皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
していません。ご注意を!
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斎藤警部さん |
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| 平均点: 6.68点 | 書評数: 1424件 |
| No.27 | 5点 | 犯罪カレンダー (7月~12月)- エラリイ・クイーン | 2025/12/10 23:10 |
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| 七月 墜落した天使 The Fallen Angel
歳の離れた兄と弟。 同じく夫と妻。 殺人未遂が続き、いきなりの未遂告白。 意外性の角度を変えてみたような、ちょっと意外な真相。 彫像を引き合いに、真夏の暑さを描写する素晴らしい表現があった。 6点 八月 針の目 The Needle’s Eye 海賊伝説を縁(よすが)のユルユル冒険譚に殺人をトッピング。 犯人像も犯人名指しに繋がる手掛かりもユルくて見てられない。 ネタバレにならないよう気をつけて言うと、犯行に及んだ瞬間の犯人の気持ちに、多少の面白みがある。 3点 九月 三つのR The Three R’s 夏季休暇から戻らない大学教授。 推理小説マニアの彼は、自分でも一篇ものしていたと言う。 やがて教授らしき死体と、彼の遺した件(くだん)の原稿が見つかった。 その内容は、当の事件をそっくりそのままなぞっていた! 短篇ならでは、小味の割に大反転。 何より、後からじわじわ来る 「動機」 の意外さは、不意討ちでした! 7点 十月 殺された猫 The Dead Cat ハロウィーンの夜の殺人ゲームで、本物の死人が出た。 ゲーム上の犯人役は行方不明。 エラリーは居眠り中だった! 犯行には痴情が絡んだらしい。 光と音が決め手の暗闇不可能状況。 大味な伏線に、凡庸な結末。 人物描写は面白い。 4点 十一月 ものをいう壜 The Telltale Bottle 感謝祭の時節に、小味というより小粒なドラッグ捕物帖。 前半は人種/民族にまつわる興味深い背景が語られ、中盤にささやかな不可能興味も芽生えるが、羊頭狗肉の坂を滑り降り、最後は苦笑で締まる。 こういうのも時々は良い。 3点強 十二月 クリスマスと人形 The Dauphin’s Doll クリスマス・イヴの日に、ルパンのような衆人環視巨大ダイヤモンド盗難事件が起こる。 ストーリーは愉しげで、その装飾は色鮮やかな煌めき。 不可能状況トリックは、作中でエラリーも堂々語る通り、ミステリよりはマジック向きの、明かされてガッカリ聞かなきゃ良かった系だが、年末くらい良いじゃないか。 5点 まあこんなもんでしょう。 |
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| No.26 | 7点 | ダブル・ダブル- エラリイ・クイーン | 2024/06/06 22:22 |
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| エラリイの心です。。。。 小説家エラリイ・クイーン宛てに匿名で二度にわたり郵送されたのは、殊更に疑惑を唆すような、ライツヴィル地方紙「レコード」の死亡記事切り抜き。 死者は一人に留まらない。 かの地へ向かうべきか否か、ニューヨークの自宅で迷う彼に決断を下させたのは、はるばるライツヴィルからクイーン宅へやって来た妖精のような一人の少女。。 なんなんだこの萌えアニメみたいなキャラと、それに引っ張られての展開は。。 釣られてかユーモア押しもなかなかの強度。
「いつでも都合のいいときでいいって。だから、あすの朝にしたの」 【次のパラグラフ内はストーリーネタバレ】 .. 或る人物への疑惑が「ゼロの聖域」からじわじわと高まっていく。それは外見の意外性にも後押しされる。ところが読者視点の本命容疑者が何度かゴトリと大きな音を立てて替わり、そのたび新たな暗い夜道が目の前に広がる。その様相に対峙するが如くいとまなく生成される、あまりにも多い被害者、中には意外な(!)被害者、ついさっきまで疑惑の真犯人候補ナンバーワンだったような者までが・・・ 「この箇所は特別に印をつけて書き留めてくれないか。この話の特に興味深い部分だからね」 エラリイの名台詞連発炸裂の中盤2ページは最高に熱かった! と思ったら最終コース、真相暴露篇にて更にそれを上回らんとする、あまりに熱いエラリイの痺れる言説噴射数ページが・・・ 動機の先物取引? 