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HORNETさん
平均点: 6.32点 書評数: 1159件

プロフィール高評価と近い人書評おすすめ

No.519 6点 犯人のいない殺人の夜- 東野圭吾 2018/05/01 21:50
 ヒューマンドラマ絡みの最近の作品も好きだけど、私は氏の初期のミステリミステリした作品がそれはそれで好き(「仮面山荘」とか「ある閉ざされた…」とか)。だから基本的にこの短編集も好き。
 ただまぁ、「目からウロコ」のような秀逸なひっくり返しが揃った作品集というわけでもない。最後の表題作以外は全て途中で犯人の見当がつく。真相うんぬん以上に着眼点として面白かったのは「白い凶器」。表題作「犯人のいない殺人の夜」はよく考えたものだ、とは思うけど読み返さないとなかなかホントのところが分からない分かりにくさがあった。

No.518 6点 罪の声- 塩田武士 2018/05/01 21:32
 面白かったが、思ったほどリーダビリティは高くなかった。事件につながる人間関係がやや複雑なうえに、纏わる登場人物が平凡な名前だから記憶に残りにくく、「誰が誰だったっけ?」と何度か戻ってページを繰ることになった。

 未解決となった昭和の大事件の「犯行テープ」が自分の声だった、という衝撃は想像を絶するものがあり、その意味では「つかみはOK」だった。各場面の描写も冗長にならない程度に上手く、好感の持てる文章だった。
 ただ、TVの特集番組で発見した齟齬から「初めて明らかになった事実」が見えてくるところがこの話のある意味「サビ」だと思うのだが、その発想自体は面白かったものの、それが「迷宮入りの原因」となったわけではないところが……惜しかった気がする。「こうやって世間、警察を欺いた」ということがメインのハウダニットだったら(そしてそれが唸るものだったら)もっと点数は上がったかも。

No.517 7点 クドリャフカの順番- 米澤穂信 2018/04/15 17:48
 「氷菓」「愚者のエンドロール」と、神山高校文化祭、通称「カンヤ祭」の準備に纏わるストーリーで続いてきたが、本作はその本番、カンヤ祭当日の話。これほど間を置かず、連続した時期を描く連作モノも珍しいのではないかと思うが、幸い現在立て続けに本シリーズを読破中なので非常にそれが功を奏した。

 メンバーのミスで予定より大幅に多い冊数を印刷してしまった、古典部の文集「氷菓」。果たしてカンヤ祭中に売り切れるのかが最大の悩みの古典部だったが、そんな中、学内で奇妙な連続盗難事件が起こる。いくつかの部活から、碁石、タロットカード1枚、ペットボトルドリンク1本など、それぞれは他愛もないものが盗まれ、そこに犯行声明文と思しきメッセージと、カンヤ祭のしおりが―。
 いつもながら省エネ生活を身上とする奉太郎は関わるつもりはなかったのが、古典部文集を売るために、重い腰を上げることになる。

 摩耶花の漫画研究会のストーリーや、奉太郎の「わらしべプロトコル」などの伏線の絡みも上手く、冗長でない程度に高校の文化祭風景も描かれていて楽しい。何だか懐かしくなった。
 一つだけ、結局「クドリャフカの順番」はクリスティのどの作品をひねったものだったの?わかってないの私だけ??(途中で私は、「十文字事件」の様相から「ヒッコリーロードの殺人」かと思ってた(笑))

No.516 7点 愚者のエンドロール- 米澤穂信 2018/04/15 17:26
 前作でも書いたが、こんな小粋な高校生がいるわけないとは思うものの、学園モノかつ日常の謎モノでここまで作りこまれる作品はなかなかない。作者の腕を感じる。
 神山高校祭、通称「カンヤ祭」にビデオ映画を出品することになっていた2年F組だったが、その脚本家が倒れて入院してしまい、制作は宙ぶらりんの状態に。その作品が「ミステリー」だったことから、真相は脚本家である生徒しかわからず、これまで撮影した映像からそれを推理することに。未完成のビデオ映画を見せられた古典部の面々は、千反田えるの「私、気になります」の一言でその謎を解くハメに。あとは例によって例のごとく、奉太郎の推理によってその真相が明かされていく。
 今回は、一旦決着がついたかのような件のあとの、本当の「真相」解明の部分が秀逸だった。F組の「女帝」入須冬実(これも、こんな女子高生いたらヤダ、ってレベル(笑))の風格あるキャラもよい。
 ミステリとしてもストーリーとしても、前作よりよかった。

