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虫暮部さん
平均点: 6.22点 書評数: 1848件

プロフィール高評価と近い人書評おすすめ

No.208 5点 神様ゲーム- 麻耶雄嵩 2014/10/14 12:22
 もし小学校4年生の私がこれを読んだら、ブラックな部分も含めて充分理解したうえで楽しめたはず。作者は、子供の為の本なんて子供は喜ばない、ということを良く判っていると思う。

 ところで、わざわざ英樹に服を着せ直す必要は無かったのでは。そのまま山奥に埋めて“行方不明”で良かったんじゃないの。

No.207 3点 数奇にして模型- 森博嗣 2014/10/14 12:21
 これは失敗作。

 上倉裕子は寺林高二を何故殴ったのか?
 殴っておきながら何故、その寺林との待ち合わせの為にM工大へ行ったのか?
 それは、寺林が待ち合わせのことを誰かに話していた場合、そこへ行かないと自分が疑われる、と考えての偽装工作かもしれないが……寺林が来ないと思っていたなら、何故フローズンヨーグルトを二つ買ったのか?
 寺林が死んでおらず、怪我を押してM工大へ来る可能性も考慮に入れていた(から、二つ買った)なら、“上倉が尋常でない驚き方をして、その様子を見て寺林は上倉が自分を殴った人物だと気が付く”という程の驚き方はしない筈。

 寺林の行動も……“筒見明日香の首無し死体と敢て同じ部屋に倒れている”のどこが巧妙な策なのか?
 首切りを公会堂の別の場所(トイレとか)で行って、胴体はそのまま放置すれば済むことではないか。それで自分は容疑者圏外、とは行かないまでもワン・オヴ・ゼム扱いに留まったのでは。まだやるべきことが残っているのだから、一時的にせよ警察や病院に拘束されるリスクの方が遥かに問題だろう。

 “異常と正常”について悩むのは、西之園萌絵のキャラクターにそぐわない気がする。首切り事件や筒見紀世都のキャラクターが、今まで萌絵の遭遇した物事に比べ飛び抜けてぶっ飛んでいるとは思えないのだ。真賀田四季と対話したひとが今更なに言ってるのという感じである。

No.206 10点 クビキリサイクル- 西尾維新 2014/10/07 12:27
 何度読み返しても面白い、西尾維新のデビュー作。この段階で“あの”文体も世界観も出来上がっており、“初期作品”という印象が全くしないのに驚く。それどころか既にここからガンガン風呂敷を広げ始めていたんだな~。
 “信じるとは、どういうことか?”というくだりで、自分が以前からなんとなく思っていながらも上手い言葉に出来なかったもやもやをしれっと言語化されて、作者と握手をしたくなった私である。

No.205 6点 珈琲店タレーランの事件簿3- 岡崎琢磨 2014/10/01 11:07
良く出来ていると思う。敢て言うなら、舞台となる“大会”のようなものって、こんな悪意が飛び交うようなところ? という違和感があった。もっと同好の士が集う場の連帯感みたいなものがさぁ……でも賞金が50万円なら裏切りもするか……勿論、物語の進行の都合上、ということだろうけど。

No.204 6点 六億九、五八七万円を取り返せ同盟!!- 古野まほろ 2014/09/30 12:25
三つ巴とかでなく2組の対決なので、こっちが最終的に勝つだろうというのは想定出来てしまうのが、ちょっとだけ物足りない。ここまでやるかっていうラストではあったけれど。
 それはともかく、この作者に限らず、“物書き稼業はしんどいぜ~”と作中に滑り込ませるひとは多いが、新人に対する牽制なのだろうか。

No.203 6点 密室・殺人- 小林泰三 2014/09/30 12:20
予めロープで窓から上り下りする練習をしておいた、といっても、その練習自体がうっかりすると命にかかわる危険な行為だよね。死ぬ気なんかなくて皆を驚かせるのが目的、というにはリスクがあまりに大きい。心情が良く判らぬ。 

No.202 7点 クロム・ジョウ- 結城充考 2014/09/22 10:57
 色々唐突な部分が多くそれはそれでスピード感につながっているが、主人公以外の登場人物はちょっと大雑把に記号化しすぎだと思う。そのなかでタカオカが終盤近くで吐露した心情はリアルに感じた。

No.201 5点 雨女- 泡坂妻夫 2014/09/22 10:56
 久々に読み返したけれど、なんだか物足りなかったな~。泡坂妻夫は大好きな作家だが、このひとの描く愛の情念は濃過ぎ。一方で、「凶手の影」は事件の謎よりも主人公の“仕事”ぶりが面白かった。

No.200 7点 難民探偵- 西尾維新 2014/09/19 12:26
 この程度の謎をこれだけのページ数に拡大して、しかもしっかり面白いというこの作者の語り口はえらく巧みであると、改めて思う。“就職活動が上手くいかず、人気作家である叔父の許に居候することになった”というだけの序章でこれだけ読ませるとは。
 “売れた作家は人格が崩壊する”って自分のことか? “出版社には警察も手を出しにくい”って何かの批評か? 等と勘繰りたくなるエピソードを、よりによって“講談社創業100周年記念出版 書き下ろし100冊”にぶつけてくる、メタ的に際立った1冊(というところも作者は意図していると思う)。