動機の先物市場操作? 更にはその⚫️⚫️?! 真夜中の・・・・なーるほどね。 表情の変化(と状況の変化)からそこまでの洞察をキメたクイーン、流石だ。 占いに纏わる◯◯◯のバカトリックにはある意味メタ的に笑っちまった。「危なっかしいやり方だ」という台詞と「習慣云々」なる物言いでなんとか後追いでのバカ回避を試みてまず成功したようだが、でもその為に準備した工程を考えたらやはり早過ぎた島田荘司マナーのバカっぷりとしか言えぬのではないか? 「よし。チャンドラーにしよう。それともケインか、ガードナーか」 冒頭の謎であり物語の端緒でもあった「エラリイへの新聞記事郵送」の真実を明かすタイミングとその滋味深さにはやられた。 それやこれや色々あって、エラリイが××トリックでアガサを出し抜いた? と思うようなキラキラの幻惑展開も。 まあ、ライツヴィル住民たちのさり気ない描写がどれもヴィヴィッドで、町が生きているのは本当に良かったですね。 「大いなる絶対の存在はそれを見逃さなかったようです」 ← 流石にそれは、、、島田荘司ではないかと。 終盤も終盤、意外な?二人の人間関係に凄まじいカタストロフとそれを盛り立て花を添える舞台の爆発的前進。こりゃ良かったな。 そしてこのラストシーン、笑っちまいつつ熱くなるでねえが、我が心が。 オバハンの従者がオバノンだったり、地方検事チャランスキーはチャラ男なのか気になったり、ふた昔半(四半世紀)前の韓国歌謡ファンにはピンクルちゃんの登場が泣かせたり、色々あった。 タイトルに深い意味を持たせようとしたようだが、それは上手く行っていないかもな。 「見立て」はチョトーうるさいかな・・大事な所だから仕方ないんだけど。 リーマちゃんには萌えなかったが(応援はしたよ)、『ライツヴィル全図』には大いに萌えたねえ〜 広場周辺だけじゃないんだぜ! んでその『全図』含む巻末解説(飯城勇三さん)最高ですね。 父子の情愛深読み考察もある。「見立て殺人の極北」。。 なるほどねえ。 タイトルに因む形でデイヴィッド・ボウィーのあの曲を思い出したのは、読了後すぐでしたね。 |
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| No.25 | 5点 | ドラゴンの歯- エラリイ・クイーン | 2022/04/20 09:17 |
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| 終盤寄り、一気に盛り上がるあのシーンで、こりゃ「◯◯◯◯し」トリックにヒネリをカマした応用篇かと大いに期待したら、真犯人暴露までがなかなかに悪く地味。。大見得切るよな目の醒めるロジックじゃあない。だがそこからの軽い頭脳戦一波乱に物語はちょっと救われた。
「◯◯◯◯し」(というか「◯◯◯◯り」)トリックの旨味持ってそな部分が、折角もう二つも大きなのが(小っちゃいオマケも一つ)あるのに、そっちらとの有機的絡みって言うんスかね、そういうので今ひとつ活かしきれてないやね。 全体で見て、謎解きやら犯罪を巡る冒険より、旧いコメディ映画を思わすドタバタ感覚こそが主軸かも、特に前半と締めントコにその感が強い。実際、そのお蔭でかなり楽しく読めたわけですよ。ドタバタがおとなしくなっちゃった後半では、眠たい箇所もあったね。 「よし次いこ次!」って前向きに思える作品ではある(笑)。 |
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| No.24 | 7点 | 九尾の猫- エラリイ・クイーン | 2021/04/26 23:33 |
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| とても本格ミステリとは思えないよな、疑惑を呼ぶ謎の構成へと妙に早いタイミングから雪崩れ込むのは何故だ?! 構成の妙と言うより妙な構成じゃないか!? まさか。。いろんな意味で、まさか。。 言ってみりゃ停滞の部分が長すぎて、ページ数の問題じゃあないんだけど、その部分が詰まらなくはないんだけど、ちょっとつまづいてやしないか、、鮎川哲也「白の恐怖」のアソコを彷彿とさせる。。などと疑いと期待の眼で見張っていたら。。。。 終盤、舞台が欧州に移ってからの展開というか、重みある対話はなかなかにスリリングじゃないか。最後に博士がエラリーへ向ける言葉の花束も熱い! あの時代あの時節にわざわざ対面にこだわったのも納得だが、現代のテクノロジーを以てして果たしてテレミーティング対応は可能だろうか。。
