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いいちこさん
平均点: 5.67点 書評数: 541件

プロフィール高評価と近い人書評おすすめ

No.11 4点 ダークゾーン- 貴志祐介 2023/08/09 16:51
紙幅の大半が費やされる、将棋を模したバトルゲームは、それなりに描けている。
ただ、目次から勝敗の推移が概ね予想できるという点が決定的な欠陥だろう。
勝敗の帰趨を決定的に左右する重要な設定が、言わば後出しジャンケン的に、徐々に明らかになっていく点、獲られたはずの駒が絶命する前に相討ちにもっていく場合と、そうでない場合がある点など、小説である以上、当然とは言え、著者の匙加減一つという印象をあまりにも強く受ける点でも少なからず減点。
そうなると読者の興味は「このゲームの舞台は何なのか」という一点に集中するのだが、予想どおりの最悪の真相。
著者の筆力は感じるものの、好意的に評価することはできない

No.10 5点 狐火の家- 貴志祐介 2021/07/30 21:02
表題作のみが及第点のデキ。
「黒い牙」のフィージビリティは相当に疑問であり、強く不満が残る。
「盤端の迷宮」「犬のみぞ知る」は平凡な作品

No.9 4点 十三番目の人格―ISOLA- 貴志祐介 2019/05/06 17:54
その後、傑作・佳作を多数残している著者であるだけに、本作がデビュー作であることを割り引いても、この不出来ぶりは予想外と言わざるを得ない。
まずもって、人物造形やストーリーの運びに、とにかくリアリティが感じられないのである。
主人公は家出して風俗産業で働いているが、キスの経験さえない処女。
最終学歴は高卒で、中学時代には不登校も経験しているはずなのに、マイナーとも言える古典作品の知識があり、独学をベースに心理学者と対等に会話し・・・
20代前半で東京在住の美女だが、イケメンとは言え、30代後半の世慣れない学者に、自宅を遠く離れた甲子園で唐突に一目惚れ・・・
しかし、それ以上に問題なのは、本作の主題が拡散を続け、全く不明確なまま完結する点である。
本来、本作の主題は「多重人格者とエンパスのやり取り」であるべき(と私が勝手に考えている)ところ、終盤に唐突に「恋愛」と「幽体離脱」のゴッタ煮に移行し・・・
これならIsolaが13番目の人格である必要など全くない。
著者は「13」という数字が持つイメージが何となく欲しかったに過ぎない。
にもかかわらず、「十三番目の人格」を副題にまでしている意図は一体何なのか・・・
いやそもそも、作品前半の各人格とのやり取りに、こんなに紙幅を割く必要があったのかどうか。
もっと言えば、主人公が「エンパス」である必然性も・・・
読了後に本作のプロットに対する、さまざまな疑問が頭を駆け巡る作品

No.8 3点 雀蜂- 貴志祐介 2017/04/10 19:21
著者の本領は、作品世界の構築力と、それに読者を引き込んでいくストーリーテリングにあると考えるところ、本作では残念ながらそのいずれも発揮されていない。
まず前者だが、本作の最大の謎である「なぜ雪山の山荘で殺人を犯すのに、大量のスズメバチを使うのか」さえ説明していない。
次に後者だが、スズメバチの怖さが十分に表現できていないうえ、ストーリーテリングにコメディ色が強すぎ、サスペンスを演出できていない。
ミステリとしての趣向も、あまりにも安易であり、サスペンスとしてストレートに完結させた方がよかったことは明らか。
私が読んだ著者の作品として、初めて、かつ大きく期待を裏切られた作品

No.7 6点 新世界より- 貴志祐介 2016/08/01 18:22
近未来の日本を舞台に、古代日本の世界観を壮大なスケールで表現。
リーダビリティや1個の読物としての完成度も高い。
一方、思わせぶりな後日視点からの叙述や、我々の倫理観では考えられないオープンな性行為等から、大胆などんでん返しを期待していたが、それはなし。
執筆に至った作者の課題認識や、「新世界」が指し示すものは見えて来ず、エンタテインメントの域を超える印象はない

