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バードさん
平均点: 6.14点 書評数: 315件

プロフィール高評価と近い人書評おすすめ

No.295 6点 掟上今日子の推薦文- 西尾維新 2022/10/17 07:10
(ややネタバレあり)
一冊目の『備忘録』から連続で挑戦。一冊目よりも大味と感じたため、点数は低め。
本書の構成上メタ的に事件の犯人を推測できてしまうのが弱い。また彼を犯人と予想するための傷の位置や角度の情報は謎解きパートより前の記述では不十分で、やや不親切と感じた。

実は一番驚いたのは一冊目の相棒キャラの隠館厄介が外され、別キャラが相棒だった点。てっきり一巻のコンビの継投と思いこんでいたので意表をつかれた。ただ、全ての出会いが一期一会な今日子さんの性質をよくよく考えれば、相棒が変わる方が自然だわな。

No.294 8点 掟上今日子の備忘録- 西尾維新 2022/10/17 07:03
掟上今日子さんというキャラクターを気に入るかどうかにつきる本である。私的にドストライク。ミステリアスでお茶目でかわいく、ビジュアルも気に入りました。
結果として、これまで西尾作品で暫定一位だった物語シリーズを抑え、一番好きなシリーズとなった。続編を新品で購入し、そちらも早急に読んだ。(個人的にそのような買い方は珍しく、相当気に入った証拠である。)

話の面白さは二話>三話>四話+五話 一話、の順番。特に第二話はホワイダニットとして非常に新鮮で、純粋なミステリとしても目を見張るものがある。

No.293 8点 法月綸太郎の冒険- 法月綸太郎 2022/09/25 19:07
初めて法月さんの短編集に挑戦したが、これまで読んだ長編よりも好み。収録作は高水準で、後の短編集もぜひ読みたいと思わせてくれた。

<個別書評(ネタバレあり)>
・死刑囚パズル(7点)
少々くどい論理が良くも悪くもクイーンっぽい。犯罪の性質が個性的で、真相が気になるよう書けている。

・黒衣の家(6点)
こういう犯行を計画できる程度に頭が良いのに、短絡的に犯罪に走るのは計画性が無い気がする。捕まれば真の目的を果たせないのだから。
所詮は子供と考えるしかないのかな?少しその辺りがすっきりしない。

・カニバリズム小論(6点)
読んでる最中は講釈垂れがすぎてイマイチと感じていたが、最後に仕掛けがあり安心した。ラストで4→6点。

・切り裂き魔(7点)
犯人の動機は流石に途中で分かったが、さっと楽しめる良作。
本話で登場した穂波さんは以降の話でも魅力的で気に入りました。

・緑の扉は危険(8点)
シンプルなトリックで好きなタイプの話。自分が死んだら緑の扉が開くという菅田の遺言もセンスがある。

・土曜日の本(9点)
収録作で一番面白かった。作家たちのもじり名もツボだった。
ミステリとして際立ったポイントのある話ではない上、当時の北村薫さんの覆面作家事情ありきでもあるが、非常に上手くまとまっている。

・過ぎにし薔薇は(6点)
最後にのどにつながるのが上手いが、全体的にはこじつけ感がある。悪くはないがアベレージの高い本短編集の中では下の方だった。

No.292 4点 『クロック城』殺人事件- 北山猛邦 2022/09/22 06:47
(ネタバレあり)

メインの物理トリックは中々良いを超えて非常に好み。時間を利用して断絶された空間に道を作る、なんて大仰な表現が可能でかつ鮮やかな切り口。本格ミステリと呼ぶにふさわしいトリックかと思います。
しかし、それだけに他の部分(ファンタジー的世界観、キャラクター、文章力)の力不足が顕著である。正直、妙な設定をかぶせすぎており、読みにくい事この上なかった。
以上の感想なので、全体通しての評価は残念だがイマイチ。ただし、本作者の他作品がどういった書き口かは少し気になった。

No.291 8点 ガニメデの優しい巨人- ジェイムズ・P・ホーガン 2022/09/22 06:44
『星を継ぐもの』の続編である本作。前作知識は頭に入っている前提なので、この本から読むのは控えるべき。
前作に比べ最大謎のインパクトが弱いので一点引いたが、前作と同水準で面白かった。情報が惜しくもシャピアロン号に届かないというほろ苦さと、先にある希望を両立させた締め方が好み。