「クイーンくん。 理解できるだけの科学的知識がきみにあるんだろうか」 やはりあの、被害者の年齢が徐々に下がって行く、その年齢差に一度だけ大きな隔離がある、女性は全て既婚者、この伏線であり謎の解かれるシークエンスにこそ最強の本格ミステリスプラッシュが在った。そこに較べたら、表面上はより重そうなアノ要素など、見掛け倒しとまでは言えないが、軽いもんだ。。とは言えそこに根差す大ホワイダニットの構造とエナジーは本格ミステリ興味を確実に支持、加速している。 パニック小説的要素も力強い味付け。しかし、あの絶対的アリバイに誰も気づかなかったのはどうかしてますぜ。。 “まさにその場で<猫>事件は終わると思った、とふたりの刑事はあとになって言った。申し分のない状況だった。” ミッシング・リンク。。。そうか、○○だけは誰もが”例外無く”する事なんだよな。。もしやEQ(著者の方)はそこから閃いて、xxxパターンと巧妙に結び付けたのかな。。そこへ身の毛もよだつ動機の噴出を結び付けたのか。。 それにしても、物語の始まりはとんでも無き不謹慎犯罪ファンタジーの様相から。。ファンタジーやったら何でもええんかいや?! まるでその補償でも望むように迸るユーモアの言い訳じみた云々かんぬん。。よくもそんなとっから少しずつしゃあしゃあとユーモア冒険イェイイェイみたいなテクスチュアに転がり込んだものだな、恥知らずが!! と冒頭数十頁は苦笑の連続でしたが、、それで最後はこれだもんな。。その手の権威(?)金田一さんが見たらどう思うんでしょうか。 あと題名を「丸尾の猫」と見間違えると一気にちびまる子ちゃんの世界がひろがる事は否めないです。 最後、ネタバレになりますが。。。。 もう少し、あの若い二人なり誰なりにそれとなく疑惑を寄せるディヴァイン風?クリスティ風?ミスディレクションがあっても愉しかったと思います。 |
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| No.23 | 8点 | 十日間の不思議- エラリイ・クイーン | 2020/01/21 23:32 |
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| 「ぼくはとっておいたのです・・・・・・ぼくの最も輝かしい”成功”の記念品としてです。」
『エラリイ・クイーンなる著名作家が世に存在する』という事実(と虚構の不可分関係)を前提とした、なかなかにメタ風味薫る勝負作。 探偵が間抜けなひと時を過ごしたからこそ醸造された、深い旨味。 第一部と、第二部。。 たまらなく切実なセルフパロディ。いや、よく考えたらその視点すらメタじゃないですか! 何気な文学味もジャストフィットの良さがある。 ある重要登場人物が語った通り、計画には弾力性、これだね。 後続への影響特大の一作ですね。 んで鮎さん、なにアァタいちゃもん言ってんの 笑。 【【 ここから重大なネタバレ含みます よろしくお願いいたします 】】 犯人隠匿技に脂乗りまくりのクリスティだったら、あの真犯人にはしなかったろうかな。。 これでもし真犯人がまさかの「弟」だったら10点スムゥーズスティーラーだったかな。 クリスチアナお婆さんがハヤカワ文庫の登場人物一覧に登場しないのは、謎の人物の正体をぎりぎりまで明かさないためか?だがそのお蔭で、犯人ではありえない人の位置付けになっちゃってる。出来たら彼女も最後近くまで疑っていたかった。。 ラストシークエンスではパールジャムの某アルバムが頭の中を流れ始めた。何故なら。。 |
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| No.22 | 6点 | フォックス家の殺人- エラリイ・クイーン | 2019/05/29 23:47 |
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| なんですかこの “無限大に拡がり過ぎて解は不能ならぬ不定です” の有様を逆から見たような結末は。 本作まさか ”何を評してもネタバレ” というコンセプトのもとに逆算して作られてないか? 後期クイーン問題どころじゃないんじゃないか(笑)? などと、不思議に奥深さを感じさせるが、感じさせるだけのようでもある一篇。 このコンセプトで、短めとは言え長篇に仕立てた事こそトリックというか、ミソなのかも? 逆エディプスコンプレックスみたいな蛮説をエラリィが持ち出したのは印象的だった。 なんだか青臭くとも不思議に頼れそうなエラリィ。 ふむ、締めづらい。 ♪ Fox hunting on a weekend .. | |||