No.515 6点 氷菓- 米澤穂信 2018/04/07 21:40
 神山高校生、折木奉太郎が探偵役となり、千反田えるが「私、気になります」と持ち込む謎を解いていく「古典部」シリーズの最初の作品にして米澤穂信のデビュー作。太刀洗万智シリーズや本格ミステリ「インシテミル」、異世界ものの「折れた竜骨」など、幅広い作風で今や超売れっ子作家である氏のスタートの作品と思うと興味深い。本作品は「小市民シリーズ」に似た雰囲気があるね。
 ラノベ、アニメのテイストも感じるような特異なキャラクターの高校生4人で、甘ったるいと感じる人はいるだろう。こんな高尚な語彙での粋なやりとりをする高校生がいるとは思えないしね。それぞれに謎について調べてきて、真相を検討する集まりなんかは、なんというか…ヘンな4人にしか見えない(笑)
 まぁでも学校を舞台とした「日常の謎」モノとしては飽きなく読めるし、こういうミステリがあってもいいと思う。このあと本シリーズを全部読もうと思う。

No.514 7点 夜明けの街で- 東野圭吾 2018/04/07 18:58
 昨今の週刊誌記事でのすっぱ抜き攻勢を鑑みると、ある意味旬のテーマ(笑)

 ミステリの質を求め、しかも不倫モノは読んでいて不快という人には確かに評価が低いかも。自分は、「ミステリの質は求めるが、俗的な話もそれはそれで嫌いではない」ので、なかなか面白かった。
 妻に気付かれていやしないか常にビクビクしながら、それでも無茶をしてしまう不倫男性の心理が筆者の筆力でうまく描かれていると思う。もちろん不倫を肯定する気はないが、よくないとわかっていながら欲望に抗えない人の弱さがよく表れている。

 ミステリとしてはトリックうんぬんではないが、ヒロイン秋葉の行動動機などの真相が明らかになるくだりはなかなか面白かった。

No.513 6点 ラプラスの魔女- 東野圭吾 2018/04/01 14:25
 超能力とかの完全な超常現象モノかと思ったけど一応そうではなかった。けど、非現実的という点ではまぁ同じような感じかな。まさにSF。

 序盤はめまぐるしく場面や登場人物が変わって、各ストーリーが並行して描かれていく中で次第にそれが合わさっていく展開。相変わらず先が知りたくなり読ませる。
 犯人の(昔の犯罪の方)動機は、思った通りだった。ブログの内容が怪しくなってきた時点で、オチは分かった。
 最後、最初の事件の片棒を担いだ女までうやむやにされるのが腑に落ちないなぁ。

No.512 6点 迷路の花嫁- 横溝正史 2018/03/31 20:37
 ミステリとしては△(というか金田一もほとんど登場せず、推理要素はほとんどない)だけど、話としてはなかなか読ませる〇。これが総合評価。

 始まりの事件現場は結構陰惨な感じなのだが、それ以降は時代を感じさせるどろどろとした風俗的な人間模様の話に。捜査とかトリックとかの話はほとんどなく、完全に通俗小説化する(乱歩の作風に近いと感じた)。
 ただ、それがそれで結構面白くて、暗躍する松原浩三なる人物の動向から目が離せなくなる。繰り返すが、ミステリとしては安っぽいが、結構読ませる作品だった

No.511 6点 海のある奈良に死す- 有栖川有栖 2018/03/31 20:25
 なんか本サイトではかなりの酷評みたいで…気が引けます。
 確かに有栖川作品として秀でているとは思わないけど、自分はそこまで悪くはなかったなぁ。

