皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
していません。ご注意を!
大泉耕作さん |
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平均点: 6.26点 | 書評数: 65件 |
No.19 | 5点 | びっくり箱殺人事件- 横溝正史 | 2012/08/01 00:11 |
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久しぶりに横溝を読もう。
「びっくり箱殺人事件」 僕にとっては横溝正史作品で初の非金田一耕助ものです。やはり、金田一が出ないと足りない物を感じてしまう。耕助の存在の大きさを痛感した次第です。 本作には金田一シリーズには欠かせないワトソン役の等々力警部が登場すると知って読むに至ったのですが(そうでなくとも買っていたが)、本編を読み進めて行くに従って等々力警部が主人公ではないとわかりました。警部は金田一シリーズの域を出たとしても、単なる脇役に過ぎず、本作の登場は狂言回しであったのです。 市川崑監督が加藤武演ずる等々力警部をシリーズ内で同じ性格で別人を演じさせる手法を広げ浅見光彦の映画『天河伝説殺人事件』に出演させたのと通ずる。 しかし、よくよく考えてみると当時、横溝は『獄門島』と同時執筆を行っており、従って東京にいる等々力警部はまだ金田一シリーズに顔を出しておらず、彼にとっては本当の意味で『最初の事件』であったようで、ファンにとってはたまらんでしょう。 さておき、本作は昭和の古い言葉の使い回しが数多く見られ、横溝自身が相当に楽しんで書きあげたものと察せられる一文が、芝居がかった台詞に多く見られた。バカミスものと言えばそれまでだが、それらのテンポが作品の真相と展開が作風にマッチしており、読みづらい個所もありますが不快な気分はしません。展開に合わせるため、作風をコミカルにしたと言える、という方が適切な表現でしょうか。 伏線の回収と筋合わせは流石横溝。 大まかな筋は見事に一線を成しているのですが、ただ幾つかの疑問が残ってしまい、実に惜しい。 (ネタバレ注意) 犯人が偶然にして匣を開けて殺人に思い至ったという経緯には抵抗を感じるし、オペラの怪人が何故、柳みどりの鏡台へ、びっくり人形を隠したのか、その辺りの解説が見事にカットされている。 「蜃気楼島の情熱」 現在では角川版で『人面瘡』に収録されています。 あまり美しい解決とは言い難いものの、物語が一筋に織り上げる様は、幾度となく述べますが“流石横溝”です。 金田一シリーズの中でも『幽霊男』に勝って劣らぬ卑劣な犯人。こういう犯人設定を個人的に好みません。 |
No.18 | 7点 | 悪魔が来りて笛を吹く- 横溝正史 | 2012/06/02 22:07 |
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横溝正史生誕百十周年を記念して、角川文庫では当時の杉本一文による、あのおどろおどろしいカバーが復刻した模様。黒背表紙の表紙と比べボヤけた輪郭が目につきますが、自分は十冊買いました。
代表作『八つ墓村』や『犬神家』などの一連の作品と比較すると、実にドロドロとした血縁を真正面から捉えた作品と言えます。 これは以前も同じようなことを書きましたが、当時、天銀堂事件のもととなった帝銀事件、資料を見ると昭和二十三年一月十六日に犯人と思しき男性が逮捕され、またこの小説は昭和二十六年の十一月から連載が開始されるところを見て、わずか三年しか経っていない。当時の日本で希に見る全国に手配されたモンタージュ写真が各地で尾を引き、また容疑者の容疑確定が決定づけされていないために、モンタージュ写真の「そっくりさん」は、肩身の狭い思いをされ、いまだに巷の話題になっていたと思われます。そのため、かの帝銀事件を模した天銀同事件が小説化されるというのだから、この作品が多少なりとも話題にならない筈はない。 それを見透かして、横溝はこの作品が、かなり多くの人達に読まれることを予想して随分と読者を意識して描いたような節が数多く見られます。必然性に欠けた密室殺人、あちこちへと飛びまわる旅行、風神、雷神の役割、死んだ筈の男の登場など、必然性に欠けた要素が多分に詰まっているふうに思います。ミステリ的にはそれが大分マイナスになっていることは否めません。 個人としては、こういう面白い読み物は最近じゃ見当たらないと思う故、あまり批判したくない思いが強いのですが・・・。 |