| No.21 | 8点 | 災厄の町- エラリイ・クイーン | 2017/10/07 12:16 |
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| 切ない話だ。。。。その切なさの理由は本作のパズラー核心部分が握っている。素敵じゃないか。それは a touch of “アガサへの対抗案”めいたもの,, 最高にナチュラルな微笑みをもたらすオープニングシーンから、哀しくも明るさに取り縋る最後の台詞まで、私ァ好きだ。
事象は毒殺未遂と毒殺。後者は目標外しとも推測され、更にはもう二人があの世行き。。 終盤に近づくにつれ,行く先の見えなさが心地良過ぎて多幸感にさえ包まれる。 大きく拡がった香りを備えた切実な予感だ。。。。 明かされた真相(物語の様相一変でガツンと来ます)によれば、、 或る夫婦の現在の●●が実は意外な●●●●で、と「しこり」を刻印する部分がある。だからこそ一層切ないんでしょう。そこをスッキリさせちゃったら同じ反転劇でも途端にお涙頂戴なものになってしまいそう。 ところで、「登場人物表」に載せる人、もっとふんだんでいいのに(いにしへのポケミスはもっと少なかったから新訳版はこれでもましだ)。 アルバータとか、不動産屋ペティグルー、保険屋ケチャム、カーラッティにオールセン、老詩人(?)アンダーソンだって重要だよ。純ミステリ的には違うけど、ドラマの演出として最高に記憶に残る人でしょう? |
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| No.20 | 8点 | レーン最後の事件- エラリイ・クイーン | 2017/02/24 00:21 |
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| ユゥモアたっぷりの導入部はロスと言うよりまるでクイーンの様! おまけに、危うく日常の謎と見紛いそうな不可解盗難&返却事件が連発!! マスタード付きハムサラダ三人前!!!
小説的に、どう考えても怪し過ぎる奴が一人いる。。しかし、いやしくもドルリー最後の事件がそんな安直な真犯人像を歓迎するだろうか。。。 そうですか、やはりそいつではなく、あの人が真犯人でしたか。。。。 緊張の手綱は中盤微妙に緩まりも見せるが、かの堂々たるラストシーンが全てを(ダブルミーニング?)眩しく包みこむ。そこへ辿り着く最後の急転直下も、突然の悲劇性と相俟って心を掴んで離さない。 どうしても先行三作を含めた四部作の終結部として読んでしまいますね。。それもまた良し。終わってみれば、前半折り返し前の予想を大きく上回る高評価領域へ。 それにしても、凄いな、この「動機」たちのぶつかり合いは! ただ、ドラマティックな真犯人特定の決め手となる心証(同種三件)が、その雄大な悲劇性に較べると若干こじんまりしているきらいはあるかも。。まぁそれは瑣末な問題ですね。 【ドルリイ・レーン最後のネタバレ】 手に伝わる振動の微妙な違いで分からないもんですかね、中が空洞か詰まってるかなんて、、 感覚が鋭敏になっているであろう人が、、、聴覚以外の。 |
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| No.19 | 6点 | クイーンのフルハウス- エラリイ・クイーン | 2016/11/27 11:42 |
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| 軽いね、まぁまず悪くないね。
【三篇のノヴェレット】 ドン・ファンの死/ライツヴィルの遺産/キャロル事件/ 【二篇のショート・ショート】 Eの殺人/パラダイスのダイヤモンド(ノヴェレットの幕間其々に入る) ショート・ショートの方は、空耳・空目ネタで済ましちゃってて、何故だかちょっとホンヮカするけど、切れが甘いな。 ノヴェレットの方は「流石クイーン、これくらいはやる」って所かな。 |
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| No.18 | 8点 | エラリー・クイーンの新冒険- エラリイ・クイーン | 2016/10/27 11:21 |
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| ご多聞に漏れず「神の灯」の鮮やかさで遠き日の記憶は真っ白に塗りつぶされておりますが。。。。 いやどうして、他の短篇諸作も一つ残らずミステリ興味に強く訴える、佳き一冊でした。これは読まないと!