 まぁ確かに小浜が「海のある奈良」と言われていることだけに賭けた一点勝負の感じがあり、短編でも十分では、という気がしないでもないが、歴史的薀蓄や旅情が散りばめられていて、結構倦まずに読み続けられた。

 ただ、どこか忘れちゃったけど(和歌山だっけ?)別方面の人魚伝説や、小浜と奈良とどこやらが一直線上に並ぶとかの話が、単なるフリで終わってしまっていて、何の意味もなさなかったことには確かに不満は残ったが。

No.510 5点 すべてがFになる- 森博嗣 2018/03/31 20:13
<ネタバレ>

何も知らずに、本シリーズの後発を読んでしまっていたことが全て。

まず、「真賀田四季は死んでない」ことを知ってしまっている。
よって、出てきた死体は他の人間と分かってしまう。

あとは、10何年間出入りのない部屋から別の人間が出てきた・・・ことから考えを巡らせればおのずと答えは見えてくる。
真相を読んでも、「おぉ…!!そういうことだったのか…!!」にはならず、「やっぱりね」になってしまった。

加えて言えば、所長殺害のくだりは強引というか、いかにも「メインに力点を置いて、こっちはなおざり」という感じがした。

真賀田四季のキャラクターは基本的に好き。気が向いたら他も読みたい。

No.509 6点 マレー鉄道の謎- 有栖川有栖 2018/03/11 12:02
 異国での旅情が漂う作品で、読んでいるとこちらも南国にいるような気持になる心地よい作品だった。旅行に行きたくなるね。

<ネタバレ>
 密室トリックについては正直予想の範疇で、それほど優れている印象はなかった。そもそもコンテナという「箱」である時点で、そのことを生かした工作は予想できるし、既に先行作品の中にもいくつかある。正確にトリックが分かったわけではなかったが、然り気なく何度か描かれているコップのことも気付いていたので「ああやっぱり」という感じだった。
 3番目の殺人の動機となった「ジャック」の捉え違いは秀逸な仕掛けだと思った。犯人は、全くの的外れな推理をしていたアランの何を恐れたのか?…そういうことだったのか、と頷けた。勘違いで殺された彼はなんとも可哀想だが。

 最後に明かされる犯人の人間像が衝撃。後になって、伏線の張り方も絶妙だったな、と感じる作品だった。

No.508 6点 ソウル・コレクター- ジェフリー・ディーヴァー 2018/03/11 11:49
 こういうサイバー系の話は、正直あまり入って来ず、本シリーズにしては珍しくノれなかった。ある人間のプロフィールを購入品のレベルまで把握して、それによって証拠を捏造し、その人間を犯人に仕立て上げるように犯罪を犯す―というコンセプトは面白かった。微細な証拠物件を調べ上げる犯罪捜査の逆手をとった秀逸な発想で、その犯人像には期待が高まった。そのうえで示された真犯人は確かに意外だった。
 ただいかんせん、コンピュータやネットを介した犯罪とそれに纏わる捜査は、言葉で説明されてもあまりピンと来ず、正直読み流してしまう。どうせ理解できないのだからと、結末を急ぐ気持ちで読んでしまった。
 その点、完璧なセキュリティの中からどうやって情報を持ち出したのか、ということに関する真相は完全なアナログで、盲点としても「なるほど」と思えた。出入りに探知機を通過させるというところまで徹底していると、逆に原始的な方法が盲点になるという面白さがあった。

No.507 8点 棲月- 今野敏 2018/03/11 11:30
 近隣の私鉄と銀行のシステムが次々にダウンする妙な事案が発生。万一、ハッカーによるシステム攻撃のことも考え、念のため署員を向かわせる竜崎だが、管轄外での事案に口を出すことになるその動きに、警視庁生安部長から横槍が入る。
 時を同じくして、管内で少年の殺人事件が発生。一見関連のない二つの事案だったが、関わった少年グループたちが「ルナリアン」と呼ばれるカリスマハッカーを恐れているらしいことが分かってくると、竜崎は二つを結び付けて考えようとする。突飛に思える発想だったが、結果的にその読みが事件を解決へと導いていく―

