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虫暮部さん
平均点: 6.22点 書評数: 1953件

プロフィール高評価と近い人書評おすすめ

No.393 7点 T島事件 絶海の孤島でなぜ六人は死亡したのか- 詠坂雄二 2017/09/14 11:12
 好きなタイプの作品だし前半は面白いのだが、それに比して結末の爆発力に欠けた。がっかりと言う程ではないが、何かもう少し違ったまとめ方があったのではないかという気もする。
 本を手に取った時、“表紙のタイトルに難読でもないのにわざわざルビを振っている、あれっ、濁らないんだ?”とチラッと気になったが、それがああいう伏線だったとは。

No.392 4点 本陣殺人事件- 横溝正史 2017/09/11 10:55
 期待した程おどろおどろしくないし、どうにもギクシャクして感じられる部分が散見され、探偵小説というよりは事件の報告書、もしくは推敲前の未定稿を読んでいるような気分だった。犯人の心情、また両者の主導権の変遷、と言った部分が興味深かったが特に後者はさらりと流されていて残念。ホームズもののネタバレは編集判断でカット出来ないのだろうか(せめてタイトルを伏字に!)。差別用語なんかよりよほど“不適切な表現”だと思うのだが。粗筋紹介の“新郎新婦が惨殺されていた”というのはアンフェアな表記では?
 「車井戸はなぜ軋る」と「本陣殺人事件」は、事件の真相の構造がうっすらと共通していないか。被害者ふたりのうち片方が……とはいえそれ自体はよくあるパターンだし、二度ネタだと非難するようなことではない。並べて読むと似ているなぁと思うくらいで。であるからこそ、これを併録したのは戦略ミスだ。「車井戸はなぜ軋る」は、面白いのに結末でがっかり。しかもそのがっかりは作品そのもののせいではない。別の本に収録されていればこうは思わなかった筈だ。私の感動を返して欲しい。

No.391 4点 見たのは誰だ- 大下宇陀児 2017/09/05 09:00
 第一部の強盗のくだりはそれなりに面白く読めたが、そのあとは場当たり的に展開して無理にまとめたような感じで苦笑することしきり。これが発表時点で探偵作家としてキャリア30年の作者によるものだから困っちゃうなぁ。
 この時代は“恋人”のニュアンスで“愛人”と言ってたんですね。

No.390 6点 ビブリア古書堂の事件手帖7- 三上延 2017/09/04 09:35
 単なる思惑の擦れ違いではなく悪意が絡んでいるせいで、一連の出来事が作為的な“大金をかけたゲーム”のようになっている。色々因縁はあるにせよ、なんでそんなのを相手にするの? という感じである。単独で読めば面白いが、シリーズの終幕としてこういうカラーの話を持ってきたのは少々残念。
 歯磨きしながら読書は私もするなぁ。

No.389 8点 虹を待つ彼女- 逸木裕 2017/09/04 09:34
 これは面白い。(良い意味で)長沢樹あたりと共通する空気を感じた。
 工藤の嫌な奴っぷりや、似て非なる榊原みどりのキャラクターが良い。細かなエピソードや脇役の配置も巧みで、そのおかげで結末の“失恋”にも説得力がある。
 ただ晴の内面が(一応の説明は施されたが)ブラックボックスなので、厳しく言うなら“読者受けを狙った不思議ちゃん”のまま終わった点がちょっと残念。生前の彼女はこんなことを考えていたのか!と視界がガラッと変わるような驚愕を期待していた。前半が面白かったので期待値が膨れ上がってしまったわけです。

No.388 7点 ドローン探偵と世界の終わりの館- 早坂吝 2017/09/01 09:26
 種明かしの1ページ前で叙述トリックに気付いてしまった。他には、彼等はみな何かの病気で一定時間ごとに薬(=アレ)を飲まないと命に関わる、なんて案もあったが……余計なことには気付かないほうがより驚けたんじゃないかと思うとちょっと残念。ところでこの真相だと、零が“壺を振り下ろして”ドローンを破壊しようとするのは苦しいのでは。

No.387 4点 罪の声- 塩田武士 2017/08/31 07:17
 31年前の未解決事件を新聞社と俊也が同じタイミングで調べ始める、という偶然はアリか?今になってここまで辿れた線を、当時何故警察は逃したのか?
 実在の事件をネタにしたという以上のプラス・アルファはあまり感じられず、“出落ち”のような印象。この作品自体が広義での“便乗商品”であって、作中のマスコミ・社会批判はそのまま自身に返って来るのである。あまり私の好みではなかった。

No.386 8点 ここから先は何もない- 山田正紀 2017/08/29 09:10
 予備知識無しで粗筋も知らずに読んだので(これが良かった)、ミステリのリアリティの枠内に留まって説明を付けるのか、SFの領域に踏み込むのか、ラスト直前まで判らずページを繰る手が止まらなかった。ここまで話を大きくするかと驚くやら呆れるやら。『謀殺のチェス・ゲーム』と『神狩り』をいいとこ取りして混ぜたよう。作者あとがきによれば『星を継ぐもの』(ジェイムズ・P・ホーガン)への不満を解消する為に書いたとの由。

No.385 6点 密偵手嶋眞十郎 幻視ロマネスク- 三雲岳斗 2017/08/21 11:22
 第一次世界大戦後の日本軍部と防諜機関の揉め事アレコレをラノベ的マナーに上手く落とし込んだ冒険活劇。意外な展開と言う程ではないし、キャラもさほど立ってはいないし、それなりの筆力を有するひとがそのつもりで書けばこのくらいのものは出来るだろうという気はする。ただ、どこがどうと言うわけではないが、なにがしかのプラス・アルファが含まれているような好感を持ったことは認める。

