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いいちこさん
平均点: 5.67点 書評数: 547件

プロフィール高評価と近い人書評おすすめ

No.247 5点 天帝のあまかける墓姫- 古野まほろ 2016/03/28 18:42
作を重ねるごとに風呂敷が巨大化し、舞台設定が奇抜化しつつあるのはよいのだが、無粋な大量殺人への傾斜により緊迫感や不可能興味は低減している。
ご都合主義の散見や大味なトリックから、本格としての骨格を成す推理の論理性と、犯行のフィージビリティには疑問。
どんでん返しの連発にも、ストーリーの成立性や登場人物の行動の合理性の観点から苦しさを感じるところ。
筆力の高さを評価しても5点の最下層であり、期待を裏切るデキと言わざるを得ない

No.246 6点 花の下にて春死なむ- 北森鴻 2016/03/14 18:46
叙述が高度に洗練されている一方、登場人物に際立った個性がないことも相まって、ストーリーテリングは淡々とした印象が強く、評価が分かれそうなところ。
ミステリとしては、真相解明時の反転の手際が光る一方、真相を捻り過ぎ、推理のプロセスに大きな飛躍が感じられるなど、短編・安楽椅子探偵の限界を感じさせた

No.245 3点 列車消失- 阿井渉介 2016/03/10 15:50
物理トリック系のバカミスは嗜好にフィットしているのだが、本作は中途半端なプロット、拙劣な叙述、無理筋極まるトリック等、あらゆる面で強く不満を残す仕上がり。
冒頭に提示される謎の不可解性は申し分ないのだが、一旦フーダニットに展開したところ、作品中盤でお粗末にも声で真犯人が特定されてしまう。
その後、犯行の概要を特定するため、当該真犯人を追及するのではなく、さまざまな周辺の人物に捜査の手が及ぶ。
ところが、叙述が全くこなれておらず、登場人物の書き分けが不徹底であるため、読者を混乱に陥れている。
肝心のハウダニットについては、検視官や鑑識が信じ難いほど無能で、かつ被害者全員が昏睡でもしていなければ、まず露見は避けられないというデタラメなトリックを乱発。
敵前逃亡することなく、1個の作品として完結させている点を最低限評価

No.244 6点 臨場- 横山秀夫 2016/03/07 18:55
探偵役の性格付けや尺の短さもあり、真相解明に至るプロセスの論理性で唸らせる作品は少ないが、抒情性の高さに加え、トリックのキレと鮮やかな反転の手際は実に見事で、本格短編として高水準のデキ

No.243 6点 二の悲劇- 法月綸太郎 2016/03/04 19:47
明かされた真相と仕掛けられたトリックはシンプルで、男女の恋愛にまつわる悲劇を二人称叙述や日記を駆使して捻った異色のプロット。
ロジカルに真相に到達することが難しく、トリックがややアンフェア、真相に安易さを感じさせる面など、本格ミステリとして高い評価はできないが、プロットがキレイに収斂している点は評価。
執筆当時の作者の懊悩をそのまま反映したような叙述(とりわけ名探偵の存在意義を巡る箇所)、登場人物のきめ細かい心理描写は、あまり他作に見られないもので強く好感。
さまざまな意味で異色作であり、毀誉褒貶が分かれそうな作品だが、好意的に評価したい

No.242 6点 御手洗潔の挨拶- 島田荘司 2016/03/03 14:20
「紫電改研究保存会」が残す抒情感、「ギリシャの犬」における暗号の合理性の高さが見どころ。
「疾走する死者」はメイントリック自体が長編作品で複数回使用したトリックの使い回し、かつ使用方法で明らかに見劣りする点で強く推せない。
「数字錠」では確率に関する欺瞞が目を覆うレベルで、数学の素養が乏しいのかと思わざるを得ない。
いずれの作品も本格としての骨格はやや脆弱で、長編に比してかなり小粒な印象だが、作品の完成度・水準のブレは小さく、確かな力量を垣間見せた

No.241 5点 なぎなた- 倉知淳 2016/03/01 16:41
メタミス的なアプローチを活かした「こめぐら」より本格テイストを増し、嗜好にはフィットしているが、その分だけ小粒感が増し、インパクトでは見劣りするとも言える。
ユーモアあふれる筆致の楽しさとリーダビリティの高さは「こめぐら」と同様。
両作とも最低限の水準にはあるものの、作者の本来の力量から期待する水準には遠く及んでおらず、五十歩百歩の印象

No.240 5点 こめぐら- 倉知淳 2016/02/25 16:04
メタミス的なアプローチを活かした軽妙なバカミスが並ぶ。
ユーモアとリーダビリティの高さには見どころがあるものの、ミステリとしての骨格は至って小粒