本シリーズの良さは嘘(フィクション)の数を絞っているところだと思う。SFでの嘘は当然作品の売りだが、多すぎるとなんでもありになってしまい作者の妄想を聞かされてる感が強くなるのよね。

No.290 7点 悪魔の手毬唄- 横溝正史 2022/09/13 08:53
(ネタバレあり)

見立て殺人物にありがちな、インパクト重視で見立てる意味がないという大味な作品ではない。
犯人が殺人を手毬唄通り見立てた意図は(金田一の推測ではあるが)本文中に明記されており、お庄屋さんのキャラ描写が十分だったため私は納得できた。その動機を許容できるかは個人の感性によると思うので、そこが本作評価の分岐点になる気がする。

個人的にはその他にも物語をかき回す要素がふんだんで、例えば下記のような素晴らしい工夫がある。
・途中で嘘の手毬唄を出す
・三番目のすずめのミスリード
・件の一人二役

淡々と殺しが進み、読み物として起伏が弱いという点は少し残念だが、昔の作品だからと侮るなかれ、非常に精巧な作品である。

No.289 5点 怪盗ニック全仕事(1)- エドワード・D・ホック 2022/09/13 08:36
ニックの小粋さが心地よいキャラもの。依頼人たちの裏事情が絡み合うことで単なる盗難事件では終わらず、全体的に先の読めない面白さがある。
重厚なストーリーが好みな人には物足りないと思われるが、ウィットが効いた小ネタ・小噺が好きな方にはお勧め。
個人的に気に入った話(6点以上)は下記。

・プールの水を盗め:依頼人の作戦は相手が冷静になれば看破されそうだがはったりが効いてて面白かった。
・真鍮の文字を盗め:詐欺をやるにもやり方が個性的すぎる。
・邪悪な劇場切符を盗め:割と予想通りの顛末だが、そういう話もあって良かったかな。
・弱小野球チームを盗め:これだけ派手にやって捕まらないのは流石です(笑)。
・囚人のカレンダーを盗め:こんなもの盗むとは看守も流石に思いつかんわな。

No.288 5点 そして五人がいなくなる- はやみねかおる 2022/07/09 09:39
不可思議な消失が中だるみ無しに発生するのでサクサク読める。名探偵がフェイクの謎解き後に事件の真の構造を語るというのも王道で良かった。
事件最中の緊張感が終始薄めという点、事件の裏も比較的容易に想像付くという点に物足りなさを感じるものの、総合的にはまずまず面白かった。そもそも子供向けの作品に対し大の大人が文句を言うのがナンセンスだしね。
ただし子供向けなどは関係なく夢水清志郎のキャラデザはもう少し深みのある感じにした方が良かったと思う。ただの三下にしか見えない・・・。(文庫本のデザインです。)

No.287 4点 元彼の遺言状- 新川帆立 2022/05/02 10:26
第19回『このミステリーがすごい!』大賞の大賞作品であるが、出来は可も無く不可も無くで、絶賛されている程かなぁとは思ってしまった。
一番の見所であるキャラ描写が個人的にそれほど好みでない。主人公の剣持麗子を含め、残念ながら今一つ突き抜ける魅力を感じなかった。ジャックナイフなキャラ描写は良いが、共感できる部分が少なく魅力が薄いのよね。

まとめるとライトでさっと読めるのは良い点なので、月9作品の原作として話題作りに読む分にはいいかもという感じ。

No.286 5点 長い長い殺人- 宮部みゆき 2022/05/02 10:09
『模倣犯』のプロトタイプという印象だが、あちらの方が犯人側の描写が丁寧で、決着の付け方もはまっており総合的に出来が良い。個人的に『模倣犯』と一番差を感じたのは、犯人組のキャラ付けだ。ピースは好きでないが本作の薄味な犯人組と違い嫌いなキャラとして印象に残るよう書けていたので。

他に本作のオリジナル要素として財布視点で話が進行するという点があるが、何だか子供向けの絵本を読んでいる感じで、そこに良さは見出せなかった。子供向けのような語りとサスペンスのアンバランスさには少しくすっとできるが加点ポイントというにはちと弱い。