「神の灯」「宝捜しの冒険」「がらんどう竜の冒険」「暗黒の家の冒険」「血をふく肖像画の冒険」「人間が犬をかむ」「大穴」「正気にかえる」「トロイヤの馬」 (創元推理文庫) |
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| No.17 | 5点 | スペイン岬の秘密- エラリイ・クイーン | 2016/08/03 12:19 |
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| 短篇でピリッと効かせりゃ光るネタを、わざわざ長篇サイズに薄めてないか?
謎解きはスカスカで物語もさして面白いワケじゃないが、どういうバランスの機微が働いたか、割と愉しく読める。 最後エラリイが事の顛末を街往く車(デューセンバーグ!)の中で語るシーン、語る内容よりそのシチュエーションがやけに鮮烈。あそこだけは大好きだなあ。。「ギリシャ棺」の終幕以上に好きだ。 |
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| No.16 | 7点 | シャム双子の秘密- エラリイ・クイーン | 2016/08/03 12:05 |
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| サスペンスを煽るべく使命を帯びた不気味な人物や不審人物が何人も登場しますが、主人公(?)のシャム兄弟が決してそちら側ではなく爽やかな少年たちとして描かれているのが良いですね(穿った見方をすればそのお蔭で彼らを容疑者リストから外せなくなる)。しかし「巨大なカニ」って。。某バンド(バンヅ)のシルエットロゴじゃないんだから。
カードを巡る云々も、そのロジックだけ取りゃ何だかなァという気もしますが、独特の閉ざされたサスペンス感あるからこそなかなかの興味を唆ってくれます。スペクタクルな山火事避難の大団円(?)もエキサイティングで良いよ。唸らせはしないけど、読ませる本だね。 |
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| No.15 | 8点 | ギリシャ棺の秘密- エラリイ・クイーン | 2016/06/07 22:44 |
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| 流石の力作。 切れ味より突貫力。 『読書への挑戦』の置き場所が最高。こりゃ萌えるわ。。
多重解決のふりをした様な重層的ロジックの響き合いは眩(まばゆ)いばかり。 【以下ネタバレ!】 まさか登場人物表が犯人隠匿最大のミスリードだったとは!全く疑ってもみなかった!「犯人ではありえない側の人達」だと決め付けていたよ!(なんとか山荘か!) この犯人設定、普通だったら”●ンフェア”の五文字で糾弾されておかしくない所、これだけ重厚な謎解きスクラップ&ビルドの果てにやっと。。という達成感でいい意味で押し切ってしまうんだね。如何にも怪しい人物が本当にまさかの犯人、かと思うと覆される、というパターンを繰り返すからこそ効力を発揮する謀略の目くらまし。それにしても真犯人が警察の人間でなくて本当に良かったと○ン○・○○ィ-世代の私はつくづく思ってしまうのです。 【!ネタバレここまで】 ジョアンはともかく筆跡専門家のユナちゃんが気になるのは、少女時代のユナちゃんを連想させる所為かしら。 それと、愉しい気分のまま快い寂しさを纏うラストシーンがね、すごく好きなんですよ。 |
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| No.14 | 8点 | エラリー・クイーンの冒険- エラリイ・クイーン | 2015/12/22 12:46 |
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| これは読んでて大変に楽しかった。こだわりの論理構築が事件の突飛な不可思議性とカラフルに絡み合い、最初から最後まで実に美味しく味わえる。意外な真相、意外な真犯人に軸足置いたストーリープランも嬉しい。たとえば無双の切れ味で魅了する初期ホームズ物とは違う、好ましい安定感が底に敷かれた本格短篇集だ。だいたい、題名眺めてるだけでわくわくして来ちゃうでしょ。
アフリカ旅商人の冒険/首つりアクロバットの冒険/一ペニイ黒切手の冒険/ひげのある女の冒険/三人のびっこの男の冒険/見えない恋人の冒険/チークのたばこ入れの冒険/双頭の犬の冒険/ガラスの丸天井付き時計の冒険/七匹の黒猫の冒険 (創元推理文庫) |
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| No.13 | 4点 | Zの悲劇- エラリイ・クイーン | 2015/12/02 15:36 |
