動の形。

京太郎さん黄金期(?)の長編と言うと、出だしの謎の強烈さがピカ一なのに較べ、物語も半分くらい進むと少しずつテンションが弱まって行き最後は緩めに着地してしまうきらいがあると思うのですが、この作品は最後の最後に一番のクライマックスが来て強烈な印象を残してくれました。

アリバイトリックも密室もさっぱり記憶に残っていない体たらくぶりなのですが、、 素晴らしく鮮明に記憶しておりますよ、このエンディングの衝撃は。

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斎藤警部さん
ひとこと
昔の創元推理文庫「本格」のマークだった「?おじさん」の横顔ですけど、あれどっちかつうと「本格」より「ハードボイルド」の探偵のイメージでないですか?
好きな作家
鮎川 清張 島荘 東野 クリスチアナ 京太郎 風太郎 連城
採点傾向
平均点: 6.70点   採点数: 1303件
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