皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
していません。ご注意を!
虫暮部さん |
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平均点: 6.22点 | 書評数: 1848件 |
No.588 | 5点 | ηなのに夢のよう- 森博嗣 | 2019/08/30 09:57 |
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やろうと思えばなにがしかの方法で実行可能なのだから、実際にどうやったのかは問題ではない、と言わんばかりの態度だが、だったらこんな“高い死に場所”なんてギミックを付加する必要は無い。シチュエイションの無駄遣いだ。
その点を除けば悪くない(除いていいのか?)。 |
No.587 | 5点 | チムニーズ館の秘密- アガサ・クリスティー | 2019/08/26 10:20 |
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奇妙な偶然の一致や、なんでそうなるのか不思議な言動が満載。ミステリの国と言うスラップスティックな架空世界の物語、と割り切っても、物凄く面白いとまでは思えなかった。其処此処に見受けられる妙なユーモア感覚は評価出来る。 |
No.586 | 5点 | 猫丸先輩の空論 超絶仮想事件簿- 倉知淳 | 2019/08/19 11:04 |
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再読だが、以前とは随分違った印象。なにより猫丸先輩の台詞回しが“そういう人物を演じている”感じの不自然さで、いっそ丸ごと本人が意識的に作り込んでいる嘘キャラなんじゃないかと言う気分になって来る。各話の謎解きについてもあまり腑に落ちなかった(「夜の猫丸」は解決してないよね……)。 |
No.585 | 7点 | ヴェールドマン仮説- 西尾維新 | 2019/08/14 12:56 |
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“コンプレックスが一切ない彼を書いてみたかった”とは作者の謂。しかしこの屈託の無い仲良し家族が、西尾維新の世界の中に置かれると怖いのなんの。物語を貫く違和感が探偵する視点の無邪気な邪気を炙り出す。“世界シリーズ”から当事者意識を除去したような味わい。
尚、“著作100冊目”とのことだが、リストを見ると結構恣意的に省かれているものがあるので、さほど意味のある謳い文句ではない。 |
No.584 | 5点 | 君待秋ラは透きとおる- 詠坂雄二 | 2019/08/14 12:54 |
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SF。特殊能力者を束ねる組織があれやこれや。
超常現象の理屈付け方とか、細かなガジェットは悪くないが、全体としては凡作。前半ののほほんとしたムードと緊迫する後半とどちらも中途半端だし、何よりキャラが立っていない。秋ラと言う命名は徒に読みづらい。 この作者には、もっと読者に対して挑戦的なものを書いて欲しいなぁ。 |
No.583 | 7点 | 誘拐作戦- 都筑道夫 | 2019/08/14 12:51 |
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九歩目まではトリッキーな展開と文体を楽しめたのだが、最後の一歩で明かされる真相がどうもいけない。
以下ネタバレ気味:犯人Xの目的の為には多少の人手が必要だが、犯人Yの目的についてはそうでもない。手を組んでこんな芝居じみた計画を企む必然性が、犯人Yにとっては乏しいように思う。せいぜい“相手方が計画に気を取られて油断する”と言ったファジィで心理的なメリットしか見当たらない。それならそれでいいので、作中でそういうことを明言して欲しい。 |
No.582 | 6点 | 日本庭園の秘密- エラリイ・クイーン | 2019/08/14 12:49 |
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作者は何故わざわざ婚約者の名前をリチャードにしたのか。おかげで警視は一度もフルネームで呼ばれていない。ありふれた名だから偶然重複するのもリアリティだとか考えたのだろうか。いや待て、そもそもEQシリーズ全体の設定として、リチャード・クイーンと言うのは仮名だっけ? |
No.581 | 5点 | 不老虫- 石持浅海 | 2019/07/31 11:46 |
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せっかくのアイデアを上手く広げられなかった感じで勿体無い。“不老虫”という特質がストーリーにあまり絡んで来ない。日本に密輸されたのが単なる危険生物でも概ね同じような話になりそう。 |
No.580 | 8点 | 宿借りの星- 酉島伝法 | 2019/07/31 11:44 |
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日本語を1度融解して固め直しましたという趣の文体はなかなか読みにくく牛の歩みの如き読み方を余儀なくされたが、それが逆に功を奏して拒絶反応を抑えつつゆっくり茹で上げられる蛙よろしく頭が作品世界に侵食される羽目になり、最終的に四つの眼や尻尾を持つずぶずぶぴぎゃくぱぁといった感じの生き物に感情移入して落涙するに至った経験は怪挙と呼んで差し支えないだろう。 |
No.579 | 7点 | 46番目の密室- 有栖川有栖 | 2019/07/30 11:55 |
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揚げ足取り。
煙突の中の暗号は、出鱈目を書いておいても(いや、何も書かなくとも)犯行に於いて問題は無い。それなのにわざわざちゃんとした暗号を作って使っている。作中で突っ込んで“ミステリ好きの矜持です”とか言わせればいいのに。 火村が小さな声で歌ったザ・ローリング・ストーンズ「Paint It, Black」。実は作中の表記に該当する適切なフレーズは存在しない。 |
No.578 | 5点 | もういちどベートーヴェン- 中山七里 | 2019/07/30 11:54 |