・・・と、「関係があるのではないか」「気がする」というような感覚的な、曖昧なスジ読みで捜査を進め、結果的にドンピシャという一足飛びの捜査過程は相変わらずだが、本シリーズに地道で精緻な捜査やロジックは期待していないので問題ない。それよりも原理原則を崩さない竜崎の一貫性と、始めはそれに戸惑いながらも次第に強く惹かれていく周囲の人間とのドラマが醍醐味。
 本作でも、捜査会議で「署長はキャリアなので、現場の捜査は分からないのでは…」というニュアンスの言葉が他部署から出た時に、戸高が「何もわかっちゃいないのはそっちのほう。署長がこれまでどれだけの事件を解決してきたかも知らないくせに」というようなことをボソッと言う場面がある。普段は反抗的ともとれる態度の戸高のこの一言は、シリーズを読んできた者にとって「最高!」と拍手したくなるものだった。
 シリーズ2作目から続いていた大森署長も本作が最後。ついにキャリアに復帰する。馴染みの大森署メンバーと別れるのは読者も寂しいが、新しい場でまた信頼ある人間関係を築いていくであろう竜崎の今後も、楽しみにしたい。

No.506 6点 悪いものが、来ませんように- 芦沢央 2018/03/05 20:51
 作品に施された仕掛けは、正直特段目を見張るものではないと思った。「何」と分かっていたわけではないが、「何となくそんな感じのようなもの」は感じていたので、仕掛けが明かされた時も「ああ…そういうことね」という感じだった。
 ただ、ラストのもうひと仕掛けがよかった。正直、こっちの方が「分かっていた」んだけど、過保護母と親離れできない娘の、救いようのない話のラストとしては、申し分のない落としどころだったと思う。

No.505 6点 祈りの幕が下りる時- 東野圭吾 2018/02/11 16:26
<ネタバレです>
 基本的にクオリティが高い筆者の作品としては、平均的な完成度という感想。

 地道な聞き込み捜査によって、バラバラに見えるピースが次第につながっていき、全体像が見えてくるという基本的な展開は十分に面白い。
 また、父娘の絆、何を犠牲にしてでも娘の人生を守ろうとする父親の愛情、という点は素直に胸を打たれるものだった。ただ、いくらそのためとはいえ、人を殺めることに対してあまりにも良心の呵責が欠けていると思う。最初の入れ替わりの事件はまだしも、善意の第三者である押谷道子を何のためらいもなく手にかける忠雄や、そのことを聞いてもすぐに受け入れられてしまう博美の姿は、父娘の絆という言葉だけで片付けることにはできない。
 ダミーの伏線として描かれていた苗村についても、「子ども思いの熱心な先生」というキャラクターが真相解明の段になってあっさり覆されて、「嫉妬心の強いストーカー気質の男」に急になり下がっており、都合よく書き換えられている感じがする。
 映画化の派手な宣伝文句に知らず知らずのうちに影響され、勝手にハードルを上げてしまっていたかもしれないが、良作であることは間違いないが、突出した傑作という評価にはならなかった。

No.504 8点 屍人荘の殺人- 今村昌弘 2018/02/11 15:50
 C.Cの本格ミステリに、パンデミック・ホラーを材料として絶妙に組み込んでいる秀作。ゾンビ世界の設定が、アリバイやトリックにも論理的に絡んでいて素晴らしい。建物の見取り図が掲載され、その構造が重要になってくる点では「館もの」の雰囲気も備えていて、「一粒で何度もおいしい」類の作品だと思う。

 冒頭探偵役と目された男が早々に犠牲者になってしまったのは驚いたが、それだからこそ後々の展開に絡んでくるのかと身構えていたが、そうでなかったのは少々肩透かしだった。むしろ、再登場の場面はあまりにも切ない…
 ちっちゃな疑問なのだが、最後の最後に右足をゾンビに「噛まれた」男は、その後のエピローグでなぜ普通の生活に戻れているのか??と思った。