No.285 4点 星降り山荘の殺人- 倉知淳 2022/04/23 08:16
(ネタバレ無しだがヒントあり)
本格物の雰囲気やしっかりとロジックを組み立てる姿勢など非常に良いと思える部分が多かった作品。ロジックに関しては少し無理矢理感もあったが私個人の感性では許容範囲内だった。

しかし、本作はメインの仕掛けがあからさますぎていただけない。
星園登場チャプターで「おいおい、まさかこのパターンじゃないよな?」と心配し、麻子が登場した段階でほぼオチを確信。そして予想通り終わってしまった。作者的には読者への真実の語りでミスリードを狙ったのだろうが逆効果だった。言葉は悪いがやり方が子供騙し。余計な小細工が無ければ素直に驚いたかもしれないのに・・・。

上記の点で大幅減点(7点→4点)。『さよならドビュッシー』の書評に同じ事を書いたが、バレバレの手品は高評価に値しない。

No.284 6点 漱石と倫敦ミイラ殺人事件- 島田荘司 2022/04/23 08:15
一事件を二人(漱石とワトソン)が別個に語るので、そこの間にある齟齬を利用した叙述トリックでもあるのかと期待したが、そうではなく単にホームズ二次創作に漱石視点を組み込んだだけだった。
このように、こちらが勝手な期待をしすぎていたせいでやや肩透かしとも感じたが、一方で読み物としては中々にレベルが高く、本家ホームズの設定と夏目漱石に関する史実を上手く組み合わせて面白みのある物語を紡いでいる。
またページ数も多くないのでサクッと読める点もgoodで、悪い意味での二次創作感もほとんど無かった。

グダグダな要介護のホームズを読者が求めるかっこいい様で書いているワトソンの筆力は個人的に必見の笑い所。

No.283 7点 自由研究には向かない殺人- ホリー・ジャクソン 2022/04/14 06:22
捜査の過程で段々と重要手がかりが出てくるので、読者が推理に参加するのは難しい。青春物として甘酸っぱい彼ら彼女らの日常を共有しつつ、素直に真相に驚くのが本書を一番楽しめるスタンスな気がする。ただ、疑えるキャラがメタ的に絞られてたからか、どんでん返しはあるものの残念ながら私は真相にそれ程驚けなかった。
本格度の高い作品を書けそうな作者と感じたので、次作ではその辺の改善を期待したい。

最後に非常にどうでもよい事だが、作中にピカチュウという単語があり、最近だと海外の小説にも登場するキャラなのかと驚いた(笑)。

No.282 7点 マリオネットの罠- 赤川次郎 2022/03/26 08:27
赤川次郎さんらしい読みやすい文章とどこからか不協和音が聞こえてくるかのような不穏さがマッチしている。誰にでも薦めやすい佳作という印象。ただ同時に傑作まではいかないとも感じた。
タイトルから例の人がマリオネットなことは容易に想像がつく上、操ってる人も登場直後からうさん臭さが滲み出ており、真相のカモフラージュが弱い。また、マリオネットの動機は終盤に書かれる手記まで一切不明で、うさん臭ささを放っていたものの操ってる人の動機も完全に後出し。この辺の情報の出し方についても改善の余地有りと感じた。

No.281 6点 火村英生に捧げる犯罪- 有栖川有栖 2022/03/20 07:48
火村シリーズ短編集にしては収録作ごとの好き嫌いが大きかった。特に表題作はタイトルが格好良く、その使い方も上手い良作である。表題作以外では「鸚鵡返し」が短いながら切味抜群。反対にケツの二つの話は水増し感があり、無い方が良かった。

<個別書評(ネタバレあり)>
・長い影(7点)
トリック自体は無難だが、「長い影」というタイトル回収の上手さが光る。

・鸚鵡返し(7点)
文庫本でわずか9ページだが鮮やかに犯人を告げる鸚鵡。策士策に溺れるとはまさにこのこと。

・あるいは四風荘殺人事件(5点)
作中作形式にした意味も薄く、無駄にごてごてした微妙な話。里中の構想が火村の想像通りだったとしたら、現代視点ではインパクトが足りなさそう。それこそまんまの展開の作品が既にあるし。