No.199 9点 総理大臣暗殺クラブ- 白河三兎 2014/09/16 10:49
 破天荒な設定からアクロバティックなエンディングまで、みっしりと詰め込まれた面白さ。暗殺の訓練をする高校生、を描きつつ殺伐としたムードではなく、それどころか本気でぶつかれる友情まで炙り出した、コン・ゲーム風(屈折した)青春小説。この作者は、辻村深月を発展させたような面白いフィールドを切り拓いていると思う。

No.198 7点 ナウ・ローディング- 詠坂雄二 2014/09/11 12:06
 ビデオゲームをネタにした連作短編集。ゲームのことは全く知らないが、(多分)適切な説明が施されていて、大体どのようなものなのかそれなりにイメージ出来たと思う。
 ミステリ色は薄く、意識的に仕掛けは排除しているようで、例えば登場人物の意外な相関関係といったものは無いが、それが却って良い。ちょっと痛い(ロスト)青春小説ということで面白かった。  

No.197 7点 ベッドサイド・マーダーケース- 佐藤友哉 2014/09/10 16:42
 これはミステリというよりはかなりSF寄りの話だが、叙述トリックによるメタ・ミステリとしても読める。第1部で随分な大ネタをかましてきたので、ここでこんなにやっちゃって残り半分大丈夫かと思ったら、第2部のラストで更に荒唐無稽なところまで転がったので感心した。 

No.196 7点 水底の棘- 川瀬七緒 2014/09/03 20:17
 種々雑多なネタを惜しまずぶっこんでいる感じが小気味良い。ウミケムシ、画像検索してみた。うわぁ~……。

No.195 6点 乾いた屍体は蛆も湧かない- 詠坂雄二 2014/08/20 13:54
強引な話ではある。しかし各キャラクターの心理的な整合性はそれなりに取れていると思うし、その強引さも含めてひとつのもやもやっとした世界を形作れている。読了後に改めて見ると、カヴァー・イラストとか作者コメントとか、メタな伏線が大盤振る舞いだ。懲りないひとだ。 

No.194 8点 半導体探偵マキナの未定義な冒険- 森川智喜 2014/08/15 15:37
 法月綸太郎や麻耶雄嵩のように、きっとこの作者もミステリの成立条件について自覚的に考えながら作品を書いているのではないだろうか。その結果、ああいった大技ではなくて可愛らしいスキマを見つけ出した。
 所謂常識的な論理からの逸脱を“探偵ロボット”という小道具で見事に具現化している。謎を解くのではなく真相の見つけ方を問うという「coffee break」のアイデアも秀逸。一見軽い読み物だが、というか軽い読み物であることは間違いないのだが、論理展開はかなりのオリジナリティを誇ると思う。

No.193 8点 リップステイン- 長沢樹 2014/08/13 20:12
 新本格マナーの青春ミステリとラノベ的伝奇アクション(というか滝本竜彦『ネガティヴハッピーチェーンソーエッジ』?)を混ぜて更に心の歪な大人達も絡ませて、ごちゃごちゃしつつも手綱は放さず捌き切った快作。適度な破綻を孕んだ幕引きも効果的。計算外の危険も承知でリミッター解除したのは美晴だけでなく作者もだ。拍手を送りたい。

No.192 7点 電氣人閒の虞- 詠坂雄二 2014/08/11 20:27
出たがり作者……。

ところで、他の方の書評を読んで、あ~成程そういうことだったかと合点。

No.191 5点 渦巻く回廊の鎮魂曲(レクイエム)- 風森章羽 2014/08/11 20:27
 色気に欠ける文章だなあと思いながら読んでいたが、ラストの“アンフェアな”展開を踏まえると変に情緒的でない書き方がそれはそれで効果的なのかなあと少し見直さないこともなかった。しかし、そういった探偵サイドの世界観の特異性と比して、発生する事件そのものはさほどでもなく、バランスが取れていない気がする。

No.190 5点 災厄- 周木律 2014/08/11 20:25
 安生正『生存者ゼロ』のオルタナティヴといった感。真似だとは言わないし、思い切ったネタも面白いけど。西尾維新作品でも壊滅するし、四国は受難の地である。政治家や役人のキャラクターは典型的だし、主人公のプライヴェートな確執もあまり物語を深くする役目は果たせていない気がする。

No.189 6点 七色の毒- 中山七里 2014/08/06 14:26
 時事ネタをすかさず採り上げた笑っちゃうほどフットワークが軽い短編集。いわゆるパズラーではなく、ひとつのポイントを軸にして情景がガラッとひっくり返る類のものだが、なにぶん短編で登場人物が限られているせいもあり、比較的展開が読み易かったのは否めない。
 唯一一人称で書かれた「黄色いリボン」には驚かされた。 
「紫の献花」の、血族・姻戚ではないひとを相手が知らぬ間に受取人にするというのは、いまどき流石に保険会社が認めないと思う。

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虫暮部さん
ひとこと
好きな作家
泡坂妻夫、山田正紀、西尾維新
採点傾向
平均点: 6.22点   採点数: 1848件
採点の多い作家(TOP10)
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