皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
していません。ご注意を!
名探偵ジャパンさん |
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平均点: 6.21点 | 書評数: 370件 |
No.8 | 8点 | しおかぜ市一家殺害事件あるいは迷宮牢の殺人- 早坂吝 | 2023/10/09 22:47 |
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「叙述書いたらデビューできるっていう情報商材でも売ってんのか?」(本分より 笑)
いやあ、やられましたね。「『世界が反転』や『どんでん返し』を売りにするならここまでやりなよ」という作者の心の声が聞こえてくるようでした。 本作は最初に舞台の平面図が挿入されているのですが、それを見て「ああ、こういうやつね」と「ははん」と思った人こそ、ぜひ読んでみていただきたい。 |
No.7 | 6点 | RPGスクール- 早坂吝 | 2019/10/10 13:57 |
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「俺だって、しち面倒くさい本格ミステリばかりじゃなくて、こんな安易な設定の冒険バトルものを書きたいぜ」という作者の想いが表出した(完全に評者の偏見です)ユルい前半から、ガチガチロジックが支配する後半の「特殊能力ミステリ」に大胆に舵を切ります。やっぱりミステリ作家はミステリを書かないとね。
作中に存在する「特殊能力」についてのルールは全て、ミステリ編が始まるまでに提示されていて、本格として申し分なく、特に「死体移動のトリック」は既存のパターンに新しい要素を加えた独自のもので、これはなかなか面白かったです。 発刊から四年も経過していますが、未だ(2019年10月現在)文庫化していないというのは、人気がなかったのでしょうか? ライトノベルレーベルで出していたら、もっと読者に恵まれていたと思います。 |
No.6 | 7点 | 殺人犯 対 殺人鬼- 早坂吝 | 2019/07/16 15:04 |
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クローズドサークル、館トリック、見立て殺人、密室、ミッシングリンク、アリバイ、○○トリック、それに伴う○○誤認トリック、(ちょっぴり特殊設定(らしきもの)も出てきます)と、現時点における本格ミステリの主要ガジェット全てを注ぎ込みました。とでも言いたくなる、トリック、仕掛けの大盤振る舞いです。オールトリック総進撃です。しかも、それらがぶつ切りになることなく、みんなが支え合って(?)一本の長編ミステリを構築しています。
『双蛇密室』のような新トリックの創作から、本作のような既存のトリックを組み合わせたものまで、コンスタントに良作を上梓し続けているこの作者は、本当に器用だなと感心します。 |
No.5 | 6点 | 双蛇密室- 早坂吝 | 2019/06/16 00:17 |
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これは凄いです。今まで読んだどのミステリにもないトリックで、私が読み逃している中にも同様のものはないと断言してよいでしょう。本作だけの唯一無二のトリックです。この仕掛けが成立するよう、巻末の参考文献を見ても作者はかなり苦労したことが窺えます。しかも「上木らいちシリーズ」によく似合っているトリックです。
ですが、それが小説の面白さに繋がっているかというと、ちょっと首を傾げざるをえません。 念のため書いておきますと、上記でいう「凄い」のは第一の密室殺人のトリックについてです。第二の密室については…… しかしながら、話の展開上、第二の密室はどうしても必要なわけで、難しいところです。 |
No.4 | 6点 | ドローン探偵と世界の終わりの館- 早坂吝 | 2017/08/18 21:13 |
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まずはtake5さん、誤字のご指摘ありがとうございました。
いいことなので、レビュアー同士こういうのはどんどんやっていきましょう(笑)。 本作、冒頭で作者が、「トリックを当てろ」といきなり挑戦状を叩き付けてきます。 「トリックを当てろ」ってどういうこと? と思いつつもとりあえず読み進み、終盤、作者の言わんとしていたことが分かります。「トリック」が判明します。 これは当てられないでしょう。「こんなの分かるか」と言いたくなります。 というよりも、このトリックに酔うばかりに、作者はちょっと「イキって」しまったのではないでしょうか。何も宣言しないまま普通に書いていれば、「おお!」と、もっと素直に驚けたに違いないのです。 加えて、本作は読みにくいわけではないのですが、文章に「気合い」が入っていない、かっこいい言い方をすれば、「魂がこもっていない」ように感じました。この作者の作品は何作か読んでいますが、こんなではなかったはずです。体調が悪かったのでしょうか。ちょっと心配になってしまいました。 |
No.3 | 6点 | アリス・ザ・ワンダーキラー- 早坂吝 | 2017/07/28 22:39 |
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VR世界で出題される謎を解くという、ある種の特殊設定ものです。
提示される謎は、現実世界では到底為し得ない特殊設定を盛り込んだものが多く、こういった舞台条件であることを生かしています。 最後に全体を通した謎が待ち構えていて「どんでん返し」が待っているのも、連作短編集のお約束です。むしろ、もう連作短編集では、こういったことをやらないといけない。みたいな必須科目になっていますね。個人的には、あまりやりすぎると「クドいな」と思ってしまうのですが、帯に「驚愕のラスト!」的な煽りを入れるためには仕方ないのでしょうね。 もはや、書店に並んでるミステリで、「驚愕のラスト!」という帯が掛かっていない作品を探すほうが難しいような。 |
No.2 | 8点 | 虹の歯ブラシ 上木らいち発散- 早坂吝 | 2015/03/04 08:56 |
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作者二作目にして、まさかの上木らいち続投。
前作のネタも相当なものだったが、今作ではボリューム、仕掛け、バカ度、大幅アップでの登場。 ドラクエがⅠからいきなりⅣになったような、いや、ファイナルファンタジーが、ⅠからいきなりⅣになったような、機種の壁を越えた大幅パワーアップ。(ファイナルファンタジーはⅢまでがファミコン。Ⅳからスーパーファミコンで発売された) 下ネタ下ネタと言われるが、性生活は人間の営みと無関係では決していられないわけで、本格ミステリ界にこういった犯罪、トリックが出てくるのはむしろ必然。そこへ堂々と斬り込んだ作者とらいちは偉い。 エロバカだけでなく、本格としてもしっかりしている。相変わらず映像化は無理な内容で、作風とも伴ってメジャーになることは難しいかもしれないが、我々本格ミステリファンの中に作者の名前はしっかりと刻み込まれるはず。これからもこの路線でがんばれ、とエールを送る。 でも、いきなり期待を裏切って、エロバカなしの超ド本格を書いてきてもいいんだよ。 |
No.1 | 6点 | ○○○○○○○○殺人事件- 早坂吝 | 2014/09/09 09:02 |
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キャッチーな表紙絵、二度見せざるを得ないタイトル、帯には書店員の紹介文と、地雷臭が半端ない武装に耐えきれずレジへ。
「まあ、つまらなかったらここでコキおろせばいいし」と軽い気持ちで読み始めたが、意外にしっかりしていて楽しめた。 本編の半分以上経過してからやっと事件が起きるなど、序盤の展開はだるい。取材の成果を生かしたかったのだろうが、船や諸島に関する描写が多すぎる。 タイトル当てという要素は必要なかったのでは? とも思うが、それも込みで購買意欲が湧いたことを考えると、怒濤のごとく発刊される新刊の中で、少しでも興味を引くには致し方ないのかも。 人気が出たらいずれドラマ化、映像化されるからそれを観ればと考えている方。本作は色々な意味で映像化不可能なので、気になったらご一読を。 |