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[ 短編集(分類不能) ]
偽りの春 神倉駅前交番狩野雷太の推理
狩野雷太シリーズ
降田天 出版月: 2019年04月 平均: 6.25点 書評数: 4件

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KADOKAWA
2019年04月

KADOKAWA
2021年09月

No.4 6点 makomako 2023/08/12 07:38
探偵(この場合は警察官だが)が男で相棒も男なのですが、作者が女性二人の作品出ることは今まで読んだ作者の作品中本作品が一番感じるところでした。
探偵狩野の視線が一見理論的であるが、極めて感情的要素が入った理論で、そういった方面から迫って解決を図るところはいかにも女性の作者らしいと感じたのです(だから悪いといっているのではありません。むしろ視点が私と違っていて新鮮だという意味です)。
こういった作風は嫌いではないのですが、どうしても推理の理論がご都合主義的になったりしがちで、すっきり解決といった感じがやや薄れてしまいました。
いかにも次作ができそうなので次作に期待しましょう。

No.3 6点 パメル 2022/11/06 07:30
神倉駅交番に勤務する狩野雷太。彼はかつて「落としの狩野」と呼ばれていた元刑事だった。誘拐、詐欺、泥棒など様々な悪事に手を染めた5人が狩野と対峙する倒叙ミステリ連作短編集。
「鎖された赤」語り手の「僕」は少女を誘拐して神倉市のある場所に監禁していた。幼い頃、赤い着物の少女を大事に世話する男のイメージに憑かれた「僕」は、認知症で施設に入れられた祖父の留守宅の管理を頼まれる。そこで古い土蔵を発見したことから、長年抱えてきた欲望を実現させた。しかし土蔵の鍵を紛失、駅前の交番に届けざるを得なくなる。そこで会ったのは、軽薄な印象の警官・狩野。「僕」の異常心理が丹念に描かれており、それだけでも読み応えがあるが、狩野が実は鋭い観察眼と推理能力を併せ持つ切れ者であることが分かってくるあたりもスリリング。とにかく矢継ぎ早に質問を重ねていくのだ。だが本編のキモは、その後の思いもよらない展開にある。
「偽りの春」語り手は高齢者相手の詐欺グループを率いる水野光代。仲間が収益を持ち逃げし、さらに自分たちの犯行を知る者から1000万円を要求する脅迫状が届いたことからピンチに陥る。彼女は最後の大勝負に出るが。巧緻な罠が仕掛けられている。
「名前のない薔薇」年の離れた泥棒と看護師の恋愛譚から始まる。関係を断ろうとする泥棒に看護師は、ある家から薔薇を一輪盗んでほしいという。それが二人の人生を変えていくことに。
「見知らぬ親友」と「サロメの遺言」は連作仕立てで、美大の女学生同士の複雑な友情がもたらす犯罪劇と、その後日談ともいうべき、芸術家の業をとらえた悲劇の顛末が描かれるが、この二編で注目すべきは、「落としの狩野」と言われた男の過去が明かされることでしょう。 
どんな決着の仕方でも、切ない気持ちになる。読後にしみじみと物悲しくなる作品が多い連作集。

No.2 8点 虫暮部 2020/07/27 12:09
 倒叙形式の警察モノ短編集。さほど鮮やかな推理が炸裂するでもなく、入り組んだトリックが仕掛けられるでもなく。犯罪より人物の造形を中心に据えた、つまり小手先ではない筆力がより求められるスタイルに挑み、しかもかなり成功している。素直に感心した。「見知らぬ親友」が特に良い。
 ――と思ったら最後に飛び道具。コレが中途半端。と言うか主人公の企ては面白いが、“天才”の描き方が表層的で説得力不足。このネタだけ別個にもっとじっくり書けばいいのに。

No.1 5点 YMY 2019/09/03 20:08
帯に「だまされる快感を味わった」(大沢在昌)とあり、買ってみた。
高齢者詐欺グループリーダーの光代が脅迫される「偽りの春」、美大生たちの悪意が交錯する「見知らぬ親友」、声優殺しの謎に迫る「サロメの遺言」など5編を収録しているが、どれもひねりの切れがいい。
そのなかでは青春小説のきらめきを持つ「見知らぬ親友」とその続編の「サロメの遺言」が気に入った。「落としの狩野」といわれたヒーローの挫折の話をゆっくりと後景から前景に押し出して、犯人の動機をより深く切実なものにしている。
「偽りの春」は、日本推理作家協会賞「短編部門」を受賞している。


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