No.239 5点 黒白の囮- 高木彬光 2016/02/25 16:03
真犯人を隠蔽するための大胆な仕掛けが光るが、それ以外には傑出した点は見受けられない。
犯行に至る動機や犯行の全体像の解明プロセスが曖昧であり、その点にも弱さを感じる

No.238 5点 パラレルワールド・ラブストーリー- 東野圭吾 2016/02/19 20:44
好き嫌いの範疇に属する話で恐縮だが、作者の描く女性は総じて従順で没個性な古典的女性像が多いように感じられるところ、本作のヒロインはとりわけ人間的魅力に欠けており、主人公2人がこの女性を巡って熾烈な争いを演じる点には、強い違和感を感じる。
また、彼女の不可解なまでの優柔不断と交際相手の交替が事態を混迷に陥れており、言動に一貫性と合理性が感じられない。
タイトルのネーミングはもはや脱力レベル。
冒頭の山手線と京浜東北線が並走するシーンは、プロットとの親和性と相まって、強く印象に残ったが、正直それだけの作品。
相変わらず洗練されたストーリーテリングを評価してかろうじて5点としたが、同じヴァーチャル・リアリティを扱った「クラインの壷」には遠く及ばない印象

No.237 5点 チョコレートゲーム- 岡嶋二人 2016/02/15 13:51
親子の断絶による家族の崩壊と、それが招いた中学生の暴走を描き出す社会派的プロット。
本格ミステリとしての仕掛け・トリックは平凡で、食い足りなさが残る印象

No.236 6点 ウルチモ・トルッコ 犯人はあなただ!- 深水黎一郎 2016/02/12 19:19
改稿・改題版の「最後のトリック」を読了。
作品の性格上、ネタバレにつながる詳細な論評は避けたい。
まず、「犯人=読者」という比類なき奇想を一定程度実現していることは確かであり、その実現にあたって施したさまざまな工夫は、イロモノの印象に反して、堅実で緻密な構成力を感じさせる。
しかし、結果としてプロバビリティの犯罪に止まっており、「読者」の解釈によっては破綻する等、一定の限界を抱えている点は大きく減点。
ただ、本格ミステリ読みを自認する人には一読を薦めたい意欲作であることは間違いない

No.235 6点 ホワイトアウト- 真保裕一 2016/02/12 19:17
アイデアの面白さと構想力、文庫本で600ページを超えるボリュームにもかかわらず、一気読みさせるリーダビリティとサスペンスは評価。
一方、完全装備のテロリスト集団に対して、一介のダムの運転員たる主人公がただ1人で立ち向かうとするならば、ダムの構造や周辺の地理関係に精通している点を活かして、クレバーに対処するのが現実的。
その点、本作では主人公が燃えあがるような気迫をもって、何の装備もなしに2,000m級の雪山や極寒の河川を踏破し、テロリストから強奪した銃でテロリストを打ち負かす等、往年の週刊少年ジャンプを思わせる空想的な超人ぶりを発揮。
その他、犯人集団に潜伏した笠原という異分子が活かされないままに終わるなど、プロットの完成度には明確に難がある。
克明な場面描写とは裏腹に各登場人物の心理描写も浅く、ミステリとしての仕掛けも想定の範囲内

No.234 5点 建築屍材- 門前典之 2016/02/08 20:22
(あらかじめ承知しているものの)拙劣な叙述、淡泊な人物造形は減点材料。
そのうえで、プロットの大宗を占める物理トリックの乱打については、全般にトリックの内容が非常にわかりづらく、犯行のフィージビリティにも問題が散見される点が残念。
ただし、死体消失にかかるメイントリックは、特殊な舞台設定を活かし切り、かつ死体切断の理由に納得感がある点で鮮やかであり、主人公のパンツの傷の手がかりも見事

No.233 7点 絡新婦の理- 京極夏彦 2016/02/04 12:05
作者に本格ミステリを執筆する意図がないのは前提として理解しているが、真犯人があまりにもわかりやすく、犯行のフィージビリティがほぼ皆無である点で、本格読みとしては高い評価は付けられない。
本作の要諦は犯行の構造にあり、それを活かすために複雑極まるプロットが組み立てられているのだが、その構造が作品中盤に明らかになってしまうなど、プロットの完成度の点でも疑問。
作品の持つ力作感や1個の読物としての面白さを最大限評価してこの評価

No.232 6点 我らが隣人の犯罪- 宮部みゆき 2016/01/25 15:09
作者の作品としては本格度が高く、無駄を削ぎ落とした筋肉質な構成。
テクニックの高さを感じさせる反面、総じて軽量コンパクトでパンチ力に欠ける印象。
ただ、好感の持てる作風で、人によっては高い評価となるのも頷ける