No.17 | 7点 | 仮面舞踏会- 横溝正史 | 2012/03/04 23:04 |
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試験もようやく終わりを告げ、ようやく安定した時間が持てるようになってふと思い出す。最後に読んだ小説から一カ月もの間、まともに本なぞ読んでいなかったじゃないか。
久しぶりに読むものとして選んだのが、やっぱり自分がファンである横溝正史。 中絶時の発想を加え、実に十四年の時を経て完成させた長編。書き下ろしなだけに、いつにも増して横溝らしい作品。 割合流れのおだやか前半からゴルフ場面までの証拠提示や伏線、後半から最後のページまでにわたる一種異様な展開、マッチの配列や血筋の真相、金田一耕助の語る真相には『夜歩く』以来の憎悪を感じさせる。横溝ワールドを堪能するに十分な要素が取り入れられています。 『犬神家の一族』や『獄門島』と同様、戦時中の混乱期が招いた悲劇が描かれている点も特筆すべき。金田一耕助の言動にも注目すべき。 「運動神経音痴、これ即ちウンチでさあ」 ・・・・・・。 それにしても金田一氏の語る真相は説得力に乏しかった気がして否めない。その点に関して、しっかりした発想があったため多少の不満がこみ上げて来て仕様がない。 首斬り、怪奇、狂気云々の横溝作品の中でも個人的におっかない最も事件。”マニア”さん同様に、犯人もさることながら、あの人は・・・。映像化したら大変なホラーになりそう。 やはりこの作家の文体やロジックなどが性に合っているようです。 (ネタバレ注意) 他にいくつか不満を述べるなら、☐☐はどうして〇〇の場所で~~を殺したのか。また、どうして殺さねばならなかったのか。詳細を知りたかったです。 |
No.16 | 6点 | 首- 横溝正史 | 2011/12/21 13:06 |
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横溝ワールド炸裂、よく練られている短編が選りすぐられています。
「生ける死仮面」バラバラ、画室、犯人、狂気、練られていますがたしかに真相は強引・・・。 「花園の悪魔」久しぶりにミステリを読ませていただきました。 「蠟美人」色々と謎が残る事件。解決はちょっと雑か・・・。 「首」真相が狂気云々だらけの短編集なので、最後にこれが当たって良かった。 ミステリ的に雑な個所もありますが、「七つの仮面」よりかはまだマシです。楽しめるだけの価値はありました。 |
No.15 | 4点 | 七つの仮面- 横溝正史 | 2011/12/19 17:56 |
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金田一入門の際に本書にぶち当たらないこと。
奇想天外な冒頭から始まっていい加減な解決で閉じた短編を詰め合わせたような作品群です。 「七つの仮面」このトリックは『迷路荘の惨劇』にも使われたような・・・。 「猫館」この着眼は『この子の七つのお祝いに』に通じるものがある。 「雌蛭」大胆なトリックを仕掛けておきながら、小品な感じが抜けない・・・。 「日時計の中の女」 水準のミステリです。 「猟奇の始末書」 「日時計の~」よりかはずっといい作品ですが、解決編が強引です。 「蝙蝠男」シリーズ最後の短編。犯人が犯人である理由を放り出して無理やり解決させた事件。ミステリ的には駄作もいいところ。 「薔薇の別荘」 短編集のなかでは最も出来が良い。トリックがよく練られていました。金田一が屋敷へ招待された理由も、やっぱり保証人として呼ばれたのではないかと・・・。 あんまり感心できない作品だらけでした。「蝙蝠男」の最後の一行だけは、金田一さんの優しさと格好良さがあって、評価一点の救いになっています。 |
No.14 | 6点 | 金田一耕助の冒険- 横溝正史 | 2011/12/13 23:03 |
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傑作と切羽詰まって書いてしまったような作品が並ぶ作品群。