No.384 6点 花嫁のさけび- 泡坂妻夫 2017/08/09 10:19
 ネタバレ大いにアリで書くけれども。
 五章の4。MがI に“もうそろそろ思い当たりやしないか”と告げる内容は、要約すればこう言うことだ。
 “これは君の愛するHを騙して慰謝料を払わせる計画だ。その結果君はHと結婚出来るのだから協力しなさい”。
 それで協力を得られると思ったのだろうか。手駒にそこまで教える必要はないだろうに。愛のことが判っていない奴だと言えばそれまでだが、この場面が非常に滑稽に見える。それも含めて事件の全体像を見直したとき、どうにも作り物めいた、起こる道筋に無い事件を作者が無理に起こしたような印象だ。 

No.383 6点 鏡の殺意- 山田正紀 2017/08/02 10:52
 事態の進展に伴い足許から世界が崩れて行って、しかし再構築はされず、真相らしきものが一応明らかになったあとも摑みどころの無い場所にポツンと残されていることに気付く……というのはミステリ系に限らず山田正紀作品によく見られる構造。ストーリーが直線的で細かな目配りに欠けるし、“真実の確定”が中心ではないし、厳しく見るなら、曖昧な“雰囲気”を核に据えた舌先三寸とも言える。しかし再読したところ以前よりも面白く感じたのは、私がミステリに求めるものが変わってきたからか。

No.382 3点 レタス・フライ- 森博嗣 2017/07/31 10:28
 殆ど内容が無いような話を文章の個性だけでどこまで引っ張れるか実験した、が概ね失敗した、という感じ。辛うじて「砂の街」は面白いが、この本に収録してしまうと、基本的に同類である他の短編に埋もれて、その良さが際立たない気がする。

No.381 6点 τになるまで待って- 森博嗣 2017/07/27 11:56
 ドアの溶接をセメントでカモフラージュした、と言うのは誰に対するカモフラージュなのか?密室状況を作った理由が時間稼ぎならトリックがあとで露見しても問題は無いわけで、そんな作業をしている時間こそが勿体無いのでは。
 トリックは肩透かしだしストーリーもたいしたこと無い。しかしどこがどうと言うわけではないが、この時期の森博嗣作品としては比較的面白く感じるほうの一冊。

No.380 8点 忍物語- 西尾維新 2017/07/24 10:15
 まだ続く〈物語〉シリーズ。女子高生が吸血鬼に襲われて木乃伊になる事件を追うのだが、謎のメッセージやミッシング・リンクといったミステリ風展開。ミステリとしてはごく古典的なネタも基盤がファンタジーの論理なのでそれなりに上手くリサイクル出来ている。本筋とは関係ない会話劇の方が面白いのはまぁいつものことだ。

No.379 6点 どんどん橋、落ちた- 綾辻行人 2017/07/20 15:32
 額縁部分の妙にダークな雰囲気があまり有効に機能していないせいで、せっかくの叙述トリックも味わいが損なわれている。この“作者の苦悩”は作品の一部として昇華され切っていないように思う。

No.378 5点 ジュリエットの悲鳴- 有栖川有栖 2017/07/18 10:58
 これは有栖川有栖作品である、というどうしようもなく多大な先入観のもとで読むせいだが、シリーズ・キャラクターがいないだけでこうも会話から軽妙さが失われるものか。

No.377 6点 フォークロアの鍵- 川瀬七緒 2017/07/18 10:57
 この作者は、フェアプレイの謎解きと言うよりは、集めた様々なネタを開示して読者を引っ張るタイプであって、その前提で読めば認知症と口頭伝承を組み合わせた本作も相応に楽しめる。事象のつながりは多少強引だが許容範囲内。
 但し、人物造形をストーリーに都合良く合わせ過ぎ。地の文での心理描写過多が興を削ぐ。作者の狙いをわざとらしく感じさせない文章力がもっと欲しい。

No.376 5点 ヴィラ・マグノリアの殺人- 若竹七海 2017/07/03 11:34
 こういうスタイルのミステリもあるということは知っているし巧みな筆致ではあるけれど、行く先の判っている道を辿り直しているような感覚が否めず、物凄く面白かったとは言い難い。登場人物多過ぎ。死体の顔をつぶすという行為は結構ハードルが高いと思うので、心情的なフォローが欲しい。

No.375 4点 ゴルフ場殺人事件- アガサ・クリスティー 2017/06/16 12:35
 中盤、二つ目の死体の死因が実は……とか、被害者の目論見とか、面白味を感じる部分もあったが、全体としてはそれほどでもない。
 ポアロが、冷酷で邪悪な性格は親子で遺伝する、みたいなこと言ってるのは嫌だな~。

No.374 8点 幻想運河- 有栖川有栖 2017/06/16 12:33
 法的にどうあれ、私はドラッグを試したいとは思わないな~。ところで、詩人が自殺するエピソードはなんなの?

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虫暮部さん
ひとこと
好きな作家
泡坂妻夫、山田正紀、西尾維新
採点傾向
平均点: 6.22点   採点数: 1953件
採点の多い作家(TOP10)
山田正紀(107)
西尾維新(73)
アガサ・クリスティー(72)
有栖川有栖(51)
森博嗣(50)
エラリイ・クイーン(48)
泡坂妻夫(41)
歌野晶午(29)
小林泰三(29)
皆川博子(25)