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シリーズ読者なら先刻承知な岬洋介の情報を殊更秘密めかして書く意義はあるのか。刑事事件についても表層的だし、推理の根拠は乏しいし、秘匿したい事情を持つものが日常的にサインを示すのは矛盾している。なんだか色々中途半端だ。寧ろ新聞記事にあった死体遺棄事件が興味深い。 |
No.577 | 8点 | Ank: a mirroring ape- 佐藤究 | 2019/07/26 11:37 |
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前半・何が起きているのか?:9割方見えている正解に向かって、残り1割の疑問だけを餌に読み進め、と言う感じで少々苛々。情報開示の手順にもっとやりようがあったのでは。
後半・どう収束するのか?:期待したほど主題が広がらず。話の3分の2を過ぎてから偶然、有力な人物が絡んでくるのも御都合主義的だ。ところで、障害のある人は暴徒化しないように思うが、その点については殆ど触れていないね。 総体としてのネタ/ストーリー/キャラクターは充分面白いが、それらをベストの形で展開し切れてはいないと思う。藤田和日郎の某漫画を髣髴させるのはまぁ偶然かな。 |
No.576 | 7点 | 刑事のはらわた- 首藤瓜於 | 2019/07/26 11:33 |
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警察小説の皮をかぶった新本格? 登場人物の気持の推移が緻密な描写ではなく、どんよりした一時期を経ていつの間にか変な方を向いている、と言うのが却ってリアル。サンドイッチのエピソードもその空気感を効果的に表現している。『刑事の墓場』と同系統だと誤認されそうなタイトルはそれ自体がミスディレクション? 変なものを書こうと言う志を買いたい。 |
No.575 | 6点 | 星空の16進数- 逸木裕 | 2019/07/23 11:21 |
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作中の“色彩”に関する繊細な美意識は、与太話とまでは言わないが、文学表現によるデフォルメがあってこそ成立する或る種架空のものであって、興味深いものの限界が見える。一方、共感出来ない登場人物の一人称で描き切った力技には、読んでいて居心地の悪さを感じたが、それはそれでアリだと評価したい。最終的に明かされる諸々にはスッキリしない部分もあり、“2010年代の探偵業事情”みたいな要素が一番面白かった。 |
No.574 | 8点 | DEATH NOTE アナザーノート ロサンゼルスBB連続殺人事件- 西尾維新 | 2019/07/23 11:20 |
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『DEATH NOTE』は熟読したので、名前を見ればキャラクターの顔が浮かぶ。そんなファンの性質を逆手に取って一本取られた。
原典には“2年前にLの下で働いたことがある”と言う南空ナオミの台詞があるので、それがつまりコレなのだろう。人がポコポコ死ぬ『DEATH NOTE』の中でも、南空ナオミの死は理不尽かつ無念の最たるもので、多大な傷痕を読者(私)に残したものだが、その彼女に再登板の機会を用意するとは粋な真似をしてくれる。 |
No.573 | 7点 | 指名手配作家- 藤崎翔 | 2019/07/16 16:09 |
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のっけからあからさまなB級臭に、それならそのつもりで行こうと思ったら、確かに安っぽいのだが存外にその要素は有効に働いていた。禍福は糾える縄の如しと言うが、善悪とか清濁とかをごっちゃにした展開には、なんじゃそりゃと突っ込みつつ楽しく読めた。設定上必然的に主人公には好感を持てないけれど、不覚にも幾度か涙したちょろい私。 |
No.572 | 7点 | 大幽霊烏賊 名探偵 面鏡真澄- 首藤瓜於 | 2019/07/16 16:08 |
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最初の数章を読んだ時点で否応無しに想起させられるのは『ドグラ・マグラ』。衒学趣味は嫌いじゃないし、伏線回収など期待してはいなかったが、あっけなく不時着して四散したのは残念。作者は物分かりが良過ぎだ。ここまで飛び上がったのだから、狂人の論理を駆使して、もう少し踏ん張って欲しかった。 |
No.571 | 8点 | 殺人犯 対 殺人鬼- 早坂吝 | 2019/07/16 16:07 |
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ネタを重ね合わせてレッド・ヘリングにする今回のトリックはかなり好み。みごとに騙され歓喜の白旗を掲げた。ただ、軽い文章なりにもう少しプラス・アルファが欲しいかも。もっと多くの子供達が現地にいる筈だが、その雰囲気が感じられない。いちいちモブに名前を付けて必要以上に読者を混乱させない親心、ってことでいいのかね。 |
No.570 | 8点 | ヒト夜の永い夢- 柴田勝家 | 2019/07/09 10:49 |
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『ドグラ・マグラ』を筆頭に先行する同系統(?)類似(?)作品は幾つも思い付くが、全然負けていない。内容が似ていると言う意味にあらず。博覧強記で広げる風呂敷は縦横無尽。さりとてきちんと着地を目指すでもなく、夢と現の間で右往左往するは奇天烈なエログロナンセンス。脱線した部分の方が楽しそうな筆致であることもこの手の奇書の共通点だ。 |
No.569 | 6点 | リラと戦禍の風- 上田早夕里 | 2019/07/09 10:47 |
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文章の力強さで読まされてしまうが、戦争を題材にすると或る程度はこうなるという定番みたいな部分もあって、ファンタジーを混ぜた割には地に足の着いた話に終始しており、力作であるがゆえの息苦しさが少々感じられた。後半で時間が2年飛んじゃうのは如何なものか。 |