「霧の中の女」謎が魅力的です。解決もサッパリしています。 「洞の中の女」奇怪さとロジックは本書イチです。 「鏡の中の女」よく練られた作品だと思います。 「傘の中の女」少々無理のある気もしましたが、それをふっとばすような金田一と等々力警部とのユーモアな言動がいい。 「鞄の中の女」本格ものとしては文句なしの出来。 「夢の中の女」最後に来てほしくなかった結末。でも、金田一の推理は面白かった。 「泥の中の女」推理不可能。ちょっと遺憾に思う・・・。 「柩の中の女」トリックはごく単純だけど、犯人到達の着眼はお見事。 「瞳の中の女」ホームズ的な事件。本当に犯人の目的や、正体がわからないまま終わった。ああ、残念! 「檻の中の女」残念ながら、本書のなかではもっとも劣っております。頁数の問題だろうと察します。 「赤の中の女」ロジックや展開は実に長けている秀作。これだけでも8点ぐらいはあげたいほど。 巨匠横溝でもやはり二週間に一作書くとなるとどこかにガタが来るのだろうか・・・。 関係のないはなしですが、表紙に描かれた(初期の角川文庫版)金田一耕助の絵が、妙にコロンボの小池朝雄氏とかぶるのですが、どうでしょう? 気になります。 金田一耕助の感情が割とあらわになったりする短編集でした。 |
No.13 | 10点 | 悪魔の手毬唄- 横溝正史 | 2011/11/24 18:03 |
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もはや探偵小説の域を超えて、文学です。
この四百八十頁に及ぶ文章の背景に潜むこの圧倒感は、いったい何処から溢れているのでしょうか。 構成の巧妙さ、プロットの凄み、論理を追求してゆく方に限ってこの作品は、横溝正史のなかでも最高作だと信じています。マイベスト小説です。 |
No.12 | 6点 | 幽霊男- 横溝正史 | 2011/11/24 16:58 |
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久しぶりの横溝長編。書評が悪いのでサスペンスとして読み進めて見ると、読んでいる途中はテンポの良く、ベタなサスペンスの感じもありましたがそれなりに楽しめました。最後の場面を除けばですが・・・。
悪人だと思っていた集団が実はそうではなかった、関係のないような人物が実は鬼の様な人物であった、と言うなんともドンデン返しの連続的な小説、実写化されたことも頷けます。(ロクでもない映画に決まっている) 被害者の不自然な行動、アリバイ・トリックなども短編ではまあまあと言ったところですが、これを長編に持って行くとなると難しいのですね。プロットに文句はありませんが、僕がいちゃもん付けたいのは真相のほうなのです。もう一捻り、もう一捻りほしかった。 それに、人形の必然性がいまひとつしっくりこなかった感が強いです。幽霊男はなんだってそんな人形を作らせたのかがまだ不明のままで終らせてしまい、『犬神家』の例外ではありませんが、冒頭に描かれたあの生き生きとしたキャラクターの行末がどうにもハッキリしないまま終了しているのであともう一賞欲しかった。 マダムXについても、なんの知らせもないまま重要人物に祭り上げられ、犯人と一緒に乗車したときの運転手は本当に幽霊男だったのか、それとも芝居だったのかもハッキリせず、加納先生がいつ人形にすり替えられていたのかも解らず仕舞いのため、謎を多く残します。でもまあ、サスペンスであれば上質の方かな。謎を多く残したから、ある意味ではミステリ小説です。どっちでも良いンです。 金田一も幽霊男には怒りを露にして、等々力警部も奴をけだもの扱い。初頭では面白いキャラだと思っていたのですが、それだけに犯人は意外でした |
No.11 | 8点 | 夜歩く- 横溝正史 | 2011/07/22 14:08 |
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(察しの良い方ならネタバレの危険性もあります)