・殺意と善意の顚末(6点)
これも「鸚鵡返し」に並んでコンパクトな良作。しょーもないと感じる人もいそうだが。

・偽りのペア(5点)
アリスも言っているようにトリックがしょーもない。

・火村英生に捧げる犯罪(7点)
事件の真相自体の面白みは薄いが、散々火村に注意を向けさせる書き方をしておき、キーはアリスというのが良い。格好いいタイトル自体がミスリードな点も含め構成力で魅せてくれた。本短編集のマイベスト。

・殺風景な部屋(4点)
『名探偵コナン』辺りにありそうな安直なダイイングメッセージ。申し訳ないがあまり面白くなかった。

・雷雨の庭で(4点)
この話の強みってなんだろうかと考えた時に何も思い浮かばない。

No.280 7点 ロンドンの傘- リチャード・レビンソン&ウィリアム・リンク 2022/03/20 07:46
『刑事コロンボ』シリーズ2冊目。
犯人側と警察側の攻防で逼迫する場面が多く面白かった。犯人を罠にかけるラストのやり方は賛否両論でそうであるが、良い意味で緩さのある『刑事コロンボ』シリーズでは有りだと思う。もっと厳格な作品で、犯人を追い詰める決め手がこの方法だったらどうかとは思うが。

ちなみに自分が一番気になったのは死因偽装に関するある点。ロジャーの死体をトランクに詰めて運んだのだから、死体は折りたたまれた体勢に硬直してしまい、階段から落ちたにしては不自然な体勢になるのではないかな。硬直前に素早く偽装が終わった感じでも無かったので気になった。致命的な問題とまでは思わないが。

No.279 7点 秘密- 東野圭吾 2022/02/23 12:24
少しずつ読み進めようとしていたのだが、ページをめくる手が止まらず二日で読了。ストーリーはほぼ予想通りで、あっと驚くことは無かったが魅せ方は非常に上手く、読者の期待には応えるいい作品に仕上がっている。ラストも正直予想はしていたが、余韻を残しつつ平介にも読者にもそれ以上突き詰めることを許さない良い締め方だったと思う。

No.278 6点 禁忌- フェルディナント・フォン・シーラッハ 2022/02/19 11:16
主人公の色盲?設定が鍵かと予想していたがそうではないよな?事件の表面的な構造は明確だが肝心なところは今一つ分からず消化不良。非常にマイルドにではあるが『ドグラ・マグラ』風味を感じた。文章の雰囲気などは気に入っただけに、もう少し自分に読解力があればと残念になる。点数は純文学的な要素を楽しめたことによる評価です。

No.277 2点 王様ゲーム- 金沢伸明 2022/02/19 10:36
何となくだが、デスゲーム系ジャンル全体に対して物語の締めが雑というイメージがある。本作もそのイメージを覆すものではなかった。読んで得たものは何も無いが、元々ほとんど期待してなかったので1点(最低最悪・・・)よりは高くてもいいかな。
小中学生に刺さる要素はあると思われるので、本作を足掛かりに他の本にも挑戦して欲しいものである。

No.276 5点 高校事変- 松岡圭祐 2022/02/06 22:01
作者の本は4冊目だが、青春物としての爽やかさは本作でも健在。また、『水鏡推理』に見られた理工系の小ネタも存在し作者の良いところが十分発揮された作品と言えるだろう。
その一方で明確に殺人が扱われたせいか、逆に展開が安っぽい。黒幕の計画は杜撰すぎる上、武装軍団の幹部キャラの知能も終盤で下がりすぎである。松岡さんの作風には殺人事件は合わないんだなあと肌で感じた一作だった。
シリーズ化されてるようだが本作の続きは読まなくていいかな。

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バードさん
ひとこと
ミステリ好きを自称してるもののまだ超有名な名作ですら未読のものが多いにわかファンなのでご容赦ください。あと感想の文体に丁寧語を用いないため生意気な批評と感じる方もいらっしゃるかもしれません、もし不快に感...
好きな作家
(海外)エラリー・クイーン アガサ・クリスティ (国内)江戸川乱歩 島田荘司 綾辻...
採点傾向
平均点: 6.14点   採点数: 315件
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