No.503 8点 ジェリーフィッシュは凍らない- 市川憂人 2018/02/04 19:29
 航空工学やら、化学やらが出てきたり、舞台が外国だったりで、「難しい感じなのかな?」と構えて読み出したのだが、まったくそんな心配はなく、引き込まれて一気に読めた。純粋に面白かった。
 雪山に遭難した航空艇「ジェリーフィッシュ」内で、一人、また一人と殺されていくいわゆるクローズドサークルはベタなのだが、こういうのが好きな人たち(もちろん私も)は何作読んでもそのこと自体に飽きることはないので、非常に面白かった。そして何より本作は「最後の一人」も殺されてしまうという「そして誰もいなくなった」スタイルで、そのからくりが非常に斬新、よく考えられた仕掛けでよかった。
 物語は閉じ込められたジェリーフィッシュ内の恐慌と、その後の捜査が交互に描かれる構成だが、捜査過程で描かれて伏線が、最後の真相で見事に回収されているとともに、ジェリーフィッシュ内の描写ともきちんと結び付いていて本当によく考えられていると感じた。
 

No.502 4点 祝言島- 真梨幸子 2018/02/04 19:13
 (前の)東京オリンピック時に、突如噴火して島民の多くがその島を追われるも、東京オリンピックに盛り上がる世情を考慮して歴史上から消去され、地図上にも示されていないという都市伝説の「祝言島」。時を経た2006年、東京で一晩に3人の人間が殺害される事件が起こる。その真相をたどっていくと、そこには「祝言島」から東京へ逃れた子孫の影がちらほらと見えてきた―
 都市伝説を題材とし、東京の芸能界を舞台としたホラーテイスト(?)のミステリ。お蔵入りとなった祝言島のドキュメンタリー映画の謎を追うような展開はなかなかに面白かったのだが、いかんせんめまぐるしく入れ替わる視点人物に少々疲れてしまったのと、最後に示される真相が「ここまで読ませといてそれ?なんだかなぁ…」という思いだったのとでこの点数。

No.501 8点 許されようとは思いません- 芦沢央 2018/01/21 22:47
 どの作品も押並べてクオリティが高く、非常に読み応えのある短編集。3作品はホワイダニット、2作品は倒叙型(?1つはそうでもないかもしれないが)といった体だが、2作品の方も仕掛けが施してあって、非常に面白い。
 追い詰められる緊張感を味わってしまう「目撃者はいなかった」、読者自身が自分の邪悪さに気付いてしまうようなダークさをもつ「ありがとう、ばあば」、そういうことか!と思わず読み返してしまう「姉のように」と、さまざまなアプローチで読者を楽しませてくれる。
 腕が立ち、カードを多く持つ作家の典型的な良質短編集。

No.500 3点 東の果て、夜へ- ビル・ビバリー 2018/01/21 12:45
 2016年英国推理作家協会賞受賞作。
 ヤクを売る組織で、売り場となる「家」の見張りを任されていたイーストだったが、ある日突然警察の手が及び、這う這うの体で逃げてきた。組織のボス・フィンは、そんなイーストに「一人の男を殺しに行ってきてほしい」と命ずる。フィンのもとで生きるほか選択肢のないイーストは命じられるままに、引き合わせられた3人のメンバーと共に2千マイル離れた地へ旅立つ。
 正直、合わなかった。なぜこの作品が世に高評価を受けているのか、私には理解できない。主人公のイースト視点での、行く先行く先での出来事や風景、心象の描写が延々と続き、退屈で仕方がない。遠すぎる世界観での勿体をつけた展開に、ほとんど共感も感動もできないまま終わった。第三部の「オハイオ」の章が一番面白かった。
 ハマる人には、何というか、「スタンド・バイ・ミー」のような説明のしにくい感動があるのだろうか。うーん。

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ひとこと
好きな作家
有栖川有栖,中山七里,今野敏,エラリイ・クイーン
採点傾向
平均点: 6.32点   採点数: 1159件
採点の多い作家(TOP10)
今野敏(50)
有栖川有栖(45)
中山七里(41)
エラリイ・クイーン(37)
東野圭吾(35)
横溝正史(22)
米澤穂信(21)
アンソロジー(出版社編)(19)
島田荘司(18)
佐々木譲(18)