横溝正史の作品で様々な人の評価を見たのですが「人間関係がドロドロしている」ということを予め知っていて読み進めていきましたが、ここまでドロドロしていると横溝慣れした僕でもなんだかたまらく憎悪を催します。 物語中半まではいつもの横溝先生だったのだけれど最後のネタバレで横溝の作風が一風変わったンじゃないか・・・? と、物語のあちこちに証拠を提示してきた横溝の今までの本格探偵を踏まえたならある意味、この作品は横溝作品でも珍しくメタミステリ的なトリックを応用していたところが、そう錯覚させたのかも知れません。 「物語自体」に奇怪なトリックは登場しますが、大した驚愕は受けません。しかし、最後のトリックは作品をひっくり返してしまうのです。そこでこの物語の本当の驚愕を読者は知ります。ただ、そのトリックのために読者は犯人を「読みちがえる」と同時に、その「読みちがい」が文章を僕らに提示させたためのものということになっているのですが、それがアンフェアだという方もいます。 ぼくの場合は事前用意のこの作品のことを、評価を見て調べてみると「これはアンフェアじゃないか?」と多々耳にするのですが、たしかにフェアはフェアなのですが、そんなのアリか! って、横溝ファンの僕でも正直、作品を読み終わったあとにそう思わずにはいられないトリックです。ただ、そのトリックに向けて物語の終盤にしっかり伏線も張ってあり一応フェアなのです。だから、良い目線から見れば前例のない大規模なトリック。しかし、疑問を感じずにはいられない方にとってはアンフェアとなりうる、微妙なところにあります。 この型破りでスッキリしないトリックは文中ではなく物語自体にも伏線が張ってあるので未読の方はよく読んでいただきたい。一度読んだ方ならご存知ですが、登場人物から物語も最後の唐突な展開も狂気じみています。そして、『文章』も引っ張られるように狂いだします。そのためだか、何やら金田一耕助という男もいつもと違う感じがしてならないのです。 余談ですが、この作品を僕がまだ読んでいない時から調べているうちに金田一耕助があまり登場しない一人称型の小説だということがわかりました。「ええ、出ないの・・・?」僕もあの飄々とした金田一さんが出ないから、横溝正史の事件は全体的に暗いから金田一さんみたいな人がでないとなんだか不安でした。「八つ墓村」や「三つ首塔」も一人称形式で事件は進みましたが、金田一さんが時々現れるので何の不快もなく物語は決着しました。しかし、この物語は違うのでは・・・? と心配する方がいらっしゃいましたら、「大丈夫です」と一言。事件の中心となる探偵作家の男と古神家の男のキャラクターが色を出しているので、寂しい思いはしません。ただ・・・。読み返すときにはその安心も束の間かもしれません。 横溝作品の中でもあまりにトリッキーな作品です。 しかし、首斬るなら古谷のドラマのように腕も斬ったほうがと思うこともありますが、傑作です。 |
No.10 | 6点 | 迷路荘の惨劇- 横溝正史 | 2011/04/29 21:02 |
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密室の殺人については単なるトリックのネタバレにしかならなかった。金田一が述べたようにトリックはいたってに単純なもの。
シリーズの集大成だと思います。 洞窟での描写は『八つ墓村』、フルートの描写は『悪魔が来りて笛を吹く』、存在感を放つ片腕の男は『犬神家の一族』のスケキヨ。 親と思っている人の家だけに、金田一さんもリラックスしたためかなんとなく普段の金田一さんのお里がよく出ていて、それが裏目に出たためか老刑事から後半で文句をブツクサ言われていました。 推理は不可能ですが、様々な角度から照らし合わせてみると本当に面白い小説です。横溝のおどろおどろしさ全開です。 |
No.9 | 6点 | 悪魔の百唇譜- 横溝正史 | 2011/04/13 15:27 |
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横溝ファンでありながら言うことだがあまり、面白いとは思えなかった。本格的なアリバイ崩しで、金田一も飄々としていて等々力警部の出て来るぼくにとっては初めて作品ではありましたが、なんだかトリックが複雑で途中で読んでいてもよく入らない。
その上犯人逮捕までの捜査過程が題材になっているような気がして、探偵小説的なものがないような・・・? しかし、一度だけトランプを刺しておいたナイフで殺人を起こした。という推理が当たったのはたまらなくうれしかった、単純ですよね。 アパートや、スパイ活動、竹やぶの怪しい自動車。しかし、この自動車の鍵の部分はとても気に入りました。 |
No.8 | 7点 | 人面瘡 - 横溝正史 | 2011/04/13 14:28 |