No.231 5点 11枚のとらんぷ- 泡坂妻夫 2016/01/25 15:08
1個の作品として独立可能な11編のショート・ショートを作中作として組み込んだ長編本格ミステリ。
作中作には、やや強引な箇所もあるものの、容疑者を限定する材料がさりげなく散りばめられている点が巧妙。
一方、犯人が「11枚のとらんぷ」を利用した動機は、それによって容疑者が限定されるという致命的なデメリットを考えれば、やや不可解と言わざるを得ない。
また、ミステリ・パズルのような乾燥したストーリーテリングは、キーとなる登場人物が多く、かつ視覚的なイメージが重要である本作のプロットとの親和性は至って低い。
以上、プロットの組み立てに巧妙さ・斬新さが感じられるものの、作品の完成度としては今一つの印象

No.230 7点 龍神の雨- 道尾秀介 2016/01/21 20:39
二組の兄弟の偶発的すぎる接触、「雨」や「龍」のこじつけめいたメタファー、読者に対するミスリード(特に脅迫状等)のあざとさ等には難を感じるし、真相は美談にまとめすぎてやや安易な印象を受ける。
ただ、登場人物ごとの虚実を微妙にずらした巧妙なプロットと、それを活かしたミスリードの手際はさすが。
例によって少年を描き出す手腕には卓越したものがあり、圭介の母と兄を想う切ない気持ちは心を強く打つものがあった。
ラジオニュースを活用して作品に余白を持たせる手際も洗練されており、作者の余裕すら感じる

No.229 5点 化石少女- 麻耶雄嵩 2016/01/19 18:09
推理の無謬性を保証するのは、推理そのものの合理性・論理性ではなく、探偵存在の絶対性であるとの認識に立ち、その探偵を「神様」→「赤点女子高生」→「あぶない叔父さん」と遷移させてきた昨今の試みの一環。
ミステリの本質的構造・脆弱性に斬り込む企みとしては面白い。
探偵が生徒会メンバーを犯人とする恣意的な前提に立ち、与えられた手掛かりからその前提を満たす解決を構築する手順は、受容性こそ全く相違しているものの、基本的には「さよなら神様」と同工異曲。
したがって、同作と同様に、蓋然性を無視した推理が乱発されるものの、推理の反証は存在しない。
この点は連作短編集としての仕掛けには不可欠であるものの、それ故に真相が予測しやすく、衝撃を大幅に減じている点は否めない。
著者ならではの先鋭的な問題認識が読物としての面白さにダイレクトにつながっておらず、昨今の軽量コンパクト路線は脱していない

No.228 5点 切り裂きジャック・百年の孤独- 島田荘司 2016/01/13 17:02
(以下ネタバレあります)
1世紀の時を隔てたロンドンとベルリンを往復しながら、真相を解明するプロットは、傑作「写楽 閉じた国の幻」を想起させるが、真相の衝撃度や合理性、犯行のフィージビリティの点などで遠く及んでいない。
本件原因を猟奇殺人以外に求める立場であれば、5人の連続殺人が立て続けに発生し、それで殺人がストップしたことから、「怨恨」に辿り着くのはそう困難なことではない。
次に、5人もの娼婦が殺害され、性的暴行の痕跡が皆無であるとしたら、犯人が女性であることは当然想定される真相であり、警察がそれを全く顧慮しなかったとは考え難い(「ハサミ男」と同様)。
死体が切開されている理由も、猟奇殺人でないのであれば、現実の犯罪ではともかく、ミステリの世界では真っ先に疑うべき真相である。
こうした意外性に乏しい真相に対し、一方では意外性を演出するため平々凡々とした犯人像を選択したため、その動機の納得性や犯行経緯の合理性に疑問が残り、手際の異様な洗練とのギャップも激しい。
死体によって損壊の度合いが大きく相違する点も、単に犯行が露見しそうだったためという褒められない結論。
一方で、犯行動機や犯人の人物像に対する掘り下げも弱く、サスペンスとしての盛り上がりもいま一つ。
題材の選択や目の付け所が興味深く、5点の評価としたが、ワンアイデアに賭けた作品でありながら、そのアイデアが弱く、これ以上の評価は付けられない

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いいちこさん
ひとこと
評価にあたっては真相とトリックの意外性・納得性を最重視しつつ、プロットの構想力・完成度、犯行のフィージビリティ・合理性に重点を置いています。
採点結果が平均6.0点前後となるよう意識して採点するととも...
好きな作家
東野圭吾、麻耶雄嵩、京極夏彦、倉知淳、奥田英朗。次点として島田荘司、有栖川有栖、法...
採点傾向
平均点: 5.67点   採点数: 547件
採点の多い作家(TOP10)
東野圭吾(31)
麻耶雄嵩(21)
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宮部みゆき(15)
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