No.6 7点 悪の教典- 貴志祐介 2015/12/01 19:11
作品を通じて抜群のリーダビリティとサスペンスを維持しており、筆力の高さは疑い得ない。
一方、「天才サイコキラーが学校内で大量連続殺人に及ぶ」というプロットありきの作品であるが、緻密な取材と伏線の妙に苦心の跡が伺われるにもかかわらず、プロットに明らかに無理が感じられるのが残念なところ。
「アメリカ名門大学卒業後に金融界で活躍したエリート」という経歴は、天才サイコキラーの人物造形には不可欠であるが、そうした人物が日本の高校教師の地位に留まり、しかもその地位を保全・補強するためだけに、ここまでの犯罪を犯すのか。
犯行露見の危険性が明らかに増すことを知りながら、自分が担任するクラスの女子生徒と関係を持ち、さらには校内で密会する等といった軽率な行動を取るだろうか。
また、多くの方がご指摘のとおり、作品後半では大味な犯行と軽率な判断が散見。
皆殺しを達成するまでは何を置いても銃弾をセーブしなければならず、また生徒に犯行の進捗が露見することを防いで警戒心を殺ぎ、周辺家屋からの通報の可能性を低減させる意味でも、可能な限り銃声の発生を避けるべき局面で、体力面で勝る女子高生相手に1対1の接近戦で発砲するだろうか。
とりわけ大量殺人に追い込まれる引き金となった校内2人目の殺人は、天才には考えられないボーンヘッド。
また、その時点でも皆殺し以外のよりスマートな解決手段が模索できたであろうし、あの隠蔽工作で警察の捜査から完全に逃れられると考えていたのか。
ある殺人を隠蔽するために、次の殺人を犯さざるを得ないというプロットは「青の炎」と同様。
スケールやサスペンスでは本作が勝っても、犯行の緻密さと合理性、読後感等の点から総合評価では「青の炎」に軍配

No.5 7点 硝子のハンマー- 貴志祐介 2014/03/20 17:53
相変わらず完成度は高い。
ブレイクスルーにはもう一歩

No.4 6点 黒い家- 貴志祐介 2012/02/02 18:34
ミステリ要素は少なく純然たるサスペンス。
生命保険のモラルリスクの生々しい描写を通じて、社会保障制度の根幹を揺るがすフリーライダーを想起させる主題はいい。
しかし肝心のサスペンスは想定を下回るレベル。
読了順が逆だったためか後の著者の飛躍ぶりを実感させる結果となった。
リーダビリティの高さを評価に加えてもギリギリの6点

No.3 7点 青の炎- 貴志祐介 2011/12/27 19:53
大好きな作品。
完全犯罪に挑む優秀な高校生。
計画が成功したときから彼を苛み始める葛藤と動揺が完璧に見えた計画を狂わせる。
この主人公の心理を倒叙形式によって余すところなく描き切る。
そして何よりも素晴らしいのがラストシーン。
母と妹のために立てられたこの悲しすぎる計画の最後に、そして殺人の是非に対する作者の答えとして、これ以上の結末はあり得ないのではないか。
強い哀愁と感動を残す必読の作

No.2 8点 天使の囀り- 貴志祐介 2011/12/25 10:56
抜群のリーダビリティと緻密な取材に基づいた説得力を両立させるストーリーテリングは相変わらず見事。
人間の歪んだエゴを飲み込む自然の大いなる力。
教条的で陳腐な環境保護に与せず、自然への畏怖をバイオホラーに結晶させた傑作

No.1 9点 クリムゾンの迷宮- 貴志祐介 2011/12/25 10:48
非現実的な設定にリアリズムを吹き込む緻密な取材が抜群。
かつてゲームブックにハマっていた自分を思い出した。
リーダビリティも抜群で仕事が早朝にも関わらず深夜まで読みふけった唯一の作品。
惜しむらくはラスト。
ヒロインの像はおぼろげながら見えたが真犯人は謎のまま。
謎は謎のままの方が魅力的かもしれないが、もう少しカタルシスが感じられるラストも見たかった

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いいちこさん
ひとこと
評価にあたっては真相とトリックの意外性・納得性を最重視しつつ、プロットの構想力・完成度、犯行のフィージビリティ・合理性に重点を置いています。
採点結果が平均6.0点前後となるよう意識して採点するととも...
好きな作家
東野圭吾、麻耶雄嵩、京極夏彦、倉知淳、奥田英朗。次点として島田荘司、有栖川有栖、法...
採点傾向
平均点: 5.67点   採点数: 541件
採点の多い作家(TOP10)
東野圭吾(31)
麻耶雄嵩(21)
島田荘司(20)
奥田英朗(15)
宮部みゆき(15)
倉知淳(15)
京極夏彦(14)
有栖川有栖(13)
アガサ・クリスティー(13)
東川篤哉(11)