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「蝙蝠と蛞蝓」
まさか、金田一が容疑者にされるところだったとは・・・、読んでいてとても楽しめた。 主人公の湯浅は隣の嫌な男(金田一)のうっぷんを晴らすために、隣にいる蝙蝠みたいな男の金田一と前のマンションに住んでいる自殺願望の女を登場人物にして自分があの女を殺してその罪を金田一に着せると言う話を書くと、次の日に本当に女が殺されていた。どこかヒッチコックのようなサスペンスが漂い、それが最後にミステリとなるような快感。最後の犯人暴きのところはあっぱれ! さすが金田一さん。だと思ったがが、読者にも推理させて欲しいものでした。 人間のなれの果てですね。 「睡れる花嫁」 短編としては、かなり良い方だと思う。 最後の金田一の冴えた推理は格段に良かった。ああ、なるほど、と今までの伏線を見たら納得できる点が多い。よく練られた短編です。しかし、あくまでも推理だけで真実は定かではないにもかかわらず、核心に迫らないと自分の考えを述べない金田一も最後に警告を出しただけあって、かなり自信がありそう人格が変わったのか? 「湖泥」 金田一の最後の引っ掛けなどが、まるでコロンボのよう。意外性にかけてはこの作品が「人面瘡」と同じぐらい強かった。 「蜃気楼島の情熱」 事件解明に関してはさほど凄い! といったものはなかったけれど、情景描写が本当に美しかったと思います。やはり、文学です。 「人面瘡」 『犬神家の一族連続殺人事件』の次の事件。『講談倶楽部』昭和二十四年十二月号(原形)を昭和三十五年七月に金田一ものに改良したらしいです。 思うに、これまでの金田一シリーズで一番アッサリした作品であったと思います。 松代の腋に人面瘡が出てきたときにはこれまでの金田一史上「うげえ」と事実思ってしまいましたが。それをやってしまうと、本当にこの人面瘡に悩んでいる方たちの気を察すると、そうも思ってはいけないと、自分に一喝。同じ思いをしている方や自分のためにも、横溝先生も、書いておくべきだと思いました。 人間関係も長編ほど難解ではないし、金田一と証人のやりとりも面白い。夢遊病を扱った作品は他にもあるそうですが、そのことにも、本作は触れていましたっけ。それに、戦争の跡もついていて、『犬神家の一族』や『獄門島』の戦争のためにできた事件に似ています。 長編を短編に変えたような様々な要素が詰まりに詰まった作品でした。 |
No.7 | 5点 | 三つ首塔- 横溝正史 | 2011/04/10 12:10 |
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台詞やプロットにはうならせてくれました。
ただ、最後の最後に幽霊を出すのはあまりに合理的な説明とはとても、とても言い難いですな。 でも、当初横溝正史は合理的解決法を既に出していたのだが、それが出版社の事情でやむを得ず怪談にしてしまったというのだそうです。情けない話だよ編集者・・・。 それがあればもう少し良い作品に出来上がっていたかもしれない。これなら旧古谷金田一の『三つ首塔』の出来が良かったンじゃないかな? あのドラマに出てきた”三つ首”と、”塔”は安っぽかったけれど。 『幽霊男』のようなサスペンス物です。 |
No.6 | 6点 | 悪魔の降誕祭- 横溝正史 | 2011/04/10 10:11 |
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「悪魔の降誕祭」
最初はダラダラであったが解決編で全てがスッキリする。まさにこれぞ横溝ミステリ。 金田一シリーズでも頭のキレは最高峰に上るかと思われる犯人。そんなところに入れたら十点なのだが、警部補が多かったことがマイナスであった。犯人は冷酷だが、その犯人を支える人の気持ちがまた暖かい「あぁ、またやってくれましたね!」とまた、横溝作品が好きになった。 ただ、カレンダーを気分高まってちぎっていったのはよくわからんからマイナス。 そして金田一さんのヒューマニズム。犯人に自殺をさせる偶然か意図的かチャンスを与えてしまった。市川崑の映画にも共通します。 「女怪」 数ある横溝作品の短編でもマイベストです。 この物悲しい結末と、ひとりの男に翻弄される女、しかもその女に思いを寄せてしまう金田一。 被害者にしても、加害者にしても名探偵にしても悲しい。悲壮美なのです。 「霧の山荘」 どうした、一体!? まるでシャーロック・ホームズのようなオチじゃないか。 真相にはいくぶん首をかしげました。でも、この短編集の中では最も奇怪に溢れています。 |