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| 「Y」をジュブナイル版で読んだばかりの小学生がたまたま親が持ってた角川文庫の「Z」に手を出し、「Y」とはうって変わった退屈と難解の壁に何度も払い落とされつつ辛くも読破(大人の文章が難しかったってのも大きい)。ただ、あの死刑囚の悲惨な有り様だけは子供心に強く残ったなあ。。 さて高校あたりで再読しましたが興味の薄さはさほど変わらず。 「X」「Y」同様”犯人が意外”と言われるらしいけど”はァ?”ってなもんです。でも物語の重厚さには一定の威厳と魅力を感じるわけで、点数付けるなら4くらいキープかなと。 | |||
| No.12 | 7点 | 日本庭園の秘密- エラリイ・クイーン | 2015/10/29 23:28 |
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| 結末で一気に熱くなりましたね。。まさかあんな残酷な人間ドラマが真相だったとはね。。ニセ国名シリーズと呼ばれるのが不憫なくら良い作品ですよ。まぁ結末以外はあんまり記憶に無いんだけど。 | |||
| No.11 | 4点 | ハートの4- エラリイ・クイーン | 2015/10/29 23:19 |
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| ゆる~く読ませていただきましたがちょっと眠かった。 毒殺トリックは。。バカの類でしょうか?(実際やったら○○○○の人でもないかぎり一瞬でバレるらしい) | |||
| No.10 | 7点 | チャイナ蜜柑の秘密- エラリイ・クイーン | 2015/10/22 11:52 |
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| 賑々しく華があって楽しい本。ストーリーが愉快に弾け飛ぶよな最後のひっくり返しがまた痛快。これは面白かったな。
(これよりネタバレ) 物語の構造で見ると、例の「安部公房」いや「あべこべ」趣向が単に現場偽装の手段なわけでもなく、ちょっと興味深い多重構造の仕掛けになっていますよね。 |
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| No.9 | 5点 | アメリカ銃の秘密- エラリイ・クイーン | 2015/10/22 11:41 |
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| 国名シリーズ第6作にして晴れて母国開催。
殺しの舞台は派手だが、読み物として何処か地味だな。 隠し場所トリックにゃ驚かないが、犯人設定はなかなかのもの。それを突き止めた手掛かりとロジックの交差ぶりも悪くないぜ。 |
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| No.8 | 8点 | Yの悲劇- エラリイ・クイーン | 2015/08/27 20:48 |
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| 小学校の頃、学校の図書館で借りたジュヴナイル翻訳で初めて読みました。犯人は早い段階でピンと来てしまいましたが、それまでに味わった事の無い、なかなかにエキサイティングな読書体験でした。 ミステリ好きの大叔父に話したら嬉しそうな顔してたなあ。 今思えば、「初めて大人の推理小説を読破したぞ」と思った記念すべき本でしたね。 もちろん、この物語の背景に埋め込まれた奥深いところには気付きようも無かったわけですが。。
その後、中学に上がったばかりの頃読んだ「グリーン家殺人事件」。本作の師匠筋とされるその作品の方にすっかり心を奪われ、軍配はそちらの方に上がってしまいましたが、それでも本作は「グリーンズ」に無い空間的・時間的拡がりのイメージが豊かで、また別種の魅力を感じます。 薄暗い陰鬱な雰囲気の豪邸で繰り返される殺人劇、その根底に蠢いているはずの、外からは容易に見通せない歴史的因縁やら鬱屈した人間関係のこじれやら、そんなおぞましく呪わしいものを美味しく味わう方法、それを子供の私に教えてくれた一冊でしたね。 高校の時に創元推理文庫で再読し、理解の度合いの違いはともかく、やはり昔と同じくらいの感銘を受けたものです。 点数は「X」と同じ8点相当ですけど、こちらの方にはどうしても長々と語らせてしまう何事かが潜んでいるんだな。 しかしどうも初期の「エラリイ・クイーン」に何かしら軽いイメージが付き纏ってしまう私としては、本書は「バーナビィ・ロス代表作の一つ」と呼びたいですなぁ。 |
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