No.5 | 10点 | 獄門島- 横溝正史 | 2011/04/10 10:00 |
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日本推理小説最高峰と言われるだけの価値はあります。
本格ミステリとしては金田一シリーズトップの出来です。 魅力的な謎を提示しておきながら、おどろおどろしい雰囲気に圧倒するばかりです。 見立ての必然性においては、何だか・・・。まぁ、文章だけ読んだら説得力に欠けていると思われますが、殺してやりたい! って奴には何度も会いましたし、意味合いは違うと思いますが自分の夢の中でも大概、そいつらは酷い目に遭っているので真犯人の気持ちはよくわかります。探偵小説としては満足の至りです。 |
No.4 | 9点 | 本陣殺人事件- 横溝正史 | 2011/04/10 09:31 |
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金田一耕助が探偵になるまでの経緯も記されていてどうやら彼はこの事件を解決する前に三つ事件を解決しているらしいく、後にも前にもない名探偵の雰囲気が漂っていました。
密室のトリックに関しては岡山の金田一ファンの集いで本陣殺人事件トリック再現というものが開催されているので、恐らくこの機械的トリックも不可能ではないはずだと思われますが、密室ものはこれが初めてなのでどうこう言える立場にいないが和風的密室トリックはたいへん面白いです。 横溝正史はこの作品の創作がそんなに楽しかったのか、それが文にも表れていた。だから、読んでいてとても楽な気持ちになってこれが作家としての意気込みなのだなあ・・・とつくづく思います。 見事! につきます。全体から見れば単純な事件です。しかし、証拠の提示やフェアなやり方(トリックについてはなんとも言えませんが)には、本当に楽しませていただきました。 |
No.3 | 5点 | 病院坂の首縊りの家- 横溝正史 | 2011/04/10 00:34 |
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上巻までは違和感のない文章で物語を淡々と進めていったものの下巻までくるとどういったわけか冗長な文が目立っていた。物語の核が文章ではハッキリ言ってあまり描き切れてはいなかった。が、それでも事件の核は割としっかりしていたのでこの点数。
金田一耕助最後の事件であるから最後まで取っておくつもりであったが映画を見てしまったせいかつい、手に取ってしまった。 怨念の祟りもないが、『病院坂の首縊りの家』という物々しい名の家から舞台に始まるドロドロした人間関係のもとに二十年のも時を超えて暴かれる壮大なるスケールと人生というものを経験した名探偵が真相を掴む時、それを取り巻く人達と犯人との人生のすべてを文で綴った『金田一耕助最後の事件』にふさわしい事件でした。 最後にはやってくれるンだな横溝先生が。 |
No.2 | 10点 | 犬神家の一族- 横溝正史 | 2011/04/09 23:59 |
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とにかく映画を観る前に読んでおけばよかったと悔しいです。
たしかに斬新なトリックもありません。都合の良い偶然があったのも否めませんが、その要因として事件の裏にある大きな存在について、映画で金田一の口から言っている通りです。 たしかにあの解釈はあり得ないと思いますが、今まで伏線が張られていたからこそ最後に説得力があったと思います。 事件とその裏の真相をひっくるめて奥が深い。ドラマとしても、ロジックも最高の部類だと思います。 最高の傑作です。 |
No.1 | 8点 | 八つ墓村- 横溝正史 | 2011/04/09 23:11 |
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リアルでトリックや推理にかけても素晴らしいの一言。
読者を飽きさせない展開も古臭さを感じられません。 生涯に残る一冊です。 (後記) 再読にあたり、最初の採点を変更。 |